カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ガラスド の ウチ 2

2018-02-19 | ナツメ ソウセキ
 9

 ワタクシ が コウトウ ガッコウ に いた コロ、 ヒカクテキ したしく つきあった トモダチ の ナカ に O と いう ヒト が いた。 その ジブン から あまり オオク の ホウユウ を もたなかった ワタクシ には、 しぜん O と ユキキ を しげく する よう な ケイコウ が あった。 ワタクシ は たいてい 1 シュウ に イチド くらい の ワリ で カレ を たずねた。 ある トシ の ショチュウ キュウカ など には、 マイニチ かかさず マサゴ-チョウ に ゲシュク して いる カレ を さそって、 オオカワ の スイエイジョウ まで いった。
 O は トウホク の ヒト だ から、 クチ の キキカタ に ワタクシ など と ちがった ドン で ゆったり した チョウシ が あった。 そうして その チョウシ が いかにも よく カレ の セイシツ を ダイヒョウ して いる よう に おもわれた。 ナンド と なく カレ と ギロン を した キオク の ある ワタクシ は、 ついに カレ の おこったり げきしたり する カオ を みる こと が できず に しまった。 ワタクシ は それ だけ でも じゅうぶん カレ を ケイアイ に あたいする チョウシャ と して みとめて いた。
 カレ の セイシツ が オウヨウ で ある ごとく、 カレ の ズノウ も ワタクシ より は はるか に おおきかった。 カレ は つねに トウジ の ワタクシ には、 カンガエ の およばない よう な モンダイ を ヒトリ で かんがえて いた。 カレ は サイショ から リカ へ はいる モクテキ を もって いながら、 このんで テツガク の ショモツ など を ひもといた。 ワタクシ は ある とき カレ から スペンサー の ダイイチ ゲンリ と いう ホン を かりた こと を いまだに わすれず に いる。
 ソラ の すみきった アキビヨリ など には、 よく フタリ つれだって、 アシ の むく ほう へ カッテ な ハナシ を しながら あるいて いった。 そうした バアイ には、 オウライ へ ヘイゴシ に さしでた キ の エダ から、 キイロ に そまった ちいさい ハ が、 カゼ も ない のに、 はらはら と ちる ケシキ を よく みた。 それ が ぐうぜん カレ の メ に ふれた とき、 カレ は 「あっ さとった」 と ひくい コエ で さけんだ こと が あった。 ただ アキ の イロ の クウ に うごく の を うつくしい と かんずる より ホカ に ノウ の ない ワタクシ には、 カレ の コトバ が ふうじこめられた ある ヒミツ の フチョウ と して あやしい ヒビキ を ミミ に つたえる ばかり で あった。 「サトリ と いう もの は ミョウ な もの だな」 と カレ は その アト から ヘイゼイ の ゆったり した チョウシ で ヒトリゴト の よう に セツメイ した とき も、 ワタクシ には ヒトクチ の アイサツ も できなかった。
 カレ は ヒンセイ で あった。 オオガンノン の ソバ を マガリ を して ジスイ して いた コロ には、 よく カラザケ を やいて わびしい ショクタク に ワタクシ を つかせた。 ある とき は モチガシ の カワリ に ニマメ を かって きて、 タケ の カワ の まま ソウホウ から つっつきあった。
 ダイガク を ソツギョウ する と まもなく カレ は チホウ の チュウガク に フニン した。 ワタクシ は カレ の ため に それ を ザンネン に おもった。 しかし カレ を しらない ダイガク の センセイ には、 それ が むしろ トウゼン と みえた かも しれない。 カレ ジシン は むろん ヘイキ で あった。 それから ナンネン か の ノチ に、 たしか 3 ネン の ケイヤク で、 シナ の ある ガッコウ の キョウシ に やとわれて いった が、 ニンキ が みちて かえる と すぐ また ナイチ の チュウガク コウチョウ に なった。 それ も アキタ から ヨコテ に うつされて、 イマ では カバフト の コウチョウ を して いる の で ある。
 キョネン ジョウキョウ した ツイデ に ヒサシブリ で ワタクシ を たずねて くれた とき、 トリツギ の モノ から メイシ を うけとった ワタクシ は、 すぐ その アシ で ザシキ へ いって、 イツモ の とおり キャク より サキ に セキ に ついて いた。 すると ロウカヅタイ に ヘヤ の イリグチ まで きた カレ は、 ザブトン の ウエ に きちんと すわって いる ワタクシ の スガタ を みる や いなや、 「いやに すまして いる な」 と いった。
 その とき ムコウ の コトバ が おわる か おわらない うち に 「うん」 と いう ヘンジ が いつか ワタクシ の クチ を すべって でて しまった。 どうして ワタクシ の ワルクチ を ジブン で コウテイ する よう な この アイサツ が、 それほど シゼン に、 それほど ぞうさなく、 それほど こだわらず に、 するする と ワタクシ の ノド を すべりこした もの だろう か。 ワタクシ は その とき トウメイ な いい ココロモチ が した。

 10

 むかいあって ザ を しめた O と ワタクシ とは、 ナニ より サキ に タガイ の カオ を みかえして、 そこ に まだ ムカシ の まま の オモカゲ が、 なつかしい ユメ の キネン の よう に のこって いる の を みとめた。 しかし それ は あたかも ふるい ココロ が あたらしい キブン の ナカ に ぼんやり おりこまれて いる と おなじ こと で、 うすぐらく イチメン に かすんで いた。 おそろしい 「トキ」 の イリョク に テイコウ して、 ふたたび モト の スガタ に かえる こと は、 フタリ に とって もう フカノウ で あった。 フタリ は わかれて から イマ あう まで の アイダ に はさまって いる カコ と いう フシギ な もの を かえりみない わけ に いかなかった。
 O は ムカシ リンゴ の よう に あかい ホオ と、 ヒトイチバイ おおきな まるい メ と、 それから オンナ に てきした ほど ふっくり した リンカク に つつまれた カオ を もって いた。 イマ みて も やはり あかい ホオ と まるい メ と、 おなじく ほねばらない リンカク の モチヌシ では ある が、 それ が ムカシ とは どこ か ちがって いる。
 ワタクシ は カレ に ワタクシ の クチヒゲ と モミアゲ を みせた。 カレ は また ワタクシ の ため に ジブン の アタマ を なでて みせた。 ワタクシ の は しろく なって、 カレ の は うすく はげかかって いる の で ある。
「ニンゲン も カバフト まで ゆけば、 もう ユクサキ は なかろう な」 と ワタクシ が からかう と、 カレ は 「まあ そんな もの だ」 と こたえて、 ワタクシ の まだ みた こと の ない カバフト の ハナシ を いろいろ して きかせた。 しかし ワタクシ は イマ それ を みんな わすれて しまった。 ナツ は たいへん いい ところ だ と いう こと を おぼえて いる だけ で ある。
 ワタクシ は イクネン-ぶり か で、 カレ と イッショ に オモテ へ でた。 カレ は フロック の ウエ へ、 トンビ の よう な ガイトウ を ぶわぶわ に きて いた。 そうして デンシャ の ナカ で ツリカワ に ぶらさがりながら、 カクシ から ハンケチ に つつんだ もの を だして ワタクシ に みせた。 ワタクシ は 「ナン だ」 と きいた。 カレ は 「クリマンジュウ だ」 と こたえた。 クリマンジュウ は さっき カレ が ワタクシ の ウチ に いた とき に だした カシ で あった。 カレ が いつのまに、 それ を ハンケチ に つつんだろう か と かんがえた とき、 ワタクシ は ちょっと おどろかされた。
「あの クリマンジュウ を とって きた の か」
「そう かも しれない」
 カレ は ワタクシ の おどろいた ヨウス を バカ に する よう な チョウシ で こう いった なり、 その ハンケチ の ツツミ を また カクシ に おさめて しまった。
 ワレワレ は その バン テイゲキ へ いった。 ワタクシ の テ に いれた 2 マイ の キップ に キタガワ から はいれ と いう チュウイ が かいて あった の を、 つい まちがえて、 ミナミガワ へ まわろう と した とき、 カレ は 「そっち じゃ ない よ」 と ワタクシ に チュウイ した。 ワタクシ は ちょっと たちどまって かんがえた うえ、 「なるほど ホウガク は カバフト の ほう が たしか な よう だ」 と いいながら、 また シテイ された イリグチ の ほう へ ひきかえした。
 カレ は ハジメ から テイゲキ を しって いる と いって いた。 しかし バンサン を すました アト で、 ジブン の セキ へ かえろう と する とき、 ダレ でも やる とおり、 2 カイ と 1 カイ の ドアー を まちがえて、 ワタクシ から わらわれた。
 おりおり カクシ から キンブチ の メガネ を だして、 テ に もった スリモノ を よんで みる カレ は、 その メガネ を はずさず に とおい ブタイ を ヘイキ で ながめて いた。
「それ は ロウガンキョウ じゃ ない か。 よく それ で とおい ところ が みえる ね」
「なに チャブドー だ」
 ワタクシ には この チャブドー と いう イミ が まったく わからなかった。 カレ は それ を タイサ なし と いう シナゴ だ と いって セツメイ して くれた。
 その ヨ の カエリ に デンシャ の ナカ で ワタクシ と わかれた ぎり、 カレ は また とおい さむい ニホン の リョウチ の キタ の ハズレ に いって しまった。
 ワタクシ は カレ を おもいだす たび に、 タツジン と いう カレ の ナ を かんがえる。 すると その ナ が とくに カレ の ため に テン から あたえられた よう な ココロモチ に なる。 そうして その タツジン が ユキ と コオリ に とざされた キタ の ハテ に、 まだ チュウガク コウチョウ を して いる の だな と おもう。

 11

 ある オクサン が ある オンナ の ヒト を ワタクシ に ショウカイ した。
「ナニ か かいた もの を みて いただきたい の だ そう で ございます」
 ワタクシ は オクサン の この コトバ から、 アタマ の ナカ で イロイロ の こと を かんがえさせられた。 イマ まで ワタクシ の ところ へ ジブン の かいた もの を よんで くれ と いって きた モノ は ナンニン と なく ある。 その ナカ には ゲンコウシ の アツサ で、 1 スン または 2 スン ぐらい の カサ に なる タイブ の もの も まじって いた。 それ を ワタクシ は ジカン の ツゴウ の ゆるす かぎり なるべく よんだ。 そうして カンタン な ワタクシ は ただ よみ さえ すれば ジブン の たのまれた ギム を はたした もの と こころえて マンゾク して いた。 ところが センポウ では アト から シンブン に だして くれ と いったり、 ザッシ へ のせて もらいたい と たのんだり する の が ツネ で あった。 ナカ には ヒト に よませる の は シュダン で、 ゲンコウ を カネ に かえる の が ホンライ の モクテキ で ある よう に おもわれる の も すくなく は なかった。 ワタクシ は しらない ヒト の かいた よみにくい ゲンコウ を コウイテキ に よむ の が だんだん いや に なって きた。
 もっとも ワタクシ の ジカン に キョウシ を して いた コロ から みる と、 タショウ の ダンリョクセイ が できて きた には ソウイ なかった。 それでも ジブン の シゴト に かかれば ハラ の ナカ は ずいぶん タボウ で あった。 シンセツズク で みて やろう と ヤクソク した ゲンコウ すら、 なかなか ラチ の あかない バアイ も ない とは かぎらなかった。
 ワタクシ は ワタクシ の アタマ で かんがえた とおり の こと を そのまま オクサン に はなした。 オクサン は よく ワタクシ の いう イミ を リョウカイ して かえって いった。 ヤクソク の オンナ が ワタクシ の ザシキ へ きて、 ザブトン の ウエ に すわった の は それから まもなく で あった。 わびしい アメ が いまにも ふりだしそう な くらい ソラ を、 ガラスド-ゴシ に ながめながら、 ワタクシ は オンナ に こんな ハナシ を した。――
「これ は シャコウ では ありません。 おたがいに テイサイ の いい こと ばかり いいあって いて は、 いつまで たったって、 ケイハツ される はず も、 リエキ を うける わけ も ない の です。 アナタ は おもいきって ショウジキ に ならなければ ダメ です よ。 ジブン さえ ジュウブン に カイホウ して みせれば、 イマ アナタ が どこ に たって どっち を むいて いる か と いう ジッサイ が、 ワタクシ に よく みえて くる の です。 そうした とき、 ワタクシ は はじめて アナタ を シドウ する シカク を、 アナタ から あたえられた もの と ジカク して も よろしい の です。 だから ワタクシ が ナニ か いったら、 ハラ に こたえ べき ある もの を もって いる イジョウ、 けっして だまって いて は いけません。 こんな こと を いったら わらわれ は しまい か、 ハジ を かき は しまい か、 または シツレイ だ と いって おこられ は しまい か など と エンリョ して、 アイテ に ジブン と いう ショウタイ を くろく ぬりつぶした ところ ばかり しめす クフウ を する ならば、 ワタクシ が いくら アナタ に リエキ を あたえよう と あせって も、 ワタクシ の いる ヤ は ことごとく アダヤ に なって しまう だけ です」
「これ は ワタクシ の アナタ に たいする チュウモン です が、 そのかわり ワタクシ の ほう でも この ワタクシ と いう もの を かくし は いたしません。 アリノママ を さらけだす より ホカ に、 アナタ を おしえる ミチ は ない の です。 だから ワタクシ の カンガエ の どこ か に スキ が あって、 その スキ を もし アナタ から みやぶられたら、 ワタクシ は アナタ に ワタクシ の ジャクテン を にぎられた と いう イミ で ハイボク の ケッカ に おちいる の です。 オシエ を うける ヒト だけ が ジブン を カイホウ する ギム を もって いる と おもう の は まちがって います。 おしえる ヒト も オノレ を アナタ の マエ に うちあける の です。 ソウホウ とも シャコウ を はなれて カンパ しあう の です」
「そういう ワケ で ワタクシ は これから アナタ の かいた もの を ハイケン する とき に、 ずいぶん てひどい こと を おもいきって いう かも しれません が、 しかし おこって は いけません。 アナタ の カンジョウ を がいする ため に いう の では ない の です から。 そのかわり アナタ の ほう でも フ に おちない ところ が あったら どこまでも きりこんで いらっしゃい。 アナタ が ワタクシ の シュイ を リョウカイ して いる イジョウ、 ワタクシ は けっして おこる はず は ありません から」
「ようするに これ は ただ ゲンジョウ イジ を モクテキ と して、 ウワスベリ な エンカツ を シュイ に おく シャコウ とは まったく ベツモノ なの です。 わかりました か」
 オンナ は わかった と いって かえって いった。

 12

 ワタクシ に タンザク を かけ の、 シ を かけ の と いって くる ヒト が ある。 そうして その タンザク やら ヌメ やら を まだ ショウダク も しない うち に おくって くる。 サイショ の うち は せっかく の キボウ を ム に する の も キノドク だ と いう カンガエ から、 まずい ジ とは おもいながら、 センポウ の イウナリ に なって かいて いた。 けれども こうした コウイ は エイゾク しにくい もの と みえて、 だんだん オオク の ヒト の イライ を ム に する よう な ケイコウ が つよく なって きた。
 ワタクシ は スベテ の ニンゲン を、 マイニチ マイニチ ハジ を かく ため に うまれて きた もの だ と さえ かんがえる こと も ある の だ から、 ヘン な ジ を ヒト に おくって やる くらい の ショサ は、 あえて しよう と おもえば、 やれない とも かぎらない の で ある。 しかし ジブン が ビョウキ の とき、 シゴト の いそがしい とき、 または そんな マネ の したく ない とき に、 そういう チュウモン が ひきつづいて おこって くる と、 じっさい よわらせられる。 カレラ の オオク は まったく ワタクシ の しらない ヒト で、 そうして ジブン たち の おくった タンザク を ふたたび おくりかえす こちら の テスウ さえ、 まるで ガンチュウ に おいて いない よう に みえる の だ から。
 その ウチ で いちばん ワタクシ を フユカイ に した の は バンシュウ の サコシ に いる イワサキ と いう ヒト で あった。 この ヒト は スウネン-ゼン よく ハガキ で ワタクシ に ハイク を かいて くれ と たのんで きた から、 その つど ムコウ の いう とおり かいて おくった キオク の ある オトコ で ある。 その ノチ の こと で ある が、 カレ は また シカク な うすい コヅツミ を ワタクシ に おくった。 ワタクシ は それ を あける の さえ メンドウ だった から、 つい ソノママ に して ショサイ へ ほうりだして おいたら、 ゲジョ が ソウジ を する とき、 つい ショモツ と ショモツ の アイダ へ はさみこんで、 まず ていよく しまいなくした スガタ に して しまった。
 この コヅツミ と ゼンゴ して、 ナゴヤ から チャ の カン が ワタクシ-アテ で とどいた。 しかし ダレ が なんの ため に おくった もの か その イミ は まったく わからなかった。 ワタクシ は エンリョ なく その チャ を のんで しまった。 すると ほどなく サコシ の オトコ から、 フジ トザン の エ を かえして くれ と いって きた。 カレ から そんな もの を もらった オボエ の ない ワタクシ は、 うちやって おいた。 しかし カレ は フジ トザン の エ を かえせ かえせ と 3 ド も 4 ド も サイソク して やまない。 ワタクシ は ついに この オトコ の セイシン ジョウタイ を うたがいだした。 「おおかた キチガイ だろう」 ワタクシ は ココロ の ナカ で こう きめた なり ムコウ の サイソク には いっさい とりあわない こと に した。
 それから 2~3 カゲツ たった。 たしか ナツ の ハジメ の コロ と キオク して いる が、 ワタクシ は あまり ランザツ に とりちらされた ショサイ の ナカ に すわって いる の が うっとうしく なった ので、 ヒトリ で ぽつぽつ そこいら を かたづけはじめた。 その とき ショモツ の セイリ を する ため、 イイカゲン に つみかさねて ある ジビキ や サンコウショ を、 1 サツ ずつ あらためて ゆく と、 おもいがけなく サコシ の オトコ が よこした レイ の コヅツミ が でて きた。 ワタクシ は イマ まで わすれて いた もの を、 まのあたり みて おどろいた。 さっそく フウ を といて ナカ を しらべたら、 ちいさく たたんだ エ が 1 マイ はいって いた。 それ が フジ トザン の ズ だった ので、 ワタクシ は また びっくり した。
 ツツミ の ナカ には この エ の ホカ に テガミ が 1 ツウ そえて あって、 それ に エ の サン を して くれ と いう イライ と、 オレイ に チャ を おくる と いう モンク が かいて あった。 ワタクシ は いよいよ おどろいた。
 しかし その とき の ワタクシ は とうてい フジ トザン の ズ など に サン を する ユウキ を もって いなかった。 ワタクシ の キブン が、 そんな こと とは はるか かけはなれた ところ に あった ので、 その エ に チョウワ する よう な ハイク を かんがえて いる ヒマ が なかった の で ある。 けれども ワタクシ は キョウシュク した。 ワタクシ は テイネイ な テガミ を かいて、 ジブン の タイマン を しゃした。 それから チャ の オレイ を いった。 サイゴ に フジ トザン の ズ を コヅツミ に して かえした。

 13

 ワタクシ は これ で イチダンラク ついた もの と おもって、 レイ の サコシ の オトコ の こと を、 それぎり ネントウ に おかなかった。 すると その オトコ が また タンザク を ふうじて よこした。 そうして コンド は ギシ に カンケイ の ある ク を かいて くれ と いう の で ある。 ワタクシ は そのうち かこう と いって やった。 しかし なかなか かく キカイ が こなかった ので、 つい ソノママ に なって しまった。 けれども しつこい この オトコ の ほう では けっして ソノママ に すます キ は なかった もの と みえて、 むやみ に サイソク を はじめだした。 その サイソク は 1 シュウ に イッペン か、 2 シュウ に イッペン の ワリ で きっと きた。 それ が かならず ハガキ に かぎって いて、 その カキダシ には、 かならず 「ハイケイ シッケイ もうしそうらえど も」 と ある に きまって いた。 ワタクシ は その ヒト の ハガキ を みる の が だんだん フユカイ に なって きた。
 ドウジ に ムコウ の サイソク も、 イマ まで ワタクシ の ヨキ して いなかった ヘン な トクショク を おびる よう に なった。 サイショ には チャ を やった では ない か と いう コトバ が みえた。 ワタクシ が それ に とりあわず に いる と、 コンド は あの チャ を かえして くれ と いう モンク に あらたまった。 ワタクシ は かえす こと は たやすい が、 その テカズ が メンドウ だ から、 トウキョウ まで とり に くれば かえして やる と いって やりたく なった。 けれども サコシ の オトコ に そういう テガミ を だす の は、 ジブン の ヒンカク に かかわる よう な キ が して あえて しきれなかった。 ヘンジ を うけとらない センポウ は なお の こと サイソク した。 チャ を かえさない なら それでも よい から、 キン 1 エン を その ダイカ と して おくって よこせ と いう の で ある。 ワタクシ の カンジョウ は この オトコ に たいして しだいに すさんで きた。 シマイ には とうとう ジブン を わすれる よう に なった。 チャ は のんで しまった、 タンザク は なくして しまった、 イライ ハガキ を よこす こと は いっさい ムヨウ で ある と かいて やった。 そうして ココロ の ウチ で、 ヒジョウ に にがにがしい キブン を ケイケン した。 こんな ヒ-シンシテキ な アイサツ を しなければ ならない よう な アナ の ナカ へ、 ワタクシ を おいこんだ の は、 この サコシ の オトコ で ある と おもった から で ある。 こんな オトコ の ため に、 ヒンカク にも せよ ジンカク にも せよ、 イクブン の ダラク を しのばなければ ならない の か と かんがえる と なさけなかった から で ある。
 しかし サコシ の オトコ は ヘイキ で あった。 チャ は のんで しまい、 タンザク は なくして しまう とは、 あまり と もうせば…… と また ハガキ に かいて きた。 そうして その ボウトウ には いぜん と して ハイケイ シッケイ もうしそうらえど も と いう モンク が キソク-どおり くりかえされて いた。
 その とき ワタクシ は もう この オトコ には とりあうまい と ケッシン した。 けれども ワタクシ の ケッシン は カレ の タイド に たいして なんの コウカ の ある はず は なかった。 カレ は あいかわらず サイソク を やめなかった。 そうして コンド は、 もう イチド かいて くれれば、 また チャ を おくって やる が どう だ と いって きた。 それから コト いやしくも ギシ に かんする の だ から、 ク を つくって も いい だろう と いって きた。
 しばらく ハガキ が チュウゼツ した と おもう と、 コンド は それ が フウショ に かわった。 もっとも その フウトウ は クヤクショ など で つかう きわめて やすい ネズミイロ の もの で あった が、 カレ は わざと それ に キッテ を はらない の で ある。 そのかわり ウラ に ジブン の セイメイ も かかず に トウカン して いた。 ワタクシ は それ が ため に、 バイ の ユウゼイ を 2 ド ほど はらわせられた。 サイゴ に ワタクシ は ハイタツフ に カレ の シメイ と ジュウショ と を おしえて、 フウ の まま センポウ へ ギャクソウ して もらった。 カレ は それ で 6 セン とられた せい か、 ようやく サイソク を ダンネン した らしい タイド に なった。
 ところが 2 カゲツ ばかり たって、 トシ が あらたまる と ともに、 カレ は ワタクシ に フツウ の ネンシジョウ を よこした。 それ が ワタクシ を ちょっと カンシン させた ので、 ワタクシ は つい タンザク へ ク を かいて おくる キ に なった。 しかし その オクリモノ は カレ を マンゾク させる に たりなかった。 カレ は タンザク が おれた とか、 よごれた とか いって、 しきり に カキナオシ を セイキュウ して やまない。 げんに コトシ の ショウガツ にも、 「シッケイ もうしそうらえど も……」 と いう イライジョウ が ナナ、 ヨウカ-ゴロ に とどいた。
 ワタクシ が こんな ヒト に であった の は うまれて はじめて で ある。

 14

 つい このあいだ ムカシ ワタクシ の ウチ へ ドロボウ の はいった とき の ハナシ を ヒカクテキ くわしく きいた。
 アネ が まだ フタリ とも かたづかず に いた ジブン の こと だ と いう から、 ネンダイ に する と、 たぶん ワタクシ の うまれる ゼンゴ に あたる の だろう、 なにしろ キンノウ とか サバク とか いう あらあらしい コトバ の はやった やかましい コロ なの で ある。
 ある ヨ 1 バンメ の アネ が、 ヨナカ に コヨウ に おきた アト、 テ を あらう ため に、 クグリド を あける と、 せまい ナカニワ の スミ に、 カベ を おしつける よう な イキオイ で たって いる ウメ の コボク の ネガタ が、 かっと あかるく みえた。 アネ は シリョ を めぐらす イトマ も ない うち に、 すぐ クグリド を しめて しまった が、 しめた アト で、 イマ モクゼン に みた フシギ な アカルサ を そこ に たちながら かんがえた の で ある。
 ワタクシ の オサナゴコロ に うつった この アネ の カオ は、 いまだに おもいおこそう と すれば、 いつでも メノマエ に うかぶ くらい あざやか で ある。 しかし その ゲンゾウ は すでに ヨメ に いって ハ を そめた アト の スガタ で ある から、 その とき エンガワ に たって かんがえて いた ムスメザカリ の カノジョ を、 イマ ムネ の ウチ に えがきだす こと は ちょっと コンナン で ある。
 ひろい ヒタイ、 あさぐろい ヒフ、 ちいさい けれども はっきり した リンカク を そなえて いる ハナ、 ヒトナミ より おおきい フタエマブチ の メ、 それから オサワ と いう やさしい ナ、 ――ワタクシ は ただ これら を ソウゴウ して、 その バアイ に おける アネ の スガタ を ソウゾウ する だけ で ある。
 しばらく たった まま かんがえて いた カノジョ の アタマ に、 この とき もしか する と カジ じゃ ない か と いう ケネン が おこった。 それで カノジョ は おもいきって また キリド を あけて ソト を のぞこう と する トタン に、 1 ポン の ひかる ヌキミ が、 ヤミ の ナカ から、 シカク に きった クグリド の ナカ へ すうと でた。 アネ は おどろいて ミ を アト へ ひいた。 その ヒマ に、 フクメン を した、 ガンドウ チョウチン を さげた オトコ が、 バットウ の まま、 ちいさい クグリド から オオゼイ ウチ の ナカ へ はいって きた の だ そう で ある。 ドロボウ の ニンズ は たしか 8 ニン とか きいた。
 カレラ は、 ヒト を あやめる ため に きた の では ない から、 おとなしく して いて くれ さえ すれば、 ウチ の モノ に キガイ は くわえない、 そのかわり グンヨウキン を かせ と いって、 チチ に せまった。 チチ は ない と ことわった。 しかし ドロボウ は なかなか ショウチ しなかった。 イマ カド の コクラヤ と いう サカヤ へ はいって、 そこ で おしえられて きた の だ から、 かくして も ダメ だ と いって うごかなかった。 チチ は ふしょうぶしょう に、 とうとう ナンマイ か の コバン を カレラ の マエ に ならべた。 カレラ は キンガク が あまり すくなすぎる と おもった もの か、 それでも なかなか かえろう と しない ので、 イマ まで トコ の ナカ に ねて いた ハハ が、 「アナタ の カミイレ に はいって いる の も やって おしまいなさい」 と チュウコク した。 その カミイレ の ナカ には 50 リョウ ばかり あった とか いう ハナシ で ある。 ドロボウ が でて いった アト で、 「ヨケイ な こと を いう オンナ だ」 と いって、 チチ は ハハ を しかりつけた そう で ある。
 その こと が あって イライ、 ワタクシ の イエ では ハシラ を キリクミ に して、 その ナカ へ アリガネ を かくす ホウホウ を こうじた が、 かくす ほど の ザイサン も できず、 また クロショウゾク を つけた ドロボウ も、 それぎり こない ので、 ワタクシ の セイチョウ する ジブン には、 どれ が キリクミ に して ある ハシラ か まるで わからなく なって いた。
 ドロボウ が でて ゆく とき、 「この ウチ は たいへん シマリ の いい ウチ だ」 と いって ほめた そう だ が、 その シマリ の いい ウチ を ドロボウ に おしえた コクラヤ の ハンベエ さん の アタマ には、 あくる ヒ から カスリキズ が イクツ と なく できた。 これ は カネ は ありません と ことわる たび に、 ドロボウ が そんな はず が ある もの か と いって は、 ヌキミ の サキ で ちょいちょい ハンベエ さん の アタマ を つっついた から だ と いう。 それでも ハンベエ さん は、 「どうしても ウチ には ありません、 ウラ の ナツメ さん には たくさん ある から、 あすこ へ いらっしゃい」 と ゴウジョウ を はりとおして、 とうとう カネ は イチモン も とられず に しまった。
 ワタクシ は この ハナシ を サイ から きいた。 サイ は また それ を ワタクシ の アニ から チャウケバナシ に きいた の で ある。

 15

 ワタクシ が キョネン の 11 ガツ ガクシュウイン で コウエン を したら、 ハクシャ と かいた カミヅツミ を アト から とどけて くれた。 リッパ な ミズヒキ が かかって いる ので、 それ を はずして ナカ を あらためる と、 5 エン サツ が 2 マイ はいって いた。 ワタクシ は その カネ を ヘイゼイ から キノドク に おもって いた、 ある コンイ な ゲイジュツカ に おくろう かしら と おもって、 あんに カレ の くる の を まちうけて いた。 ところが その ゲイジュツカ が まだ みえない サキ に、 ナニ か キフ の ヒツヨウ が できて きたり して、 つい 2 マイ とも ショウヒ して しまった。
 ヒトクチ で いう と、 この カネ は ワタクシ に とって けっして ムヨウ な もの では なかった の で ある。 セケン の トオリソウバ で、 リッパ に ワタクシ の ため に ショウヒ された と いう より ホカ に シカタ が ない の で ある。 けれども それ を ヒト に やろう と まで おもった ワタクシ の シュカン から みれば、 そんな に アリガタミ の フチャク して いない カネ には ソウイ なかった の で ある。 うちあけた ワタクシ の ココロモチ を いう と、 こうした オレイ を うける より うけない とき の ほう が よほど さっぱり して いた。
 クロヤナギ カイシュウ クン が チョギュウカイ の コウエン の こと で みえた とき、 ワタクシ は ハナシ の ツイデ と して ひととおり その リユウ を のべた。
「この バアイ ワタクシ は ロウリョク を うり に いった の では ない。 コウイズク で イライ に おうじた の だ から、 ムコウ でも コウイ だけ で ワタクシ に むくいたら よかろう と おもう。 もし ホウシュウ モンダイ と する キ なら、 サイショ から オレイ は いくら する が、 きて くれる か どう か と ソウダン す べき はず でしょう」
 その とき K クン は ナットク できない と いった よう な カオ を した。 そうして こう こたえた。
「しかし どう でしょう。 その 10 エン は アナタ の ロウリョク を かった と いう イミ で なくって、 アナタ に たいする カンシャ の イ を ひょうする ヒトツ の シュダン と みたら。 そう みる わけ には ゆかない の です か」
「シナモノ なら はっきり そう カイシャク も できる の です が、 フコウ にも オレイ が ふつう エイギョウテキ の バイバイ に シヨウ する カネ なの です から、 どっち とも とれる の です」
「どっち とも とれる なら、 この サイ ゼンイ の ほう に カイシャク した ほう が よく は ない でしょう か」
 ワタクシ は もっとも だ とも おもった。 しかし また こう こたえた。
「ワタクシ は ゴゾンジ の とおり ゲンコウリョウ で イショク して いる くらい です から、 むろん フユウ とは いえません。 しかし どうか こうか、 それ だけ で コンニチ を すごして ゆかれる の です。 だから ジブン の ショクギョウ イガイ の こと に かけて は、 なるべく コウイテキ に ヒト の ため に はたらいて やりたい と いう カンガエ を もって います。 そうして その コウイ が センポウ に つうじる の が、 ワタクシ に とって は、 ナニ より も たっとい ホウシュウ なの です。 したがって カネ など を うける と、 ワタクシ が ヒト の ため に はたらいて やる と いう ヨチ、 ――イマ の ワタクシ には この ヨチ が また きわめて せまい の です。 ――その キチョウ な ヨチ を フショク させられた よう な ココロモチ に なります」
 K クン は まだ ワタクシ の いう こと を うけがわない ヨウス で あった。 ワタクシ も ゴウジョウ で あった。
「もし イワサキ とか ミツイ とか いう ダイフゴウ に コウエン を たのむ と した バアイ に、 アト から 10 エン の オレイ を もって ゆく でしょう か、 あるいは シツレイ だ から と いって、 ただ アイサツ だけ に とどめて おく でしょう か。 ワタクシ の カンガエ では おそらく キンセン は もって ゆくまい と おもう の です が」
「さあ」 と いった だけ で K クン は はっきり した ヘンジ を あたえなかった。 ワタクシ には まだ いう こと が すこし のこって いた。
「オノボレ か は しりません が、 ワタクシ の アタマ は ミツイ イワサキ に くらべる ほど とんで いない に して も、 イッパン ガクセイ より は ずっと カネモチ に ちがいない と しんじて います」
「そう です とも」 と K クン は うなずいた。
「もし イワサキ や ミツイ に 10 エン の オレイ を もって ゆく こと が シツレイ ならば、 ワタクシ の ところ へ 10 エン の オレイ を もって くる の も シツレイ でしょう。 それ も その 10 エン が ブッシツジョウ ワタクシ の セイカツ に ヒジョウ な ウルオイ を あたえる なら、 また ホカ の イミ から この モンダイ を ながめる こと も できる でしょう が、 げんに ワタクシ は それ を ヒト に やろう と まで おもった の だ から。 ――ワタクシ の ゲンカ の ケイザイテキ セイカツ は、 この 10 エン の ため に、 ほとんど メ に たつ ほど の エイキョウ を こうむらない の だ から」
「よく かんがえて みましょう」 と いった K クン は にやにや わらいながら かえって いった。

 16

 ウチ の マエ の ダラダラザカ を おりる と、 1 ケン ばかり の オガワ に わたした ハシ が あって、 その ハシムコウ の すぐ ヒダリガワ に、 ちいさな トコヤ が みえる。 ワタクシ は たった イチド そこ で カミ を かって もらった こと が ある。
 ヘイゼイ は しろい カナキン の マク で、 ガラスド の オク が、 オウライ から みえない よう に して ある ので、 ワタクシ は その トコヤ の ドマ に たって、 カガミ の マエ に ザ を しめる まで、 テイシュ の カオ を まるで しらず に いた。
 テイシュ は ワタクシ の はいって くる の を みる と、 テ に もった シンブンシ を ほうりだして すぐ アイサツ を した。 その とき ワタクシ は どうも どこ か で あった こと の ある オトコ に ちがいない と いう キ が して ならなかった。 それで カレ が ワタクシ の ウシロ へ まわって、 ハサミ を ちょきちょき ならしだした コロ を みはからって、 こっち から ハナシ を もちかけて みた。 すると ワタクシ の スイサツドオリ、 カレ は ムカシ テラマチ の ユウビンキョク の ソバ に ミセ を もって、 イマ と おなじ よう に、 サンパツ を トセイ と して いた こと が わかった。
「タカタ の ダンナ など にも だいぶ オセワ に なりました」
 その タカタ と いう の は ワタクシ の イトコ なの だ から、 ワタクシ も おどろいた。
「へえ タカタ を しってる の かい」
「しってる どころ じゃ ございません。 しじゅう トク、 トク、 って ヒイキ に して くだすった もん です」
 カレ の コトバヅカイ は こういう ショクニン に して は むしろ テイネイ な ほう で あった。
「タカタ も しんだ よ」 と ワタクシ が いう と、 カレ は びっくり した チョウシ で 「へっ」 と コエ を あげた。
「いい ダンナ でした がね、 おしい こと に。 イツゴロ おなくなり に なりました」
「なに、 つい コノアイダ さ。 キョウ で 2 シュウカン に なる か、 ならない くらい の もの だろう」
 カレ は それから この しんだ イトコ に ついて、 いろいろ おぼえて いる こと を ワタクシ に かたった スエ、 「かんがえる と はやい もん です ね ダンナ、 つい キノウ の こと と しっきゃ おもわれない のに、 もう 30 ネン-ぢかく にも なる ん です から」 と いった。
「あの そら キュウユウテイ の ヨコチョウ に いらしって ね、……」 と テイシュ は また コトバ を つぎたした。
「うん、 あの 2 カイ の ある ウチ だろう」
「ええ オニカイ が ありましたっけ。 あすこ へ おうつり に なった とき なんか、 ホウボウサマ から オイワイモノ なんか あって、 たいへん ごさかん でした がね。 それから アト でしたっけ か、 ギョウガンジ の ジナイ へ オヒッコシ なすった の は」
 この シツモン は ワタクシ にも こたえられなかった。 じつは あまり ふるい こと なので、 ワタクシ も つい わすれて しまった の で ある。
「あの ジナイ も イマ じゃ たいへん かわった よう だね。 ヨウ が ない ので、 それから つい はいって みた こと も ない が」
「かわった の かわらない の って アナタ、 イマ じゃ まるで マチアイ ばかり でさあ」
 ワタクシ は サカナマチ を とおる たび に、 その ジナイ へ はいる タビヤ の カド の ほそい コウジ の イリグチ に、 ごたごた かかげられた シカク な ケントウ の おおい の を しって いた。 しかし その カズ を カンジョウ して みる ほど の ドウラクギ も おこらなかった ので、 つい テイシュ の いう こと には キ が つかず に いた。
「なるほど そう いえば タガソデ なんて カンバン が トオリ から みえる よう だね」
「ええ たくさん できました よ。 もっとも かわる はず です ね、 かんがえて みる と。 もう やがて 30 ネン にも なろう と いう ん です から。 ダンナ も ゴショウチ の とおり、 あの ジブン は ゲイシャヤ ったら、 ジナイ に たった 1 ケン しきゃ なかった もん でさあ。 アズマヤ って ね。 ちょうど そら タカタ の ダンナ の マンムコウ でしたろう、 アズマヤ の ゴジントウ の ぶらさがって いた の は」
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