観るも八卦のバトルロイヤル

映画・ドラマを独断と偏見(?)で、
斬って斬って斬りまくる。
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「蟹工船」。読者の想像力を覆す終末はやはりプロレタリア文学だった

2010年05月01日 | 映画・ドラマ
 学校で習うからタイトルと作者名は知らない人は居ない(今の子は知らないでしょうね。常識ないから)、小林多喜二著のプロレタリア文学の代表作「蟹工船」。実は自分も知っていたのは、蟹漁の話しってだけだった。
 この度、映画化されたので、まどろっこしい旧文体の原作本よりもずっと分かりやすく知る事が出来たが、題材は暗いが(小林多喜二だもの)、人間の自立の芽生えや、思考はこうして変わるとか理不尽な現実とか、これ凄いよ、観察・洞察力(小林多喜二だもの)。
 前半は無治安労働者が輪廻天性で生まれ変わることが幸せと信じて今をカエヨウとしないところから、徐々に、自分たちの境遇のおかしさに気付く。そして、リーダーが労働組合を組織し、立ち向かう。ここまでの労働者の自立の描き方が、現代にも生きているようで、ホットしていたところ、大逆転。いかにも大二本帝国らしく、リーダーは抹消される衝撃のシーン。
 普通なら、労働者が立ち上がってめでたしめでたしだが、小林多喜二はそれを許さなかった。非現実的に終わらせない。権力に統治されさらに行(生)き場を失った労働者が、以前と同じ境遇に落ちた中、それでも学んだ事は無駄ではない。無駄に命を落とした者はいないという強いメッセージが最後の最後に現れる。小林多喜二が言いたかった事が、最後1分。
 出演は、松田龍平、西島秀俊、高良健吾、新井浩文、柄本時生、三浦誠己、竹財輝之助、大杉漣、森本レオ、TKO木下ら。松田龍平と西島秀俊の好演が光るが、松田龍平を途中まで松山ケンイチだと思ってた。画面が暗いので。すみません。

「南極料理人」。これ観たかったー。

2010年05月01日 | 映画・ドラマ
 昨年番宣観て2番目に観たかった作品。因に1番目は「クヒオ大佐」。図らずも堺雅人主演の映画。
 だってこの人のコメディで外れる訳がない。 話しは、南極大陸のドームふじ観測拠点(標高3810メートル)で越冬する隊員8名分の食事を用意するのが任務の観測隊員西村淳(堺雅人)が、娯楽らくらしい娯楽も無い閉ざされた場での唯一の楽しみである、食。彼らを飽きさせない為のメニューに奮闘する。といったもの。それだけの題材で約2時間持たせるには、登場人物が魅力的でなくてはならない。
 「南極料理人」もキャストを見ただけで生瀬勝久、きたろう、高良健吾、豊原功補、西田尚美、古舘寛治、黒田大輔、小浜正寛。場面はほとんどが南極基地内。これといった事件性も無く、淡々と進む話しではやはり演技力が物を言う。その点で、面白くない訳がない。
 だが、その中でも、隊員の苦悩や家族問題、人間問題などを織り交ぜたリアリティある内容。多分こうなるとは予想はしていても、精神力がかなり試される試練でもある。南極でもこうなら、宇宙飛行士の精神力や計るすべがないだろう。
 閉鎖された場に、そもそも愛する人や友人と閉じ込められても、限界はある。それが全く見ず知らずの考え方も正確も違っている人と1年間は辛い。強靭な精神力、責任感、協調性どれが欠けてもいけない。私にはまず無理。協調性ないもの。それと、人嫌い。
 最初にメニューに奮闘する。それだけの題材と書いたが、動きはメニュー考案だが、そこに至る人間模様や、意識を織り込んだ深い話し。しかもそれを深刻にせず、センスある流れで明るく展開させている。
 かなりいい。観たかいあり。生意気だが、娯楽映画ってこうありたいな。