花が咲いて、鳥が鳴いて、暖かな風が吹いている。 春が来たのです。四月になったのです。
私たち人間の世界は不安や恐怖や悲惨なことが充ちていても、神の御手に造られた自然は如何にほがらかでありますことよ。
花の色はあくまでも美しく、鳥の歌はなんとのどかでしょう。まことや、春は慈愛ふかき母のふところのようであります。
なやめる人よ、悲しめる人よ、春のふところに行け。春のよろこびに浸りなさい。 われらの神は、牝鳥がその翼の下に雛を覆うが如くに、私たちを春の幕に包んで下さるのです。
野辺地天馬著「晩秋の感謝」より