森の声、石段の色、室生寺(1)
















     奈良県宇陀市にある室生寺。今は、真言宗室生寺派の大本山、というより、
     その昔、女人禁制の高野山に対して、女性参詣が許されたことから「女人高野」
     と呼ばれてきたこと・・。何処となく、その名に相応しい寺のように思えるのだ。
     室生の山一帯は、古くより神々のすまう聖地とされたところ。
     この地に寺が建立されたのは、平安時代の初め、9世紀前半であろうと言われる。
     当初は、興福寺との縁が深く、法相宗。鎌倉時代を経て、次第に密教の色を濃く
     し、江戸時代に真言宗の寺となったという。
     室生山の中腹にかけて、寺域は杉や桧の森の中を、見事な石段に沿って上る。
     仁王門を潜り、鎧坂と名付けられた石段を上ると、正面に金堂(平安前期の建立、
     国宝)、左手に弥勒堂(鎌倉時代の建立、重文)が現れる。金堂の中には、国宝
     の釈迦如来、十一面観音などの仏がおられる。屋根の杮(こけら)葺きが、辺り
     の樹林の中に見事に溶け込んでいる。さらに石段を上ると、本堂(灌頂堂、
     鎌倉時代1308年の建立、国宝)がある。真言密教の法儀である灌頂を行う
     お堂で、真言寺院の中心となるところから、本堂とも呼ばれる。何とも堂々とした
     威厳に満ちた建物であることか・・。
     石段は更に山に向って延びる。そして、あの五重塔に至るのである。

     (奈良の中心から外れて東へ、山の中。この室生寺は、やはり特別の寺だという
      感じを持つのです。
      鬱蒼とした杉の大樹の間、自然石の石段を上りながら、その声を聞き、色を見る
      ・・、ゆっくりした、多彩な時間ではあります。)
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