A Rider's Viewpoint

とあるライダーのものの見方

木枯らしの夜の遠回り

2010-10-29 13:21:36 | つれづれ
 降り続いた雨が一旦止み、今年初めての木枯らしが吹くだろうと言われた日、オートバイで出勤した僕は残業のため午後10時頃会社を出た。
 建物から表に出ると別に暖房が効いていたわけでもないのだが、明らかに表の方が気温が低い。吐く息こそ白くならなかったが、気温が下がっているのが十分に感じられる。

 ポケットから取り出したキーを差し込んでエンジンをかける。メーターパネルの液晶表示を外気温に設定すると摂氏14度の表示。半袖のポロシャツにトレーナー、布製のジャケットではしんしんと染み入るような寒さを防ぐのは難しいような気温だ。雨こそ降る気配はないものの今日はこれからガソリンスタンドに寄って帰らねばならない。ガソリン残量を示す液晶表示は朝の時点で棒の長さがだんだんと短くなっては消えるアニメーション表示。ガス欠になるまで概算60kmくらいの走行が限界だ。

 ジャケットの襟を立て、グローブを心持ちきつめに締めて走り出す。この布製のジャケットも決して風を通しやすいわけではないのだが、なんせ中に着ているのが少し着古したトレーナー。襟ぐりと袖がちょっと緩く、首と手首から進入した外気で確実に体温が奪われて行く。

 自宅最寄りの交差点を今日は直進してガソリンスタンドへと向かう。数年前、ガソリン価格が高騰した際、ガソリン会社のクレジットカードを作り(年会費は無料だ!)、セルフスタイルのガソリンスタンドで給油する方法に改めた。系列のスタンドを使うと、1リッターあたり4円安い。結構、良い選択肢ではなかったかと自負している。

 体育館の角の交差点を左折。目的のガソリンスタンドはそう遠くない。しかし、その手前でちょっとした違和感を覚える。あれ、ガソリンスタンドの看板の照明が点いていないぞ。もう少し近くによって確認すると看板ばかりか構内の照明も点いていない。おまけに入口は車を停めて進入できないようにしてある。よくよく確認すると、ガソリンスタンドの設備メンテナンスのために臨時休業なのであった。
ガソリンスタンドのある交差点を右折して、もう少し先にある同じ系列のスタンドを目指す。

 果たして、そっちのガソリンスタンドは、無事に開いていた。18.38L、2,279円。このオートバイのタンク容量は21Lだから、残2.6Lを使い切ればガス欠だった。
 ……もっともあと40kmは走れる計算だから、翌日の給油でも何とかなったんだけど。

 思わぬ遠回りをして自宅へ帰る。ガソリンスタンドの件で一時忘れていたのだが、思ったよりも体は冷え切っていたようだ。家に帰ったらちょっと震えが来た。

「ただいま、寒かった」と声をかけて家に入ると、今日の夕食はクリームシチュー。冷え込んだ日にはことさら美味しく感じるメニューだったのが嬉しかった。
 ……だから、ご飯もパンも残ってなく、クリームシチューにあわせてオーブントースターで焼いたお餅を食べたことは内緒にしておこう。