天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

ひこばえ元気村句会7月26日

2020-06-30 04:10:14 | 俳句


長らく開催できなかった「ひこばえ句会」を来月再開します。西東京市の公民館がとれなかったので小平市の「小平元気村おがわ東」で開催します。
会場は昭和30年代の時間を感じる一部木造の旧校舎、窓から校庭が見え樹木が茂っています。広くて換気のいい教室は都会の喧騒をいっとき忘れるでしょう。

【日時】7月26日(日)13:00~17:00

【会場】小平元気村おがわ東
西武新宿線・萩山駅(南口)から320m







【出句数】1~8句(兼題2句を含む夏の句)
兼題1(文字題)= 雲で1句以上
兼題2(季 題)= 油虫、兜虫、蟬のどれかを使って1句以上
あらかじめ短冊に書いてきてください


【指導】天地わたる(鷹同人)

【参加料】1000円

ひこばえ句会の西東京の諸君と長い間会っていません。再会しましょう。なお、小人数が予想されます。興味のある方はどなたでもおいでください。
初参加の方は、youyouhiker@jcom.home.ne.jpへご一報を。新たな出会いも期待しています。


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「ひこばえネット」参加の方は、明日から7月10日までが投句期間です。兼題その1:頂で1句、兼題その2:祭関係の季語で1句。
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朝日俳壇(6月28日)を読む

2020-06-29 02:39:58 | 俳句


6月28日の朝日俳壇入選句40句。好感を持った句、疑問を感じた句について天地わたると木村弘子が合評する。天地が●、木村が○。

【長谷川櫂選】
肌ありて愛欲ありき天瓜粉
 馬渕兼一
●選者が「男女の愛欲は肌ゆえに。『やわ肌』という言葉もあった」と評するように、与謝野晶子を彷彿とさせる上五から中七への展開です。「ありき」だから過去の女との情事を回想していて作者の肌はもう張りがないかもしれない。寂しさと切なさがそこはかとなくあっていい。
○天瓜粉の季語がかなり昔を表していると思います。誰しもがある甘い思い出ですね。
●天瓜粉はほとんど赤子の汗かぶれ防止で使いますから大人に持ってくるととぼけた味が出ますね。

六月の初通勤となり自立 平野晶子
○新入社員の待ちに待った初出勤。「自立」という言葉が、やっと社会人になったという実感ですね。
●気持ちはわかる句です。難をいえば「初通勤となり自立」という言葉の運びの粗雑さ。若さがナマで出た感じで「六月や初通勤となり自立」のほうがまだいいかな。「自立」を抑えることも考えていいかと思います。「六月の初通勤や○○○」と違う展開も考えられます。

花石榴静かに固く開きけり 森住昌弘
●丁寧の描写である。「固く」といったのが意表をついていてはっとしました。花はやわらかいものという常識に切りこんで自分の句にしている。「花石榴」というより字余りでも「石榴の花」というほうがしっとりしますが。
○確かに「石榴の花」の方が落ち着きますね。「静かに固く」と詠んでいられるように石榴の花はなかなか咲かないと聞きました。

昼寝覚め夢のほとりを彷徨ひぬ 北村和枝
●昼寝覚めで正体のない状態を「夢のほとりを彷徨ひぬ」といったのだが近すぎる。夢を出すことが不可能と言い切れないが別の切り口を探すべきだろう。
○朦朧とした精神状態を言いたいのだと思いますが、「夢のほとり」は飾り過ぎですよね。

退職の夫のおとろへ更衣 浜野まさる
○仕事一筋だった男性が、リタイアして生き甲斐がまだ見つけられず、身なりもいい加減。「更衣」は精神面も含んで作者の願いがあるように思います。
●季語を作者の願いと読みましたか。あなたが疑っているようにこの男は更衣みたいな厄介なことしないように思うんです。したがってこの句の季語が疑問で、「退職の夫のおとろへ茄子を植う」みたいなほうが臨場感が出るのではと思いました。
○茄子を植えるのは哀感が出ていいですね。

【大串章選】
空拡げ野をひろげ飛ぶ夏燕 坂田美代子
○巣立ちした燕が飛べる喜びを「空拡げ野をひろげ」と、ひろげを繰り返して詠み強調して句に深みが出たと思います。
●おっしゃるように爽快な句です。春の燕より夏燕の印象です。

歌舞伎町真夏の夜の迷路かな 小関 新
●飲んでこの店あの店と梯子して歩く男は作者でしょうね。このままでもいいですが「短夜の迷路」のほうがもっとおもしろくなる可能性ありです。
○この句、歌舞伎町はコロナウイルスの危険区域と報道され常連の人々が、何処へ行こうかなあと、うろうろしている様子かと思ったのですが……。
●ああ、そういう読みも成り立ちますね。

百年に一度の日々や大昼寝 瀬古修治
○コロナウィルス騒ぎで自粛を余儀なくされ、自宅で思いっきりご自身の時間を過ごされた作者、「大昼寝」の表現がユウーモラスで楽しい。
●ぼくは「百年に一度の日々」がこの季語ではよくわかりません。たとえば「御来迎」なら一生に一度の富士登山、「白夜」なら念願の北欧の旅という連想が働きついていけるのですが昼寝ではね。それに「百年に一度」というのなら「日々」と複数であるのもあいまいにしています。一日に限定すべきではないかと。

蛍火のひとつは樺美智子かな 青野迦葉
●樺美智子は安保闘争のデモに参加して警察との接触で死亡( 1960年 6月15日)。享年22。東京大学に在学中のことでした。以後、彼女の死は反体制運動の象徴のように崇められ俳句、短歌によく取り上げられてきました。それはともかく、死者を弔うひとつの書き方であり決まっています。
○このニュースは大体の人が記憶にあると思います。彼女の勇気は尊敬しますが、残念な事件でしたね。「蛍火のひとつ」はとても美しく若い女性にふさわし表現ですね。

【高山れおな選】
らつきょ剝く猿にも劣る吾が居る 朝広三猫子
○猿って落花生など器用に剝いて食べますよね。しかし、なぜ「猿にも劣る」かがいまいちわかりません、このままでは。
●そうなんです。もう少し剝き方などを描いてほしいのです。「吾が居る」というフィニッシュはぬるいですし。

夏帽子田舎の銀座裏通り 菅山勇二
○あちこちに○○銀座という町がよくありますが、夏帽子の季語でいろいろな人達が田舎の銀座を歩いている様子が想像されて、面白いです。
●この句、大串章選にも入ってますね。お二人がよしとしたのですが「田舎の銀座裏通り」がもたついてませんか。
○たとえば東京に「戸越銀座」があってその裏通り。
●そこまで複雑でないほうがよく、「わが町の銀座通りや夏帽子」というほうがはるかに身近で親近感を持つんじゃないかなあ。詰めがいま一歩と思いました。あるいは「戸越銀座の○○」という切り口のほうがレベルの高い句になるかもしれません。

ここかしこ相合傘の梅雨に入る 佐藤 茂
○急に降って来た雨、相合傘の出番です。微笑ましくて羨ましい。カラフルな傘も梅雨ならではの風情ですね。
●甘い句が好きですねえ(笑)。「ここかしこ」といったゆとりはいいですね。

老漁夫の編物上手半夏雨 芹沢嘉克
●半夏生は二十四節気のひとつで7月2日ころのことをさし、半夏雨はこのころ降る雨のこと。漁網の繕いでは驚きはないが編物が巧いとはおもしろくこの男の人となりをいきいき伝えています。
○そうですか、漁網を繕っているのですね。日焼けした老漁夫の姿が目に浮かびます。
●いや、本業の漁網ではなくて毛糸の手芸ではないかと。そう読んでこそのおもしろさです。

時の日のぼんぼん時計鳴りにけり 森本史子
○あたりまえですよね 時の日でなくても時計は鳴りますから。
●「時の日」という季語をつけて作者はおもしろいと感じ選者もよしとしましたが、時の日の時計の句はそうとう書かれていて食傷しています。まあ、調子がいいということは取り柄ですが……。

磐梯山にどかつと座る汗の人 佐藤佳夫
●磐梯山と書いて「ばんだい」と読ませるのをそう歓迎しませんが許しましょう。こせこせせず「どかつと座る汗の人」という摑み方がおおらかでいい。
○一生懸命登って、やれやれ一休みですね。中七が気取らない大胆な山男を想像させスカッとします。

「父の日よ」と妻に言はれてそれつきり 奥村英忠
○父の日だから何? もう何十年も連れ添った夫婦の会話でしょうか。プレントを楽しんだあの頃が懐かしい。「それっきり」が巧な表現ですね。
●日本の妻は夫を「お父さん」と呼ぶようになることが多いですね。その延長で妻は「父の日よ」といったものの、そうはいってもお父さんじゃないわよ、という妻のそっけなさが出ました。
○夫は何のためにわざわざ父の日を告げたのか、という心境。何十年も一緒に生きた夫婦の一端を切り取って味がありますね。

【稲畑汀子選】
蝮棲む谷に沈みしゴルフ球 服部康人
○昔、ゴルフを楽しんだ頃を思い出します。何処へ飛んで行くかも分からないティショット。ボールは諦めて一打プラスですね。
●失った球と蝮の関わりはいいのですが中七がおおざっぱでもったいないと思います。谷では広すぎるので「蝮棲む草叢に消えゴルフ球」でどうかな。蝮がいるかいないかわからないので「ゴルフ球消えたり蝮居さうな草」とか、まだまだ推敲の余地があるでしょう。

薫風や卒寿に杖のまだ要らず 高田菲路
○個人的なことをいいますが、卒寿まで一人で歩いて何処でも行けること、これが84歳の私の願いです。薫風の季語が効いてひかれました。
●率直に自分の境遇を書いています。たしかに季語が効いています。

木洩日の影より生まれ黒揚羽 笹尾清一路
●ちらちら動く影が突然、黒揚羽になった。要するに緑陰の黒揚羽を描いたのだが技あり。嫌味でないレトリックが冴えました。
○黒揚羽は蝶の中でもちょっと不気味な印象を持っているのですが、木漏日と黒揚羽、嫌味のないレトリックと言われますが、私は、よくわかりません。黒揚羽が嫌いなので。

便箋の透かし模様の夏めける 大川隆夫
○私もたまに便りを書きますが、「透かし模様」で夏を感じる繊細な作者の感覚に共鳴しました。また、作者が男性なのに驚きです。
●そうですね、中七が夏を感じさせてくれます。男だって透かし模様は好きですよ。

鬱の字を書き間違へて梅雨に入る 上西左大信
●この字をすらすら書ける人は多くない。字の姿からして鬱である。梅雨の鬱陶しさをうまく引き出しました。
○作者は、鬱の字を使って、鬱陶しいと書こうとしたのでしょうか。さらりと素直に詠んでいいですね。

枯れもせで散りもせでただ水中花 青木千禾子
●これは水中花の説明であり書いても仕方ないこと。季語そのものを詠むのは相当の洞察力、胆力が詠み手に必要。
○私は「水中花我が家の水が合いにけり」なんて作ったことありますけど、この作者の句の方がハイレベルかと思いますが。
●まだその句のほうがとぼけたていてまだまし、季語の説明じゃないですから(笑)


撮影地:多摩川(讀賣新聞社前)
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どくだみ茶はいかが

2020-06-28 05:41:47 | 身辺雑記


俳人はどくだみは十薬と読んで俳句に詠む。どくだみと十薬、牛乳とミルク、呼び方を変えて印象の変わる事例はままある。煎じて飲むときはどくだみの方が親近感があるし効きそう。何に効くかはよく知らないが昔からよく飲んだ。
しかし話に聞くだけで飲んだことがないどくだみを乾燥して煎じてみた。あの強烈なにおいがどうなるか興味があったが、そう癖もなくごくごく飲める。どくだみはそこらじゅうにある。ただ刈って束ねて干すだけだからちょくちょくやるつもり。


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鷹7月号小川軽舟を読む

2020-06-27 12:17:33 | 俳句


小川軽舟が鷹7月号の「山気」という題で発表した12句を山野月読と読む。山野が○、天地が●。

新緑やこどもの頃のひかり号
○「ひかり」ではなく「ひかり号」とすることで、いかにも東海道新幹線開通当時の時代感を醸し出してます。
● 当時、最新鋭だった新幹線にいつの間にか時間が流れたのを感じえらく懐かしくなりました。「こどもの頃の」という措辞がそう感じさせるのでしょう。
○「かつてラララ科学の子たり青写真」を思い出しました。

謁見の甲比丹の襟白牡丹
●甲比丹(カピタン)は江戸時代、東インド会社が日本に置いた商館の長のこと。洋服の大きな襟が特徴だね。軽舟さん、踏絵の句を結構書いていますがこのころ時代物に愛着があるみたです。
○絵として見たことのある南蛮衣装が思い浮かびますね。「白牡丹」は音的には、衣装のボタン(釦)も連想させそうです。
●釦はさておき、白牡丹が新鮮に感じられます。

桐咲くや廃坑を負ふ町の駅
●「廃坑を負ふ町の駅」はよくこの町を描いています。駅から仰ぐように廃坑の跡が見える。落ちぶれた町の桐の花が美しい。
○炭鉱の栄華を知る者がまだ存命で住んでいる町であるがゆえに、その衰亡への変化を背負いこんでいる町。確かに桐が映えますね。

筍に古葉降りつつ夕明り
●「筍に古葉降りつつ」は実直というかまさにこの通り。古い葉の中筍が出てくる。「夕明り」は苦し紛れで付けた感じかな。
○竹林を通しての「夕明かり」。「夕明かり」の中で降る古葉の陰影をイメージしました。
●苦し紛れでではなくて作者の人のなりでしょうね。見過しやすい景にきちんと言葉をあてがいたいという基本姿勢が出ています。

漱ぐ水に山気やほととぎす
○「漱ぐ水に山気」はストレートな感覚・表現ですが、これに斡旋された「ほととぎす」がこうしたストレート感に膨らみを与えている、のかな?
● そうですね、ほととぎすで水はいっそう清新に感じられます。ごくごく飲みたい感じ。

空が地を払へば風や諸若葉
○「空」は「そら」「くう」どちらとも捉えられそうで、「地」との対比で言えば「そら」、句の意味から言えば「くう」がしっくりきそうです。
●君が「くう」と読みたい気持ちがわかります。空を人を超えた大きなもの、キリスト教徒やイスラムの人が思う絶対者みたいな意識でとらえています。大きなものを擬人化した不思議な上五中七です。「諸若葉」も滅多にお目にかからない表現です。
○ただの横風ではない、「諸若葉」の動きが見えますね。

あふれし湯流るるタイル河鹿鳴く
○「あふれし湯流るるタイル」は、事象のプロセスというよりも、それらが同時に起きているようで、豊かな感じ。「タイル」という身近で具体な素材がいいなあ。
● 川に面している温泉宿を感じました。清流に河鹿が鳴いている。それを聞きながら湯に入って湯をまさに湯水のごとくあふれさせた…豪勢です。

深き湯に身のたゆたふや青葉木莵
○句としては別ですが、河鹿、青葉木莵と、何とも羨ましくも賑やかな環境です。
● そう前の句の続きという感じ。軽舟さん、この夏、割とくつろぐ時間があったのかなあ。骨休めをしたのでしょう。
○人目を気にすることなく、風呂の窓も開けられていそうで、いい感じだな。

多佳子忌の臙脂ひとすぢ栞紐
○「栞紐」は句材としてポピュラーかと思いますが、それをここまで単純に表現する手があったかと驚きました。句集の好きな句のページでしょうか。
●句集の好きな句のページか、感情移入していますね。それを促す気配があるしなやかな句。実は作者は第一句集『近所』で「春昼や瑠璃あざやかに栞紐」と書いていてこの路線をもう一度やりましたね。この句の方が鋭く見えると思います。
○そういう句があるのですね。そちらは読み掛けの栞っぽいなあ。

梧桐や古き港の礼拝堂(シナゴーク)
○「古き港の礼拝堂(シナゴーク)」は異国っぽく、ヘブライな感じですが、「梧桐」はどちらかと言えばオリエンタルで、こうした乖離が違和感となるか豊かさとなるか。「礼拝堂(シナゴーグ)」外観の白や「古き港」の錆びたような色イメージに「梧桐」の濃い緑が鮮明。
● ヘブライとオリエンタルねえ、そう、だからぼくはこの季語は動くかもしれないと思います。こういう句は作者の嘱目を尊重してそっとしておこうと思います(笑)
○私は知らないのですが、国内にこうした所があるのか、知りたいな。

声遠し双眼鏡の瑠璃鳴けば
●不思議な感じがしました。100mほど先の瑠璃を見ていてそれが鳴いたとき声を遠く感じたという句意。当然といえば当然だが言われてみると瑠璃の声が逆によく聞こえる。
◯そうなんですよね。視覚的器具である「双眼鏡」が聴覚的にも機能しているような錯覚。
●俳句ってこういう不可思議な感覚の錯綜する世界をつくることができるのが魅力と再認識しました。
○今月の中では最も気に入りました。
●同感です。簡単に書いていてトリップする感覚がいいです。

湖の魚鼈(ぎょべつ)悦ぶ梅雨に入る
●「魚鼈」は、魚とすっぽん、水中に住む動物の総称。「魚悦ぶ」ではどうしようもなく「魚鼈」という固い音感で持った句だろうね。
◯「魚鼈(ぎょべつ)」とは初めて知る言葉です。この句は下五の前で切れるんですか?それとも上五・中七は「梅雨」の形容句ですかね?
●ぼくは切れずに梅雨を形容していると読みました。
○切れないとすると、水の中にいても、或いは水の中にいるからこそ、梅雨が好きという感覚は嫌いではないですけどね。作者は雨が嫌いなんだな、きっと(笑)
●いや作者は雨が嫌いじゃないと思う書きっぷりですが、この句あまり好きじゃないんです。作者は擬人化の名手で「道ばたは道をはげまし立葵」(呼鈴)、「古暦北極星も沈みたく」(手帖)、「寒晴や海におどろく町の川」「手がのびて土筆思はず目をつぶる」(朝晩)などたくさん書いています。いくら名手でも多く見過ぎてやや食傷気味なんです。


撮影地:多摩川(讀賣新聞社前あたり)
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KBJナポレオン句会

2020-06-26 05:41:08 | 俳句


きのう国分寺のカフェレストランKBJKITCHENで3ヶ月ぶりの句会を行った。参加者は天地わたる、藤田まさ子、木村弘子、大槻昌成、坪山治子。この5人になったときぼくはトランプのナポレオン遊びを思っていた。

このゲームは「ナポレオン」と「副官」からなるナポレオン軍と残りの人達からなる連合軍の2チームによる絵札の争奪戦。Aと10も絵札絵札とみなし全20の絵札を両チームが取り合う団体戦で5人が最適のゲームである。
誰かが「ダイヤを切り札で12枚」と宣言し候補者が一人だけだとその人がナポレオンになり副官を指名する。副官はオールマイティや正ジャックなどの強い札を持つ者がよく指名された。

5人のメンバーを見渡すと、ぼくと藤田のレベルとほかの3人の力の差は歴然としている。ぼくは藤田の句を取り、藤田はぼくの句を当然のように取り合うということが多かった。それは仕方ないことで、藤田は鷹の40年選手にして新葉賞の受賞者。ぼくは30年選手にしてやはり新葉賞の受賞者。これに対して木村の句歴はやっと3年、ほかの二人はもっと短い。

一人8句出しで5句選でやったのだがぼくと藤田の選句10句の中に初心者3人が何人入ってくるかをナポレオン遊びと結びつけたのであった。
ぼくと藤田のナポレオン軍6票、連合軍4票………引き分け
ナポレオン軍7票、連合軍3票………………………ナポレオン軍勝利
ナポレオン軍5票、連合軍5票………………………連合軍勝利
こう考えていた。ハンディキャップ付きのこの図式はスリリングではないか。
ぼくと藤田の選に3人が入ってきて欲しいという思いとそう簡単に選に入って来られてたまるかという思い、90歳を越えた藤田の調子はいいのか、そういう俺の句がいいのかという疑惑、などなど渦巻いて事前からかなり興奮した。

【天地わたる選】
人を待つ暗さに馴れて額の花 まさ子
実梅干す母が小声の軍歌かな まさ子
緋牡丹の濡れはげし朝訃報受く 弘子
病室のカーテン揺れる葉桜も 弘子
新しき眼鏡かけるや燕子花 昌成

【藤田まさ子選】
森深く十薬の海つづきをり わたる
暗がりに音かがやくや蕗に雨 わたる
富士覆ひ荒立つ雲や夏薊 わたる
蟬時雨荒砥に鎌のぎらつきぬ わたる
緋牡丹の濡れはげし朝訃報受く 弘子


結果、ナポレオン軍6票、連合軍4票にて引き分けであったが藤田がぼくの句を四つ取り、ぼくが藤田の句を2句しか取れなかったことは複雑な思いである。
連合軍では木村の健闘が光った。
「緋牡丹の濡れはげし朝訃報受く」は「緋牡丹の濡れたる朝や訃報受く」と落ち着かせたほうがいいがぼくと藤田の選に入ったのはみごと。
藤田の「人を待つ暗さに馴れて額の花」はぼくの特選。たぶん恋人を待つ情念であろう「暗さに馴れて」と言った濃密さに酔う。この句はぼくだけ採ったがもう一人は理解する人が出てきて欲しい。
この句会は新人を育てることが趣旨ゆえ連合軍諸君がもっとわれわれの選に入ってきて欲しい。それはわれわれの凋落でもあるが押しのけて来たまえ。
この記事を読んだ連合軍諸君、そして藤田がさらに発奮して緊張感あるバトルとなることを期待する。

次回は7月23日(木)
ナポレオンは5人が最適であるが当句会を5人で固める気はない。多くの方が来て楽しんで欲しい。



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