カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

モジカ

2012-11-22 | ナカジマ アツシ
 モジカ

 ナカジマ アツシ

 モジ の レイ など と いう もの が、 いったい、 ある もの か、 どう か。
 アッシリヤジン は ムスウ の セイレイ を しって いる。 ヨル、 ヤミ の ナカ を チョウリョウ する リル、 その メス の リリツ、 エキビョウ を ふりまく ナムタル、 シシャ の レイ エティンム、 ユウカイシャ ラバス など、 かずしれぬ アクリョウ ども が アッシリヤ の ソラ に みちみちて いる。 しかし、 モジ の セイレイ に ついて は、 まだ ダレ も きいた こと が ない。
 その コロ ――と いう の は、 アシュル バニ アパル ダイオウ の チセイ ダイ 20 ネン-メ の コロ だ が―― ニネヴェ の キュウテイ に ミョウ な ウワサ が あった。 マイヨ、 トショカン の ヤミ の ナカ で、 ひそひそ と あやしい ハナシゴエ が する と いう。 オウケイ シャマシュ シュム ウキン の ムホン が バビロン の ラクジョウ で ようやく しずまった ばかり の こと とて、 ナニ か また、 フテイ の ト の インボウ では ない か と さぐって みた が、 それ らしい ヨウス も ない。 どうしても ナニ か の セイレイ ども の ハナシゴエ に ちがいない。 サイキン に オウ の マエ で ショケイ された バビロン から の フシュウ ども の シリョウ の コエ だろう と いう モノ も あった が、 それ が ホントウ で ない こと は ダレ にも わかる。 1000 に あまる バビロン の フシュウ は ことごとく シタ を ぬいて ころされ、 その シタ を あつめた ところ、 ちいさな ツキヤマ が できた の は、 ダレ しらぬ モノ の ない ジジツ で ある。 シタ の ない シリョウ に、 しゃべれる わけ が ない。 ホシウラナイ や ヨウカンボク で むなしく タンサク した ノチ、 これ は どうしても ショモツ ども あるいは モジ ども の ハナシゴエ と かんがえる より ホカ は なくなった。 ただ、 モジ の レイ (と いう もの が ある と して) とは いかなる セイシツ を もつ もの か、 それ が かいもく わからない。 アシュル バニ アパル ダイオウ は キョガン シュクハツ の ロウハカセ ナブ アヘ エリバ を めして、 この ミチ の セイレイ に ついて の ケンキュウ を めいじたもうた。
 その ヒ イライ、 ナブ アヘ エリバ ハカセ は、 ヒゴト モンダイ の トショカン (それ は、 ソノゴ 200 ネン に して チカ に マイボツ し、 さらに ノチ 2300 ネン に して ぐうぜん ハックツ される ウンメイ を もつ もの で ある が) に かよって マンガン の ショ に メ を さらしつつ ケンサン に ふけった。 メソポタミヤ では エジプト と ちがって パピルス を さんしない。 ヒトビト は、 ネンド の イタ に コウヒツ を もって フクザツ な クサビガタ の フゴウ を ほりつけて おった。 ショモツ は カワラ で あり、 トショカン は セトモノヤ の ソウコ に にて いた。 ロウハカセ の テーブル (その アシ には、 ホンモノ の シシ の アシ が、 ツメ さえ ソノママ に つかわれて いる) の ウエ には、 マイニチ、 るいるい たる カワラ の ヤマ が うずたかく つまれた。 それら ジュウリョウ ある コチシキ の ナカ から、 カレ は、 モジ の レイ に ついて の セツ を みいだそう と した が、 ムダ で あった。 モジ は ボルシッパ なる ナブー の カミ の つかさどりたもう ところ と より ホカ には ナニゴト も しるされて いない の で ある。 モジ に レイ あり や なし や を、 カレ は ジリキ で カイケツ せねば ならぬ。 ハカセ は ショモツ を はなれ、 ただ ヒトツ の モジ を マエ に、 シュウジツ それ と ニラメッコ を して すごした。 ボクシャ は ヒツジ の カンゾウ を ギョウシ する こと に よって スベテ の ジショウ を チョッカン する。 カレ も これ に ならって ギョウシ と セイカン と に よって シンジツ を みいだそう と した の で ある。 その うち に、 おかしな こと が おこった。 ヒトツ の モジ を ながく みつめて いる うち に、 いつしか その モジ が カイタイ して、 イミ の ない ヒトツヒトツ の セン の コウサク と しか みえなく なって くる。 たんなる セン の アツマリ が、 なぜ、 そういう オン と そういう イミ と を もつ こと が できる の か、 どうしても わからなく なって くる。 ロウジュ ナブ アヘ エリバ は、 うまれて はじめて この フシギ な ジジツ を ハッケン して、 おどろいた。 イマ まで 70 ネン の アイダ トウゼン と おもって カンカ して いた こと が、 けっして トウゼン でも ヒツゼン でも ない。 カレ は メ から コケラ の おちた オモイ が した。 たんなる ばらばら の セン に、 イッテイ の オン と イッテイ の イミ と を もたせる もの は、 ナニ か? ここ まで おもいいたった とき、 ロウハカセ は チュウチョ なく、 モジ の レイ の ソンザイ を みとめた。 タマシイ に よって すべられない テ、 アシ、 アタマ、 ツメ、 ハラ など が、 ニンゲン では ない よう に、 ヒトツ の レイ が これ を すべる の で なくて、 どうして たんなる セン の シュウゴウ が、 オン と イミ と を もつ こと が できよう か。
 この ハッケン を テハジメ に、 イマ まで しられなかった モジ の レイ の セイシツ が しだいに すこし ずつ わかって きた。 モジ の セイレイ の カズ は、 チジョウ の ジブツ の カズ ほど おおい、 モジ の セイ は ノネズミ の よう に コ を うんで ふえる。
 ナブ アヘ エリバ は ニネヴェ の マチジュウ を あるきまわって、 サイキン に モジ を おぼえた ヒトビト を つかまえて は、 コンキ よく いちいち たずねた。 モジ を しる イゼン に くらべて、 ナニ か かわった よう な ところ は ない か と。 これ に よって モジ の レイ の ニンゲン に たいする ハタラキ を あきらか に しよう と いう の で ある。 さて、 こうして、 おかしな トウケイ が できあがった。 それ に よれば、 モジ を おぼえて から キュウ に シラミ を とる の が ヘタ に なった モノ、 メ に ホコリ が よけい はいる よう に なった モノ、 イマ まで よく みえた ソラ の ワシ の スガタ が みえなく なった モノ、 ソラ の イロ が イゼン ほど あおく なくなった と いう モノ など が、 アットウテキ に おおい。 「モジ ノ セイ ガ ニンゲン ノ メ ヲ クイアラス コト、 ナオ、 ウジムシ ガ クルミ ノ カタキ カラ ヲ ウガチテ、 ナカ ノ ミ ヲ タクミ ニ クイツクス ガ ゴトシ」 と、 ナブ アヘ エリバ は、 あたらしい ネンド の ビボウロク に しるした。 モジ を おぼえて イライ、 セキ が ではじめた と いう モノ、 クシャミ が でる よう に なって こまる と いう モノ、 シャックリ が たびたび でる よう に なった モノ、 ゲリ する よう に なった モノ など も、 かなり の カズ に のぼる。 「モジ ノ セイ ハ ニンゲン ノ ハナ、 ノド、 ハラ-トウ ヲモ オカス モノ ノ ゴトシ」 と、 ロウハカセ は また しるした。 モジ を おぼえて から、 にわか に トウハツ の うすく なった モノ も いる。 アシ の よわく なった モノ、 テアシ の ふるえる よう に なった モノ、 アゴ が はずれやすく なった モノ も いる。 しかし、 ナブ アヘ エリバ は サイゴ に こう かかねば ならなかった。 「モジ ノ ガイ タル、 ニンゲン ノ ズノウ ヲ オカシ、 セイシン ヲ マヒ セシムル ニ イタッテ、 スナワチ キワマル。」 モジ を おぼえる イゼン に くらべて、 ショクニン は ウデ が にぶり、 センシ は オクビョウ に なり、 リョウシ は シシ を いそこなう こと が おおく なった。 これ は トウケイ の あきらか に しめす ところ で ある。 モジ に したしむ よう に なって から、 オンナ を だいて も いっこう たのしゅう なくなった と いう ウッタエ も あった。 もっとも、 こう いいだした の は、 70 サイ を こした ロウジン で ある から、 これ は モジ の せい では ない かも しれぬ。 ナブ アヘ エリバ は こう かんがえた。 エジプトジン は、 ある もの の カゲ を、 その もの の タマシイ の イチブ と みなして いる よう だ が、 モジ は、 その カゲ の よう な もの では ない の か。
 シシ と いう ジ は、 ホンモノ の シシ の カゲ では ない の か。 それで、 シシ と いう ジ を おぼえた リョウシ は、 ホンモノ の シシ の カワリ に シシ の カゲ を ねらい、 オンナ と いう ジ を おぼえた オトコ は、 ホンモノ の オンナ の カワリ に オンナ の カゲ を だく よう に なる の では ない か。 モジ の なかった ムカシ、 ピル ナピシュチム の コウズイ イゼン には、 ヨロコビ も チエ も みんな チョクセツ に ニンゲン の ナカ に はいって きた。 イマ は、 モジ の ヴェイル を かぶった ヨロコビ の カゲ と チエ の カゲ と しか、 ワレワレ は しらない。 チカゴロ ヒトビト は モノオボエ が わるく なった。 これ も モジ の セイ の イタズラ で ある。 ヒトビト は、 もはや、 かきとめて おかなければ、 なにひとつ おぼえる こと が できない。 キモノ を きる よう に なって、 ニンゲン の ヒフ が よわく みにくく なった。 ノリモノ が ハツメイ されて、 ニンゲン の アシ が よわく みにくく なった。 モジ が フキュウ して、 ヒトビト の アタマ は、 もはや、 はたらかなく なった の で ある。
 ナブ アヘ エリバ は、 ある ショモツキョウ の ロウジン を しって いる。 その ロウジン は、 ハクガク な ナブ アヘ エリバ より も さらに ハクガク で ある。 カレ は、 スメリヤ-ゴ や アラメヤ-ゴ ばかり で なく、 パピルス や ヨウヒシ に しるされた エジプト モジ まで すらすら と よむ。 およそ モジ に なった コダイ の こと で、 カレ の しらぬ こと は ない。 カレ は ツクルチ ニニブ イッセイ オウ の チセイ ダイ ナンネン-メ の ナンガツ ナンニチ の テンコウ まで しって いる。 しかし、 キョウ の テンキ は ハレ か クモリ か キ が つかない。 カレ は、 ショウジョ サビツ が ギルガメシュ を なぐさめた コトバ をも そらんじて いる。 しかし、 ムスコ を なくした リンジン を なんと いって なぐさめて よい か、 しらない。 カレ は、 アダッド ニラリ オウ の キサキ、 サンムラマット が どんな イショウ を このんだ か も しって いる。 しかし、 カレ ジシン が イマ どんな イフク を きて いる か、 まるで キ が ついて いない。 なんと カレ は モジ と ショモツ と を あいした で あろう! よみ、 そらんじ、 アイブ する だけ では あきたらず、 それ を あいする の あまり に、 カレ は、 ギルガメシュ デンセツ の サイコハン の ネンドバン を かみくだき、 ミズ に とかして のんで しまった こと が ある。 モジ の セイ は カレ の メ を ヨウシャ なく くいあらし、 カレ は、 ひどい キンガン で ある。 あまり メ を ちかづけて ショモツ ばかり よんで いる ので、 カレ の ワシガタ の ハナ の サキ は、 ネンドバン と すれあって かたい タコ が できて いる。 モジ の セイ は、 また、 カレ の セボネ をも むしばみ、 カレ は、 ヘソ に アゴ の くっつきそう な セムシ で ある。 しかし、 カレ は、 おそらく ジブン が セムシ で ある こと を しらない で あろう。 セムシ と いう ジ なら、 カレ は、 イツツ の ことなった クニ の ジ で かく こと が できる の だ が。 ナブ アヘ エリバ ハカセ は、 この オトコ を、 モジ の セイレイ の ギセイシャ の ダイイチ に かぞえた。 ただ、 こうした ガイカン の ミジメサ にも かかわらず、 この ロウジン は、 じつに ――まったく うらやましい ほど―― いつも コウフク そう に みえる。 これ が フシン と いえば、 フシン だった が、 ナブ アヘ エリバ は、 それ も モジ の レイ の ビヤク の ごとき カンカツ な マリョク の せい と みなした。
 たまたま アシュル バニ アパル ダイオウ が ヤマイ に かかられた。 ジイ の アラッド ナナ は、 この ヤマイ かるからず と みて、 ダイオウ の ゴイショウ を かり、 みずから これ を まとうて、 アッシリヤ オウ に ふんした。 これ に よって、 シニガミ エレシュキガル の メ を あざむき、 ヤマイ を ダイオウ から オノレ の ミ に てんじよう と いう の で ある。 この コライ の イカ の ジョウホウ に たいして、 セイネン の イチブ には、 フシン の メ を むける モノ が ある。 これ は あきらか に フゴウリ だ、 エレシュキガル-シン とも あろう もの が、 あんな コドモダマシ の ケイ に あざむかれる はず が ある か、 と、 カレラ は いう。 セキガク ナブ アヘ エリバ は これ を きいて いや な カオ を した。 セイネン ら の ごとく、 ナニゴト にも ツジツマ を あわせたがる こと の ナカ には、 なにかしら おかしな ところ が ある。 ゼンシン アカマミレ の オトコ が、 1 カショ だけ、 たとえば アシ の ツマサキ だけ、 むやみ に うつくしく かざって いる よう な、 そういう おかしな ところ が。 カレラ は、 シンピ の クモ の ナカ に おける ニンゲン の チイ を わきまえぬ の じゃ。 ロウハカセ は センパク な ゴウリ シュギ を イッシュ の ヤマイ と かんがえた。 そして、 その ヤマイ を はやらせた もの は、 ウタガイ も なく、 モジ の セイレイ で ある。
 ある ヒ わかい レキシカ (あるいは キュウテイ の キロクガカリ) の イシュデイ ナブ が たずねて きて ロウハカセ に いった。 レキシ とは ナン ぞや? と。 ロウハカセ が あきれた カオ を して いる の を みて、 わかい レキシカ は セツメイ を くわえた。 サキゴロ の バビロン オウ シャマシュ シュム ウキン の サイゴ に ついて イロイロ な セツ が ある。 みずから ヒ に とうじた こと だけ は たしか だ が、 サイゴ の ヒトツキ ほど の アイダ、 ゼツボウ の あまり、 ゲンゴ に ぜっした イントウ の セイカツ を おくった と いう もの も あれば、 マイニチ ひたすら ケッサイ して シャマシュ-シン に いのりつづけた と いう もの も ある。 ダイイチ の キサキ ただ ヒトリ と ともに ヒ に いった と いう セツ も あれば、 スウヒャク の ヒショウ を マキ の ヒ に とうじて から ジブン も ヒ に いった と いう セツ も ある。 なにしろ モジドオリ ケムリ に なった こと とて、 どれ が ただしい の か いっこう ケントウ が つかない。 ちかぢか、 ダイオウ は それら の ウチ の ヒトツ を えらんで、 ジブン に それ を キロク する よう めいじたもう で あろう。 これ は ほんの イチレイ だ が、 レキシ とは これ で いい の で あろう か。
 ケンメイ な ロウハカセ が ケンメイ な チンモク を まもって いる の を みて、 わかい レキシカ は、 ツギ の よう な カタチ に トイ を かえた。 レキシ とは、 ムカシ、 あった コトガラ を いう の で あろう か? それとも、 ネンドバン の モジ を いう の で あろう か?
 シシガリ と、 シシガリ の ウキボリ と を コンドウ して いる よう な ところ が この トイ の ナカ に ある。 ハカセ は それ を かんじた が、 はっきり クチ で いえない ので、 ツギ の よう に こたえた。 レキシ とは、 ムカシ あった コトガラ で、 かつ ネンドバン に しるされた もの で ある。 この フタツ は おなじ こと では ない か。
 カキモラシ は? と レキシカ が きく。
 カキモラシ? ジョウダン では ない、 かかれなかった こと は、 なかった こと じゃ。 メ の でぬ タネ は、 けっきょく ハジメ から なかった の じゃ わい。 レキシ とは な、 この ネンドバン の こと じゃ。
 わかい レキシカ は なさけなさそう な カオ を して、 さししめされた カワラ を みた。 それ は この クニ サイダイ の レキシカ ナブ シャリム シュヌ しるす ところ の サルゴン オウ ハルディア セイトウコウ の 1 マイ で ある。 はなしながら ハカセ の はきすてた ザクロ の シュシ が その ヒョウメン に きたならしく くっついて いる。
 ボルシッパ なる メイチ の カミ ナブー の めしつかいたもう モジ の セイレイ ども の おそろしい チカラ を、 イシュデイ ナブ よ、 キミ は まだ しらぬ と みえる な。 モジ の セイ ども が、 イチド ある コトガラ を とらえて、 これ を オノレ の スガタ で あらわす と なる と、 その コトガラ は もはや、 フメツ の セイメイ を える の じゃ。 ハンタイ に、 モジ の セイ の チカラ ある テ に ふれなかった もの は、 いかなる もの も、 その ソンザイ を うしなわねば ならぬ。 タイコ イライ の アヌ-エンリル の ショ に かきあげられて いない ホシ は、 なにゆえに ソンザイ せぬ か? それ は、 カレラ が アヌ-エンリル の ショ に モジ と して のせられなかった から じゃ。 ダイ マルズック-セイ (モクセイ) が テンカイ の ボクヨウシャ (オリオン) の サカイ を おかせば カミガミ の イカリ が くだる の も、 ゲツリン の ジョウブ に ショク が あらわれれば フモールジン が ワザワイ を こうむる の も、 みな、 コショ に モジ と して しるされて あれば こそ じゃ。 コダイ スメリヤジン が ウマ と いう ケモノ を しらなんだ の も、 カレラ の アイダ に ウマ と いう ジ が なかった から じゃ。 この モジ の セイレイ の チカラ ほど おそろしい もの は ない。 キミ や ワシラ が、 モジ を つかって カキモノ を しとる など と おもったら オオマチガイ。 ワシラ こそ カレラ モジ の セイレイ に こきつかわれる シモベ じゃ。 しかし、 また、 カレラ セイレイ の もたらす ガイ も ずいぶん ひどい。 ワシ は イマ それ に ついて ケンキュウチュウ だ が、 キミ が イマ、 レキシ を しるした モジ に ウタガイ を かんじる よう に なった の も、 つまり は、 キミ が モジ に したしみすぎて、 その レイ の ドッキ に あたった ため で あろう。
 わかい レキシカ は ミョウ な カオ を して かえって いった。 ロウハカセ は なお しばらく、 モジ の レイ の ガイドク が あの ユウイ な セイネン をも そこなおう と して いる こと を かなしんだ。 モジ に したしみすぎて かえって モジ に ウタガイ を いだく こと は、 けっして ムジュン では ない。 センジツ ハカセ は セイライ の ケンタン に まかせて ヒツジ の アブリニク を ほとんど 1 トウ ブン も たいらげた が、 ソノゴ とうぶん、 いきた ヒツジ の カオ を みる の も いや に なった こと が ある。
 セイネン レキシカ が かえって から しばらく して、 ふと、 ナブ アヘ エリバ は、 うすく なった チヂレッケ の アタマ を おさえて かんがえこんだ。 キョウ は、 どうやら、 ワシ は、 あの セイネン に むかって、 モジ の レイ の イリョク を サンビ し は せなんだ か? いまいましい こと だ、 と カレ は シタウチ を した。 ワシ まで が モジ の レイ に たぶらかされて おる わ。
 じっさい、 もう だいぶ マエ から、 モジ の レイ が ある おそろしい ヤマイ を ロウハカセ の ウエ に もたらして いた の で ある。 それ は カレ が モジ の レイ の ソンザイ を たしかめる ため に、 ヒトツ の ジ を イクニチ も じっと にらみくらした とき イライ の こと で ある。 その とき、 イマ まで イッテイ の イミ と オン と を もって いた はず の ジ が、 こつぜん と ブンカイ して、 たんなる チョクセン ども の アツマリ に なって しまった こと は マエ に いった とおり だ が、 それ イライ、 それ と おなじ よう な ゲンショウ が、 モジ イガイ の あらゆる もの に ついて も おこる よう に なった。 カレ が 1 ケン の イエ を じっと みて いる うち に、 その イエ は、 カレ の メ と アタマ の ナカ で、 モクザイ と イシ と レンガ と シックイ との イミ も ない シュウゴウ に ばけて しまう。 これ が どうして ニンゲン の すむ ところ で なければ ならぬ か、 わからなく なる。 ニンゲン の カラダ を みて も、 その とおり。 みんな イミ の ない キカイ な カタチ を した ブブン ブブン に ブンセキ されて しまう。 どうして、 こんな カッコウ を した もの が、 ニンゲン と して とおって いる の か、 まるで リカイ できなく なる。 メ に みえる もの ばかり では ない。 ニンゲン の ニチジョウ の イトナミ、 スベテ の シュウカン が、 おなじ キタイ な ブンセキビョウ の ため に、 ぜんぜん イマ まで の イミ を うしなって しまった。 もはや、 ニンゲン セイカツ の スベテ の コンテイ が うたがわしい もの に みえる。 ナブ アヘ エリバ ハカセ は キ が ちがいそう に なって きた。 モジ の レイ の ケンキュウ を これ イジョウ つづけて は、 シマイ に その レイ の ため に イノチ を とられて しまう ぞ と おもった。 カレ は こわく なって、 そうそう に ケンキュウ ホウコク を まとめあげ、 これ を アシュル バニ アパル ダイオウ に けんじた。 ただし、 ナカ に、 ジャッカン の セイジテキ イケン を くわえた こと は もちろん で ある。 ブ の クニ アッシリヤ は、 いまや、 みえざる モジ の セイレイ の ため に、 まったく むしばまれて しまった。 しかも、 これ に きづいて いる モノ は ほとんど ない。 イマ に して モジ への モウモクテキ スウハイ を あらためずんば、 ノチ に ホゾ を かむ とも およばぬ で あろう ウンヌン。
 モジ の レイ が、 この ザンボウシャ を タダ で おく わけ が ない。 ナブ アヘ エリバ の ホウコク は、 いたく ダイオウ の ゴキゲン を そんじた。 ナブー-シン の ネツレツ な サンギョウシャ で トウジ ダイイチリュウ の ブンカジン たる ダイオウ に して みれば、 これ は トウゼン の こと で ある。 ロウハカセ は ソクジツ キンシン を めいぜられた。 ダイオウ の ヨウジ から の シフ たる ナブ アヘ エリバ で なかったら、 おそらく、 いきながら の カワハギ に しょせられた で あろう。 おもわぬ ゴフキョウ に がくぜん と した ハカセ は、 ただちに、 これ が カンケツ な モジ の レイ の フクシュウ で ある こと を さとった。
 しかし、 まだ これ だけ では なかった。 スウジツ-ゴ ニネヴェ、 アルベラ の チホウ を おそった ダイジシン の とき、 ハカセ は、 たまたま ジカ の ショコ の ナカ に いた。 カレ の イエ は ふるかった ので、 カベ が くずれ ショカ が たおれた。 おびただしい ショセキ が―― スウヒャクマイ の おもい ネンドバン が、 モジ ども の すさまじい ノロイ の コエ と ともに この ザンボウシャ の ウエ に おちかかり、 カレ は ムザン にも アッシ した。


コメントを投稿