2003年2月発行/新潮社
心の中まで手に取るように分かってしまう私なのに。
あなたを見つめるために生まれたはずの私なのに。
見つめれば見つめるほどあなたは逃げてゆく。
そしてこともあろうに、あなたは彼女と二人で、
こんな所にまでやって来てしまった....
四人の若い男女に続けざまに起こる異変。
それには思いもよらぬ「理由」があった。
恐怖と切なさが交錯する「泣ける」長編ホラー小説。
あなたを見つめるために生まれたはずの私なのに。
見つめれば見つめるほどあなたは逃げてゆく。
そしてこともあろうに、あなたは彼女と二人で、
こんな所にまでやって来てしまった....
四人の若い男女に続けざまに起こる異変。
それには思いもよらぬ「理由」があった。
恐怖と切なさが交錯する「泣ける」長編ホラー小説。
帯に上記のように語る内容。本書に他出する「あなた」と呼ぶのは誰か、何か。それがテーマであり見どころ。
四人の若い男女とは、二浪して厳しい受験を経て大学生になった「あなた」川島秀明、彼の予備校仲間の美作麻衣、秀明の最近の恋人カンナ、麻衣に好意を寄せる樋口。いわばこの4人は四角関係。
のぶさんが
帯にホラーとあったが自分には怖さは感じなかった。二浪の末にやっと大学生になった、女の子にだらしない川島秀明という主人公の物語が展開する。そして正体不明の「私」が作中に現れ「あなた」と呼びかける。真の主人公は「私」なのだ。前半部ではそんな秀明が女性をたぶらかし、二股掛けたり、それらの女性とトラブルになったりする描写が繰り返される。この辺りは読んでいてイライラしながら不快になった。そして後半は憑依の話が展開される。自分が狐憑きだとかこの手のものを全く信じていないので、読んでいて現実味がなく面白みにも欠けた。
とのコメントを寄せるなどほかの読者たちの評価が高くない作品だが、小生にはおもしろかった。
作者の言いたいことは、深層に封じ込めた恋心、である。本人が意識していない恋心。テーマがしかと見えて好感をもった。
恋の不条理、苦しさ、切なさ、哀れさなどを作者は古典的な狐憑きを用い戯画化して見せたと思う。最後に人間を離れて恋心だけを取り出して見せた技量に感嘆した。