カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ある オンナ (ゼンペン 10)

2021-08-07 | アリシマ タケオ
 20

 フネ の ついた その バン、 タガワ フサイ は ミマイ の コトバ も ワカレ の コトバ も のこさず に、 オオゼイ の デムカエニン に かこまれて どうどう と イギ を ととのえて ジョウリク して しまった。 その ヨ の ヒトビト の ナカ には わざわざ ヨウコ の ヘヤ を おとずれて きた モノ が スウニン は あった けれども、 ヨウコ は いかにも シタシミ を こめた ワカレ の コトバ を あたえ は した が、 アト まで ココロ に のこる ヒト とて は ヒトリ も いなかった。 その バン ジムチョウ が きて、 せまっこい、 ブドワール の よう な センシツ で おそく まで しめじめ と うちかたった アイダ に、 ヨウコ は ふと 2 ド ほど オカ の こと を おもって いた。 あんな に ジブン を したって い は した が オカ も ジョウリク して しまえば、 せんかたなく ボストン の ほう に たびだつ ヨウイ を する だろう。 そして やがて ジブン の こと も いつ とは なし に わすれて しまう だろう。 それにしても なんと いう ジョウヒン な うつくしい セイネン だったろう。 こんな こと を ふと おもった の も しかし ツカノマ で、 その ツイオク は ココロ の ト を たたいた と おもう と はかなく も どこ か に きえて しまった。 イマ は ただ キムラ と いう ジャマ な カンガエ が、 もやもや と ムネ の ウチ に たちまよう ばかり で、 その オク には ジムチョウ の うちかちがたい くらい チカラ が、 マオウ の よう に コユルギ も せず うずくまって いる のみ だった。
 ニヤク の めまぐるしい サワギ が フツカ つづいた アト の エノシママル は、 なきわめく イゾク に とりかこまれた うつろ な シガイ の よう に、 がらん と しずまりかえって、 そうぞうしい サンバシ の ザットウ の アイダ に さびしく よこたわって いる。
 スイフ が ワギリ に した ヤシ の ミ で よごれた カンパン の イタ を タンチョウ に ごしごし ごしごし と こする オト が、 トキ と いう もの を ゆるゆる すりへらす ヤスリ の よう に ひがなひねもす きこえて いた。
 ヨウコ は はやく はやく ここ を きりあげて ニホン に かえりたい と いう こどもじみた カンガエ の ホカ には、 おかしい ほど その ホカ の キョウミ を うしなって しまって、 タキョウ の フウケイ に イチベツ を あたえる こと も いとわしく、 ジブン の ヘヤ の ナカ に こもりきって、 ひたすら ハッセン の ヒ を まちわびた。 もっとも キムラ が マイニチ ベイコク と いう ニオイ を ハナ を つく ばかり ミノマワリ に ただよわせて、 ヨウコ を おとずれて くる ので、 ヨウコ は うっかり ネドコ を はなれる こと も できなかった。
 キムラ は くる たび ごと に ぜひ ベイコク の イシャ に ケンコウ シンダン を たのんで、 だいじなければ おもいきって ケンエキカン の ケンエキ を うけて、 ともかくも ジョウリク する よう に と すすめて みた が、 ヨウコ は どこまでも いや を いいとおす ので、 フタリ の アイダ には ときどき キケン な チンモク が つづく こと も めずらしく なかった。 ヨウコ は しかし いつでも テギワ よく その バアイ バアイ を あやつって、 それから あまい カンゴ を ひきだす だけ の キサイ を もちあわして いた ので、 この 1 カゲツ ほど みしらぬ ヒト の アイダ に たちまじって、 ビンボウ の クツジョク を ぞんぶん に なめつくした キムラ は、 みるみる オンジュウ な ヨウコ の コトバ や ヒョウジョウ に よいしれる の だった。 カリフォルニヤ から くる みずみずしい ブドウ や バナナ を キヨウ な キョウギ の コカゴ に もったり、 うつくしい ハナタバ を たずさえたり して、 ヨウコ の アサゲショウ が しまった か と おもう コロ には キムラ が かかさず たずねて きた。 そして マイニチ くどくど と コウロク に ヨウコ の ヨウダイ を ききただした。 コウロク は イイカゲン な こと を いって イチニチ ノバシ に のばして いる ので たまらなく なって キムラ が ジムチョウ に ソウダン する と、 ジムチョウ は コウロク より も さらに ヨウリョウ を えない ウケコタエ を した。 しかたなし に キムラ は トホウ に くれて、 また ヨウコ に かえって きて なきつく よう に ジョウリク を せまる の で あった。 その マイニチ の イキサツ を ヨル に なる と ヨウコ は ジムチョウ と はなしあって ワライ の タネ に した。
 ヨウコ は なんと いう こと なし に、 キムラ を こまらして みたい、 いじめて みたい と いう よう な フシギ な ザンコク な ココロ を、 キムラ に たいして かんずる よう に なって いった。 ジムチョウ と キムラ と を メノマエ に おいて、 なにも しらない キムラ を、 ジムチョウ が イチリュウ の きびきび した アクラツ な テ で おもうさま ホンロウ して みせる の を ながめて たのしむ の が イッシュ の コシツ の よう に なった。 そして ヨウコ は キムラ を とおして ジブン の カコ の スベテ に チ の したたる フクシュウ を あえて しよう と する の だった。 そんな バアイ に、 ヨウコ は よく どこ か で ウロオボエ に した クレオパトラ の ソウワ を おもいだして いた。 クレオパトラ が ジブン の ウンメイ の キュウハク した の を しって ジサツ を おもいたった とき、 イクニン も ドレイ を メノマエ に ひきださして、 それ を ドクジャ の エジキ に して、 その イクニン も の ムコ の ヒトビト が もだえながら ゼツメイ する の を、 マユ も うごかさず に みて いた と いう ソウワ を おもいだして いた。 ヨウコ には カコ の スベテ の ジュソ が キムラ の イッシン に あつまって いる よう にも おもいなされた。 ハハ の シイタゲ、 イソガワ ジョシ の ジュッスウ、 キンシン の アッパク、 シャカイ の カンシ、 オンナ に たいする オトコ の キユ、 オンナ の コウゴウ など と いう ヨウコ の テキ を キムラ の イッシン に おっかぶせて、 それ に オンナ の ココロ が たくらみだす ザンギャク な シウチ の あらん カギリ を そそぎかけよう と する の で あった。
「アナタ は ウシ ノ コク マイリ の ワラニンギョウ よ」
 こんな こと を どうか した ヒョウシ に メン と むかって キムラ に いって、 キムラ が ケゲン な カオ で その イミ を くみかねて いる の を みる と、 ヨウコ は ジブン にも ワケ の わからない ナミダ を メ に いっぱい ためながら ヒステリカル に わらいだす よう な こと も あった。
 キムラ を はらいすてる こと に よって、 ヘビ が カラ を ぬけでる と おなじ に、 ジブン の スベテ の カコ を ほうむって しまう こと が できる よう にも おもいなして みた。
 ヨウコ は また ジムチョウ に、 どれほど キムラ が ジブン の おもう まま に なって いる か を みせつけよう と する ユウワク も かんじて いた。 ジムチョウ の メノマエ では ずいぶん ランボウ な こと を キムラ に いったり させたり した。 ときには ジムチョウ の ほう が みかねて フタリ の アイダ を なだめ に かかる こと さえ ある くらい だった。
 ある とき キムラ の きて いる ヨウコ の ヘヤ に ジムチョウ が きあわせた こと が あった。 ヨウコ は マクラモト の イス に キムラ を こしかけさせて、 トウキョウ を たった とき の ヨウス を くわしく はなして きかせて いる ところ だった が、 ジムチョウ を みる と いきなり ヨウス を かえて、 さもさも キムラ を うとんじた ふう で、
「アナタ は ムコウ に いらしって ちょうだい」
と キムラ を ムコウ の ソファ に ゆく よう に メ で サシズ して、 ジムチョウ を その アト に すわらせた。
「さ、 アナタ こちら へ」
と いって アオムケ に ねた まま ウワメ を つかって みやりながら、
「いい オテンキ の よう です こと ね。 ……あの ときどき ごーっ と カミナリ の よう な オト の する の は ナニ?…… ワタシ うるさい」
「トロ です よ」
「そう…… オキャクサマ が たんと おあり ですって ね」
「さあ すこし は しっとる モノ が ある もん だで」
「ユウベ も その うつくしい オキャク が いらしった の? とうとう オハナシ に おみえ に ならなかった のね」
 キムラ を マエ に おきながら、 この ムボウ と さえ みえる コトバ を エンリョ エシャク も なく いいだす の には、 さすが の ジムチョウ も ぎょっと した らしく、 ヘンジ も ろくろく しない で キムラ の ほう に むいて、
「どう です マッキンレー は。 おどろいた こと が もちあがりおった もん です ね」
と ワダイ を てんじよう と した。 この フネ の コウカイチュウ シヤトル に ちかく なった ある ヒ、 トウジ の ダイトウリョウ マッキンレー は キョウト の タンジュウ に たおれた ので、 この ジケン は ベイコク での ウワサ の チュウシン に なって いる の だった。 キムラ は その トウジ の モヨウ を くわしく シンブンシ や ヒト の ウワサ で しりあわせて いた ので、 ノリキ に なって その ハナシ に ミ を いれよう と する の を、 ヨウコ は ニベ も なく さえぎって、
「ナン です ね アナタ は、 キフジン の ハナシ の コシ を おったり して。 そんな ゴマカシ ぐらい では だまされて は いません よ。 クラチ さん、 どんな うつくしい カタ です。 アメリカ キッスイ の ヒト って どんな なん でしょう ね。 ワタシ、 みたい。 あわして くださいまし な コンド きたら。 ここ に つれて きて くださる ん です よ。 ホカ の もの なんぞ なんにも みたく は ない けれども、 これ ばかり は ぜひ みとう ござんす わ。 そこ に いく と ね、 キムラ なんぞ は そりゃあ ヤボ な もん です こと よ」
と いって、 キムラ の いる ほう を はるか に シタメ で みやりながら、
「キムラ さん どう? こっち に いらしって から ちっと は オンナ の オトモダチ が おでき に なって? レディー フレンド と いう の が?」
「それ が できん で たまる か」
と ジムチョウ は キムラ の ナイコウ を みぬいて ウラガキ する よう に おおきな コエ で いった。
「ところが できて いたら オナグサミ、 そう でしょう? クラチ さん まあ こう なの。 キムラ が ワタシ を もらい に きた とき には ね、 イシ の よう に かたく すわりこんで しまって、 まるで イノチ の トリヤリ でも しかねない ダンパン の シカタ です のよ。 その コロ ハハ は タイビョウ で ふせって いました の。 なんとか ハハ に おっしゃって ね、 ハハ に。 ワタシ、 わすれちゃ ならない コトバ が ありました わ。 ええと…… そうそう (キムラ の クチョウ を ジョウズ に まねながら) 『ワタシ、 もし ホカ の ヒト に ココロ を うごかす よう な こと が ありましたら カミサマ の マエ に ツミビト です』 ですって…… そういう チョウシ です もの」
 キムラ は すこし ドキ を ほのめかす カオツキ を して、 トオク から ヨウコ を みつめた まま クチ も きかない で いた。 ジムチョウ は からから と わらいながら、
「それじゃ キムラ さん イマゴロ は カミサマ の マエ に いいくらかげん ツミビト に なっとる でしょう」
と キムラ を みかえした ので、 キムラ も やむなく にがりきった ワライ を うかべながら、
「オノレ を もって ヒト を はかる ヒッポウ です ね」
と こたえ は した が、 ヨウコ の コトバ を ヒニク と かいして、 ヒトマエ で たしなめる に して は やや かるすぎる し、 ジョウダン と みて わらって しまう に して は たしか に つよすぎる ので、 キムラ の カオイロ は ミョウ に ぎごちなく こだわって しまって いつまでも はれなかった。 ヨウコ は クチビル だけ に かるい ワライ を うかべながら、 タンジュウ の みなぎった よう な その カオ を シタメ で こころよげ に まじまじ と ながめやった。 そして にがい セイリョウザイ でも のんだ よう に ムネ の ツカエ を すかして いた。
 やがて ジムチョウ が ザ を たつ と、 ヨウコ は、 マユ を ひそめて こころよからぬ カオ を した キムラ を、 しいて また モト の よう に ジブン の ソバ ちかく すわらせた。
「いや な ヤツ っちゃ ない の。 あんな ハナシ でも して いない と、 ホカ に なんにも ハナシ の タネ の ない ヒト です の…… アナタ さぞ ゴメイワク でしたろう ね」
と いいながら、 ジムチョウ に した よう に ウワメ に コビ を あつめて じっと キムラ を みた。 しかし キムラ の カンジョウ は ひどく ほつれて、 ヨウイ に とける ヨウス は なかった。 ヨウコ を コイ に イアツ しよう と たくらむ わざと な アラタマリカタ も みえた。 ヨウコ は イタズラモノ-らしく ハラ の ナカ で くすくす わらいながら、 キムラ の カオ を コウイ を こめた メツキ で ながめつづけた。 キムラ の ココロ の オク には ナニ か いいだして みたい くせ に、 なんとなく ハラ の ナカ が みすかされそう で、 いいだしかねて いる もの が ある らしかった が、 とぎれがち ながら ハナシ が コハントキ も すすんだ とき、 トテツ も なく、
「ジムチョウ は、 ナン です か、 ヨル に なって まで アナタ の ヘヤ に はなし に くる こと が ある ん です か」
と さりげなく たずねよう と する らしかった が、 その ゴビ は ワレ にも なく ふるえて いた。 ヨウコ は ワナ に かかった ムチ な ケモノ を あわれみわらう よう な ビショウ を クチビル に うかべながら、
「そんな こと が されます もの か この ちいさな フネ の ナカ で。 かんがえて も ゴラン なさいまし。 さきほど ワタシ が いった の は、 コノゴロ は マイバン ヨル に なる と ヒマ なので、 あの ヒトタチ が ショクドウ に あつまって きて、 サケ を のみながら おおきな コエ で いろんな くだらない ハナシ を する ん です の。 それ が よく ここ まで きこえる ん です。 それに ユウベ あの ヒト が こなかった から からかって やった だけ なん です のよ。 コノゴロ は タチ の わるい オンナ まで が タイ を くむ よう に して どっさり フネ に きて、 それ は そうぞうしい ん です の。 ……ほほほほ アナタ の クロウショウ ったら ない」
 キムラ は とりつく シマ を みうしなって、 ニノク が つげない で いた。 それ を ヨウコ は かわいい メ を あげて、 ムジャキ な カオ を して みやりながら わらって いた。 そして ジムチョウ が はいって きた とき とぎらした ハナシ の イトグチ を みごと に わすれず に ひろいあげて、 トウキョウ を たつ とき の モヨウ を また シサイ に はなしつづけた。
 こうした ふう で カットウ は ヨウコ の テ ヒトツ で カッテ に まぎらされたり ホゴ されたり した。
 ヨウコ は ヒトリ の オトコ を しっかり と ジブン の ハジ の ウチ に おいて、 それ を ネコ が ネズミ でも なぶる よう に、 カッテ に なぶって たのしむ の を やめる こと が できなかった と ドウジ に、 ときどき は キムラ の カオ を ヒトメ みた ばかり で、 ムシズ が はしる ほど エンオ の ジョウ に かりたてられて、 われながら どうして いい か わからない こと も あった。 そんな とき には ただ イチズ に フクツウ を コウジツ に して、 ヒトリ に なって、 ハラダチマギレ に ありあわせた もの を とって ユカ の ウエ に ほうったり した。 もう なにもかも いって しまおう。 もてあそぶ にも たらない キムラ を ちかづけて おく には あたらない こと だ。 なにもかも あきらか に して キブン だけ でも さっぱり したい と そう おもう こと も あった。 しかし ドウジ に ヨウコ は センジュツカ の レイセイサ を もって、 ジッサイ モンダイ を カンジョウ に いれる こと も わすれ は しなかった。 ジムチョウ を しっかり ジブン の テ の ナカ に にぎる まで は、 ソウケイ に キムラ を にがして は ならない。 「ヤドヤ きめず に ワラジ を ぬぐ」 ……ハハ が こんな こと を ヨウコ の ちいさい とき に おしえて くれた の を おもいだしたり して、 ヨウコ は ヒトリ で ニガワライ も した。
 そう だ、 まだ キムラ を にがして は ならぬ。 ヨウコ は ココロ の ウチ に かきしるして でも おく よう に、 ウワメ を つかいながら こんな こと を おもった。
 また ある とき ヨウコ の テモト に ベイコク の キッテ の はられた テガミ が とどいた こと が あった。 ヨウコ は フネ へ なぞ あてて テガミ を よこす ヒト は ない はず だ が と おもって ひらいて みよう と した が、 また レイ の イタズラ な ココロ が うごいて、 わざと キムラ に カイフウ させた。 その ナイヨウ が どんな もの で ある か の ソウゾウ も つかない ので、 それ を キムラ に よませる の は、 ブキ を アイテ に わたして おいて、 ジブン は スデ で カクトウ する よう な もの だった。 ヨウコ は そこ に キョウミ を もった。 そして どんな フイ な ナンダイ が もちあがる だろう か と、 ココロ を ときめかせながら ケッカ を まった。 その テガミ は ヨウコ に カンタン な アイサツ を のこした まま ジョウリク した オカ から きた もの だった。 いかにも ヒトガラ に フニアイ な ヘタ な ジタイ で、 ヨウコ が ひょっと する と ジョウリク を みあわせて そのまま かえる と いう こと を きいた が、 もし そう なったら ジブン も だんぜん キチョウ する。 キチガイ-じみた シワザ と おわらい に なる かも しれない が、 ジブン には どう かんがえて みて も それ より ホカ に ミチ は ない。 ヨウコ に はなれて ロボウ の ヒト の アイダ に ごしたら それこそ キョウキ に なる ばかり だろう。 イマ まで うちあけなかった が、 ジブン は ニホン でも クッシ な ゴウショウ の ミウチ に ヒトリゴ と うまれながら、 カラダ が よわい の と ハハ が ママハハ で ある ため に、 チチ の ジヒ から ヨウコウ する こと に なった が、 ジブン には ココク が したわれる ばかり で なく、 ヨウコ の よう に シタシミ を おぼえさして くれた ヒト は ない ので、 ヨウコ なし には イッコク も ガイコク の ツチ に アシ を とどめて いる こと は できぬ。 キョウダイ の ない ジブン には ヨウコ が ゼンセ から の アネ と より おもわれぬ。 ジブン を あわれんで オトウト と おもって くれ。 せめては ヨウコ の コエ の きこえる ところ カオ の みえる ところ に いる の を ゆるして くれ。 ジブン は それ だけ の アワレミ を えたい ばかり に、 カゾク や コウケンニン の ソシリ も なんとも おもわず に キコク する の だ。 ジムチョウ にも それ を ゆるして くれる よう に たのんで もらいたい。 と いう こと が、 すこし あまい、 しかし シンソツ な ネツジョウ を こめた ブンタイ で ながなが と かいて あった の だった。
 ヨウコ は キムラ が とう まま に つつまず オカ との カンケイ を はなして きかせた。 キムラ は かんがえぶかく それ を きいて いた が、 そんな ヒト なら ぜひ あって ハナシ を して みたい と いいだした。 ジブン より イチダン わかい と みる と、 かくばかり カンダイ に なる キムラ を みて ヨウコ は フカイ に おもった。 よし、 それでは オカ を とおして クラチ との カンケイ を キムラ に しらせて やろう。 そして キムラ が シット と フンヌ と で マックロ に なって かえって きた とき、 それ を おもう まま あやつって また モト の サヤ に おさめて みせよう。 そう おもって ヨウコ は キムラ の いう まま に まかせて おいた。
 ツギ の アサ、 キムラ は ふかい カンゲキ の イロ を たたえて フネ に きた。 そして オカ と カイケン した とき の ヨウス を くわしく ものがたった。 オカ は オリエンタル ホテル の リッパ な イッシツ に たった ヒトリ で いた が、 その ホテル には タガワ フサイ も ドウシュク なので、 ニホンジン の デイリ が うるさい と いって こまって いた。 キムラ の ホウモン した と いう の を きいて、 ひどく なつかしそう な ヨウス で でむかえて、 アニ でも うやまう よう に もてなして、 やや おちついて から カクシダテ なく シンソツ に ヨウコ に たいする ジブン の ドウケイ の ホド を うちあけた ので、 キムラ は ジブン の いおう と する コクハク を、 タニン の クチ から まざまざ と きく よう な せつ な ジョウ に ほだされて、 モライナキ まで して しまった。 フタリ は たがいに あいあわれむ と いう よう な ナツカシミ を かんじた。 これ を エン に キムラ は どこまでも オカ を オトウト とも おもって したしむ つもり だ。 が、 ニホン に かえる ケッシン だけ は おもいとどまる よう に すすめて おいた と いった。 オカ は さすが に ソダチ だけ に ジムチョウ と ヨウコ との アイダ の イキサツ を ソウゾウ に まかせて、 はしたなく キムラ に かたる こと は しなかった らしい。 キムラ は その こと に ついて は なんとも いわなかった。 ヨウコ の キタイ は まったく はずれて しまった。 ヤクシャベタ な ため に、 せっかく の シバイ が シバイ に ならず に しまった こと を ものたらなく おもった。 しかし この こと が あって から オカ の こと が ときどき ヨウコ の アタマ に うかぶ よう に なった。 オンナ に して も みまほしい か の きゃしゃ な セイシュン の スガタ が どうか する と いとしい オモイデ と なって、 ヨウコ の ココロ の スミ に ひそむ よう に なった。
 フネ が シヤトル に ついて から 5~6 ニチ たって、 キムラ は タガワ フサイ にも メンカイ する キカイ を つくった らしかった。 その コロ から キムラ は とつぜん ワキメ にも それ と キ が つく ほど かんがえぶかく なって、 ともすると ヨウコ の コトバ すら ききおとして あわてたり する こと が あった。 そして ある とき とうとう ヒトリ ムネ の ウチ には おさめて いられなく なった と みえて、
「ワタシ にゃ アナタ が なぜ あんな ヒト と ちかしく する か わかりません がね」
と ジムチョウ の こと を ウワサ の よう に いった。 ヨウコ は すこし フクブ に イタミ を おぼえる の を ことさら コチョウ して ワキバラ を ヒダリテ で おさえて、 マユ を ひそめながら きいて いた が、 もっともらしく イクド も うなずいて、
「それ は ホントウ に おっしゃる とおり です から なにも このんで ちかづきたい とは おもわない ん です けれども、 これまで ずいぶん セワ に なって います し ね、 それに ああ みえて いて おもいのほか シンセツギ の ある ヒト です から、 ボーイ でも スイフ でも こわがりながら なついて います わ。 おまけに ワタシ オカネ まで かりて います もの」
と さも トウワク した らしく いう と、
「アナタ オカネ は なし です か」
 キムラ は ヨウコ の トウワクサ を ジブン の カオ にも あらわして いた。
「それ は おはなし した じゃ ありません か」
「こまった なあ」
 キムラ は よほど こまりきった らしく にぎった テ を ハナ の シタ に あてがって、 シタ を むいた まま しばらく シアン に くれて いた が、
「いくら ほど カリ に なって いる ん です」
「さあ シンサツリョウ や ジヨウヒン で 100 エン ちかく にも なって います かしらん」
「アナタ は カネ は まったく なし です ね」
 キムラ は さらに くりかえして いって タメイキ を ついた。
 ヨウコ は ものなれぬ オトウト を おしえいたわる よう に、
「それに まんいち ワタシ の ビョウキ が よく ならない で、 ひとまず ニホン へ でも かえる よう に なれば、 なおなお カエリ の フネ の ナカ では セワ に ならなければ ならない でしょう。 ……でも だいじょうぶ そんな こと は ない とは おもいます けれども、 サキザキ まで の カンガエ を つけて おく の が タビ に あれば いちばん ダイジ です もの」
 キムラ は なおも にぎった テ を ハナ の シタ に おいた なり、 なんにも いわず、 ミウゴキ も せず かんがえこんで いた。
 ヨウコ は すべなさそう に キムラ の その カオ を おもしろく おもいながら まじまじ と みやって いた。
 キムラ は ふと カオ を あげて しげしげ と ヨウコ を みた。 ナニ か そこ に ジ でも かいて あり は しない か と それ を よむ よう に。 そして だまった まま ふかぶか と タンソク した。
「ヨウコ さん。 ワタシ は ナニ から ナニ まで アナタ を しんじて いる の が いい こと なの でしょう か。 アナタ の ミ の ため ばかり おもって も いう ほう が いい か とも おもう ん です が……」
「では おっしゃって くださいまし な なんでも」
 ヨウコ の クチ は すこし シタシミ を こめて ジョウダン-らしく こたえて いた が、 その メ から は キムラ を だまらせる だけ の ヒカリ が いられて いた。 カルハズミ な こと を いやしくも いって みる が いい、 アタマ を さげさせない では おかない から。 そう その メ は たしか に いって いた。
 キムラ は おもわず ジブン の メ を たじろがして だまって しまった。 ヨウコ は カタイジ にも メ で ツヅケサマ に キムラ の カオ を むちうった。 キムラ は その シモト の ヒトツヒトツ を かんずる よう に どぎまぎ した。
「さ、 おっしゃって くださいまし…… さ」
 ヨウコ は その コトバ には どこまでも コウイ と シンライ と を こめて みせた。 キムラ は やはり チュウチョ して いた。 ヨウコ は いきなり テ を のばして キムラ を シンダイ に ひきよせた。 そして ハンブン おきあがって その ミミ に ちかく クチ を よせながら、
「アナタ みたい に みずくさい モノ の オッシャリカタ を なさる カタ も ない もん ね。 なんと でも おもって いらっしゃる こと を おっしゃって くだされば いい じゃ ありません か。 ……あ、 いたい…… いいえ さして いたく も ない の。 ナニ を おもって いらっしゃる ん だ か おっしゃって くださいまし、 ね、 さ。 ナン でしょう ねえ。 うかがいたい こと ね。 そんな タニン ギョウギ は…… あ、 あ、 いたい、 おお いたい…… ちょっと ここ の ところ を おさえて くださいまし。 ……さしこんで きた よう で…… あ、 あ」
と いいながら、 メ を つぶって、 トコ の ウエ に ねたおれる と、 キムラ の テ を もちそえて ジブン の ヒバラ を おさえさして、 つらそう に ハ を くいしばって シーツ に カオ を うずめた。 カタ で つく イキ が かすか に セッパク の シーツ を ふるわした。
 キムラ は あたふた しながら、 イマ まで の コトバ など は ソッチノケ に して カイホウ に かかった。

 21

 エノシママル は シヤトル に ついて から 12 ニチ-メ に トモヅナ を といて キコウ する はず に なって いた。 その シュッパツ が あと ミッカ に なった 10 ガツ 15 ニチ に、 キムラ は、 センイ の コウロク から、 ヨウコ は どうしても ひとまず キコク させる ほう が アンゼン だ と いう サイゴ の センコク を くだされて しまった。 キムラ は その とき には もう だいたい カクゴ を きめて いた。 かえろう と おもって いる ヨウコ の シタゴコロ を おぼろげ ながら みてとって、 それ を ひるがえす こと は できない と あきらめて いた。 ウンメイ に ジュウジュン な ヒツジ の よう に、 しかし しゅうねく ショウライ の キボウ を イノチ に して、 ゲンザイ の フマン に フクジュウ しよう と して いた。
 イド の たかい シヤトル に フユ の おそいかかって くる サマ は すさまじい もの だった。 カイガンセン に そうて はるか トオク まで レンゾク して みわたされる ロッキー の ヤマヤマ は もう たっぷり と ユキ が かかって、 おだやか な ユウゾラ に あらわれなれた クモ の ミネ も、 フルワタ の よう に カタチ の くずれた イロ の さむい アラレグモ に かわって、 ヒト を おびやかす しろい もの が、 いまにも チ を はらって ふりおろして くる か と おもわれた。 ウミゾイ に はえそろった アメリカ マツ の ミドリ ばかり が どくどくしい ほど くろずんで、 メ に たつ ばかり で、 カツヨウジュ の タグイ は、 いつのまにか、 ハ を はらいおとした エダサキ を ハリ の よう に するどく ソラ に むけて いた。 シヤトル の マチナミ が ある と おもわれる アタリ から は ――フネ の つながれて いる ところ から シガイ は みえなかった―― キュウ に バイエン が たちまさって、 せわしく フユジタク を ととのえながら、 やがて キタ ハンキュウ を つつんで せめよせて くる マッシロ な カンキ に たいして おぼつかない テイコウ を ヨウイ する よう に みえた。 ポッケット に リョウテ を さしいれて、 アタマ を チヂメギミ に、 ハトバ の イシダタミ を あるきまわる ヒトビト の スガタ にも、 フアン と ショウソウ との うかがわれる せわしい シゼン の ウツリカワリ の ナカ に、 エノシママル は あわただしい ハッコウ の ジュンビ を しはじめた。 コウバン の ハグルマ の きしむ オト が センシュ と センビ と から やかましく さえかえって きこえはじめた。
 キムラ は その ヒ も アサ から ヨウコ を おとずれて きた。 ことに あおじろく みえる カオツキ は、 ナニ か わくわく と ムネ の ウチ に にえかえる オモイ を まざまざ と うらぎって、 みる ヒト の アワレ を さそう ほど だった。 ハイスイ の ジン と ジブン でも いって いる よう に、 ボウフ の ザイサン を ありったけ カネ に かえて、 テッパライ に ニホン の ザッカ を かいいれて、 こちら から ツウチショ ヒトツ だせば、 いつでも ニホン から おくって よこす ばかり に して ある ものの、 テモト には いささか の ゼニ も のこって は いなかった。 ヨウコ が きた ならば と カネ の ウエ にも ココロ の ウエ にも アテ に して いた の が みごと に はずれて しまって、 ヨウコ が かえる に つけて は、 ナケナシ の ところ から またまた なんとか しなければ ならない ハメ に たった キムラ は、 2~3 ニチ の うち に、 ヌカヨロコビ も イチジ の アイダ で、 コドク と フユ と に かこまれなければ ならなかった の だ。
 ヨウコ は キムラ が けっきょく ジムチョウ に すがりよって くる ホカ に ミチ の ない こと を さっして いた。
 キムラ は はたして ジムチョウ を ヨウコ の ヘヤ に よびよせて もらった。 ジムチョウ は すぐ やって きた が、 フク など も シゴトギ の まま で ナニ か よほど せわしそう に みえた。 キムラ は まあ と いって クラチ に イス を あたえて、 キョウ は イツモ の すげない タイド に にず、 おりいって いろいろ と ヨウコ の ミノウエ を たのんだ。 ジムチョウ は ハジメ の せわしそう だった ヨウス に ひきかえて、 どっしり と コシ を すえて ショウメン から レイ の おおきく キムラ を みやりながら、 シンミ に ミミ を かたむけた。 キムラ の ヨウス の ほう が かえって そわそわしく ながめやられた。
 キムラ は おおきな カミイレ を とりだして、 50 ドル の キッテ を ヨウコ に テワタシ した。
「なにもかも ゴショウチ だ から クラチ さん の マエ で いう ほう が セワナシ だ と おもいます が、 なんと いって も これ だけ しか できない ん です。 こ、 これ です」
と いって さびしく わらいながら、 リョウテ を だして ひろげて みせて から、 チョッキ を たたいた。 ムネ に かかって いた おもそう な キングサリ も、 ヨッツ まで はめられて いた ユビワ の ミッツ まで も なくなって いて、 たった ヒトツ コンヤク の ユビワ だけ が びんぼうくさく ヒダリ の ユビ に はまって いる ばかり だった。 ヨウコ は さすが に 「まあ」 と いった。
「ヨウコ さん、 ワタシ は どう に でも します。 オトコ イッピキ なりゃ どこ に ころがりこんだ から って、 ――そんな ケイケン も おもしろい くらい の もの です が、 コレンバカリ じゃ アナタ が たりなかろう と おもう と、 メンボク も ない ん です。 クラチ さん、 アナタ には これまで で さえ いいかげん セワ を して いただいて なんとも すみません です が、 ワタシドモ フタリ は おうちあけ もうした ところ、 こういう テイタラク なん です。 ヨコハマ へ さえ おとどけ くだされば その サキ は また どう に でも します から、 もし リョヒ に でも フソク します よう でしたら、 ゴメイワク ツイデ に なんとか して やって いただく こと は できない でしょう か」
 ジムチョウ は ウデグミ を した まま まじまじ と キムラ の カオ を みやりながら きいて いた が、
「アナタ は ちっとも もっとらん の です か」
と きいた。 キムラ は わざと カイカツ に しいて こわだかく わらいながら、
「きれい な もん です」
と また チョッキ を たたく と、
「そりゃ いかん。 なに、 フナチン なんぞ いります もの か。 トウキョウ で ホンテン に おはらい に なれば いい ん じゃ し、 ヨコハマ の シテンチョウ も バンジ こころえとられる ん だで、 ゴシンパイ いりません わ。 そりゃ アナタ おもち に なる が いい。 ガイコク に いて モンナシ では こころぼそい もん です よ」
と レイ の シオカラゴエ で やや フキゲン-らしく いった。 その コトバ には フシギ に おもおもしい チカラ が こもって いて、 キムラ は しばらく かれこれ と オシモンドウ を して いた が、 けっきょく ジムチョウ の シンセツ を ム に する こと の キノドクサ に、 すぐ な ココロ から なお いろいろ と リョチュウ の セワ を たのみながら、 また おおきな カミイレ を とりだして キッテ を たたみこんで しまった。
「よしよし それ で なにも いう こと は なし。 サツキ さん は ワシ が ひきうけた」
と フテキ な ビショウ を うかべながら、 ジムチョウ は はじめて ヨウコ の ほう を みかえった。
 ヨウコ は フタリ を メノマエ に おいて、 イツモ の よう に みくらべながら フタリ の カイワ を きいて いた。 アタリマエ なら、 ヨウコ は タイテイ の バアイ、 よわい モノ の ミカタ を して みる の が ツネ だった。 どんな とき でも、 つよい モノ が その ツヨミ を ふりかざして よわい モノ を アッパク する の を みる と、 ヨウコ は かっと なって、 リ が ヒ でも よわい モノ を かたして やりたがった。 イマ の バアイ キムラ は たんに ジャクシャ で ある ばかり で なく、 その キョウグウ も みじめ な ほど たよりない くるしい もの で ある こと は ぞんぶん に しりぬいて いながら、 キムラ に たいして の ドウジョウ は フシギ にも わいて こなかった。 トシ の ワカサ、 スガタ の シナヤカサ、 キョウグウ の ユタカサ、 サイノウ の ハナヤカサ と いう よう な もの を タヨリ に する オトコ たち の コワク の チカラ は、 ジムチョウ の マエ では ふけば とぶ チリ の ごとく タイショウ された。 この オトコ の マエ には、 よわい モノ の アワレ より も ミニクサ が さらけだされた。
 なんと いう フコウ な セイネン だろう。 わかい とき に チチオヤ に しにわかれて から、 バンジ オモイ の まま だった セイカツ から いきなり フジユウ な ウキヨ の ドンゾコ に ほうりだされながら、 めげ も せず に せっせと はたらいて、 ウシロユビ を さされない だけ の ヨワタリ を して、 ダレ から も ハタラキ の ある ユクスエ たのもしい ヒト と おもわれながら、 それでも ココロ の ウチ の サビシサ を うちけす ため に おもいいった コイビト は アダシオトコ に そむいて しまって いる。 それ を また そう とも しらず に、 その オトコ の ナサケ に すがって、 きえる に きまった ヤク を のがすまい と して いる。 ……ヨウコ は しいて ジブン を セップク する よう に こう かんがえて みた が、 すこしも ミ に しみた カンジ は おこって こない で、 ややもすると わらいだしたい よう な キ に すら なって いた。
「よしよし それ で なにも いう こと は なし。 サツキ さん は ワシ が ひきうけた」
と いう コエ と フテキ な ビショウ と が どやす よう に ヨウコ の ココロ の ト を うった とき、 ヨウコ も おもわず ビショウ を うかべて それ に おうじよう と した。 が、 その シュンカン、 めざとく キムラ の みて いる の に キ が ついて、 カオ には ワライ の カゲ は ミジン も あらわさなかった。
「ワシ への ヨウ は それ だけ でしょう。 じゃ せわしい で いきます よ」
と ブッキラボウ に いって ジムチョウ が ヘヤ を でて いって しまう と、 のこった フタリ は ミョウ に てれて、 しばらく は たがいに カオ を みあわす の も はばかって だまった まま で いた。
 ジムチョウ が いって しまう と ヨウコ は キュウ に チカラ が おちた よう に おもった。 イマ まで の こと が まるで シバイ でも みて たのしんで いた よう だった。 キムラ の やるせない ココロ の ウチ が キュウ に ヨウコ に せまって きた。 ヨウコ の メ には キムラ を あわれむ とも ジブン を あわれむ とも しれない ナミダ が いつのまにか やどって いた。
 キムラ は いたましげ に だまった まま で しばらく ヨウコ を みやって いた が、
「ヨウコ さん イマ に なって そう ないて もらっちゃ ワタシ が たまりません よ。 キゲン を なおして ください。 また いい ヒ も めぐって くる でしょう から。 カミ を しんずる モノ―― そういう シンコウ が イマ アナタ に ある か どう か しらない が―― オカアサン が ああいう かたい シンジャ で ありなさった し、 アナタ も センダイ ジブン には たしか に シンコウ を もって いられた と おもいます が、 こんな バアイ には なおさら おなじ カミサマ から くる シンコウ と キボウ と を もって すすんで いきたい もの だ と おもいます よ。 ナニゴト も カミサマ は しって いられる…… そこ に ワタシ は たゆまない キボウ を つないで いきます」
 ケッシン した ところ が ある らしく ちからづよい コトバ で こう いった。 なんの キボウ! ヨウコ は キムラ の こと に ついて は、 キムラ の いわゆる カミサマ イジョウ に キムラ の ミライ を しりぬいて いる の だ。 キムラ の キボウ と いう の は やがて シツボウ に そして ゼツボウ に おわる だけ の もの だ。 なんの シンコウ! なんの キボウ! キムラ は ヨウコ が すえた ミチ を ――ユキドマリ の フクロコウジ を―― テンシ の ノボリオリ する クモ の カケハシ の よう にも おもって いる。 ああ なんの シンコウ!
 ヨウコ は ふと おなじ メ を ジブン に むけて みた。 キムラ を カッテ キママ に こづきまわす イリョク を そなえた ジブン は また ダレ に ナニモノ に カッテ に される の だろう。 どこ か で おおきな テ が ナサケ も なく ヨウシャ も なく れいぜん と ジブン の ウンメイ を あやつって いる。 キムラ の キボウ が はかなく たちきれる マエ、 ジブン の キボウ が いちはやく たたれて しまわない と どうして ホショウ する こと が できよう。 キムラ は ゼンニン だ。 ジブン は アクニン だ。 ヨウコ は いつのまにか ジュン な カンジョウ に とらえられて いた。
「キムラ さん。 アナタ は きっと、 シマイ には きっと シュクフク を おうけ に なります…… どんな こと が あって も シツボウ なさっちゃ いや です よ。 アナタ の よう な よい カタ が フコウ に ばかり おあい に なる わけ が ありません わ。 ……ワタシ は うまれる と から のろわれた オンナ なん です もの。 カミ、 ホントウ は カミサマ を しんずる より…… しんずる より にくむ ほう が にあって いる ん です…… ま、 きいて…… でも、 ワタシ ヒキョウ は いや だ から しんじます…… カミサマ は ワタシ みたい な モノ を どう なさる か、 しっかり メ を あいて サイゴ まで みて います」
と いって いる うち に ダレ に とも なく クヤシサ が ムネイッパイ に こみあげて くる の だった。
「アナタ は そんな シンコウ は ない と おっしゃる でしょう けれども…… でも ワタシ には これ が シンコウ です。 リッパ な シンコウ です もの」
と いって きっぱり おもいきった よう に、 ヒ の よう に あつく メ に たまった まま で ながれず に いる ナミダ を、 ハンケチ で ぎゅっと おしぬぐいながら、 あんぜん と アタマ を たれた キムラ に、
「もう やめましょう こんな オハナシ。 こんな こと を いってる と、 いえば いう ほど サキ が くらく なる ばかり です。 ホント に おもいきって フシアワセ な ヒト は こんな こと を つべこべ と クチ に なんぞ だし は しません わ。 ね、 いや、 アナタ は ジブン の ほう から めいって しまって、 ワタシ の いった こと ぐらい で ナン です ねえ、 オトコ の くせ に」
 キムラ は ヘンジ も せず に マッサオ に なって うつむいて いた。
 そこ に 「ごめんなさい」 と いう か と おもう と、 いきなり ト を あけて はいって きた モノ が あった。 キムラ も ヨウコ も フイ を うたれて キサキ を くじかれながら、 みる と、 いつぞや イカリヅナ で アシ を ケガ した とき、 ヨウコ の セワ に なった ロウスイフ だった。 カレ は とうとう ビッコ に なって いた。 そして スイフ の よう な シゴト には とても ヤク に たたない から、 さいわい オークランド に ショウノウチ を もって とにかく クラシ を たてて いる オイ を たずねて ヤッカイ に なる こと に なった ので、 レイ-かたがた イトマゴイ に きた と いう の だった。 ヨウコ は あかく なった メ を すこし はずかしげ に またたかせながら、 いろいろ と なぐさめた。
「なに ね こう おいぼれちゃ、 こんな カギョウ を やってる が てんで ウソ なれど、 ジムチョウ さん と ボンスン (スイフチョウ) と が かわいそう だ と いって つかって くれる で、 イイキ に なった が バチ あたった ん だね」
と いって オクビョウ に わらった。 ヨウコ が この ロウジン を あわれみいたわる サマ は ワキメ にも いじらしかった。 ニホン には デンゴン を たのむ よう な ミヨリ さえ ない ミ だ と いう よう な こと を きく たび に、 ヨウコ は なきだしそう な カオ を して ガテン ガテン して いた が、 シマイ には キムラ の とめる の も きかず ネドコ から おきあがって、 キムラ の もって きた クダモノ を ありったけ カゴ に つめて、
「オカ に あがれば いくらも ある ん だろう けれども、 これ を もって おいで。 そして その ナカ に クダモノ で なく はいって いる もの が あったら、 それ も オマエサン に あげた ん だ から ね、 ヒト に とられたり しちゃ いけません よ」
と いって それ を わたして やった。
 ロウジン が きて から ヨウコ は ヨ が あけた よう に はじめて はれやか な フダン の キブン に なった。 そして レイ の イタズラ-らしい にこにこ した アイキョウ を カオ イチメン に たたえて、
「なんと いう きさく なん でしょう。 ワタシ、 あんな オジイサン の オカミサン に なって みたい…… だから ね、 いい もの を やっちまった」
 きょとり と して まじまじ キムラ の むっつり と した カオ を みやる ヨウス は おおきな コドモ と より おもえなかった。
「アナタ から いただいた エンゲージ リング ね、 あれ を やりまして よ。 だって なんにも ない ん です もの」
 なんとも いえない コビ を つつむ オトガイ が フタエ に なって、 きれい な ハナミ が ワライ の サザナミ の よう に クチビル の ミギワ に よせたり かえしたり した。
 キムラ は、 ヨウコ と いう オンナ は どうして こう ムラキ で ウワスベリ が して しまう の だろう、 なさけない と いう よう な ヒョウジョウ を カオ イチメン に みなぎらして、 ナニ か いう べき コトバ を ムネ の ウチ で ととのえて いる よう だった が、 キュウ に おもいすてた と いう ふう で、 だまった まま ほっと ふかい タメイキ を ついた。
 それ を みる と イマ まで めずらしく おさえつけられて いた ハンコウシン が、 またもや センプウ の よう に ヨウコ の ココロ に おこった。 「ネチネチサ ったら ない」 と ムネ の ウチ を いらいら させながら、 ツイデ の こと に すこし いじめて やろう と いう タクラミ が アタマ を もたげた。 しかし カオ は どこまでも マエ の まま の ムジャキサ で、
「キムラ さん オミヤゲ を かって ちょうだい な。 アイ や サダ も です けれども、 シンルイ たち や コトウ さん なんぞ にも ナニ か しない じゃ カオ が むけられません もの。 イマゴロ は タガワ の オクサン の テガミ が イソガワ の オバサン の ところ に ついて、 トウキョウ では きっと オオサワギ を して いる に チガイ ありません わ。 たつ とき には セワ を やかせ、 ルス は ルス で シンパイ させ、 ぽかん と して オミヤゲ ヒトツ もたず に かえって くる なんて、 キムラ も いったい キムラ じゃ ない か と いわれる の が、 ワタシ、 しぬ より つらい から、 すこし は おどろく ほど の もの を かって ちょうだい。 サキホド の オカネ で ソウトウ の もの が とれる でしょう」
 キムラ は ダダッコ を なだめる よう に わざと おとなしく、
「それ は よろしい、 かえ と なら かい も します が、 ワタシ は アナタ が あれ を まとまった まま もって かえったら と おもって いる ん です。 タイテイ の ヒト は ヨコハマ に ついて から ミヤゲ を かう ん です よ。 その ほう が じっさい カッコウ です から ね。 モチアワセ も なし に トウキョウ に つきなさる こと を おもえば、 ミヤゲ なんか どうでも いい と おもう ん です がね」
「トウキョウ に つき さえ すれば オカネ は どう に でも します けれども、 オミヤゲ は…… アナタ ヨコハマ の シイレモノ は すぐ しれます わ…… ごらんなさい あれ を」
と いって タナ の ウエ に ある ボウシイレ の ボール-バコ に メ を やった。
「コトウ さん に つれて いって いただいて あれ を かった とき は、 ずいぶん ギンミ した つもり でした けれども、 フネ に きて から みて いる うち に すぐ あきて しまいました の。 それに タガワ の オクサン の ヨウフク スガタ を みたら、 ガマン にも ニホン で かった もの を かぶったり きたり する キ には なれません わ」
 そう いってる うち に キムラ は タナ から ハコ を おろして ナカ を のぞいて いた が、
「なるほど カタ は ちっと ふるい よう です ね。 だが シナ は これ なら こっち でも ジョウ の ブ です ぜ」
「だから いや です わ。 リュウコウオクレ と なる と ネダン の はった もの ほど みっともない ん です もの」
 しばらく して から、
「でも あの オカネ は アナタ ゴニュウヨウ です わね」
 キムラ は あわてて ベンカイテキ に、
「いいえ、 あれ は どのみち アナタ に あげる つもり で いた ん です から……」
と いう の を ヨウコ は ミミ にも いれない ふう で、
「ホント に バカ ね ワタシ は…… オモイヤリ も なんにも ない こと を もうしあげて しまって、 どう しましょう ねえ。 ……もう ワタシ どんな こと が あって も その オカネ だけ は いただきません こと よ。 こう いったら ダレ が なんと いったって ダメ よ」
と きっぱり いいきって しまった。 キムラ は もとより イチド いいだしたら アト へは ひかない ヨウコ の ヒゴロ の ショウブン を しりぬいて いた。 で、 いわず かたらず の うち に、 その カネ は シナモノ に して もって かえらす より ホカ に ミチ の ない こと を カンネン した らしかった。
     *     *     *
 その バン、 ジムチョウ が シゴト を おえて から ヨウコ の ヘヤ に くる と、 ヨウコ は ナニ か キ に さえた フウ を して ろくろく モテナシ も しなかった。
「とうとう カタ が ついた。 19 ニチ の アサ の 10 ジ だよ シュッコウ は」
と いう ジムチョウ の カイカツ な コトバ に ヘンジ も しなかった。 オトコ は ケゲン な カオツキ で みやって いる。
「アクトウ」
と しばらく して から、 ヨウコ は ヒトコト これ だけ いって ジムチョウ を にらめた。
「ナン だ?」
と シリアガリ に いって ジムチョウ は わらって いた。
「アナタ みたい な ザンコク な ニンゲン は ワタシ はじめて みた。 キムラ を ごらんなさい かわいそう に。 あんな に てひどく しなくったって…… おそろしい ヒト って アナタ の こと ね」
「ナニ?」
と また ジムチョウ は シリアガリ に おおきな コエ で いって ネドコ に ちかづいて きた。
「しりません」
と ヨウコ は なお おこって みせよう と した が、 いかにも キザミ の あらい、 タンジュン な、 タイ の ない オトコ の カオ を みる と、 カラダ の どこ か が ゆすられる キ が して きて、 わざと ひきしめて みせた クチビル の ヘン から おもわず も ワライ の カゲ が ひそみでた。
 それ を みる と ジムチョウ は にがい カオ と わらった カオ と を イッショ に して、
「ナン だい くだらん」
と いって、 デントウ の キンジョ に イス を よせて、 おおきな ながい アシ を なげだして、 ユウカン シンブン を おおきく ひらいて メ を とおしはじめた。
 キムラ とは ひきかえて ジムチョウ が この ヘヤ に くる と、 ヘヤ が ちいさく みえる ほど だった。 うわむけた クツ の オオキサ には ヨウコ は ふきだしたい くらい だった。 ヨウコ は メ で なでたり さすったり する よう に して、 この おおきな コドモ みた よう な ボウクン の アタマ から アシ の サキ まで を みやって いた。 ごわっごわっ と ときどき シンブン を おりかえす オト だけ が きこえて、 ツミニ が あらかた かたづいた センシツ の ヨ は しずか に ふけて いった。
 ヨウコ は そうした まま で ふと キムラ を おもいやった。
 キムラ は ギンコウ に よって キッテ を ゲンキン に かえて、 ミセ の しまらない うち に いくらか カイモノ を して、 それ を コワキ に かかえながら、 ユウショク も したためず に、 ジャクソン-ガイ に ある と いう ニホンジン の リョテン に かえりつく コロ には、 マチマチ に ヒ が ともって、 さむい モヤ と ケムリ との アイダ を ロウドウシャ たち が つかれた ゴタイ を ひきずりながら あるいて ゆく の に たくさん であって いる だろう。 ちいさな ストーブ に ケムリ の おおい セキタン が ぶしぶし もえて、 けばけばしい デントウ の ヒカリ だけ が、 むちうつ よう に がらん と した ヘヤ の ウスギタナサ を こうこう と てらして いる だろう。 その ヒカリ の シタ で、 ぐらぐら する イス に こしかけて、 ストーブ の ヒ を みつめながら キムラ が かんがえて いる。 しばらく かんがえて から さびしそう に みる とも なく ヘヤ の ナカ を みまわして、 また ストーブ の ヒ に ながめいる だろう。 その うち に あの ナミダ の でやすい メ から は ナミダ が ほろほろ と トメド も なく ながれでる に ちがいない。
 ジムチョウ が オト を たてて シンブン を おりかえした。
 キムラ は ヒザガシラ に テ を おいて、 その テ の ナカ に カオ を うずめて ないて いる。 いのって いる。 ヨウコ は クラチ から メ を はなして、 ウワメ を つかいながら キムラ の イノリ の コエ に ミミ を かたむけよう と した。 とぎれとぎれ な せつない イノリ の コエ が ナミダ に しめって たしか に…… たしか に きこえて くる。 ヨウコ は マユ を よせて チュウイリョク を シュウチュウ しながら、 キムラ が ホントウ に どう ヨウコ を おもって いる か を はっきり みきわめよう と した が、 どうしても おもいうかべて みる こと が できなかった。
 ジムチョウ が また シンブン を おりかえす オト を たてた。
 ヨウコ は はっと して ヨドミ に ささえられた コノハ が また ながれはじめた よう に、 すらすら と キムラ の ショサ を ソウゾウ した。 それ が だんだん オカ の ウエ に うつって いった。 あわれ な オカ! オカ も まだ ねない で いる だろう。 キムラ なの か オカ なの か いつまでも いつまでも ねない で ヒ の きえかかった ストーブ の マエ に うずくまって いる の は…… ふける まま に しみこむ サムサ は そっと トコ を つたわって アシ の サキ から はいあがって くる。 オトコ は それ にも キ が つかぬ ふう で イス の ウエ に うなだれて いる。 スベテ の ヒト は ねむって いる とき に、 キムラ の ヨウコ も ジムチョウ に いだかれて やすやす と ねむって いる とき に……。
 ここ まで ソウゾウ して くる と ショウセツ に よみふけって いた ヒト が、 ほっと タメイキ を して ばたん と ショモツ を ふせる よう に、 ヨウコ も なんとはなく ふかい タメイキ を して はっきり と ジムチョウ を みた。 ヨウコ の ココロ は ショウセツ を よんだ とき の とおり ムカンシン の ペーソス を かすか に かんじて いる ばかり だった。
「おやすみ に ならない の?」
と ヨウコ は スズ の よう に すずしい ちいさい コエ で クラチ に いって みた。 おおきな コエ を する の も はばかられる ほど アタリ は しんと しずまって いた。
「う」
と ヘンジ は した が ジムチョウ は タバコ を くゆらした まま シンブン を みつづけて いた。 ヨウコ も だまって しまった。
 やや しばらく して から ジムチョウ も ほっと タメイキ を して、
「どれ ねる かな」
と いいながら イス から たって ネドコ に はいった。 ヨウコ は ジムチョウ の ひろい ムネ に すくう よう に まるまって すこし ふるえて いた。
 やがて コドモ の よう に すやすや と やすらか な ちいさな イビキ が ヨウコ の クチビル から もれて きた。
 クラチ は クラヤミ の ナカ で ながい アイダ まんじり とも せず おおきな メ を あいて いた が、 やがて、
「おい アクトウ」
と ちいさな コエ で よびかけて みた。
 しかし ヨウコ の キソク ただしく たのしげ な ネイキ は ツユ ほど も みだれなかった。
 マヨナカ に、 おそろしい ユメ を ヨウコ は みた。 よく は おぼえて いない が、 ヨウコ は ころして は いけない いけない と おもいながら ヒトゴロシ を した の だった。 イッポウ の メ は ジンジョウ に マユ の シタ に ある が、 イッポウ の は フシギ にも マユ の ウエ に ある、 その オトコ の ヒタイ から クロチ が どくどく と ながれた。 オトコ は しんで も ものすごく にやり にやり と わらいつづけて いた。 その ワライゴエ が キムラ キムラ と きこえた。 ハジメ の うち は コエ が ちいさかった が だんだん おおきく なって カズ も ふえて きた。 その 「キムラ キムラ」 と いう カズ カギリ も ない コエ が うざうざ と ヨウコ を とりまきはじめた。 ヨウコ は イッシン に テ を ふって そこ から のがれよう と した が テ も アシ も うごかなかった。

             キムラ……
          キムラ
       キムラ   キムラ……
    キムラ   キムラ
 キムラ   キムラ   キムラ……
    キムラ   キムラ
       キムラ   キムラ……
          キムラ
             キムラ……

 ぞっと して サムケ を おぼえながら、 ヨウコ は ヤミ の ナカ に メ を さました。 おそろしい キョウム の ナゴリ は、 ど、 ど、 ど…… と はげしく たかく うつ シンゾウ に のこって いた。 ヨウコ は キョウフ に おびえながら イッシン に くらい ナカ を おどおど と テサグリ に さぐる と ジムチョウ の ムネ に ふれた。
「アナタ」
と ちいさい フルエゴエ で よんで みた が オトコ は ふかい ネムリ の ナカ に あった。 なんとも いえない キミワルサ が こみあげて きて、 ヨウコ は おもいきり オトコ の ムネ を ゆすぶって みた。
 しかし オトコ は ザイモク の よう に かんじなく ジュクスイ して いた。
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