マリリンはウンザリしてきた。
袁術に続いて帝までもが亡くなった。
自分が習った歴史から、だんだん逸れて行く。
マリリンの中のヒイラギが笑う。
「ここは何なんだっはっはっはっ」
アンタは楽しいの。
「ワクワクしないか。
別の過去との遭遇。
スリルとサスペンスの予感。
それを楽しめないとは・・・。
全てが教科書通りでは詰まらないだろう。違うか」
大広間には様々な感情が生じていた。
戸惑いと驚き、怒り、恐れ、それらが複雑に入り混じり漂っていた。
韓秀が長男の質問に答えた。
「激しく抵抗した一人が斬り殺された。
今のところ、生きて捕らえられたのは五人。
うちの二人が手傷を負い、手当を受けている」
「すると取り調べで黒幕が判明する分けですな」胡璋が目を輝かせた。
家宰の康が胡璋の方に顔を向けた。
「残念なことに、そう簡単には行かぬ。
腐敗した輩が多いから、取り調べの過程でどう改竄されるか分かったものではない」
韓秀が割り込んだ。
「今回はそうではない。
袁紹殿や曹操殿が自分達で取り調べを行うと押し切った」
「本当で」康が声を呑む。
「あの二人、日頃は宦官の排斥を訴えているが、
それだけではなく官吏も信用していないらしい」
「あの二人らしいですな」
「袁紹家に寄食している客人の一人が取り調べに慣れているとかで、
今頃はその者が任に当たっている筈だ」
康が首を傾げた
「しかし、それだと私的な取り調べで、
たとえ真相を聞き出しても公的な処分に持ち込めない筈ですが」
「それはそうなんだが・・・、
あの二人、何もかも無視して私的制裁を強行するかも知れん」
女武者の朱郁が当然の疑問を口にした。
「帝を暗殺するほどの者達が簡単に口を割りますか」
韓秀が隣の劉芽衣に視線を向けた。
応じて劉芽衣が立ち上がり、入れ替わるように韓秀が椅子に腰を下ろした。
劉芽衣は朱郁をチラリと見、それから大広間の全員を見渡した。
「袁紹家の客人は薬師崩れでね、
薬草の調合次第で人を操れると吹聴している輩よ。
私も方術修行の一つとして薬草の調合は習ったわ。
人の病を治す為の調合をね。
人を操るなんてのは試した事はないけど、理屈としては可能なのよね。
薬が効けばだけど、取り調べに有効かも知れないわね。
でも絶対に安全だとは言い切れない。
何らかの後遺症が残るはずよ。
あるには服用させた量によっては死に至る。
薬師の腕次第というところね」
劉芽衣はみんなが納得したのを確認して、続けた。
「これまで劉家内部で問題が生じると、取り調べ内容が公表される事はなかったの。
たいていは政治的な手心が加えられ、伏せられた。
何皇后が帝の愛妾、王美人を毒殺した時でさえ罰せられなかった。
どうしても見過ごせぬ時は首謀者が密かに斬首され、病死とされた。
大事にせぬ力が働くのよ。
ところが今回は違う。
袁紹と曹操は取り調べで自供を得れば、それ全てを公表すると思うの。
内通していた者共が捕らえられ、暗殺の黒幕の元には捕縛する軍が送られる。
正しいだけに誰にも止められない。
下手すると劉家が割れる」
「黒幕は同じ劉姓の者ですか」朱郁が当然の疑問を口にした。
「それ以外は考えられないわ。
みんなもそう考えていると思う。
だから何進大将軍も董卓将軍も、劉姓の軍勢の入城を許さなかった。
みんなして劉姓の誰かが黒幕と信じているわ。
帝を暗殺し、その血筋を絶やして取って代わるつもりと。
正しいかも知れないけど・・・」
「その者を捕らえるのは間違いと聞こえますが」朱郁。
「そうよ。
帝位を奪取する分けだから、相手は周到に下準備をしていると思うの。
密かに同士も募っていることでしょうね。
思わぬ人物を仲間に引き入れているかも知れない。
そういう相手に無為無策で正面から当たるのは下策よ。
どこでどう火の手が上がり、どこまで延焼するか分からないでしょう。
政治を執り行う者は細小の手間で、最大の効果を上げるべきなのよ。
しかるべき手順を踏み、内々に首二つ、三つで済まし、
下々には何事も無かったかのように振る舞う。
そうやって体面を保ち、帝政を延命させる。
それに本格的な討伐戦にはお金がかかるわ。
その肝心のお金が朝廷には無いの。
ここは帝国全体の為にも是が非でも倹約して欲しいわね」
語り疲れか、劉芽衣はお茶で口を湿らせた。
劉姓の者は多いが、取って代わるだけの力量がある者は少ない。
筆頭は人望ある劉虞。
次は劉岱、劉繇の兄弟。
ある程度の領地家臣を抱えているのは劉焉と劉表。
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触れる必要はありません。
ただの飾りです。
袁術に続いて帝までもが亡くなった。
自分が習った歴史から、だんだん逸れて行く。
マリリンの中のヒイラギが笑う。
「ここは何なんだっはっはっはっ」
アンタは楽しいの。
「ワクワクしないか。
別の過去との遭遇。
スリルとサスペンスの予感。
それを楽しめないとは・・・。
全てが教科書通りでは詰まらないだろう。違うか」
大広間には様々な感情が生じていた。
戸惑いと驚き、怒り、恐れ、それらが複雑に入り混じり漂っていた。
韓秀が長男の質問に答えた。
「激しく抵抗した一人が斬り殺された。
今のところ、生きて捕らえられたのは五人。
うちの二人が手傷を負い、手当を受けている」
「すると取り調べで黒幕が判明する分けですな」胡璋が目を輝かせた。
家宰の康が胡璋の方に顔を向けた。
「残念なことに、そう簡単には行かぬ。
腐敗した輩が多いから、取り調べの過程でどう改竄されるか分かったものではない」
韓秀が割り込んだ。
「今回はそうではない。
袁紹殿や曹操殿が自分達で取り調べを行うと押し切った」
「本当で」康が声を呑む。
「あの二人、日頃は宦官の排斥を訴えているが、
それだけではなく官吏も信用していないらしい」
「あの二人らしいですな」
「袁紹家に寄食している客人の一人が取り調べに慣れているとかで、
今頃はその者が任に当たっている筈だ」
康が首を傾げた
「しかし、それだと私的な取り調べで、
たとえ真相を聞き出しても公的な処分に持ち込めない筈ですが」
「それはそうなんだが・・・、
あの二人、何もかも無視して私的制裁を強行するかも知れん」
女武者の朱郁が当然の疑問を口にした。
「帝を暗殺するほどの者達が簡単に口を割りますか」
韓秀が隣の劉芽衣に視線を向けた。
応じて劉芽衣が立ち上がり、入れ替わるように韓秀が椅子に腰を下ろした。
劉芽衣は朱郁をチラリと見、それから大広間の全員を見渡した。
「袁紹家の客人は薬師崩れでね、
薬草の調合次第で人を操れると吹聴している輩よ。
私も方術修行の一つとして薬草の調合は習ったわ。
人の病を治す為の調合をね。
人を操るなんてのは試した事はないけど、理屈としては可能なのよね。
薬が効けばだけど、取り調べに有効かも知れないわね。
でも絶対に安全だとは言い切れない。
何らかの後遺症が残るはずよ。
あるには服用させた量によっては死に至る。
薬師の腕次第というところね」
劉芽衣はみんなが納得したのを確認して、続けた。
「これまで劉家内部で問題が生じると、取り調べ内容が公表される事はなかったの。
たいていは政治的な手心が加えられ、伏せられた。
何皇后が帝の愛妾、王美人を毒殺した時でさえ罰せられなかった。
どうしても見過ごせぬ時は首謀者が密かに斬首され、病死とされた。
大事にせぬ力が働くのよ。
ところが今回は違う。
袁紹と曹操は取り調べで自供を得れば、それ全てを公表すると思うの。
内通していた者共が捕らえられ、暗殺の黒幕の元には捕縛する軍が送られる。
正しいだけに誰にも止められない。
下手すると劉家が割れる」
「黒幕は同じ劉姓の者ですか」朱郁が当然の疑問を口にした。
「それ以外は考えられないわ。
みんなもそう考えていると思う。
だから何進大将軍も董卓将軍も、劉姓の軍勢の入城を許さなかった。
みんなして劉姓の誰かが黒幕と信じているわ。
帝を暗殺し、その血筋を絶やして取って代わるつもりと。
正しいかも知れないけど・・・」
「その者を捕らえるのは間違いと聞こえますが」朱郁。
「そうよ。
帝位を奪取する分けだから、相手は周到に下準備をしていると思うの。
密かに同士も募っていることでしょうね。
思わぬ人物を仲間に引き入れているかも知れない。
そういう相手に無為無策で正面から当たるのは下策よ。
どこでどう火の手が上がり、どこまで延焼するか分からないでしょう。
政治を執り行う者は細小の手間で、最大の効果を上げるべきなのよ。
しかるべき手順を踏み、内々に首二つ、三つで済まし、
下々には何事も無かったかのように振る舞う。
そうやって体面を保ち、帝政を延命させる。
それに本格的な討伐戦にはお金がかかるわ。
その肝心のお金が朝廷には無いの。
ここは帝国全体の為にも是が非でも倹約して欲しいわね」
語り疲れか、劉芽衣はお茶で口を湿らせた。
劉姓の者は多いが、取って代わるだけの力量がある者は少ない。
筆頭は人望ある劉虞。
次は劉岱、劉繇の兄弟。
ある程度の領地家臣を抱えているのは劉焉と劉表。
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