これも面白そう。
単行本は20200207刊行。確か大河ドラマ「麒麟がくる」の時期の発売だったが、やっと文庫化された。
まむしと呼ばれる斎藤道三の父親の代からの話。法蓮房という僧であったが、美濃を手に入れ、さらには天下を取ろうとしている。国滅ぼしという武器か凶器と呼ばれるものを利用すると言うのだがこれは半分読み進めても何のことなのかは明かされない。
そもそもが面白い。初めに言っておくと。まむし三代というが、まむしと呼ばれた斎藤道三が2代でその父である法蓮房が1代。多分龍おきが3代だろうがまだ豊太丸と呼ばれている。
1代法蓮房が冷酷。といっても仲間たちには温かい。美濃を治めようとするにつれ冷徹になる。1代の元に集まった仲間は、個性的で、そして特殊な技を持つ。今思えば、初期のメンバーである源太、烏丸という切っ先が両刃の特殊な刀を扱うのが最年少である。若気の至りか1代になにかと反抗している。1代だが道をはずしそうになったら殺すといっている。しかしなんだかんだ言って、この小説の中心人物はこの源太である。
2代は父に反抗していた。つまり穏やかな性格だった。これは斎藤道三である。しかし、父である1代が暗殺され、急変する。まさに毒蝮へと変化してしまう。そんななかでも源太は2代に従う。
そして3代豊太丸であるが、また繰り返すわけだ、変貌してしまった2代に反抗する。ただ1代の法蓮房を彷彿させる度量がある。代的には孫に当たる3代に対する源太だが、すでに60歳手前だ。それでもこのまむし3代に従順なのが爽やか。
土岐頼芸の解釈も面白い。まむしが国滅ぼしを使うのではないか?使わせないために頼芸は2代を暗殺しようとしていたのだった。
国滅ぼしとはなにか?ずっと、銅を集めていると言うのは匂わせていた。しかしその銅が、どう武器、凶器になるのか全く明かされない。
読んでいると凶器は、何となく鉄砲か大砲のように思わせらる。しかし、銅を使った銃身や砲身など凶器でもなんでもない。と思いつつ読んでいるとやはり大砲のようだ。失望した。しかし実はそれはダミーだったのだ。答えは純銅の永楽通宝で経済を高めるというもの。
読んでいて、斎藤家の三代の話かと思ったら、実際は源太が中心人物だ。そして三代というのは道三の父(法蓮房)と子(義龍)の子とかと思ったら、道三の父と祖父の三代だったのだ。
あとがきを読んで、それが正しいことが判明し、また、連載はしていたが、単行本化するにあたり、全く新しい小説になり、謂わば書き下ろしになったことがわかる。この回りくどさが素晴らしい。天才的というよりはぎこちないが秀才的な作家だ。
20230420読み始め
20230520読了