金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

金色の涙(江戸の攻防)289

2010-12-01 21:06:47 | Weblog
 戦場に、
「上方より援軍到着。数は十万。先鋒は真田家の小松姫率いる一万」
と知らせる声が響き渡った。
前田慶次郎の指示で、狐狸達が手分けして触れ回っているのだ。
 効果覿面。
一揆勢を、「本当なのか、それとも奸計」と半信半疑に陥らせ、
その勢いを削いだ。
そうなると戦どころではない。
武器を持つ手が、足運びが、重苦しいものになった。
 逆に徳川方には勢いを与えた。
一進一退の攻防を続けていた大久保忠世、忠隣親子の部隊が、
無勢ながらも気勢を上げて一揆勢に果敢に挑んでゆく。
 小松姫の真田勢は先鋒の騎馬隊の勢いに任せ、
無鉄砲とも思える斬り込みをしていた。
真田勢の強さと、狐狸達の触れ回りが功を奏した。
動揺する敵勢を瞬く間に断ち割った。
 生憎、魔物部隊には効果がなかった。
操り人形でしかない彼等は動揺することなく冷静に戦っていた。
 それでも魔物部隊の防御陣を攻めていた徳川方には朗報であった。
騎馬隊を入れ替えながらの突入に追い風となった。
すでに孔雀と狐狸達、それに中山兼行隊が一画に穴を開けていたので、
さらに崩し広げる事は難しくはなかった。
まず榊原康政隊が切り崩した。
それに井伊直政隊、宇喜多秀家隊が続いた。

 白拍子は立ち塞がる魔物兵を斬り捨て、天魔のもとに辿り着いた。
丁度、赤狐哲也の狐火と緑狸ポン太の鎌鼬を受けたところであった。
「気の鎧兜」で防御した天魔が激しく渦巻く炎に包まれた。
天魔が炎の内側から幾度も雄叫びを上げた。
悲鳴とは違い、明らかに生存を主張するもので、威圧する響きがあった。
 天魔の警護役を務めていた信平が傍でウロウロしていた。
赤い目の影響があるにも関わらず、郎党の頭の責任感だけは残しているようで、
心配げな表情で燃え盛る炎を見ていた。
 やがて、みんなの見守るなかで炎が小さくなってゆく。
遠巻きしている敵味方に緊張感が走った。
 白拍子は天魔が生きていることを確信していた。
何故なら人肉の焼け焦げる臭いがしなかったからだ。
 実際、炎が消えてしまうと、そこには焼け焦げて煙る天魔がいた。
彼の全身を覆う「気の鎧兜」が燻っていたのだ。
直にそれがひび割れし、雪崩のように足下に崩れ落ちた。
 そこには本物の鎧を身に付けた天魔がいた。
刀を構え、狂気じみた目で辺りを見回すではないか。
白拍子に気付くや、グッと睨み付けた。
 白拍子より先に、隣で肩を並べていた豪姫が地を蹴った。
離れているにも関わらず、一気に跳んだ。間合いを物ともせぬ跳躍力。
一刀両断にすべく大きく振りかぶって真っ向唐竹割り。
 天魔は不敵な笑みを浮かべてガシッと受け止めた。
続けて素早い前蹴りを放つ。
 腹部を蹴り飛ばされる豪姫。体勢を崩し、後方へ倒された。
慌てて起き上がろうとするところを天魔は見逃さない。
体を寄せ、刃先を喉元に向けた。
 その瞬間、白拍子は目を大きく見開き、
知らず知らずのうちに絶叫を上げていた。
これまでとは違う質の声。
絶望の色に染められているのは、どこまでも深く沈みゆく心の現れか。
けっして甲高いわけではないが、それが高く遠く、どこまでも鳴り響いた。




ブログ村ランキング。
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

FC2ブログランキング。


今週は週初めから仕事が忙し過ぎました。
多忙で文章が練れない、練れない。
だから限界。寝ます。


コメントを投稿