《本記事のポイント》

  • 中国の巨大な住宅市場と債務残高
  • 不良債権ドミノの危機が迫る中小銀行
  • 中小銀行破たんで国有銀行に打撃

 

中国語ポータルサイトの『中国瞭望』に掲載された「中国で中小銀行の破綻は始まったばかりだ」(6月26日付)という記事が興味深い。

 

 

中国の巨大な住宅市場と債務残高

中国経済の惨状を知る上で、まずはその住宅市場の巨大さと、同国の債務の規模を確認する。

 

『中国住宅在庫報告書2021年』によると、2020年の中国の住宅市場価値は62.6兆米ドル(約8451兆円)となった。これは総資産額120兆米ドル(約1京6200兆円)の52.16%(約8450兆円)を占める。

 

一方、同年、米国における住宅市場価値は33.6兆米ドル(約4536兆円)で総資産額の37.78%(約1京2006兆円)。日本は10.8兆米ドル(約1458兆円)で総資産額(約4726兆円)の30.85%であるという。中国の住宅市場の巨大さが伺える。

 

債務はどうか。世界銀行が発表した数字によれば、2021年の世界の債務残高は303兆米ドル(約4京0905兆円)であった。そして中国の債務残高はその13.53%に当たる、336兆元(約50.1兆米ドル)に上るという。同年、中国のGDPは114.4兆元(約2288兆円)なので、負債はGDP比294%となる(図表1)。

 

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「ゴールドマン・サックス」報告書でも、2021年末現在、中国の負債総額(図表2)は50.1兆米ドル(約6763.5兆円)で、このうち、政府負債11.3兆米ドル(全体の22.55%)、国内住民総負債約30兆米ドル(全体の59.88%)、企業負債約8.8兆米ドル(全体の17.56%)だという。

 

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不良債権ドミノの危機が迫る中小銀行

中国では、国有銀行を除くほぼ9割が地場の中小銀行に属する。その中小銀行が今、非常に危うい状況にある。

 

中小銀行の融資は大きく分けて3つある。

 

第1に、地方銀行の融資プラットフォームへの融資である。しかし今、地方自治体は給料も払えないのに、銀行融資を返済するカネはない。

 

第2に、民間企業への融資である。これらの民間企業融資の60%以上は不動産市場に流れている。ところが住宅市場の低迷により、90%以上の不動産企業が存続の危機に直面している。

 

第3に、住民への個人融資だ。その80%は住宅融資と自動車融資である。近年、外国資本逃避の潮流、私営企業閉鎖の潮流、都市を封鎖する疫病の潮流、社会的失業の潮流、不動産価格の引き下げの潮流、従業員の給与引き下げの潮流により、個々の住民の返済能力も大きく低下し、住宅ローンや自動車ローンの打ち切りの潮流が次々とやってきた。

 

結局、中小銀行からの融資のほぼ80%がサブプライム・モーゲージ(低所得者向け住宅ローン)なのである。そして、不良債権化事態が発生すれば、すぐにドミノ現象が現れ、中小銀行全体が影響を受けることになるだろう。

 

 

中小銀行破たんで国有銀行に打撃

だが中小銀行が破綻すれば、一番損をするのは国有銀行である。銀行業界の内部サンプリング分析によれば、中国の中小銀行の資金源(図表3)は、国有銀行からの融資が約80%、投資家からの出資が約5%、住民からの預金が約15%となっている。

 

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中国経済はやはりぎりぎりの状況である。

 

 

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アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師

 

澁谷 司

 

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

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