金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(呂布)270

2013-09-19 19:42:49 | Weblog
 マリリンは棍を下ろし、呂布を観察した。
金髪碧眼だが、肌の色や顔の造作は東洋そのもの。
金髪碧眼は別にして、風貌からしても、褚許との立ち会いを見ても呂布としか思えない。
 その呂布はマリリンと対峙しているだけでなく、
周りを褚許の一党と赤劉家の一行に、遠巻きにされていた。
腕に覚えがあり、例え囲みの一角を破ったとしても、追跡を逃れる事は不可能だろう。
にも関わらず泰然自若。
一向に周囲を気にしない。
諦めているのか、自分の置かれた状況が分からぬ愚か者なのか。
 マリリンは呂布を試す事にした。
「その一角を開けて」と褚許に指示した。
包囲陣の南側を開けさせ、呂布の逃げ道を作った。
 それでようやく呂布は周囲に視線を走らせた。
包囲陣をゆっくりと見回した。
普通なら、死兵と化した者でも生に望みが残っていると分かれば、
それに縋り付こうとする。
ところが呂布は違った。
様子が変わらない。
淡々とした表情でマリリンに視線を戻した。
さっぱり感情が読めない。
 マリリンの中のヒイラギが、
「感情を母親の胎内に置き忘れて産まれたのだろう」と笑う。
 マリリンは決断した。
こうなれば実戦で試すしかない。
再び棍を呂布に向けた。
「棍だからといって甘く見ないでね。
打ち所が悪ければ骨くらいなら簡単に折れるから」と身構えた。
 呂布が無表情でマリリンを見返した。
軽く頷き、大太刀を持ち直した。
 マリリンは武の初歩に戻った。
騎乗のままで背筋を伸ばし、呼吸を整えた。
ジッと気が満ちるのを待つ。
 愛馬の剛も感情の昂ぶりを抑えた。
自分の攻め急ぐ気持ちより、マリリンとの一体感を優先した。
まさに人馬一体。
 慣れたもの。気が満ちるのに時間はかからない。
満ちたモノは熟して落ちるのが世の習い。
時間は残されていない。
マリリンは勝負に出た。
剛が応じた。呂布に向かって一気に跳んだ。
マリリンは棍を振りかぶった。
殺す気はないが、今は全力で呂布を叩き潰そうと思った。
 同時に呂布も動いた。
筋肉の塊のような呂布を乗せた馬が、意気揚々、跳び出した。
大太刀を振り上げた呂布。
双眼でマリリンの首を捉えた。
 両者が擦れ違いざま、それぞれの得意の武器を振り回した。
マリリンは呂布の肩口を打とうとした。
呂布は、そのマリリンの棍を弾き返そうと、大太刀の軌道を変えた。
中間で棍と大太刀が衝突。
 擦れ違いながらマリリンは首を捻った。
棍と大太刀が衝突した筈なのに、何の衝撃も感じなかった。
空気を打ったのか。
少し走って剛を反転させた。
棍自体の感触がおかしい。
見直すと、棍が真ん中辺りで切り落とされているではないか。
 これまで盗賊団とは棍一本で何度も渡り合った。
大太刀の相手もした。
しかし、一度として切り落とされる事はなかった。
全て弾き返した。
こうも簡単に切り落とされたのは初めて。
本来の大太刀は、防具で身を固めた相手を斬るのではなく、打ち壊すもの。
ところが呂布の大太刀は予想を越えていた。
鋭い切れ味。
これなら防具も真っ二つにするかも知れない。
脅威的だ。
 呂布も馬を反転させた。
無表情。
余裕か、攻め急がない。
大太刀を肩に担いで、マリリンの出方を待つ。




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