金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

金色の涙(ヤマト)20

2008-05-07 12:06:41 | Weblog
 佐助が多門の前に跳び、小太刀で斬りつけた。
多門が笛で受け止める。金属と金属が触れ合う音。
笛は金属の質感を持っていた。二合三合と激しく渡り合う。
多門の動きはまるで棒術の達人。隙が無い。
 押し寄せる鼠達がさらに増えていた。現在3万匹近く。
遠くで笛の音を聞いた鼠達が、到着を始めたのだ。
どこまで増えていくのだろう。
 白狐をはじめとして、みんな疲れていた。へとへと。
溜めていた気をほとんど使い、残っているのは体術のみ。
 ポン太の脳裏に、ある言葉が響いた。
「踊らにゃ、損。歌わにゃ、損。飲まなきゃ、損」師の最後の言葉だ。
お腹一杯に空気を吸い込み、腹鼓を打つ。久々なので音が悪い。
幾度目かで、昔の音を取り戻した。
「ポンポコリン」
 高々と、城下のみならず、付近の山々にまで響き渡った。
ポン太は続けて、腹鼓を打つ。「ポンポコリン」
 と、西の山の頂から「ポンポコリン」
東の麓からも「ポンポコリン」
 狐と鼠の争いに巻き込まれぬよう、鳴りを潜めていた狸達が、
腹鼓で「ポンポコリン」と自己主張を開始した。
あっというまに「ポンポコリン」が四方八方を取り囲む。
 どうやら狸達が腹鼓を打ちながら、こちらに向かってくるようだ。
特に北からの「ポンポコリン」は、一際調和が取れていた。
丹波狸の存在を知らしめる、「丹波狸舞踏団」しか考えられない。
 狸達が鼠達の背後を包囲するかのように、姿を現した。
 鼠達の動きが止まった。キョロキョロと前後左右を気にする。
 ヤマトが鼠達を掻き分けるようにして、屈羅誼城へ走った。
そして屋根に駆け上がった。龍と猫又が入れ替わった。
猫又が雄叫びを上げ、「ポンポコリン」に合わせて歌いはじめる。
城下に隠れ潜んでいた猫達が、誘われるように飛び出てきた。
 いつしか狐達も巻き込まれ、疲れを忘れて踊りだした。
「ポンポコリン」に上手に合わせる。

 ついに「丹波狸舞踏団」が最前列に現れた。
「ポンポコリン」
「踊りゃな、そんそん」
「歌わにゃ、そんそん」
「飲まなきゃ、そんそん」
「ポンポコリン」
 「丹波狸舞踏団」の歌い踊りに魅せられ、狸が、狐が、猫が、
そして鼠達までが我を忘れて踊りだした。
どうやら鼠達は『ハーメルンの笛』の呪縛から解き放たれたようだ。
 狸達が傍の木を「ポンポコリン」に合わせて叩きだす。
 白狐・コスモの出自は、狐版「丹波狸舞踏団」ともいうべき、
豊川稲荷の「三河狐歌舞伎組」なので、歌い踊りが綺麗だ。
 ヤマトの指示で猫達が城下の酒を集め、皆に分け隔てなく配って回る。
肴まで調達する者もいた。
 ぴょん吉と哲也が酒を酌み交わし、笑いながら踊っていた。
 そんななか、佐助は多門と対峙したまま。
この一人と1匹だけは「ポンポコリン」どころでは無い。
気を逸らした方が負けるのだ。
 そこにヤマト。
瓢箪片手に、多門の背後に腰を下ろし、味噌を肴に酒を飲む。
悪戯心で、そっと殺気を多門の背中に送った。
 それに押し出されたかのように、多門が笛を振りかぶって佐助を襲う。
佐助が待ちかねように動き、笛を小太刀で一閃。真っ二つ。
返す刀で鼠猿・多門の胴を薙いだ。
崩れる相手の首を、さらに、すぱっと斬り落とす。
『李淵の剣』から清らかな鈴の音が・・・




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