見えない愛のすれちがい
みなさんに質問です。
自分が結婚しようとしている女性が、他の男性の子供を宿していることを承知で結婚する、これを理解できますか?男は、その子供を我が子として育てます。
その男は、いつも威張っています。必ずいうのです、家族の前で、
「この家でこうして暮らせるのは誰のおかげだ?」
すると、妻は微笑みながら、こう答えます。
「あなたのお陰よ」
女は夜の相手もしてきていたのです、ずっと。
「おい?いいか?」
しかし、ある時を境に、女はぷっつり切れてしまうのです。応じなくなります。
ドラマ『あなたには帰る家がある』は二組の夫婦の話です。
佐藤家と茄子田(なすだ)家です。
夫・佐藤英明(玉木宏)39歳
妻・佐藤真由美(中谷美紀)41歳
夫・茄子田太郎(ユースケ・サンタマリア)47歳
妻・茄子田綾子(木村多江)43歳。
前回の投稿では、佐藤家をみてみました。ま、こちらはよくあるケースです。
美男美女が惚れ合って、しかし、お互いをゲットする恋愛ゲームでしかお互いの関係がなく、冷めて、男は自分の営業の顧客の妻と不倫関係に落ちるのです。
その顧客の妻こそ、本日の主役の一人茄子田綾子(木村多江)です。
で、その夫の太郎ですが、本当にイヤな奴なんです(笑)。私の同業者(私は高校教員)で中学校の先生です。持てるちっぽけな権力をあらんかぎりに振り回すのです。(いるんですよ、そういう教員(笑)!)
そうです。綾子(木村多江)は住宅展示場で知り合った英明(玉木宏)と不倫関係になり、夫の太郎から去ります。
他方、英明(玉木宏)は、妻にバレたあと、ひたすら詫びます。しかし、妻は許さず、彼らは二度と元に戻ることはなくなるのです。それは、強い妻の意志です。
問題は、茄子田夫妻です。実は、彼らは最後に元の鞘に納まります。
「えっ?」とふつう思うかもしれないですね。「なんで?!」
僕はここに実は、夫婦というものをみたような気がしたのです。
夫は思っています。
こんな女が俺の手に入るわけがない。
これには、誰も賛成すると思います(笑)。
しかし、この嫌なヤツのところへ戻りたいと思います?
ところがです。ところが戻るのです。なぜ、戻るのか?なぜ、戻ったのか?
ここに夫婦の不思議があると僕は思ったのです。
愛は等価交換
僕は夫婦の理想を「心友=ソールメイト」!と表現します。これは僕の個人的な見解ですよ。
これに対し
「心友」ってどんな人?
ってきかれて、まあ
「心の形」が似ている人。それは、趣味が一緒なんてのとは違うのです。
と仮に答えたとして
「〈心の形〉って目に見えるの?」
実は、私はこの問いに答えられないのです。
ドラマ『あなたには帰る家がある』は二組の夫婦の話です。
佐藤家と茄子田家です。
ところで、不倫発覚で、夫婦の距離感ってどう変化するんでしょうね?
いずれにせよ距離ができますよね。実は、佐藤真由美(中谷美紀)は、そこで、決定的に思い知るのです。
夫は心友ではない。
ところが、茄子田家は微妙です。
実は物語が進むとわかるのですが、綾子(木村多江)は実の姉の夫の子供を身ごもったのです。実家を石もて追われるんですね。
夫の太郎は、その綾子を受け入れ子供も育てることにするのです。
実は、こんないい女が俺の手に入るわけがない、こんなことでもないかぎり、というのが多分あったんです。
恋愛ゲーム的には、弱みを握って、女性を手に入れたということになるんです。だから、終始、太郎は上から目線です。
しかし、心のどこかではこの女は俺には過ぎた女だ、と思っていたのです。
だからそれが綾子への配慮となっていたんです。
トランプ大統領的に言うとディールですね。
ところが、太郎は、こんないい女をありがとう、という感謝を忘れていくんです。頭に乗って!
その微妙なバランスが崩れ、綾子は不倫に走ったのです。
結果は、この不倫を通して、綾子のありがたさを確認し、この嫌みな男の太郎が頭を下げ、マウンティングが確認されるのです。
「あたしの方が上よ」
果たして上なのか?どうかはわかりませんよ。でも当事者はそういう手打ちをしたように見えるのです。
こういうシステムを人類学上、互酬性といいいます。よく高校生がいうんですよ。
「この前つきあってやったじゃん!今度はつきあってよ」
これです。こうした貸借対照表が私たちの夫婦関係にはないでしょうか。そこに謙虚であることがどうやら愛であり、心友の条件なんじゃないか。
何か味気ない気もしますが・・・愛は純粋じゃありませんよ(笑)。
でも、この計算も目に見えません!