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森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

手放すなかれ

2008-04-19 02:55:42 | イギリス旅行記

 「トラウマタクシー」と言う記事の中でも書きましたが、ずっと大昔に行った香港旅行で覚えている事といったら、ろくでもないことばかり。

ろくでもないことばかりあったというわけではないのですが、そういうことって、忘れないものなんですよね。

 

 ちょっと、前振りでそのときのお話。
香港観光でのガイドさんは現地の人で、手馴れた感じの中国人でした。彼が
「これから難民アパートに行きます。」とガイド計画を言った時に、私たちは吃驚して顔を見合わせてしまいました。

 

 難民と言う事について、何か真面目に書くとまたややこしくなってしまうので、深い話はここではなしですが、とにかく驚きました。ちゃらちゃら遊びに来たつもりだったのに、いったいどうしてそこに行くというのだろうと誰もが思いました。

 

 勇気ある男の人が、行きたくないとはっきり伝えました。

するとガイドの人が
「別に皆さんがそう思うならいいんですよ。」
この後、彼はこう続けたのです。

「でもね、自分の国では見る事が出来ないものを見るということが観光なんじゃないですか。日本では見る事が出来ないでしょ。」

 

 確かに難民キャンプや難民アパートは日本では見ることは出来ないかも知れません。でも、その時私は既に日本では見ることは出来ないものを、見ているような気持ちになってしまいました。目の前の男の中に・・・・

 

 ただ、その時のガイドの人の言葉は、少し形を変えて私の中に残りました。

「自分の国で見ることが出来ないものを、しっかりと見るということは大切。」

 

 さて、ここからがイギリス旅行記―。

 

 私たちは行きも帰りも香港経由で行きました。綺麗になった香港空港と、香港ドルがなくても千円札で買い物が出来る便利さと、日本語で一生懸命はなしかけてくれる可愛い店員さんなど、つかの間の休憩時間を楽しんだのでした。

 旅行が決まった時に、直行便でないことが気になりましたが、私はこういうことには前向きで、二カ国の観光が出来るようなものよと友人と話し合っていました。そこまでは、思ったとおりの展開でした。

 

 そして、香港からイギリスまで、飛行機も変わって長い長いフライトの旅が始まりました。本当に行きは拷問のようでした。

 

 そして降りる時が来ました。狭い通路を抜けてタラップに向かう時、
その時私は思わず声に出して言ってしまいました。

「なんじゃー、これは・・!!!!」

 

 私がそこで見たものは・・・・・

 

そういえば、「呪怨」と言う映画を知っていますか。突然話が変わってしまったように思えますが、そうではありません。映像的にかなり怖い映画でしたが、私にはあの映画でとっても印象的な場面は、メチャクチャに散らかった部屋でした。

ヒロインが家庭訪問に訪れた家は、大掃除の途中のような、または引越しの片付けの最中のような、散らかりようでした。

 

 飛行機の後部座席に座っていた私が、前の方に歩いて行って見たものは、まるでその「呪怨」に出てくる部屋のように散らかったシートと床でした。

読んだ新聞や雑誌は、わざとやっているのかと思うくらい広げたままで座席においてあるし、床にも散乱しています。食べたお菓子のゴミもそのまま投げてある。ペットボトルも転がっている。その飛行機会社は機内用にソックスを配ってくれたのですが、脱いだソックスがバラバラに座席の上・・・気持ち悪い~。毛布も団子みたいに丸まっているし・・・
しかもそれがシートの上だったり、下だったり。

 

 それが、機内中なんです。凄いです。

その時私は、香港でのガイドの言葉を思い出したのです。

「自分の国で見ることが出来ないものを見る。それが観光だ。」

 

 そんな光景は、日本ではあり得ない事です。―
と、ここまで書いて、ふと手が止まりました。あのお花見で有名なあの場所の宴の後はどうなんだろう。河川敷でのバーベーキュー後はどうなんだろう・・・・

でも、その時はそういうことまでは想い描く事は出来ないで、そういう場所での日本人としての美意識と言うものに、はっきり言って優越感のようなものを感じました。

同じ頃、日本の航空会社の飛行機を利用した人が言うには、大半が日本人の乗客だったその飛行機の機内は、飛行時間はほぼ同じだったというのに、綺麗だったと言っていました。

 

 ですが、
日本に帰ってきた直後、中学生の模擬テストの国語の問題を読んでいましたら、学校で掃除をしなくなってしまった子供達の事が書かれていて、引っ掛かるものがありました。

またある時、やはり中学生から聞いた話ですが、ある先生は教室に転がっているゴミを、まず捨てさせてから授業をするのだそうです。と言う事は、普通にゴミが床に転がっているという事ですよね。

 

 そんな話を聞くと、私はあの「呪怨」の家ような機内を思い出して不安な気持ちになってしまうのです。

なぜなら、自分の周りの小さな世界しか知らなければ、それが常識と思うことでも、実は違っていた。そう書くと普通は、プラスであると思っていたことが実はマイナスであったという時に使うのかもしれませんが、これは逆の事だと思います。

あの時感じた驚きは、「日本人の細やかな感性」と言う決して手放してはならない、日本人の財産なのではないかと思うからです。

 

 昨日電車に乗りましたら、車掌さんの案内が流れてきました。言葉はもちろん丁寧ですが、内容は

「読んだ新聞は、雑に畳んで網棚の上に放置しないで、降りた駅のゴミ箱にちゃんと入れろよ。」というものでした。

日本人の無形の財産を決して手放してはならないと、少しだけ世界を見て、そう感じるようになった私なのでした。

 

 

 

 

コメント (4)
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