写真:サンケイスポーツ
日本シリーズはきのうオリックスがヤクルトをくだして4勝2敗1分で優勝した。
ポイントは5回表の攻防にあった。
吉田正の押し出し死球で2点差とされ、なおも続いた2死満塁のピンチで杉本が打ち上げた打球にいったんは追い付いたが目測を誤り、まさかの後逸。走者一掃となり、5点差に突き放されたのだ。
テレビを見ていて塩見は捕球したものと確信した。なのにオリックスの走者がどんどんホームを駆け抜け、オリックスベンチもやんやの喝采……バカみたいと思った。実はボールが地面を転がっていたのである。プロの外野手が飛球のところへ行っていてそれを取れないなんて……思いもしなかった。このときフジテレビのアナウンサーも解説も何も言わなかったのではないか。だからテレビを見ていて事情がわからなかった。塩見の顔が映って元気がないのでやっと失策したのだとわかった。
野球のおもしろさは、球にグラブが触れていないと失策と判定されることが少ないこと。塩見のプレーもいったんは杉本の三塁打となったもののあまり守備がお粗末ゆえに「失策」に変更されたようだ。
この回グラブに球が触れない安打と記録されたミスはほかに二つ。
無死一塁からオリックス宮城のバントが、前進守備の村上三塁手と投手サイスニードの間を抜けて遊撃内野安打に。続く太田の三塁線へのバントも、村上が処理をサイスニードに任せてベースに戻ると、サイスニードが処理できずに無死満塁となった。
サイスニードはゴロをグラブに入れることができないが球は吉田正にぶつけている。満塁で打者にぶつけてどうする…考えられないアホであった。
ところで、塩見の大失策は記憶に残るであろうか。
失策で記憶にあるのが中日宇野選手の落球である。ウキィペディアで調べると「宇野ヘディング事件」として調べられるほどの有名な失策になってしまっている。1981年8月26日に後楽園球場で巨人山本のポップフライを取り損ね右側頭部に当ててしまった失策である。このとき中日は勝ったのでこのエラーそのもののマイナスはさほどでもなかった。ただしサッカーのように球が跳ねて派手な失策事件となってしまったのである。
塩見の失策は派手ではない。けれど被害としては甚大であった。野球に「たられば」はないが捕球していればまだ0-2であった。
グラブに球が触れないという失策はポイントがないので忘れられるかもしれない。「塩見スルー事件」は「宇野ヘディング事件」より言葉としてのインパクトが少ない。けれど失策としては考えられないほど大きなものであった。