マリリンは棍を下ろし、呂布を観察した。
金髪碧眼だが、肌の色や顔の造作は東洋そのもの。
金髪碧眼は別にして、風貌からしても、褚許との立ち会いを見ても呂布としか思えない。
その呂布はマリリンと対峙しているだけでなく、
周りを褚許の一党と赤劉家の一行に、遠巻きにされていた。
腕に覚えがあり、例え囲みの一角を破ったとしても、追跡を逃れる事は不可能だろう。
にも関わらず泰然自若。
一向に周囲を気にしない。
諦めているのか、自分の置かれた状況が分からぬ愚か者なのか。
マリリンは呂布を試す事にした。
「その一角を開けて」と褚許に指示した。
包囲陣の南側を開けさせ、呂布の逃げ道を作った。
それでようやく呂布は周囲に視線を走らせた。
包囲陣をゆっくりと見回した。
普通なら、死兵と化した者でも生に望みが残っていると分かれば、
それに縋り付こうとする。
ところが呂布は違った。
様子が変わらない。
淡々とした表情でマリリンに視線を戻した。
さっぱり感情が読めない。
マリリンの中のヒイラギが、
「感情を母親の胎内に置き忘れて産まれたのだろう」と笑う。
マリリンは決断した。
こうなれば実戦で試すしかない。
再び棍を呂布に向けた。
「棍だからといって甘く見ないでね。
打ち所が悪ければ骨くらいなら簡単に折れるから」と身構えた。
呂布が無表情でマリリンを見返した。
軽く頷き、大太刀を持ち直した。
マリリンは武の初歩に戻った。
騎乗のままで背筋を伸ばし、呼吸を整えた。
ジッと気が満ちるのを待つ。
愛馬の剛も感情の昂ぶりを抑えた。
自分の攻め急ぐ気持ちより、マリリンとの一体感を優先した。
まさに人馬一体。
慣れたもの。気が満ちるのに時間はかからない。
満ちたモノは熟して落ちるのが世の習い。
時間は残されていない。
マリリンは勝負に出た。
剛が応じた。呂布に向かって一気に跳んだ。
マリリンは棍を振りかぶった。
殺す気はないが、今は全力で呂布を叩き潰そうと思った。
同時に呂布も動いた。
筋肉の塊のような呂布を乗せた馬が、意気揚々、跳び出した。
大太刀を振り上げた呂布。
双眼でマリリンの首を捉えた。
両者が擦れ違いざま、それぞれの得意の武器を振り回した。
マリリンは呂布の肩口を打とうとした。
呂布は、そのマリリンの棍を弾き返そうと、大太刀の軌道を変えた。
中間で棍と大太刀が衝突。
擦れ違いながらマリリンは首を捻った。
棍と大太刀が衝突した筈なのに、何の衝撃も感じなかった。
空気を打ったのか。
少し走って剛を反転させた。
棍自体の感触がおかしい。
見直すと、棍が真ん中辺りで切り落とされているではないか。
これまで盗賊団とは棍一本で何度も渡り合った。
大太刀の相手もした。
しかし、一度として切り落とされる事はなかった。
全て弾き返した。
こうも簡単に切り落とされたのは初めて。
本来の大太刀は、防具で身を固めた相手を斬るのではなく、打ち壊すもの。
ところが呂布の大太刀は予想を越えていた。
鋭い切れ味。
これなら防具も真っ二つにするかも知れない。
脅威的だ。
呂布も馬を反転させた。
無表情。
余裕か、攻め急がない。
大太刀を肩に担いで、マリリンの出方を待つ。
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金髪碧眼だが、肌の色や顔の造作は東洋そのもの。
金髪碧眼は別にして、風貌からしても、褚許との立ち会いを見ても呂布としか思えない。
その呂布はマリリンと対峙しているだけでなく、
周りを褚許の一党と赤劉家の一行に、遠巻きにされていた。
腕に覚えがあり、例え囲みの一角を破ったとしても、追跡を逃れる事は不可能だろう。
にも関わらず泰然自若。
一向に周囲を気にしない。
諦めているのか、自分の置かれた状況が分からぬ愚か者なのか。
マリリンは呂布を試す事にした。
「その一角を開けて」と褚許に指示した。
包囲陣の南側を開けさせ、呂布の逃げ道を作った。
それでようやく呂布は周囲に視線を走らせた。
包囲陣をゆっくりと見回した。
普通なら、死兵と化した者でも生に望みが残っていると分かれば、
それに縋り付こうとする。
ところが呂布は違った。
様子が変わらない。
淡々とした表情でマリリンに視線を戻した。
さっぱり感情が読めない。
マリリンの中のヒイラギが、
「感情を母親の胎内に置き忘れて産まれたのだろう」と笑う。
マリリンは決断した。
こうなれば実戦で試すしかない。
再び棍を呂布に向けた。
「棍だからといって甘く見ないでね。
打ち所が悪ければ骨くらいなら簡単に折れるから」と身構えた。
呂布が無表情でマリリンを見返した。
軽く頷き、大太刀を持ち直した。
マリリンは武の初歩に戻った。
騎乗のままで背筋を伸ばし、呼吸を整えた。
ジッと気が満ちるのを待つ。
愛馬の剛も感情の昂ぶりを抑えた。
自分の攻め急ぐ気持ちより、マリリンとの一体感を優先した。
まさに人馬一体。
慣れたもの。気が満ちるのに時間はかからない。
満ちたモノは熟して落ちるのが世の習い。
時間は残されていない。
マリリンは勝負に出た。
剛が応じた。呂布に向かって一気に跳んだ。
マリリンは棍を振りかぶった。
殺す気はないが、今は全力で呂布を叩き潰そうと思った。
同時に呂布も動いた。
筋肉の塊のような呂布を乗せた馬が、意気揚々、跳び出した。
大太刀を振り上げた呂布。
双眼でマリリンの首を捉えた。
両者が擦れ違いざま、それぞれの得意の武器を振り回した。
マリリンは呂布の肩口を打とうとした。
呂布は、そのマリリンの棍を弾き返そうと、大太刀の軌道を変えた。
中間で棍と大太刀が衝突。
擦れ違いながらマリリンは首を捻った。
棍と大太刀が衝突した筈なのに、何の衝撃も感じなかった。
空気を打ったのか。
少し走って剛を反転させた。
棍自体の感触がおかしい。
見直すと、棍が真ん中辺りで切り落とされているではないか。
これまで盗賊団とは棍一本で何度も渡り合った。
大太刀の相手もした。
しかし、一度として切り落とされる事はなかった。
全て弾き返した。
こうも簡単に切り落とされたのは初めて。
本来の大太刀は、防具で身を固めた相手を斬るのではなく、打ち壊すもの。
ところが呂布の大太刀は予想を越えていた。
鋭い切れ味。
これなら防具も真っ二つにするかも知れない。
脅威的だ。
呂布も馬を反転させた。
無表情。
余裕か、攻め急がない。
大太刀を肩に担いで、マリリンの出方を待つ。
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