A Rider's Viewpoint

とあるライダーのものの見方

Solitude Long Distance.<孤独に。長い距離を>

2013-08-08 20:28:17 | ツーリング
かつて那須高原にソロツーリングに出かけた際、気分が悪くなって途中で帰ってきたことがあった。
那須ICから県道17号に抜け、この道をどん詰まりまで行った後、県道30号と国道400号の交差する場所にあるコンビニで休み、そのまま西那須野塩原ICまで降り、東北道をまっすぐ帰着したのである。その時読んでいた文庫本~佐野SAで休憩したとき読んだ~の読書履歴からブログを遡ると2011/9/18に出かけたツーリングであったことが判明した。
今回のツーリングは、このリベンジでもあり、Kでゆく長距離ツーリングでもある。
目的は「霧降高原道路」の踏破。ルートをさっと確認すると「日塩もみじライン」も通ることができる。どちらも関東圏では屈指のツーリングロードだ。きっと素晴らしいものになるに違いない。

   *

2013/8/3。朝5:00に目覚める。
ツーリングへの衝動はいつも突然だ。
梅雨明け後に雨が多くなった関東圏ではあるが、本日の天気は概ね曇り。栃木エリアを午前中に通過すれば、15時すぎからの雨の予報には影響を受けないだろう。
「行こう!」そう決め、早速ツーリングへの準備を開始した。タンクバックにレインウェアは常備してある。いつものポーチから免許証、クレジットカード、健康保険証と少しばかりの現金を抜き取り、薄めの財布に移す。立ち寄り温泉用のタオルをコンビニ袋に詰めてこれもタンクバックに。歯を磨いてシャワーを浴びる。OK。
朝食も途中で摂ることにして、6:03、出発をツイッターでつぶやいてKのエンジンをかける。
電源をオンにするとオンボードコンピュータが立ち上がり電送系のセルフチェックが始まる。同時にETCユニットがカードの有無を確認し、グリーンのランプを返してくる。
三角の中の「!」マークの赤表示が黄色に変わって消え、セルフチェックが終わる。スターターボタンを押すとギュルルンとかん高い金属音がしてエンジンが起動する。シートバックの固定を確認しクラッチを握ってギアをローに踏み込み、静かにクラッチを繋ぐ。258kgの車体が僕を乗せてゆっくりと動き出す。
最初の角を右折、次を左折して信号のある交差点を左折。小学校の手前を左折して突き当たりを左折すると次がR357・湾岸道路に繋がる交差点だ。
交差点を右折して湾岸道路に出る。ちょっと走った後で舞浜大橋を超えれば、すぐに首都高、葛西ICの入り口である。
6:10。ICを通過。そのまま左側を走り、葛西JCTから中央環状線・東北道方面に進む。

無事合流を果たし速度が安定すると、僕の頭は回想モードに入る。それは数日前に亡くなった叔母のこと。大切な記録としてブログ等に残しておきたいと思ったのだが、どんなエピソードを書こうか、どんな思い出がそれにふさわしいか、どんな書き出しにしようか、……等々を考える。亡くなった人間は誰かが思い出すことによって現世に甦る。今日は叔母の追悼ツーリングでもあるのだと思う。

首都高を抜け東北道に入り、岩槻IC付近を通過する。ここまでで乗車開始から40分弱。休日の早朝で車が少ないとはいえ免許が心配になるようなペースである。バックミラーで周囲を確認し、少し走行ペースを落とす。ふと気づくと蓮田SAを通過。平日であればそろそろ朝食の時間である。羽生PAで軽食でも摂ろうかと思ったが、起きてから何も口にしていないし、多分今日は長丁場のツーリング。佐野SAまで足を伸ばししっかりと朝食をとることとした。

7:10頃、佐野SAに到着。駐輪場にオートバイを停める。たまたま通りかかった子供がKを指さし「あの黒いオートバイカッコいい」と言ってくれる。
思わず「ありがとうね」と口にだすと親御さんと一緒に破顔一笑。ささやかな嬉しいコミュニケーションである。
気分を良くしてフードコーナーへ。佐野だけあってラーメンモチーフのメニューが特徴的だ。(麺をモンブランで模したケーキまであった)
今日はその中から「男飯」というものを頼む。\980。ご飯の上に白もつとラーメン用の煮豚、刻みネギが乗っていて、付け合わせのスープは醤油味のラーメンスープだ。

これにメンマとナルトとノリが加われば完璧なのだが、まあ食べて美味しかったから文句は言うまい。

7:30頃、出発。しばらくしてオンボードコンピューターの表示が<FUEL!>に変わる。給油だ。あと約81km走れるから、先の上河内SAで給油しよう。
8:12。上河内SAで給油。12.78Lで\2,198。やっぱりハイオクはちょっと高いかな。

給油後、何のストレスもなく西那須野ICに到着。8:31。まだまだ走行車両は少ない。国道400号で日塩もみじラインをめざす。
きちんと表示が出ていたので、分岐点を間違うこともなく日塩もみじラインに入る。早々、前を走っていた車2台をまとめて追い越す。

Kのエンジンは余裕のある出力を持っている。トップギア6速4,000回転で約105km/hというものだが、そこから登り坂や向かい風、あるいは追い越しをしようとしてスロットルを開けると、Kはまるでそれが低いギアであるかのように力強く加速する。前述の登り坂や向かい風、あるいは危険回避等、いろいろなことを考えても、この高機動力はありがたい。
たとえそれがCBと比較して若干低い燃費であったとしてもだ。(実際のところCBは1Lあたり平均16km前後、Kはまだデータも少ないが平均15km前後である)

余裕のある高機動エンジンでKはコーナーを次々とクリアして高原の道路を駆け上がる。
Kの大きな特徴のひとつ「デュオレバーサスペンション」をひと言で説明するにはメカニックに造詣が深くない僕には難しい。ただ従来のテレスコピックサスペンションに比べ、前輪ブレーキを強くかけても車体が前方に沈み込むことがないということは言える。また前輪の接地感が強く、コーナーでの不安感が少ないため、自分で思っていたよりも早くコーナーを抜けることができる。そうかこれが他の方がインプレッションで言っていた「自分が巧くなったと錯覚するコーナリング」か。
いずれにせよ運転が楽しい。コーナーを安心して回れるということが、オートバイの基本的な楽しみになんと彩りを添えてくれることか。

やがて道路は下りに転じる。安心感のある前輪のおかげで、怖い思いをすることもなく料金所についた。\400の料金を払って交差点手前の駐車スペースにKを停めて一休みする。現在時刻9:43。ツイッターに返信をしたり、状況をつぶやいたりした後で発進。霧降高原道路へ向かう。

日塩もみじラインの出口から右折して国道121号に出る。道なりに進むと川俣温泉方面に向かう県道23号。これが霧降高原道路に向かうルートである。川治ダムを右手に見て超えたあたりで休憩。自動販売機でレモンウォーター(\130)を買って川沿いのベンチに腰をおろす。
下方を流れる鬼怒川は水量がとても少ない。都内でゲリラ豪雨が頻発する昨今であるが、首都圏に水を供給するこのあたりに雨が降らないのは残念に思える。

ちょっとして再スタート。地図だけでは分岐点を見落としそうだったが、思ったよりわかりやすい看板があったせいで容易に霧降高原道路方面に曲がる。つづら折りの道路を快適に駆け上がり、牧場のT字路を右折すると霧降高原道路である。薄曇りであった天気は山の上の方から雲が降りてきて、まさに「霧が降るような」光景を見せている。整備された道路と相まってとても雰囲気がよい。もちろん抜けるような青空に白い雲が浮かんでいるようなロケーションは最高だろうが、この「霧降高原」という名前にふさわしい今日の天気も悪くはない。
ただしこのときの気温は17度。下界では28度あったことを考えると正直言って肌寒い。しかし特に凍えることもなく、霧降高原道路を堪能して日光市に降り立ったのであった。

10:57。JR日光駅前にオートバイを停めて、今後の行き先を思案する。今回は「霧降高原道路」を制覇するのが目的だったので、ここから先のルートを真剣に考えてはいなかった。
ここから日光街道の杉並木を走って東北道で戻ろうかとも考えたが、まだ日は高い。
日光市街からいろは坂を登り中禅寺湖から戦場ヶ原を抜け金精峠を通って沼田市へ。道の駅白沢で露天風呂につかった後で永井食堂のもつ煮のおみやげを買って帰宅するという定番極楽ルートを選択することに決めた。
11:05、このルートをつぶやいて出発。いろは坂(登りは久しぶりだ)、中禅寺湖、戦場ヶ原、奥日光を超え、金精峠に向かう。奥日光付近で気温が下がり小雨がぱらついてきた。トンネルに入った時点でKの温度センサーは15.5度を指す。正直に言ってかなり寒い。全体的に寒く、また体の前面にあたった雨が気化熱を奪ったからだろうか、お腹の調子がおかしくなってきた。トンネルを出た先のレストハウスにオートバイを停め、お手洗いを借りることとなった。再出発の際、立ち寄り温泉で使用する予定のタオルを折りたたんでお腹に当てる。もうこれ以上寒くなることはないだろうがお腹の予防だ。ただいまの時刻12:12。現況をつぶやこうと思ったが圏外。そのまま文章を保存して出発する。
その後、お腹の調子が悪化することもなく無事沼田市の「道の駅・白沢」にたどり着いたのは、13時過ぎのことであった。

13:10頃、道の駅・白沢の望郷の湯に入ろうと思い、2時間の滞在料金を払う。\550。レストランを利用すると、この滞在時間が1時間延長されるらしい。昼食を摂っていなかったのでまずレストランに向かいネギトロ丼とノンアルコールビールを注文する。
当然ながら先にビールが運ばれてくる。暑い中を走っていたのでノンアルコールビールだが美味い。『これが本物のビールだったらなあ』という野暮なセリフは心の中だけにしておこう。
のどが渇いてあっという間に飲み干したノンアルコールビールのおかわりが届く直前にネギトロ丼が届いた。ネギトロ丼を肴にノンアルコールビールを飲む。『これが……(以下省略)』

食後、畳の間でしびれた足を引きずりながら風呂に向かう。今日は前回・前々回とは異なり、男湯・女湯が逆だ。初めての風呂はちょっと嬉しい。まずは露天風呂に入り、洗い場で頭と体を洗った後で内湯に入る。その後ジェットバスを堪能し、屋外のテラスで横になって腰にタオルを乗せて仮眠した。うとうとした程度かと思っていたらどうやら30分以上は仮眠していたらしい。もう午後3時を回っている。改めて寝汗を流し露天風呂に入り直した後、着替えて食事代を精算し表に出る。食事代合計\1,950。午後3:20、永井食堂を目指して出発する。

今日(8/3)は沼田市街はお祭りだったようで交通規制がしかれている。見知った道を通過することができず、前の車について裏道を進む。途中であて推量で道を選んで走ったら、何とこれが大当たり。裏道を抜けていつもの道にたどりついた。
そのまま国道17号にでるとJRの線路を蒸気機関車が走ってゆく。何かイベントでもあったのだろう。少しの間SLと併走して国道17号を走り続けた。

16:12。国道17号沿いにある永井食堂の駐車場はいつも通りの盛況である。食事時間が終了しているにかかわらず、何台もの車が駐車場に入ってきてはおみやげのもつ煮を買い、駐車場を後にする。
早速僕も店に入り、おみやげのもつ煮を3袋買ってシートバックに詰め込む。\3,210。
永井食堂をでようとしたら、<FUEL!>の画面になった。走行距離からしても、ちょうど給油のタイミングだ。直接赤城高原ICへ向かうのはやめて、国道17号を南下。給油を終えてから関越道に入ることとする。途中のENEOSのセルフスタンドで給油。12.66L、\2,115を支払い、16:30頃ガソリンスタンドを後にし、渋川伊香保ICより関越道に乗った。

乗った直後の関越道はたいした渋滞もなく順調に走り続けていたが、途中で事故があったらしく高坂SAあたりから嵐山PAあたりまで渋滞していた。この渋滞を(文字通り)すり抜け、高坂SAで休憩を取った。さすがに僕も疲れていたのだろう。少し甘いものが欲しくなったので「焼き芋ソフトクリーム・バニラミックス」を購入。\330。冷たくて甘くて美味い。食べ終わった後、サービスの玄米茶で口直しをして17:50頃出発する。

高速道は休日の都心方向に戻る渋滞が始まっていた。関越道・大泉JCTから外環道浦和IC付近まではほぼ車が連なっている。
このツーリングでだいぶKの車幅感覚も身についた。つまりはあまり怖さを感じることなく車間をすり抜け走行することができるようになった。
外環道浦和ICを過ぎると少し車間が空いたものの、基本的に渋滞気味であることに違いはない。焦ることなくマイペースで走り続ける。
川口JCTから首都高に入りそのまま湾岸線方面へ。葛西ICで降りて舞浜大橋を渡り自宅に帰り着いたのは18:50頃だった。

高速代、有料道路を含めた交通費\5,350、ガソリン代\4,313、食費とおみやげ\7,150。本日の総コスト\16,813。
全走行距離538.3kmのツーリング、無事終了である。