結をみなくていい日曜日、多摩川へ行くことにした。府中四谷橋の樹林帯がまだ存在するのか見たかった。そこに森があれば胡桃がまだ採れる。
そこへ行く道すがら、ある団地になつめの木があることを思い出し、立ち寄った。
なつめはいっぱい実っていた。さて、採ろうと近寄ると蚊がわんわん寄ってきて餌食になってしまった。半袖がいけなかった。はたく暇もなく刺された。腕だけでなく耳や頭までやられた。73年生きてきてこんな蚊の大群と遭遇したのは初めて。
8月は蚊にとってもたぶん暑すぎた。9月終盤になって気温が下がった今が我が世の春なのだろう。それにしても何故なつめの木に跋扈するのか。彼らはヒトや動物の血を吸う以外、何を栄養源としいているのか。いま思えばすぐ合羽を着るべきであった。
暗渠から出る水。向こうの森が「帝国」。その向こうに府中四谷橋がある。
府中四谷橋に来ると森があった。ここから下流の府中の森博物館に至る河川敷で森があるのはここと少し下流の一ヵ所だけ。そこもすぐそばまで伐られてかろうじて残っている。いま府中四谷橋の森は最後の砦である。
小生が「帝国」と呼ぶテリトリーは蔓草の天国。樹木のあるところへ入っていきにくい。去年より蔓草の勢いがよく入りにくい。しかたなく「嘴」と呼ぶテリトリーへ入る。ここは樹林へ入る道筋がはっきりしている。それは多くの人が近づきやすいことを意味するがそう大勢がここへ来ないので小生が胡桃をゲットできるのである。
木にある青い胡桃を捥ぐ。ひと房で両手いっぱいになるものもある。
随所に曼殊沙華があって目を楽しませてくれる。
胡桃に関する記事は当ブログで何度もアップしているがこれを見てここへ来たいと思う人はまずいない。多摩川の土手で眺めただけで途方に暮れるだろう。多摩川の胡桃拾いは旺盛な意欲が支える。藪へ入ることを厭わぬ克己心が要る。葉っぱや虫や雑草の花粉に触れて痒いしかぶれる。不快の要素がいっぱいなのだ。だからふつうの人は庭園へ行って清らかな水のたたずまいや綺麗な石を眺めて茶を喫する。
野生果実ハンターは獰猛に藪へ入りこむ人種である。
9月下旬に落ちる胡桃は少ない。まだ木についている。手の届くところにある胡桃を捥ぐ。ひと房8個ほど。1本の木で80個ほど採れると嬉しい。
リュックがいっぱいになって400個。ストラップが切れそう。それを自転車の後ろへ積み。前へ袋に採った215個を摘む。合計615個。以前1000個積んだことがあったが自転車がふらついて危険。以後。この程度で切り上げる。
加齢で体力、反射神経が衰えているので無理はできない。身の程をわきまえなくてはいけない。
森の入口。ここへ行く道があるわけではない。いちばん入りやすいところ。
向こうに森が見えるが胡桃はない。水際近くに胡桃がなく岸辺に胡桃があったのが不思議。その向こうの多摩川右岸、稲城市には立派な丘陵(森)があるが胡桃がない。
南武線と関戸橋の間の約2キロ。樹木はなぎ倒され、草は刈られた。のっぺらぼうの砂礫地になった。
このコンクリートの物体のあったところがかつては森であった。この物体が並んでここにあって何の作用が生じるか、誰かに聞きたい。不可思議な光景である。
蜂蜜と黒砂糖で煮たなつめ。胡桃と違いすぐ食べられるのがいい。
多摩川の森を出て別の人目に付かないところで腐ってもらう胡桃。
これからが時間がかかる胡桃である。