知立神社-(2) (知立)

【愛知・知立市】戦国時代の天文十六年（１５４７）、松本城主を務めた戸田氏の祖先・戸田宣光の兵火で社殿を焼失、社地を重原村に遷座した。　その後再度焼失したため、元亀二年（１５７１）に現在地に遷座し、水野信光から社殿修造と社領１０石が寄進された。
江戸時代に入り、寛文年間（１６６１～１６７２）、三河吉田藩主・三河刈谷藩主を務めた松平忠房から社領として１０石が追加寄進された。江戸時代には「池鯉鮒大明神」として知られ、東海道三大社の一つに数えられた。　多宝塔の創建は平安時代嘉祥三年（８５０）の神宮寺（別当寺）建立時で、現在の塔は室町時代永正六年（１５０９）の再建。
明治維新（１８６８）の神仏判然令に伴う廃仏毀釈の嵐では、安置していた愛染明王を総持寺に移し、相輪を取り除き、屋根を瓦に葺き替え、神社の文庫「知立文庫」に改めたことで取り壊しの難を逃れた。

拝殿前の左右に一対の狛犬が鎮座....左側の吽形像は角があるので狛犬、右側の阿形像は獅子だ。　花嫁姿の角隠しの「角」の由来とされる角がある狛犬は久々に見る。　陽を燦燦と浴びている檜皮葺の拝殿は、一見古そうな建物だが昭和二十九年の再建で新しい。　社殿は拝殿、祭文殿・回廊、幣殿、本殿を縦長に繋げた「尾張造」と呼ばれる配置だが、拝殿の後方は塀でがっちり囲まれていて、特に、江戸時代後期に造営された流造檜皮葺の本殿は全く見えない。　まるで拝観を拒んでいるかのような造りの社殿だ。
社殿に向かって右側に、摂社親母神社や末社の合祀殿、小山天神社が南面で鎮座している。　摂社・末社前の境内には神馬舎が建ち、硝子入り格子窓から、鋭い眼光の白い神馬がじっと参詣者をみつめている。

△江戸時代後期から昭和期にかけて造営された社殿の配置は「尾張造」と呼ばれ、本殿・幣殿・祭文殿・回廊・拝殿を縦長に接続している

△正面に建つ切妻造檜皮葺で妻入りの拝殿....昭和二十九年（１９５４）の再建で、前面は間口一間で切妻造檜皮葺きの向拝

△拝殿前に鎮座する狛と獅子....明治三十九年（１９０６）の造立で、左の吽形は角があるので狛犬で雌、右の阿形は獅子で雄とされる

△拝殿は桁行六間・梁間三間で、前二間は土間、奥は板敷になっている....拝殿の後方に連なる祭文殿・回廊は明治時代、幣殿は大正時代の建立、そして本殿は江戸時代後期の建立

△頭頂に角がある吽形の狛犬越しに眺めた拝殿....身舎及び向拝の大棟に鳥衾が乗る鬼板、拝は猪目懸魚、向拝の妻飾は豕扠首

△拝殿を通して眺めた祭文殿の正面に、金色の御幣が置かれている

△軒廻りは二軒繁(疎？)垂木、組物は舟肘木....側面六間の五間に腰高格子戸と格子窓が並ぶ

△拝殿後方の社殿は透塀で囲まれている....塀越しに見えるのは祭文殿と回廊で、その奥に流造檜皮葺の本殿が鎮座するが屋根さえも見えない....本殿は江戸時代天保二年（１８３１）の造営

△拝殿後方に建つ切妻造檜皮葺の祭文殿と檜皮葺の回廊....祭文殿は四脚門形式で明治二十年（１８８７）の造営

△拝殿の右手に並んで鎮座する左から親母神社、合祀殿そして小山天神社

△流造檜皮葺の親母神社（摂社）....明治年代の建立で、祭神は豊玉比売命

△正面は格子戸と両側に小脇羽目、側面は横羽目板....妻飾は虹梁大瓶束

△親母神社の社頭に佇む切妻造り風の笠が特徴的な石燈籠／天正十二年（１５８４）造立の石燈籠

△流造銅板葺の合祀殿（末社）....明治六年（１９７３）の建立で、境内地や町内各所に鎮座していた１０社（神明社、白山媛社、津島社、西山神社、東山神社、稲荷社、市杵島社、祓戸社、弁天社、荒神社）が境内に集められた

△合祀殿前の石燈籠は昭和元年（１９２６）の造立

△殿前の石燈籠は昭和元年（１９２６）の造立／妻飾は虹梁大瓶束。柱上に舟肘木を乗せている

△流造銅板葺の小山天神社（末社）....昭和十年（１９３５）の再建（江戸初期に廃社となった）で、祭神は医薬の神様の少彦名命....石灯籠は昭和十年（１９３５）の造立
　
△正面は全前が格子戸、側面は羽目板、正面のみに切目縁、浜床を設けている

△南面で鎮座する摂社・末社前の境内に建つ神馬舎

△切妻造瓦葺の神馬舎

△神馬舎に奉納された神が乗る神聖な白い神馬....鋭い眼光で関係者を見ている