天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

サラ・モーテンセンの魅力

2023-04-16 06:03:38 | アート



きのうAXNミステリーで 16時から21時まで『アストリッドとラファエル 文書係の事件録』をまとめて5本見た。AXNミステリーは一度放映したものを繰り返すことが多く助かっている。
物語の概要は、
パリ警視庁の警視ラファエルは、とある事件に関して犯罪資料局に資料請求したことで、局の文書係アストリッドと出会う。アストリッドは自閉症であり、対人関係に困難を抱えていたが、犯罪学の知識に基づいた推理に卓越した資質を見せたため、ラファエルは犯罪学者として捜査協力を依頼する。正反対の2人だったが、バディとして様々な事件の捜査にあたるうちに、徐々にお互いを理解し信頼し合い、無二の親友となっていく。
というもの。

ともかく刑事ものの中で発想が抜群にいい。自閉症を演じるサラ・モーテンセン(1979年12月10日生まれ 42歳)はこの役のために生まれてきたのではないかと思うほどすばらしい。北欧系の大きな目と細く長い指を駆使した繊細な演技は観客を別世界へ連れ去るごとし。女優を評価する言葉にかつて「魔性の女」というのがあったが、女としての魅力というのではないサラにこれはあてはまらない。映画の中でアストリッドは「自閉症の私は魔女と思われることがある」というがそんな感じがする。

作家や脚本家は女優を見てから物語を書いたのではないかと思うほど言葉や展開が優れている。たとえば、アストリッドは月曜日に決まった店で買い物をするがそこの店員テツオにデートを申し込まれる。そのときのアストリッドの返事は「買い物をする以外に何があるのですか」とそっけない。デート、恋といった認識が育ちにくい自閉症をきちんと描く。しかしデートに発展していくがベンチに座ってふたことみこと話して終わるそっけなさが実にリアル。
あるいは同僚が豆を10粒アストリッドの手に渡し、いま6粒を一方の手に移し4粒まで減っているよ、と教える。自閉症が耐えられるキャパシティを端的にわからせるための知恵である。
自閉症に対して周囲の細かい配慮、助けが盛り込まれていて勉強になる。自閉症のみならず人間一般への思いやりを随所に感じる。
アストリッドが通う「社会力向上クラブ」。メンバーはすべて俳優が演じているが、その中には実際に自閉症である者もいるという。また、第1シーズンの第7話で定型発達者を演じたユゴー・エリオットは自閉症当事者という。製作者の取材がこまやか。

きのうの何シーズンか知らぬが第8話では、ラファエルが容疑者に肩入れして窮地に立つ。ラファエルの相棒アストリッドも上からの査問を受ける。結果、捜査の公正が認められるがアストリッドが文書係以上に捜査に踏み込んでいたことがわかり、以後捜査からも文書係からも外されることになる。
そうなったらこのシリーズ終わるなあと思ったら、シーズン4の製作が決定しているという。ほっとした。

サラ・モーテンセン、フランスのテレビ映画にとどまる女優なのか。ともかくフランス映画の優秀性をこの作品が負っている。



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