分数と対数はかなり違うものだが,似ているところもある。
a に対する b の比,つまり b/a を R(a,b) と書くことにする。
また,a を底とする b の対数 logab を L(a,b) と書くことにする。
R と L は a と b という二つの変数を持つ2変数関数と見ることができる。
R と L が似ている点は,次の reciprocal asymmetry,訳せば「逆数的対称性」(asymmetry は「非対称」であるが,ある種の対称性ととらえられると考え,こう訳した)を持っていることである:
R(b,a)=1/R(a,b),
L(b,a)=1/L(a,b).
R の方の等式は R(b,a)=a/b=1/(b/a)=1/R(a,b) のように直ちに導ける。
L の方の等式は
b=alogab
の両辺の底を b とする対数をとることにより,
1=(logab)(logba)=L(a,b)L(b,a)
が得られることによる。
これらは,次の unitary reflexivity(1 になる反射性,とでも訳そうか)
R(a,a)=a/a=1,
L(a,a)=logaa=1
および muliplicative transitivity(積に関する推移性)
R(a,b)R(b,c)=R(a,c),
L(a,b)L(b,c)=L(a,c)(底の変換公式)
を組み合わせて得ることができる。
底の変換公式は。等式 c=blogbc の両辺の底を a とする対数を取れば得られる。
分数と対数の似ているところは,この三つの性質である。
これら三つの性質の間の関係を調べてみよう。簡単のため,以下では reciprocal asymmetry を [RA],unitary transitivity を [UT],multiplocative transitivity を [MT} を略すことにする。
すでに
[UT]+[MT}⇒[RA]
が言えることを述べた。この他,
[MT]+[RA]⇒[UT]
も言える。実際,[MT] が成り立てば
R(a,b)R(b,a)=R(a,a)
であるが,[RA] から R(a,b)R(b,a)=1 が言えるからである。L についての証明は全く同様である。
では,[RA] と [UT] だけから {MT] は導けるだろうか。
それは無理ではないかという気がする。なぜなら,[UT] では変数は a ただ一つだけ,[RA] では変数は a と b の二つだけなのに対し,[MT] に登場する変数は a,b,c の三つであるから,変数が二つ以下しか現れない [UT] と {RA] だけから,変数が三つ関与する [MT} を導くのはどうすればよいのかわからないからである。
そのことをはっきりさせるには,X(a,a)=1 と X(a,b)X(b,a)=1 を満たすような2変数関数 X で X(a,b)X(b,c) が X(a,c) に一致しないような例(反例)を具体的に挙げればよいのだが,そのような X はすぐには思いつかない。と思ったが,少し考えたら見つけた。興味のある方はこの文章の末尾に白字で記すので,範囲指定をして文字色を反転させて読んでもらいたい。
なお,[RA],[UT],[MT] の三つを全て満たす2変数関数の他の例としては,自明なものとして定数関数 C(x,y)≡1 がある。
※ [追記:20121111]
[MT] あるいは [RA] が成り立つと,X(a,a) の値はかなり制限される。これらのいずれかの性質から X(a,a)X(a,a)=X(a,a) が導かれるので,X(a,a)=0 または X(a,a)=1 のいずれかの可能性しかない。
R の場合には,R(a,a)=a/a に意味を持たせるには a≠0 でなければならない。
L の場合には底の条件ならびに真数条件により,a は 1 以外の正の数でなければならない。その際,必ず L(a,a)=1 であり,L(a,a)=0 となることはない。
▼ [RA] と [UT] は満たすが {MT] が成り立たない関数の例 ▼
y-x=-(x-y) なので,f(x,y)=2x-y という関数を考えると,f は [RA] を満たす。また [UT] も成り立つ。しかし [MT] まで成り立ってしまう。
では,一般に g(b,a)=-g(a,b) を満たす関数を用いて
h(x,y)=2g(x,y)
とおくと,h は [RA],[UT] だけでなく [MT] までも満たしてしまうだろうか。
h が [RA] を満たすことはすぐにわかる:h(y,x)=2g(y,x)=2-g(x,y)=1/h(x,y) なので。
h が [UT} を満たすことを言うには g(x,x)=0 であることを確認しなければならないが,g(b,a)=-g(a,b) において a=b=x とおくと g(x,x)=-g(x,x) となるので,これより g(x,x)=0 となることがわかる。
h が [RA] を満たすならば h(x,y)h(y,z)=2g(x,y)+g(y,z)=h(x,z)=2g(x,z) が成り立たなければならないことになるが,これは
g(x,y)+g(y,z)=g(x,z)
と同値である。しかしこれは一般の g に対しては成り立たない。例えば g(x,y)=xy(x-y) とおくと,
g(1,2)+g(2,3)=-2-6=-8 であるが,g(1,3)=-6 なので g(1,2)+g(2,3)=g(1,3) は成り立たない。
おおむねこのように考た結果,望んでいた反例 h(x,y)=2xy(x-y) に到達した。
a に対する b の比,つまり b/a を R(a,b) と書くことにする。
また,a を底とする b の対数 logab を L(a,b) と書くことにする。
R と L は a と b という二つの変数を持つ2変数関数と見ることができる。
R と L が似ている点は,次の reciprocal asymmetry,訳せば「逆数的対称性」(asymmetry は「非対称」であるが,ある種の対称性ととらえられると考え,こう訳した)を持っていることである:
R(b,a)=1/R(a,b),
L(b,a)=1/L(a,b).
R の方の等式は R(b,a)=a/b=1/(b/a)=1/R(a,b) のように直ちに導ける。
L の方の等式は
b=alogab
の両辺の底を b とする対数をとることにより,
1=(logab)(logba)=L(a,b)L(b,a)
が得られることによる。
これらは,次の unitary reflexivity(1 になる反射性,とでも訳そうか)
R(a,a)=a/a=1,
L(a,a)=logaa=1
および muliplicative transitivity(積に関する推移性)
R(a,b)R(b,c)=R(a,c),
L(a,b)L(b,c)=L(a,c)(底の変換公式)
を組み合わせて得ることができる。
底の変換公式は。等式 c=blogbc の両辺の底を a とする対数を取れば得られる。
分数と対数の似ているところは,この三つの性質である。
これら三つの性質の間の関係を調べてみよう。簡単のため,以下では reciprocal asymmetry を [RA],unitary transitivity を [UT],multiplocative transitivity を [MT} を略すことにする。
すでに
[UT]+[MT}⇒[RA]
が言えることを述べた。この他,
[MT]+[RA]⇒[UT]
も言える。実際,[MT] が成り立てば
R(a,b)R(b,a)=R(a,a)
であるが,[RA] から R(a,b)R(b,a)=1 が言えるからである。L についての証明は全く同様である。
では,[RA] と [UT] だけから {MT] は導けるだろうか。
それは無理ではないかという気がする。なぜなら,[UT] では変数は a ただ一つだけ,[RA] では変数は a と b の二つだけなのに対し,[MT] に登場する変数は a,b,c の三つであるから,変数が二つ以下しか現れない [UT] と {RA] だけから,変数が三つ関与する [MT} を導くのはどうすればよいのかわからないからである。
そのことをはっきりさせるには,X(a,a)=1 と X(a,b)X(b,a)=1 を満たすような2変数関数 X で X(a,b)X(b,c) が X(a,c) に一致しないような例(反例)を具体的に挙げればよいのだが,そのような X はすぐには思いつかない。と思ったが,少し考えたら見つけた。興味のある方はこの文章の末尾に白字で記すので,範囲指定をして文字色を反転させて読んでもらいたい。
なお,[RA],[UT],[MT] の三つを全て満たす2変数関数の他の例としては,自明なものとして定数関数 C(x,y)≡1 がある。
※ [追記:20121111]
[MT] あるいは [RA] が成り立つと,X(a,a) の値はかなり制限される。これらのいずれかの性質から X(a,a)X(a,a)=X(a,a) が導かれるので,X(a,a)=0 または X(a,a)=1 のいずれかの可能性しかない。
R の場合には,R(a,a)=a/a に意味を持たせるには a≠0 でなければならない。
L の場合には底の条件ならびに真数条件により,a は 1 以外の正の数でなければならない。その際,必ず L(a,a)=1 であり,L(a,a)=0 となることはない。
▼ [RA] と [UT] は満たすが {MT] が成り立たない関数の例 ▼
y-x=-(x-y) なので,f(x,y)=2x-y という関数を考えると,f は [RA] を満たす。また [UT] も成り立つ。しかし [MT] まで成り立ってしまう。
では,一般に g(b,a)=-g(a,b) を満たす関数を用いて
h(x,y)=2g(x,y)
とおくと,h は [RA],[UT] だけでなく [MT] までも満たしてしまうだろうか。
h が [RA] を満たすことはすぐにわかる:h(y,x)=2g(y,x)=2-g(x,y)=1/h(x,y) なので。
h が [UT} を満たすことを言うには g(x,x)=0 であることを確認しなければならないが,g(b,a)=-g(a,b) において a=b=x とおくと g(x,x)=-g(x,x) となるので,これより g(x,x)=0 となることがわかる。
h が [RA] を満たすならば h(x,y)h(y,z)=2g(x,y)+g(y,z)=h(x,z)=2g(x,z) が成り立たなければならないことになるが,これは
g(x,y)+g(y,z)=g(x,z)
と同値である。しかしこれは一般の g に対しては成り立たない。例えば g(x,y)=xy(x-y) とおくと,
g(1,2)+g(2,3)=-2-6=-8 であるが,g(1,3)=-6 なので g(1,2)+g(2,3)=g(1,3) は成り立たない。
おおむねこのように考た結果,望んでいた反例 h(x,y)=2xy(x-y) に到達した。