医療裁判傍聴記

傍聴した観想など

千葉県循環器病センターで70代男性が死亡する医療事故 必要な薬剤投与の中断が影響か

2024-08-30 18:30:15 | 医療界

 千葉県循環器病センター(市原市)は30日、2022年2月に救急搬送された県内在住の70代男性が死亡する医療事故が発生したと発表した。男性は心臓内にできた血栓が脳血管につまる心原性脳梗塞で亡くなっており、血栓を防ぐ薬の服用を中断したことが脳梗塞発症に影響した可能性がある。同センターは遺族に謝罪し、和解が成立している。

 同センターによると、男性は10年以上前から不規則な脈が原因で心臓の機能が低下する心房細動を患い、血液の流れを良くするための抗凝固薬を服用していた。22年2月、男性は呼吸苦のため救急搬送され、心不全で同センターの集中治療室に緊急入院。薬を飲める状態ではなかったことから、点滴での抗凝固薬の投薬に切り替えた。

 男性は病状が改善し入院4日目に一般病棟に移った。点滴は終了したが、主治医は内服の抗凝固薬の再開を失念した。11日目に脳梗塞を発症し、翌日死亡した。主治医は当時10人以上の患者をかけ持ちしており「疲労がたまっていた」と説明しているという。

 同センターは外部有識者を含めた医療事故調査委員会を設置し、患者への対応を検証。委員会が昨年2月にまとめた報告書は「抗凝固薬の投与中断が脳梗塞発症に影響した可能性がある」と指摘。以前服用していた薬の確認を主治医に委ねており「ヒューマンエラーによる処方漏れを見つけ出す体制が取られていなかった」ことが最大の要因だとした。

 同センターは電子カルテに患者が服用する薬の情報が必ず表示されるようにし、病棟移動の際も引き継ぎを徹底することで再発防止に取り組む。中村精岳病院長は記者会見で「患者や家族の期待に添えない結果となり申し訳ない」と謝罪。「事故を二度と繰り返さないようチーム医療を続けていきたい」と話した。

2024年8月30日 千葉日報