不払い隠し 「支払い完了」
第一生命、上場後に6000件
提出の届出書に疑問浮上
保険金の不払い隠しが指摘されている第一生命(本社、東京都千代田区)が2010年の株式上場の際に提出した有価証券届出書の内容に疑問のあることが16日、本紙の調べでわかりました。生保業界関係者からの公益通報で40億円超とされる不払い隠しを指摘されながら、同社は届出書に「大半の支払いを完了した」と記載していたもの。こうした行為は契約者のみならず市場も裏切る重大問題です。(生命保険「不正」取材班)
第一生命は10年4月の株式会社化に先立って、同年2月、株式売り出しのための有価証券届出書を関東財務局に提出しています。
上場にあたって、05年に発覚した不払い問題は第一生命の重要なリスク情報です。
同社は届出書で、「大半の支払い漏れ案件に係る支払いを完了し、様々な改善策を実施」「(保険業の)免許取消しを生ずべき要因は発生しておりません」と記載。08年7月に金融庁からの業務改善命令によって、不払いが“決着ずみ”を強調しています。
ところが上場後の10年11月、同社は最大6000件にのぼる新たな不払いを発表しました。この不払いケースは、一つの病院で治療した分の保険金を契約者が第一生命に請求したものの、他の病院での治療分を請求し忘れた「別病院事案」と呼ばれるものなどです。
この「別病院」での不払いは09年3月に、生保業界関係者が金融庁に公益通報した内容の一部です。通報では約4万5000件、40億円超の不払い隠しを告発しています。
本紙が入手した08年7月22日付の同社の内部資料には、金融庁に未報告のままの不払いケース十数項目が列記されています。同資料は、列記するほとんどのケースで、不払い分に対応しない方針をとっています。
この問題をめぐっては、上場直前の10年3月19日と30日に、日本共産党の大門実紀史参院議員が公益通報の資料をもとに質問。金融庁に同社の再調査を求めたことがきっかけとなって、新たな不払いが判明しました。
そのことからも、第一生命がその他の不払いを隠している疑いが生じます。
生保業界関係者は「公益通報でも身をただせない第一生命に上場する資格がそもそもあるのか疑問だ。金融庁も厳正な調査をしておらず、“株式会社化ありき”でかばったとしか見えない」と指摘します。
第一生命は、本紙の取材に「請求案内対象を減らす、あるいは報告件数を小さく見せるといった意図は一切ございません」としています。
有価証券届出書 金融商品取引法で、投資家の判断材料となる財務状況や経営環境などのリスク情報を記載しています。虚偽の記載をした場合、10年以下の懲役と1000万円以下の罰金や課徴金が設けられています。
2011年5月17日(火)「しんぶん赤旗」
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