きのう国分寺のカフェレストランKBJKITCHENで3ヶ月ぶりの句会を行った。参加者は天地わたる、藤田まさ子、木村弘子、大槻昌成、坪山治子。この5人になったときぼくはトランプのナポレオン遊びを思っていた。
このゲームは「ナポレオン」と「副官」からなるナポレオン軍と残りの人達からなる連合軍の2チームによる絵札の争奪戦。Aと10も絵札絵札とみなし全20の絵札を両チームが取り合う団体戦で5人が最適のゲームである。
誰かが「ダイヤを切り札で12枚」と宣言し候補者が一人だけだとその人がナポレオンになり副官を指名する。副官はオールマイティや正ジャックなどの強い札を持つ者がよく指名された。
5人のメンバーを見渡すと、ぼくと藤田のレベルとほかの3人の力の差は歴然としている。ぼくは藤田の句を取り、藤田はぼくの句を当然のように取り合うということが多かった。それは仕方ないことで、藤田は鷹の40年選手にして新葉賞の受賞者。ぼくは30年選手にしてやはり新葉賞の受賞者。これに対して木村の句歴はやっと3年、ほかの二人はもっと短い。
一人8句出しで5句選でやったのだがぼくと藤田の選句10句の中に初心者3人が何人入ってくるかをナポレオン遊びと結びつけたのであった。
ぼくと藤田のナポレオン軍6票、連合軍4票………引き分け
ナポレオン軍7票、連合軍3票………………………ナポレオン軍勝利
ナポレオン軍5票、連合軍5票………………………連合軍勝利
こう考えていた。ハンディキャップ付きのこの図式はスリリングではないか。
ぼくと藤田の選に3人が入ってきて欲しいという思いとそう簡単に選に入って来られてたまるかという思い、90歳を越えた藤田の調子はいいのか、そういう俺の句がいいのかという疑惑、などなど渦巻いて事前からかなり興奮した。
【天地わたる選】
人を待つ暗さに馴れて額の花 まさ子
実梅干す母が小声の軍歌かな まさ子
緋牡丹の濡れはげし朝訃報受く 弘子
病室のカーテン揺れる葉桜も 弘子
新しき眼鏡かけるや燕子花 昌成
【藤田まさ子選】
森深く十薬の海つづきをり わたる
暗がりに音かがやくや蕗に雨 わたる
富士覆ひ荒立つ雲や夏薊 わたる
蟬時雨荒砥に鎌のぎらつきぬ わたる
緋牡丹の濡れはげし朝訃報受く 弘子
結果、ナポレオン軍6票、連合軍4票にて引き分けであったが藤田がぼくの句を四つ取り、ぼくが藤田の句を2句しか取れなかったことは複雑な思いである。
連合軍では木村の健闘が光った。
「緋牡丹の濡れはげし朝訃報受く」は「緋牡丹の濡れたる朝や訃報受く」と落ち着かせたほうがいいがぼくと藤田の選に入ったのはみごと。
藤田の「人を待つ暗さに馴れて額の花」はぼくの特選。たぶん恋人を待つ情念であろう「暗さに馴れて」と言った濃密さに酔う。この句はぼくだけ採ったがもう一人は理解する人が出てきて欲しい。
この句会は新人を育てることが趣旨ゆえ連合軍諸君がもっとわれわれの選に入ってきて欲しい。それはわれわれの凋落でもあるが押しのけて来たまえ。
この記事を読んだ連合軍諸君、そして藤田がさらに発奮して緊張感あるバトルとなることを期待する。
次回は7月23日(木)
ナポレオンは5人が最適であるが当句会を5人で固める気はない。多くの方が来て楽しんで欲しい。