天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

見得を切る人切らぬ人

2017-12-09 13:39:44 | スポーツ・文芸


本日正午からテレビ朝日で「ドクターX大感謝祭」をやっている。
「超遠隔オペ2000万」「VSゆとり院内盗撮」「人工知能VS失敗しない野生の勘」の3本立て。ヒロインはむろん大門未知子(米倉涼子)である。再放送でまた商売できるとは、いかにこのヒロインが売れているかである。

このドラマの決め手は「私、失敗しないので」。
あり得ない手術技術であり虚構のさいたるものだが、治りたいという心理にうまくはたらきかけてこの決め台詞はますます輝いている。
超優秀外科医に「私、失敗しないので」と言わせることでドクターXは見得を切る演出を発展させた。
見得を切るのは歌舞伎をはじめとして、時代劇では盛んに行われている。
片膝をつき方肌を脱ぎ桜を見せる「遠山の金さん」、この紋所が目に入らぬかの「水戸黄門」と枚挙にいとまがないほど。
大向こうをうならせるという演出であり、わかっていてもうきうきする。パターン化することで美意識が深化する。

プロレスで見得を切る第一人者はかのアントニオ猪木であった。そこまでやらなくともというほど見得を多用した。ジャンボ鶴田も猪木流の見得を切ったが隙を突かれてよくブッチャーの地獄突きを食った。
格闘技で切る見得は隙を与えるのであり、そのへんを心得ていたのがジャイアント馬場であった。
晩年の馬場さんはスローモーと揶揄されたが戦況を読む達人でありそれは見得を切らない冷静さゆえであった。


見得を切ったアントニオ猪木と地味なジャイアント馬場



わがはいの近くでは藤田湘子はかなり見得を切ったと思う。
見得の最高傑作は、
うすらひは深山へかへる花の如 湘子
ではなかったか。かような幽玄の世界を言葉でものにするのは至難。ぼくらはこんな見得を切りたくてもできない。
これは陽性の見得の切りかたであるが、含羞の見得の切り方というのもあり、
湯豆腐や死後に褒められようと思う 湘子
ゆくゆくはわが名も消えて春の暮 湘子
冬晴やお蔭様にて無位無官 湘子

などは、斜に構えて見得を切っている。カウンターの味わいといっていいだろう。暗いところに旺盛な自意識と自負がたっぷりあって句をおもしろくしている。

湘子は自分を誇るのが巧みであったが他人をいたぶるのも上手であった。湘子が中央例会で、「同人でなきゃ採ってもいいんだけどな」は忘れられない名文句である。
自分が同人でないとき湘子選に入り同人が落選してこの言葉の餌食になったとき心中で喝采を上げたものである。

現在の鷹主宰は見得を切らない人であろう。
いつか軽舟さんに湘子の「同人でなきゃ採ってもいいんだけどな」みたいなアクのある言葉を使ってみたらと進言したら、少し笑っただけであった。
現鷹主宰は湘子やアントニオ猪木のような見得を切らず、ジャイアント馬場みたいに地味に行く。見得を切らないでしっかり見せるのも凄いのである。
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