
中山七里の小説『追憶の夜想曲』(ついおくのノクターン)についてである。
上の帯文で紹介しているように、本書の主要人物は、弁護士・御子柴礼司と検事・岬恭平。二人の一騎打ちといっていい。
剛腕ながらも依頼人に高級報酬を要求する悪辣弁護士・御子柴礼司は、夫殺しの容疑で懲役16年の判決を受けた主婦の弁護を突如、希望する。それを担当していた弁護士を半ば脅迫してその任に就く。
東京地方検察庁の次席である岬恭平はこれを知って驚きと不審の念と不安に包まれる。かつて有罪で起訴した案件を執行猶予に持ち込まれ完敗した不倶戴天の敵であるからだ。
岬は部下に任せておけなくて自分が法廷に立って闘うことを選ぶ。
岬の参戦により闘争は検事側有利に進むが中盤から御子柴の反撃が始まり、終盤でとんでもない展開になる。御子柴は自分の少年期過去、犯罪履歴を明らかにする戦術に打って出るのである。
ここで、「殺人者が弁護士になれるのか」という疑問が沸騰した。作者のことだからその法的可能性を調べたうえでの筋立てであろうが一般常識ではついていきにくい感覚である。
それを度外視すれば終盤の展開は読者を何度も裏切るスリルに満ちている。
しかし、「殺人者が弁護士になれるのか」といった思いがついてまわる。
◆以下ウィキペディア(Wikipedia)から・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『追憶の夜想曲』(ついおくのノクターン)は、中山七里の推理小説。『贖罪の奏鳴曲』の続編として、『メフィスト』(講談社)にて2012年vol.2から2013年vol.2まで[1]全4回連載され、講談社より2013年11月21日に単行本、2016年3月15日に講談社文庫が発売された。
今までも続編らしきものはあったが、著者の中山は今作こそがデビュー4年目にして「初めての続編」「正統な続編」であると位置づけている。小説家は1作1作にキャラクターの魅力もテーマも全てを投入しているため次を書いても味が薄まるという考えから、以前から”続編”を書くことには抵抗があった。『贖罪の奏鳴曲』に関しても書き終えた時点では続編の構想は無かったが、編集部から「是非続編を!」とリクエストされたことと、自分でも『贖罪の奏鳴曲』に関しては未完で、シリーズではなくきちんとその後を書かなければいけないという思いがあったため、執筆を決めた[。前作の最初のプロットでは御子柴は死んだことになっていたが、後味が悪かったため実際に刊行する際に生死はぼかしており、続編を決めた時に中山は「あぁ、殺さなくてよかった。」と安堵したという。
タイトルや作中に登場するショパンのノクターンはトラウマや思い出を想起させる意味合いで選ばれ、作中では被告人の亜希子と御子柴が共通して背負っている原罪が描かれている。また、家族や親子というのが本作の裏テーマであったため、御子柴の敵役には今まで描いてきたキャラクターの中で最も親子関係がうまくいっておらず、息子・岬洋介との関係に悩む岬恭平に白羽の矢が立てられた。また、内容がドロドロなため、ブラック・ジャックがモデルである御子柴礼司に対し、ピノコを出す感覚でアクセントとして純真無垢な女の子である津田倫子を登場させた。
ピノコとブラック・ジャックというのがわかりやすい。
ところで、弁護士・御子柴礼司ものはこれで終わりになるのだろうか。
ふつうの考えだと弁護士の過去が公に報道されてしまってもう無理かと思うのだが、世の中には悪いことをしてその後始末をしたい金持ちの輩がひしめく。
彼らにとって弁護士の過去などどうでもいい。自分の罪をすこしでも軽くしてくれるなら悪徳弁護士を必要とする。したがって続編がないとも言えない。
もし作者が続編を書くとなるといったいどんなプロットになるのかという興味はある。至難であると思うが。