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【高校数学のツボ】 分数と対数の似ているところ。

2012-11-10 23:59:29 | mathematics
分数と対数はかなり違うものだが,似ているところもある。

a に対する b の比,つまり b/a を R(a,b) と書くことにする。

また,a を底とする b の対数 logab を L(a,b) と書くことにする。

R と L は a と b という二つの変数を持つ2変数関数と見ることができる。

R と L が似ている点は,次の reciprocal asymmetry,訳せば「逆数的対称性」(asymmetry は「非対称」であるが,ある種の対称性ととらえられると考え,こう訳した)を持っていることである:

R(b,a)=1/R(a,b),

L(b,a)=1/L(a,b).

R の方の等式は R(b,a)=a/b=1/(b/a)=1/R(a,b) のように直ちに導ける。

L の方の等式は

b=alogab

の両辺の底を b とする対数をとることにより,

1=(logab)(logba)=L(a,b)L(b,a)

が得られることによる。

これらは,次の unitary reflexivity(1 になる反射性,とでも訳そうか)

R(a,a)=a/a=1,

L(a,a)=logaa=1

および muliplicative transitivity(積に関する推移性)

R(a,b)R(b,c)=R(a,c),

L(a,b)L(b,c)=L(a,c)(底の変換公式)

を組み合わせて得ることができる。

底の変換公式は。等式 c=blogbc の両辺の底を a とする対数を取れば得られる。

分数と対数の似ているところは,この三つの性質である。

これら三つの性質の間の関係を調べてみよう。簡単のため,以下では reciprocal asymmetry を [RA],unitary transitivity を [UT],multiplocative transitivity を [MT} を略すことにする。

すでに

[UT]+[MT}⇒[RA]

が言えることを述べた。この他,

[MT]+[RA]⇒[UT]

も言える。実際,[MT] が成り立てば

R(a,b)R(b,a)=R(a,a)

であるが,[RA] から R(a,b)R(b,a)=1 が言えるからである。L についての証明は全く同様である。

では,[RA] と [UT] だけから {MT] は導けるだろうか。

それは無理ではないかという気がする。なぜなら,[UT] では変数は a ただ一つだけ,[RA] では変数は a と b の二つだけなのに対し,[MT] に登場する変数は a,b,c の三つであるから,変数が二つ以下しか現れない [UT] と {RA] だけから,変数が三つ関与する [MT} を導くのはどうすればよいのかわからないからである。

そのことをはっきりさせるには,X(a,a)=1 と X(a,b)X(b,a)=1 を満たすような2変数関数 X で X(a,b)X(b,c) が X(a,c) に一致しないような例(反例)を具体的に挙げればよいのだが,そのような X はすぐには思いつかない。と思ったが,少し考えたら見つけた。興味のある方はこの文章の末尾に白字で記すので,範囲指定をして文字色を反転させて読んでもらいたい。

なお,[RA],[UT],[MT] の三つを全て満たす2変数関数の他の例としては,自明なものとして定数関数 C(x,y)≡1 がある。

※ [追記:20121111]

[MT] あるいは [RA] が成り立つと,X(a,a) の値はかなり制限される。これらのいずれかの性質から X(a,a)X(a,a)=X(a,a) が導かれるので,X(a,a)=0 または X(a,a)=1 のいずれかの可能性しかない。

R の場合には,R(a,a)=a/a に意味を持たせるには a≠0 でなければならない。

L の場合には底の条件ならびに真数条件により,a は 1 以外の正の数でなければならない。その際,必ず L(a,a)=1 であり,L(a,a)=0 となることはない。


▼ [RA] と [UT] は満たすが {MT] が成り立たない関数の例 ▼

y-x=-(x-y) なので,f(x,y)=2x-y という関数を考えると,f は [RA] を満たす。また [UT] も成り立つ。しかし [MT] まで成り立ってしまう。

では,一般に g(b,a)=-g(a,b) を満たす関数を用いて

h(x,y)=2g(x,y)

とおくと,h は [RA],[UT] だけでなく [MT] までも満たしてしまうだろうか。

h が [RA] を満たすことはすぐにわかる:h(y,x)=2g(y,x)=2-g(x,y)=1/h(x,y) なので。

h が [UT} を満たすことを言うには g(x,x)=0 であることを確認しなければならないが,g(b,a)=-g(a,b) において a=b=x とおくと g(x,x)=-g(x,x) となるので,これより g(x,x)=0 となることがわかる。

h が [RA] を満たすならば h(x,y)h(y,z)=2g(x,y)+g(y,z)=h(x,z)=2g(x,z) が成り立たなければならないことになるが,これは

g(x,y)+g(y,z)=g(x,z)

と同値である。しかしこれは一般の g に対しては成り立たない。例えば g(x,y)=xy(x-y) とおくと,

g(1,2)+g(2,3)=-2-6=-8 であるが,g(1,3)=-6 なので g(1,2)+g(2,3)=g(1,3) は成り立たない。

おおむねこのように考た結果,望んでいた反例 h(x,y)=2xy(x-y) に到達した。
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