これは山田風太郎の甲賀忍法帖に対するオマージュである。
甲賀忍法帖もそうだが、それぞれのキャラクターの忍法に対して、作者の医学的知識を踏まえた、生理学的解説がついている。もちろんハッタリではあるが、尤もらしく解説されており、それが面白い。そんな部分も踏襲されている。但し、生理学的ではなく、脳科学的解説であるところが異なる。そもそも忍法ではなく、幻法と言うだけあり、催眠術やマインドコントロール的な技が主だ。それゆえ脳科学的な解説とならざるを得ないのだろう。
甲賀忍法帖をオマージュと言うよりは、リミックスと言った方がいいかもしれない。10対10を7対7にし、各キャラクターの忍法と展開を、組み替えて新しい物語としている。パロディとも違う。正直、甲賀忍法帖を覚えるくらい読み返したものからすると、リスペクトしながら独自の作品を創作したともいえないし、越えようともしていないし、自分なりの甲賀忍法帖に仕上げようとしている風にも見えない。意図するところが不明ではあるが、同じ風太郎ファンとして観るなら、ニヤリとする。
先ほど読み終えたが、やはり、リスペクト要素が主で、新しい創作を狙ったものではないと思う。ストーリーを楽しむのではなく、甲賀忍法帖と比べて、フムフム、なるほどとマニアックに楽しむものだ。
この作品を初めにに読んだ人は楽しめるかもしれない。しかし甲賀忍法帖を読んでしまっていたなら上記のようなマニア感でしか楽しめないだろう。
この本の効用として、本家、甲賀忍法帖を再読したい気持ちになった。
これはこれとして、完全に甲賀忍法帖の新章、続編と謳う桜花忍法帖に期待したい。
(表紙の佐伯俊男が山田風太郎ファンにはたまらない)
そもそもこの神君幻法帖を知ったのは、佐伯俊男画集を見ていて知った。そんな因果だ。
20151123読み始め
20151126読了