天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

目薬にまなこめぐらす立葵

2015-09-30 07:28:46 | 俳句


「目薬にまなこめぐらす立葵」は鷹10月号に載った小生の句である。
これが載ると誰かが「目の病気をしたからできたのですね」と言ってくるだろうと思っていたら、やはりKがそういうことを言ってきた。
Kにこの句は網膜剥離を起こす一ヶ月前にできたというときょとんとした。Kは目の病気でできてほしかったようだ。
言葉は突然出てきて一気に五七五の形になってしまうことがある。
この句はある朝、空をぼーっと見ていたら、上五中七がすんなり出て季語も簡単につき「決まり!」であった。

実は句を書いてからひと月経って目薬生活を送ることになったことを驚いている。
そして井沢元彦が『逆説の日本史』のなかで繰り返し述べている日本人の言霊信仰のことを思った。
不吉なことを口にするとそういう事態が出来するから言ってはならぬ、というわが民族に巣食っている禁忌の意識である。
結婚式で「切れる」はいけない、受験生のいる家で「落ちる」はいけない、というやつである。
井沢は言霊信仰を払拭しないかぎり日本人に真の自由はないと断言する。たとえば、防衛力を持つと戦争が起こるから持ってはならぬ、というふうな発展をする言霊信仰を井沢は問題にし続ける。

ぼくは作家の背景を調べてから作品を読むのが嫌いである。
それはかの作家が貧乏だったからだとか、背が低かったからだとか、女と心中したからこういうトーンが小説に出ているのだ、といった原因結果的な読みになってしまうことに通じやすい。
そんなことばかり考えて作品に接していたら作品そのもののをまっとうに受け取れなくなるのではないか。井戸端会議やテレビのワイドショー的興味である。
作品と作家の背景は関係ないことはないだろうが、まずは作品を読めばいいのである。

句を書くことだって現実を昇華して別の空間へ行きたくて書いている。むろん自分に起こったことを骨子として書く場合が多いしそれが有力な武器ではあるがが、決して現実そのものをそのまま再現するのではない。
現実から材料を拾っているが因果関係は消そう消そうと足掻いている。
そうでないと句はすっと立って来ないと思っている。
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通草ぱつくり友達なんて嘘つぱち

2015-09-28 11:35:19 | 身辺雑記


本日の讀賣新聞の人生案内に投稿した埼玉K子さんの悩みに注目した。
「友人のSNS投稿に嫉妬」と題したK子さんの悩みは、友人たちの投稿しているおしゃれなレストランやブランド品やかわいい容貌の写真などみんなキラキラしていて、「自分はなんて地味なんだ」と落ち込んでしまう、といった内容である。

これに対して回答者、鷲田清一氏(哲学者)が「SNSとおさらばしてはどうですか」と提案している。なお鷲田がSNSを「たがいを映し合うような関係」と分析したのはみごとに本質を突いていると思った。
そんなものから一度離れて自分をみつめましょうね、ということである。

ぼくもSNSはmixiとFACEBOOKに加入はしているが、そこに集う方々とほとんど交流していない。
mixiには読者がいそうなのでブログをつないでいる。
ぼくはSNSの「いいね」にクリックとかいう表面的な交際がうざったい。FACEBOOKなんてほぼ個人写真の展覧会のようなもの。身辺雑記の写真版のようなものにてそうおもしろくない。
「ああ頑張ってますね」などと声をかけ合うのがそうおもしろいことなのか。
それより自分でこつこつ井戸を掘るようにブログを綴っているほうが性に合っている。
誰かが読んでくれているだろうなというそこはかとない気持ちが持てれば孤独でいいのである。

小学生唱歌に「一年生になったら」というとんでもない歌がある。まどみちおの書いたその歌詞は、
いちねんせいになったら
いちねんせいになったら
ともだちひゃくにんできるかな
ひゃくにんでたべたいな
ふじさんのうえでおにぎりを
ぱっくんぱっくんぱっくんと

全体の内容はいいのだが友達100人という具体的な数字に問題を感じる。
学校へ入ったらとにかく友達をたくさんつくろうということを教師も父母も当の子供たちも金科玉条のように思っている。
しかし冷静に考えてみてあり得ることだろうか。
トモダチは響きのいい言葉だが、ではその内実はなんなのか。
そんなにたやすく人は人と通じ合えるのだろうか。
友達なんていらない、煩わしい、ほっておいて、という内向性の人間をないがしろにしていないだろうか。
友人のSNS投稿に嫉妬して新聞に相談をもちかけたK子さんは友達なんてそんなに要らないタイプの人かもしれない。

今日わが家の通草が7個ぱっくりと開いた。
落ちると汚れて妻が嫌がるのでぜんぶ取って食べた。仕事帰りでほんのりとした甘味がいい。すると妻が「初なりをひとりで食べちゃったの!」と声を荒げるではないか。
妻は毎年通草を仰いでは、九州でいう「ぼぼ」を思うらしく「いやらしいから始末して」とぼくを駆り立てていた。
だから食ったのだが文句をいう。
妻でさえこんなものである。
よって友達なんてそう簡単にできるものじゃない。
K子さん、安心してSNSなんて辞めればいいよ。


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俳句講師スカウト来る

2015-09-27 11:04:56 | 俳句


きのう駅近くの喫茶店で「株式会社ユーアス代表取締役」という肩書の城山悠さん(31歳)と面談した。
彼の目的はぼくを立川のある老人ホームの俳句講師として推薦したいということであった。

9月23日のわがブログ「シルバーはシルバーウィーク無関心」にえらく長いコメントを書き込んでくれた人が城山さんであった。
その記事じたいに関心があったというよりブログの主がそうとう俳句をやっていて人を教えており、主に高齢者が相手である、ということが彼の関心に合致したのであった。

ホームページ(http://www.you-us.jp)で彼の会社を調べると、
創立:創業2013年5月 (法人設立2014年6月)
資本金:1,000,000円
主な取引先:株式会社木下の介護、ワタミの介護株式会社、株式会社ツクイ
社会福祉法人賛育会、その他介護サービス提供事業者
事業内容:
・高齢者施設でのレクリエーション・アクティビティの企画 / 専門講師の紹介
・施設職員向けのセミナー・ 研修
・レスパイトケアサービス(職員、家族のケア)
・広報支援業務(デザイン制作、広報代行)
・地域人材マッチングサービス(町田で学び隊)
対応可能エリア:東京、神奈川、埼玉、千葉(内房)などの南関東エリア
となっている。

彼がどうやってぼくのブログに行きついたか興味があるので聞くと、まずヤフーに「俳句 立川」を入れたようだ。
しかし彼の望むようには事が運ばず紆余曲折して講師のできそうな人材を探し回ったとのこと。
「俳人でブログを書いている人も少ないし教えている人も少ないですね」というのが彼の率直な感想のようだ。
そういえばぼくのブログを読んでああだこうだいう人は多いがブログを書いている人は多くないかもしれない。
さらに人に俳句を教えている人となると悠さんのいうように希少なのかもしれない。

もっと俳人は一般の社会へ出て行って市井の人の役に立つ活動をすべきではないか。
手始めとして句会で講評はきちんとする。支持できる点ばかりでなく問題ある箇所についての提案などきちんと意見を表明できることが大事だとつくづく思う。

齢60を過ぎて自分の俳句のみに拘泥しているのは情けない気がする。
もうそう上手にならないのだから自分の持っているものをすべてさらけだして人の俳句の上達のために役立ててみてもいいのではないか。
その方が自分の俳句にとっても新しい発展のきっかけになるのではないか。

悠さんは俳句のことはほとんど知らないと思ってひこばえ句会で使った清記用紙を見せて句会の方法などを説明した。
進取の気象に富んだ若き起業家は興味しんしんの表情で聴いていて、ひこばえ句会を訪問したいという。どうせ来るなら俳句を持ってきたら、とぼくは提案した。

その老人ホームの食堂でやろうとしている俳句の会に参加しそうな入居者は2、3人という。7、8人はいるかと思っていたので驚いた。
講師への謝礼がそう高額ではないとしても仲介業者にも支払わねばならぬ。それを2、3人のために行いたいというそこの責任者はどんな人物か、会ってみたい。
こんな手厚い福祉を考える老人ホームなら自分が入ることを視野に一度見てみたいという気になっている。
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『最果てのアーケード』に見る俳句マインド

2015-09-26 04:13:59 | 
小川洋子『最果てのアーケード』(講談社/2012)は、俳句を扱っているわけではないがきわめて俳句的な小説である。


本書の内容についてわかみさんは「読書メーター」で以下のような感想を述べている。
「ゆっくりゆっくり時が刻まれる最果てアーケード。わけありのお客さんや店主たちが登場するけれど、余計な雑音のないひっそりとした不思議な世界が広がり、そこには様々な記憶が詰め込まれている。アーケードの奥にある読書休憩室が好きで、近所にあったら入り浸るなぁ…と思う。ステンドグラス調の屋根からこぼれる日差しの色彩がとっても素敵に表現されていた。人の死が、非常に淡々と、そして胸に深く残る描かれ方をしている作品だと思う。」
なにも付け加えなくていいみごとな要約である。

本書は10の掌編の寄せ木細工のような構成であり、ぼくは特に「百科事典少女」に感銘を受けた。
私は「小公女」や「青い鳥」などフィクションが好きな少女だがRちゃんはそんな嘘がどうして好きかという。Rちゃんは百科事典を「あ」から「ん」に向けて読むことに熱中している。それもノートに一字一句違えないように筆写しつつ…。
この辺からしてすごい無常感があり、Rちゃんは道なかばで突然死んでしまうのは虚しさの極致。
するとその父がやってきて同じ作業をたんたんと続け、最後「ん」に至る。
国語辞書に「ん」から始まる言葉はないはずだが百科事典にはある、つまり物としてあるということに希望を託す。この感覚がきわめて俳句的であり、さらに小川がポプラ社の総合百科事典から以下のように引用して物に終始する姿勢が俳句の極みといえる。

「ンゴマ 南アフリカ共和国の北東部にあるトランスバールの民族楽器。この地方に住むベンダ族が用いる大型の楽器で、木でつくられたつぼの形の胴の上面に革がはられている。地面におき、1本のばちで革をたたいて音を出すが、ふつう奏者は女性である。合奏のときは、ミルンバといゆばれる高温用の太鼓とともに用いられる。」


長き夜の「ん」から始まる言葉かな
「ん」というのは不可思議な音感である。
『最果てのアーケード』に出てくる絵葉書、徽章、義眼、バネ、レース、端切、ドアノブ、ステンドグラス、人形…といった物たちがぼくに「俳句にしてちょうだい」といっているかのようである。
また新聞やテレビには取り上げられることのない地味な人たちがいきいきしていて俳句へインスピレーションをくれる。

郵便を仕分くる寮母小鳥来る
地味に自分の人生を全うしている人物が好ましく登場する。小川には言葉を発するに不自由で小鳥とコミュニケーションできるおじさんを書いた『ことり』という逸品もある。

本書を原作として有永イネが漫画という二次作品を創っているがそれは小川の書く物が漫画家の創作意欲を駆り立てたのだろう。
小川:最初から今回は人物よりも先に場所を描きたいというのがまずありました。なにかしらのモノを売る小さな店が寄り集まっていて、それを必要とする人が時々現れては買い物していく、決して繁盛しているわけではない小さなアーケード。
小川:なぜ私が輪郭を求めるかというと、結局は区切られた狭い場所にずんずん入り込むほど広い世界に行けるのではないのかってことなんです。
有永:小川さんの作品を初めて読んだ時、すごくモノに対して真摯で、モノと一体化できる作家さんなんだなと思い衝撃を受けたんです。


小川がいう「結局は区切られた狭い場所にずんずん入り込むほど広い世界に行けるのではないのか」がまさに俳句の論理である。
俳句は広い世界に行くためにドアを開ける。そのドアが季語なのである。
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ラグビー2匹目の泥鰌おらず

2015-09-24 12:51:24 | スポーツ

前半、モールを押し込んでの日本の唯一の得点

自分の生活スタイルを崩して昨夜、Wカップラグビーの対スコットランド戦を見た。
みどころのあったのは前半終了間際、五郎丸が相手14番の疾走をトライ寸前で弾き出したところまで。
あとは力で防御網がずたずたにされてトライを続々取られて完敗した。

敗因は讀賣新聞が「日本無念 ミス連発」と書いたことにつきる。
前半からスコットランドの防御は破れそうな気配がした。ぶち当たって一人、二人を抜くケースはしばしばあった。
この調子で展開すればトライはいくつか取れるだろうと予想したが、スコットランドは最後の5mで堅固であった。あと5mが遠かった。
中央部ではいくぶん抜かれても危険地帯では鉄壁な防御を誇った。
力の使い方を熟知していて最後で決め手を欠く日本のパス回しを読んでいくつかインターセプトして、一気にトライした。カウンターが効いた。
南アフリカ戦で完全燃焼してしまった感じでそれ以上を望むのは酷のような気がした。
いっそのこと負け試合をつくって体力を温存し次を取るという考えもあるのでは、という気がした。次を取るなどという余裕はないのだろうが、全試合に南ア戦のような力を出すのは困難。
南アフリカ戦がまぐれとは思わないが常にあの闘いができるまでにはなっていないということだろう。

それにしても南アフリカが2位でスコットランドが10位というランキングは変ではないか。
スコットランドの防御は南アフリカのそれより明らかに優れていた。
完敗しても一つの負け。奇襲でもなんでもいいからもう一つサモアに勝ってくらないかなと願うのみ。引き分けでもいい、そう思って闘うと負けるのであるが…。
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