坂本龍馬を武田鉄矢が演じた、なんちゃって時代劇。何でもこの作品が評価され、「幕末青春グラフィティ」シリーズやら、「幕末青春グラフィティ 坂本竜馬」の映画版も出来たらしい。タイトルのグラフィティ は、劇中の音楽で表現され、ノスタルジックな画像に、音楽がよく利いている場面が多用されている。
そんな音楽主流のドラマらしく、有名ミュージシャンが重要な役に起用されており、そりゃあ演技は甘いよ。だから、監督大変だっただろうなって話し。だって、厳しく演技つけられないでしょ!
坂本竜馬の武田鉄矢は、さすが龍馬ファンを自称しているだけあって土佐弁は完璧。龍馬を知った演技だけど、金八先生が被る。
ほかに、海援隊のメンバー(中牟田俊男、千葉和臣)がちょい役で顔を出し、高杉晋作(吉田拓郎)、桂小五郎(小室等)、伊藤俊輔(井上陽水)、新宮馬之助(もんたよしのり)、佐々木只三郎 (沢田研二)。30年前くらいに制作されたであろうこのドラマ。まさに、ニューミュージックの全盛期だ。彼らに、演技つけられないよね。
ほかにもお笑いからビートたけしや島田紳介なんかも出ている。
この幕末の主要人物をミュージシャンが演じている傍ら、NHKの大河ドラマのラインナップ並みの本格派の俳優陣が顔を揃えているのも見逃せない。
演劇サークルとプロの劇団のジョイントみたいな感じで、サークル同士のシーンはちと苦しいが、サークルとプロの場面は、プロがそれなりにカバーして見せている。
蟹江敬三、 柴俊夫、風間杜夫、原田大二郎、矢崎滋、平泉征、陣内孝則、阿藤海、石坂浩二らそうそうたるメンバー。清潔感あふれる売り出し中だった風間杜夫と、同じく売り出し中の陣内孝則の好演が光り、ほかのドラマでは知的で冷静とされる武市半平太を柴俊夫が人間臭く演じている。
また、若かりし石坂浩二の勝海舟も、スマートでいい。勝海舟を演じる役者はべらんめい口調の江戸弁でやり過ごしているが、石坂は、勝海舟独特の口調は控えめながら、「勝せんせいだねぇ」と思わせる演技力。
そして女優陣は、なぜか龍馬を語る上で欠かせない姉の乙女さんが出てこないが、龍馬の脱藩の責任を負って自害した姉のお栄(真野響子)始め、 佳那晃子、 美保純、 多岐川裕美と名前を感じさせないくらい役になり切っている。
お龍には夏目雅子。やっぱ、奇麗だね。こちらも男勝りのきつい顔付きの女優さんが抜擢される中、可愛いお龍。
これだけのキャストで話題にならない分けは無いのだが、それよりも作り方さね。短時間で幕末の様を表現するには、音楽の中でのジーンカットが多用され、ストーリーよりも音楽の重要性を表している。そうだよね、当時のメジャーなミュージシャンがこれだけ顔を揃えてるんだもの。
武田鉄矢を龍馬になぞるのは苦しいが、鉄矢論の龍馬は出し切ったのではないだろうか?
感想は、面白かった。「幕末青春グラフィティ」並びに龍馬の映画版(武田鉄矢が龍馬でほかの配役が変わる)が手に入るならば是非観てみたい。