カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

アベ イチゾク 1

2015-02-19 | モリ オウガイ
 アベ イチゾク

 モリ オウガイ

 ジュ-シイ ノ ゲ サコンエ ノ ショウショウ ケン エッチュウ ノ カミ ホソカワ タダトシ は、 カンエイ 18 ネン シンシ の ハル、 ヨソ より は はやく さく リョウチ ヒゴ ノ クニ の ハナ を みすてて、 54 マン-ゴク の ダイミョウ の はればれしい ギョウレツ に ゼンゴ を かこませ、 ミナミ より キタ へ アユミ を はこぶ ハル と ともに、 エド を こころざして サンキン の ミチ に のぼろう と して いる うち、 はからず ヤマイ に かかって、 テンイ の ホウザイ も コウ を そうせず、 ひにまし おもく なる ばかり なので、 エド へは シュッパツ ヒノベ の ヒキャク が たつ。 トクガワ ショウグン は メイクン の ホマレ の たかい 3 ダイメ の イエミツ で、 シマバラ イッキ の とき ゾクショウ アマクサ シロウ トキサダ を うちとって タイコウ を たてた タダトシ の ミノウエ を きづかい、 3 ガツ ハツカ には マツダイラ イズ ノ カミ、 アベ ブンゴ ノ カミ、 アベ ツシマ ノ カミ の レンメイ の サタショ を つくらせ、 ハリイ イサク と いう モノ を、 キョウト から ゲコウ させる。 つづいて 22 ニチ には おなじく シッセイ 3 ニン の ショメイ した サタショ を もたせて、 ソガ マタザエモン と いう サムライ を ジョウシ に つかわす。 ダイミョウ に たいする ショウグンケ の トリアツカイ と して は、 テイチョウ を きわめた もの で あった。 シマバラ セイバツ が この トシ から 3 ネン-ゼン カンエイ 15 ネン の ハル ヘイテイ して から ノチ、 エド の ヤシキ に ソエチ を たまわったり、 タカガリ の ツル を くだされたり、 ふだん インギン を つくして いた ショウグンケ の こと で ある から、 コノタビ の タイビョウ を きいて、 センレイ の ゆるす カギリ の イモン を させた の も もっとも で ある。
 ショウグンケ が こういう テツヅキ を する マエ に、 クマモト ハナバタケ の ヤカタ では タダトシ の ヤマイ が すみやか に なって、 とうとう 3 ガツ 17 ニチ サル ノ コク に 56 サイ で なくなった。 オクガタ は オガサワラ ヒョウブ タイフ ヒデマサ の ムスメ を ショウグン が ヨウジョ に して めあわせた ヒト で、 コトシ 45 サイ に なって いる。 ナ を オセン ノ カタ と いう。 チャクシ ロクマル は 6 ネン-ゼン に ゲンプク して ショウグンケ から ミツ の ジ を たまわり、 ミツサダ と なのって、 ジュ-シイ ノ ゲ ジジュウ ケン ヒゴ ノ カミ に せられて いる。 コトシ 17 サイ で ある。 エド サンキンチュウ で トオトウミ ノ クニ ハママツ まで かえった が、 フイン を きいて ひきかえした。 ミツサダ は ノチ ナ を ミツヒサ と あらためた。 ジナン ツルチヨ は ちいさい とき から タツタヤマ の タイショウジ に やって ある。 キョウト ミョウシンジ シュッシン の タイエン オショウ の デシ に なって ソウゲン と いって いる。 サンナン マツノスケ は ホソカワ-ケ に キュウエン の ある ナガオカ シ に やしなわれて いる。 ヨナン カツチヨ は カシン ナンジョウ ダイゼン の ヨウシ に なって いる。 ジョシ は フタリ ある。 チョウジョ フジヒメ は マツダイラ スオウ ノ カミ タダヒロ の オクガタ に なって いる。 ジジョ タケヒメ は ノチ に アリヨシ タノモ ヒデナガ の ツマ に なる ヒト で ある。 オトウト には タダトシ が サンサイ の サンナン に うまれた ので、 ヨナン ナカツカサ タイフ タツタカ、 ゴナン ギョウブ オキタカ、 ロクナン ナガオカ シキブ ヨリユキ の 3 ニン が ある。 イモウト には イナバ カズミチ に かした タラヒメ、 カラスマル チュウナゴン ミツカタ に かした マンヒメ が ある。 この マンヒメ の ハラ に うまれた ネネヒメ が タダトシ の チャクシ ミツヒサ の オクガタ に なって くる の で ある。 メウエ には ナガオカ シ を なのる アニ が フタリ、 マエノ ナガオカ リョウケ に かした アネ が フタリ ある。 インキョ サンサイ ソウリュウ も まだ ゾンメイ で、 79 サイ に なって いる。 この ナカ には チャクシ ミツサダ の よう に エド に いたり、 また キョウト、 その ホカ エンゴク に いる ヒトタチ も ある が、 それ が ノチ に シラセ を うけて なげいた の と ちがって、 クマモト の ヤカタ に いた カギリ の ヒトタチ の ナゲキ は、 わけて ツウセツ な もの で あった。 エド への チュウシン には ムツシマ ショウキチ、 ツダ ロクザエモン の フタリ が たった。
 3 ガツ 20 ヨッカ には ショナヌカ の イトナミ が あった。 4 ガツ 28 ニチ には それまで ヤカタ の イマ の トコイタ を ひきはなって、 ドチュウ に おいて あった カン を かきあげて、 エド から の サシズ に よって、 アキタ-ゴオリ カスガ ムラ シュウウンイン で イガイ を ダビ に して、 コウライモン の ソト の ヤマ に ほうむった。 この ミタマヤ の シタ に、 ヨクネン の フユ に なって、 ゴコクザン ミョウゲジ が コンリュウ せられて、 エド シナガワ トウカイジ から タクアン オショウ の ドウモン の ケイシツ オショウ が きて ジュウジ に なり、 それ が ジナイ の リンリュウアン に インキョ して から、 タダトシ の ジナン で シュッケ して いた ソウゲン が、 テンガン オショウ と ごうして アトツギ に なる の で ある。 タダトシ の ホウゴウ は ミョウゲ インデン タイウン ソウゴ ダイコジ と つけられた。
 シュウウンイン で ダビ に なった の は、 タダトシ の イゴン に よった の で ある。 いつ の こと で あった か、 タダトシ が バンガリ に でて、 この シュウウンイン で やすんで チャ を のんだ こと が ある。 その とき タダトシ は ふと アゴヒゲ の のびて いる の に キ が ついて ジュウジ に カミソリ は ない か と いった。 ジュウジ が タライ に ミズ を とって、 カミソリ を そえて だした。 タダトシ は キゲン よく コゴショウ に ヒゲ を そらせながら、 ジュウジ に いった。 「どう じゃ な。 この カミソリ では モウジャ の アタマ を たくさん そった で あろう な」 と いった。 ジュウジ は なんと ヘンジ を して いい か わからぬ ので、 ひどく こまった。 この とき から タダトシ は シュウウンイン の ジュウジ と こころやすく なって いた ので、 ダビショ を この テラ に きめた の で ある。 ちょうど ダビ の サイチュウ で あった。 ヒツギ の トモ を して きて いた カシン たち の ムレ に、 「あれ、 オタカ が オタカ が」 と いう コエ が した。 ケイダイ の スギ の コダチ に かぎられて、 にぶい アオイロ を して いる ソラ の シタ、 マルガタ の イシ の イヅツ の ウエ に カサ の よう に たれかかって いる ハザクラ の ウエ の ほう に、 2 ワ の タカ が ワ を かいて とんで いた の で ある。 ヒトビト が フシギ-がって みて いる うち に、 2 ワ が オ と クチバシ と ふれる よう に アトサキ に つづいて、 さっと おとして きて、 サクラ の シタ の イ の ナカ に はいった。 テラ の モンゼン で しばらく ナニ か を いいあらそって いた 5~6 ニン の ナカ から、 フタリ の オトコ が かけだして、 イ の ハタ に きて、 イシ の イヅツ に テ を かけて ナカ を のぞいた。 その とき タカ は スイテイ ふかく しずんで しまって、 シダ の シゲミ の ナカ に カガミ の よう に ひかって いる スイメン は、 もう モト の とおり に たいら に なって いた。 フタリ の オトコ は タカジョウシュウ で あった。 イ の ソコ に くぐりいって しんだ の は、 タダトシ が あいして いた アリアケ、 アカシ と いう 2 ワ の タカ で あった。 その こと が わかった とき、 ヒトビト の アイダ に、 「それでは オタカ も ジュンシ した の か」 と ささやく コエ が きこえた。 それ は トノサマ が おかくれ に なった トウジツ から オトツイ まで に ジュンシ した カシン が 10 ヨニン あって、 なかにも オトツイ は 8 ニン イチジ に セップク し、 キノウ も ヒトリ セップク した ので、 カチュウ タレイチニン ジュンシ の こと を おもわず に いる モノ は なかった から で ある。 2 ワ の タカ は どういう テヌカリ で タカジョウシュウ の テ を はなれた か、 どうして メ に みえぬ エモノ を おう よう に、 イド の ナカ に とびこんだ か しらぬ が、 それ を センサク しよう など と おもう モノ は ヒトリ も ない。 タカ は トノサマ の ゴチョウアイ なされた もの で、 それ が ダビ の トウジツ に、 しかも オダビショ の シュウウンイン の イド に はいって しんだ と いう だけ の ジジツ を みて、 タカ が ジュンシ した の だ と いう ハンダン を する には ジュウブン で あった。 それ を うたがって ベツ に ゲンイン を たずねよう と する ヨチ は なかった の で ある。

 チュウイン の シジュウクニチ が 5 ガツ イツカ に すんだ。 これまで は ソウゲン を ハジメ と して、 キセイドウ、 コンリョウドウ、 テンジュアン、 チョウショウイン、 フジアン-トウ の ソウリョ が ゴンギョウ を して いた の で ある。 さて 5 ガツ ムイカ に なった が、 まだ ジュンシ する ヒト が ぽつぽつ ある。 ジュンシ する ホンニン や オヤキョウダイ サイシ は いう まで も なく、 なんの ユカリ も ない モノ でも、 キョウト から くる オハリイ と エド から くだる ゴジョウシ との セッタイ の ヨウイ なんぞ は ウワノソラ で して いて、 ただ ジュンシ の こと ばかり おもって いる。 レイネン ノキ に ふく タンゴ の ショウブ も つまず、 ましてや ハツノボリ の イワイ を する コ の ある イエ も、 その コ の うまれた こと を わすれた よう に して、 しずまりかえって いる。
 ジュンシ には いつ どうして きまった とも なく、 シゼン に オキテ が できて いる。 どれほど トノサマ を タイセツ に おもえば と いって、 タレ でも カッテ に ジュンシ が できる もの では ない。 タイヘイ の ヨ の エド サンキン の オトモ、 いざ センソウ と いう とき の ジンチュウ への オトモ と おなじ こと で、 シデ の ヤマ サンズ の カワ の オトモ を する にも ぜひ トノサマ の オユルシ を えなくて は ならない。 その ユルシ も ない のに しんで は、 それ は イヌジニ で ある。 ブシ は ミョウモン が タイセツ だ から、 イヌジニ は しない。 テキジン に とびこんで ウチジニ を する の は リッパ では ある が、 グンレイ に そむいて ヌケガケ を して しんで は コウ には ならない。 それ が イヌジニ で ある と おなじ こと で、 オユルシ の ない に ジュンシ して は、 これ も イヌジニ で ある。 たまに そういう ヒト で イヌジニ に ならない の は、 チグウ を えた クンシン の アイダ に モッケイ が あって、 オユルシ は なくて も オユルシ が あった の と かわらぬ の で ある。 ブツネハン の ノチ に おこった ダイジョウ の オシエ は、 ホトケ の オユルシ は なかった が、 カゲンミ を つうじて しらぬ こと の ない ホトケ は、 そういう オシエ が でて くる もの だ と しって ケンキョ して おいた もの だ と して ある。 オユルシ が ない のに ジュンシ の できる の は、 コンク で とかれる と おなじ よう に、 ダイジョウ の オシエ を とく よう な もの で あろう。
 そんなら どうして オユルシ を える か と いう と、 このたび ジュンシ した ヒトビト の ナカ の ナイトウ チョウジュウロウ モトツグ が ねがった シュダン など が よい レイ で ある。 チョウジュウロウ は ヘイゼイ タダトシ の ツクエマワリ の ヨウ を つとめて、 カクベツ の ゴコンイ を こうむった モノ で、 ビョウショウ を はなれず に カイホウ を して いた。 もはや ホンプク は おぼつかない と、 タダトシ が さとった とき、 チョウジュウロウ に 「マツゴ が ちこう なったら、 あの フジ と かいて ある ダイモジ の カケモノ を マクラモト に かけて くれ」 と いいつけて おいた。 3 ガツ 17 ニチ に ヨウダイ が しだいに おもく なって、 タダトシ が 「あの カケモノ を かけえ」 と いった。 チョウジュウロウ は それ を かけた。 タダトシ は それ を ヒトメ みて、 しばらく メイモク して いた。 それから タダトシ が 「アシ が だるい」 と いった。 チョウジュウロウ は カイマキ の スソ を しずか に まくって、 タダトシ の アシ を さすりながら、 タダトシ の カオ を じっと みる と、 タダトシ も じっと みかえした。
「チョウジュウロウ オネガイ が ござりまする」
「ナン じゃ」
「ゴビョウキ は いかにも ゴジュウタイ の よう には おみうけ もうしまする が、 シンブツ の カゴ リョウヤク の コウケン で、 1 ニチ も はよう ゴゼンカイ あそばす よう に と、 キガン いたして おりまする。 それでも マンイチ と もうす こと が ござりまする。 もしも の こと が ござりましたら、 どうぞ チョウジュウロウ め に オトモ を おおせつけられます よう に」
 こう いいながら チョウジュウロウ は タダトシ の アシ を そっと もちあげて、 ジブン の ヒタイ に おしあてて いただいた。 メ には ナミダ が いっぱい うかんで いた。
「それ は いかん ぞよ」 こう いって タダトシ は イマ まで チョウジュウロウ と カオ を みあわせて いた のに、 ハンブン ネガエリ を する よう に ワキ を むいた。
「どうぞ そう おっしゃらず に」 チョウジュウロウ は また タダトシ の アシ を いただいた。
「いかん いかん」 カオ を そむけた まま で いった。
 レツザ の モノ の ナカ から、 「ジャクハイ の ミ を もって スイサン じゃ、 ひかえたら よかろう」 と いった モノ が ある。 チョウジュウロウ は トウネン 17 サイ で ある。
「どうぞ」 ノド に つかえた よう な コエ で いって、 チョウジュウロウ は 3 ド-メ に いただいた アシ を いつまでも ヒタイ に あてて はなさず に いた。
「ジョウ の こわい ヤツ じゃ な」 コエ は おこって しかる よう で あった が、 タダトシ は この コトバ と ともに 2 ド うなずいた。
 チョウジュウロウ は 「はっ」 と いって、 リョウテ で タダトシ の アシ を かかえた まま、 トコ の ウシロ に うっぷして、 しばらく うごかず に いた。 その とき チョウジュウロウ が ココロ の ウチ には、 ヒジョウ な ナンショ を かよって ゆきつかなくて は ならぬ ところ へ ゆきついた よう な、 チカラ の ユルミ と ココロ の オチツキ と が みちあふれて、 その ホカ の こと は なにも イシキ に のぼらず、 ビンゴタタミ の ウエ に ナミダ の こぼれる の も しらなかった。
 チョウジュウロウ は まだ ジャクハイ で なにひとつ きわだった コウセキ も なかった が、 タダトシ は しじゅう メ を かけて ソバ ちかく つかって いた。 サケ が すき で、 ベツジン なら ブレイ の オトガメ も ありそう な シッサク を した こと が ある のに、 タダトシ は 「あれ は チョウジュウロウ が した の では ない、 サケ が した の じゃ」 と いって わらって いた。 それで その オン に むくいなくて は ならぬ、 その アヤマチ を つぐのわなくて は ならぬ と おもいこんで いた チョウジュウロウ は、 タダトシ の ビョウキ が おもって から は、 その ホウシャ と バイショウ との ミチ は ジュンシ の ホカ ない と かたく しんずる よう に なった。 しかし こまか に この オトコ の シンチュウ に たちいって みる と、 ジブン の ハツイ で ジュンシ しなくて は ならぬ と いう ココロモチ の かたわら、 ヒト が ジブン を ジュンシ する はず の もの だ と おもって いる に ちがいない から、 ジブン は ジュンシ を よぎなく せられて いる と、 ヒト に すがって シ の ホウコウ へ すすんで ゆく よう な ココロモチ が、 ほとんど おなじ ツヨサ に ソンザイ して いた。 ハンメン から いう と、 もし ジブン が ジュンシ せず に いたら、 おそろしい クツジョク を うける に ちがいない と シンパイ して いた の で ある。 こういう ヨワミ の ある チョウジュウロウ では ある が、 シ を おそれる ネン は ミジン も ない。 それだから どうぞ トノサマ に ジュンシ を ゆるして いただこう と いう ガンモウ は、 ナニモノ の ショウガイ をも こうむらず に この オトコ の イシ の ゼンプク を りょうして いた の で ある。
 しばらく して チョウジュウロウ は リョウテ で もって いる トノサマ の アシ に チカラ が はいって すこし ふみのばされる よう に かんじた。 これ は また だるく おなり に なった の だ と おもった ので、 また サイショ の よう に しずか に さすりはじめた。 この とき チョウジュウロウ の シントウ には ロウボ と ツマ との こと が うかんだ。 そして ジュンシシャ の イゾク が シュカ の ユウタイ を うける と いう こと を かんがえて、 それで オノレ は カゾク を アンノン な チイ に おいて、 やすんじて しぬる こと が できる と おもった。 それ と ドウジ に チョウジュウロウ の カオ は はればれ した キショク に なった。

 4 ガツ 17 ニチ の アサ、 チョウジュウロウ は イフク を あらためて ハハ の マエ に でて、 はじめて ジュンシ の こと を あかして イトマゴイ を した。 ハハ は すこしも おどろかなかった。 それ は たがいに クチ に だして は いわぬ が、 キョウ は セガレ が セップク する ヒ だ と、 ハハ も とうから おもって いた から で ある。 もし セップク しない と でも いったら、 ハハ は さぞ おどろいた こと で あろう。
 ハハ は まだ もらった ばかり の ヨメ が カッテ に いた の を その セキ へ よんで ただ シタク が できた か と とうた。 ヨメ は すぐに たって、 カッテ から かねて ヨウイ して あった ハイバン を ジシン に はこんで でた。 ヨメ も ハハ と おなじ よう に、 オット が キョウ セップク する と いう こと を とうから しって いた。 カミ を きれい に なでつけて、 よい ブン の フダンギ に きかえて いる。 ハハ も ヨメ も あらたまった、 マジメ な カオ を して いる の は おなじ こと で ある が、 ただ ヨメ の メ の フチ が あかく なって いる ので、 カッテ に いた とき ないた こと が わかる。 ハイバン が でる と、 チョウジュウロウ は オトウト サヘイジ を よんだ。
 4 ニン は だまって サカズキ を とりかわした。 サカズキ が イチジュン した とき ハハ が いった。
「チョウジュウロウ や。 オマエ の すき な サケ じゃ。 すこし すごして は どう じゃ な」
「ほんに そう で ござりまする な」 と いって、 チョウジュウロウ は ビショウ を ふくんで、 ここちよげ に サカズキ を かさねた。
 しばらく して チョウジュウロウ が ハハ に いった。 「よい ココロモチ に よいました。 センジツ から かれこれ と ココロヅカイ を いたしました せい か、 イツモ より サケ が きいた よう で ござります。 ゴメン を こうむって ちょっと ヒトヤスミ いたしましょう」
 こう いって チョウジュウロウ は たって イマ に はいった が、 すぐに ヘヤ の マンナカ に ころがって、 イビキ を かきだした。 ニョウボウ が アト から そっと はいって マクラ を だして あてさせた とき、 チョウジュウロウ は 「ううん」 と うなって ネガエリ を した だけ で、 また イビキ を かきつづけて いる。 ニョウボウ は じっと オット の カオ を みて いた が、 たちまち あわてた よう に たって ヘヤ へ いった。 ないて は ならぬ と おもった の で ある。
 ウチ は ひっそり と して いる。 ちょうど シュジン の ケッシン を ハハ と ツマ と が いわず に しって いた よう に、 ケライ も ジョチュウ も しって いた ので、 カッテ から も ウマヤ の ほう から も ワライゴエ なぞ は きこえない。
 ハハ は ハハ の ヘヤ に、 ヨメ は ヨメ の ヘヤ に、 オトウト は オトウト の ヘヤ に、 じっと モノ を おもって いる。 シュジン は イマ で イビキ を かいて ねて いる。 あけはなって ある イマ の マド には、 シタ に フウリン を つけた ツリシノブ が つって ある。 その フウリン が おりおり おもいだした よう に かすか に なる。 その シタ には タケ の たかい イシ の イタダキ を ほりくぼめた チョウズバチ が ある。 その ウエ に ふせて ある マキモノ の ヒシャク に、 ヤンマ が 1 ピキ とまって、 ハネ を ヤマガタ に たれて うごかず に いる。
 ヒトトキ たつ。 フタトキ たつ。 もう ヒル を すぎた。 ショクジ の シタク は ジョチュウ に いいつけて ある が、 シュウトメ が たべる と いわれる か、 どう だ か わからぬ と おもって、 ヨメ は きき に ゆこう と おもいながら ためらって いた。 もし ジブン だけ が ショクジ の こと なぞ を おもう よう に とられ は すまい か と ためらって いた の で ある。
 その とき かねて カイシャク を たのまれて いた セキ コヘイジ が きた。 シュウトメ は ヨメ を よんだ。 ヨメ が だまって テ を ついて キゲン を うかがって いる と、 シュウトメ が いった。
「チョウジュウロウ は ちょっと ヒトヤスミ する と いうた が、 いかい トキ が たつ よう な。 ちょうど セキ ドノ も こられた。 もう おこして やって は どう じゃろう の」
「ほんに そう で ござります。 あまり おそく なりません ほう が」 ヨメ は こう いって、 すぐに たって オット を おこし に いった。
 オット の イマ に きた ニョウボウ は、 さきに マクラ を させた とき と おなじ よう に、 また じっと オット の カオ を みて いた。 しなせ に おこす の だ と おもう ので、 しばらく は コトバ を かけかねて いた の で ある。
 ジュクスイ して いて も、 ニワ から さす ヒル の アカリ が まばゆかった と みえて、 オット は マド の ほう を セ に して、 カオ を こっち へ むけて いる。
「もし、 アナタ」 と ニョウボウ は よんだ。
 チョウジュウロウ は メ を さまさない。
 ニョウボウ が すりよって、 そびえて いる カタ に テ を かける と、 チョウジュウロウ は 「あ、 ああ」 と いって ヒジ を のばして、 リョウガン を ひらいて、 むっくり おきた。
「たいそう よく おやすみ に なりました。 オフクロサマ が あまり おそく なり は せぬ か と おっしゃります から、 おおこし もうしました。 それに セキ サマ が おいで に なりました」
「そう か。 それでは ヒル に なった と みえる。 すこし の アイダ だ と おもった が、 よった の と ツカレ が あった の と で、 トキ の たつ の を しらず に いた。 そのかわり ひどく キブン が よう なった。 チャヅケ でも たべて、 そろそろ トウコウイン へ ゆかずば なるまい。 オカアサマ にも もうしあげて くれ」
 ブシ は いざ と いう とき には ホウショク は しない。 しかし また クウフク で タイセツ な こと に とりかかる こと も ない。 チョウジュウロウ は じっさい ちょっと ねよう と おもった の だ が、 おぼえず キモチ よく ねすごし、 ヒル に なった と きいた ので、 ショクジ を しよう と いった の で ある。 これから カタバカリ では ある が、 イッケ 4 ニン の モノ が フダン の よう に ゼン に むかって、 ヒル の ショクジ を した。
 チョウジュウロウ は こころしずか に シタク を して、 セキ を つれて ボダイショ トウコウイン へ ハラ を きり に いった。

 チョウジュウロウ が タダトシ の アシ を いただいて ねがった よう に、 ヘイゼイ オンコ を うけて いた カシン の ウチ で、 これ と ゼンゴ して おもいおもい に ジュンシ の ネガイ を して ゆるされた モノ が、 チョウジュウロウ を くわえて 18 ニン あった。 いずれ も タダトシ の ふかく シンライ して いた サムライ ども で ある。 だから タダトシ の ココロ では、 この ヒトビト を シソク ミツヒサ の ホゴ の ため に のこして おきたい こと は やまやま で あった。 また この ヒトビト を ジブン と イッショ に しなせる の が ザンコク だ とは じゅうぶん かんじて いた。 しかし カレラ ヒトリヒトリ に 「ゆるす」 と いう イチゴン を、 ミ を さく よう に おもいながら あたえた の は、 いきおい やむ こと を えなかった の で ある。
 ジブン の したしく つかって いた カレラ が、 イノチ を おしまぬ モノ で ある とは、 タダトシ は しんじて いる。 したがって ジュンシ を クツウ と せぬ こと も しって いる。 これ に はんして もし ジブン が ジュンシ を ゆるさず に おいて、 カレラ が いきながらえて いたら、 どう で あろう か。 カチュウ イチドウ は カレラ を しぬ べき とき に しなぬ モノ と し、 オンシラズ と し、 ヒキョウモノ と して ともに よわいせぬ で あろう。 それ だけ ならば、 カレラ も あるいは しのんで イノチ を ミツヒサ に ささげる とき の くる の を まつ かも しれない。 しかし その オンシラズ、 その ヒキョウモノ を それ と しらず に、 センダイ の シュジン が つかって いた の だ と いう モノ が あったら、 それ は カレラ の しのびえぬ こと で あろう。 カレラ は どんな に か くちおしい オモイ を する で あろう。 こう おもって みる と、 タダトシ は 「ゆるす」 と いわず には いられない。 そこで ビョウク にも ました せつない オモイ を しながら、 タダトシ は 「ゆるす」 と いった の で ある。
 ジュンシ を ゆるした カシン の カズ が 18 ニン に なった とき、 50 ヨネン の ひさしい アイダ チラン の ウチ に ミ を しょして、 ニンジョウ セイコ に あくまで つうじて いた タダトシ は ビョウク の ナカ にも、 つくづく ジブン の シ と 18 ニン の サムライ の シ と に ついて かんがえた。 ショウ ある もの は かならず めっする。 ロウボク の くちかれる ソバ で、 ワカギ は しげりさかえて ゆく。 チャクシ ミツヒサ の シュウイ に いる ワカモノ ども から みれば、 ジブン の ニンヨウ して いる トシヨリ ら は、 もう いなくて よい の で ある。 ジャマ にも なる の で ある。 ジブン は カレラ を いきながらえさせて、 ジブン に した と おなじ ホウコウ を ミツヒサ に させたい と おもう が、 その ホウコウ を ミツヒサ に する モノ は、 もう イクニン も できて いて、 テグスネ ひいて まって いる かも しれない。 ジブン の ニンヨウ した モノ は、 ネンライ ソレゾレ の ショクブン を つくして くる うち に、 ヒト の ウラミ をも かって いよう。 すくなくも ソネミ の マト に なって いる には ちがいない。 そうして みれば、 しいて カレラ に ながらえて いろ と いう の は、 ツウタツ した カンガエ では ない かも しれない。 ジュンシ を ゆるして やった の は ジヒ で あった かも しれない。 こう おもって タダトシ は タショウ の イシャ を えた よう な ココロモチ に なった。
 ジュンシ を ねがって ゆるされた 18 ニン は テラモト ハチザエモン ナオツグ、 オオツカ キヘエ タネツグ、 ナイトウ チョウジュウロウ モトツグ、 オオタ コジュウロウ マサノブ、 ハラダ ジュウジロウ ユキナオ、 ムナカタ カヘエ カゲサダ、 ドウ キチダユウ カゲヨシ、 ハシタニ イチゾウ シゲツグ、 イハラ ジュウザブロウ ヨシマサ、 タナカ イトク、 ホンジョウ キスケ シゲマサ、 イトウ タザエモン マサタカ、 ミギタ イナバ ムネヤス、 ノダ キヘエ シゲツナ、 ツザキ ゴスケ ナガスエ、 コバヤシ リエモン ユキヒデ、 ハヤシ ヨザエモン マササダ、 ミヤナガ カツザエモン ムネスケ の ヒトビト で ある。

 テラモト が センゾ は オワリ ノ クニ テラモト に すんで いた テラモト タロウ と いう モノ で あった。 タロウ の コ ナイゼンノショウ は イマガワ-ケ に つかえた。 ナイゼンノショウ の コ が サヘエ、 サヘエ の コ が ウエモンノスケ、 ウエモンノスケ の コ が ヨザエモン で、 ヨザエモン は チョウセン セイバツ の とき、 カトウ ヨシアキ に ぞくして コウ が あった。 ヨザエモン の コ が ハチザエモン で、 オオサカ ロウジョウ の とき、 ゴトウ モトツグ の シタ で はたらいた こと が ある。 ホソカワ-ケ に めしかかえられて から、 1000 ゴク とって、 テッポウ 50 チョウ の カシラ に なって いた。 4 ガツ 29 ニチ に アンヨウジ で セップク した。 53 サイ で ある。 フジモト イザエモン が カイシャク した。 オオツカ は 150 コク-ドリ の ヨコメヤク で ある。 4 ガツ 26 ニチ に セップク した。 カイシャク は イケダ ハチザエモン で あった。 ナイトウ が こと は マエ に いった。 オオタ は ソフ デンザエモン が カトウ キヨマサ に つかえて いた。 タダヒロ が ホウ を のぞかれた とき、 デンザエモン と その コ の ゲンザエモン と が ルロウ した。 コジュウロウ は ゲンザエモン の ジナン で コゴショウ に めしだされた モノ で ある。 150 コク とって いた。 ジュンシ の セントウ は この ヒト で、 3 ガツ 17 ニチ に カスガデラ で セップク した。 18 サイ で ある。 カイシャク は モジ ゲンベエ が した。 ハラダ は 150 コク-ドリ で、 オソバ に つとめて いた。 4 ガツ 26 ニチ に セップク した。 カイシャク は カマダ ゲンダユウ が した。 ムナカタ カヘエ、 ドウ キチダユウ の キョウダイ は、 ムナカタ チュウナゴン ウジサダ の コウエイ で、 オヤ セイベエ カゲノブ の ダイ に めしだされた。 キョウダイ いずれ も 200 コク-ドリ で ある。 5 ガツ フツカ に アニ は リュウチョウイン、 オトウト は レンショウジ で セップク した。 アニ の カイシャク は タカダ ジュウベエ、 オトウト の は ムラカミ イチエモン が した。 ハシタニ は イズモ ノ クニ の ヒト で、 アマコ の バツリュウ で ある。 14 サイ の とき タダトシ に めしだされて、 チギョウ 100 コク の ソバヤク を つとめ、 ショクジ の ドクミ を して いた。 タダトシ は ヤマイ が おもく なって から、 ハシタニ の ヒザ を マクラ に して ねた こと も ある。 4 ガツ 26 ニチ に セイガンジ で セップク した。 ちょうど ハラ を きろう と する と、 シロ の タイコ が かすか に きこえた。 ハシタニ は ついて きて いた ケライ に、 ソト へ でて ナンドキ か きいて こい と いった。 ケライ は かえって、 「シマイ の ヨツ だけ は ききました が、 ソウタイ の バチカズ は わかりません」 と いった。 ハシタニ を ハジメ と して、 イチザ の モノ が ほほえんだ。 ハシタニ は 「サイゴ に よう わらわせて くれた」 と いって、 ケライ に ハオリ を とらせて セップク した。 ヨシムラ ジンダユウ が カイシャク した。 イハラ は キリマイ 3 ニン フチ 10 コク を とって いた。 セップク した とき アベ ヤイチエモン の ケライ ハヤシ サヘエ が カイシャク した。 タナカ は オキク モノガタリ を ヨ に のこした オキク が マゴ で、 タダトシ が アタゴ-サン へ ガクモン に いった とき の オサナトモダチ で あった。 タダトシ が その コロ シュッケ しよう と した の を、 ひそか に いさめた こと が ある。 ノチ に チギョウ 200 コク の ソバヤク を つとめ、 サンジュツ が タッシャ で ヨウ に たった。 ロウネン に なって から は、 クンゼン で ズキン を かむった まま アンザ する こと を ゆるされて いた。 トウダイ に オイバラ を ねがって も ゆるされぬ ので、 6 ガツ 19 ニチ に コワキザシ を ハラ に つきたてて から ガンショ を だして、 とうとう ゆるされた。 カトウ ヤスダユウ が カイシャク した。 ホンジョウ は タンゴ ノ クニ の モノ で、 ルロウ して いた の を サンサイ-コウ の ヘヤヅキ ホンジョウ キュウエモン が めしつかって いた。 ナカツ で ロウゼキモノ を とりおさえて、 5 ニン フチ 15 コク の キリマイトリ に せられた。 ホンジョウ を なのった の も その とき から で ある。 4 ガツ 26 ニチ に セップク した。 イトウ は オクオナンドヤク を つとめた キリマイトリ で ある。 4 ガツ 26 ニチ に セップク した。 カイシャク は カワキタ ハチスケ が した。 ミギタ は オオトモ-ケ の ロウニン で、 タダトシ に チギョウ 100 コク で めしかかえられた。 4 ガツ 27 ニチ に ジタク で セップク した。 64 サイ で ある。 マツノ ウキョウ の ケライ タハラ カンベエ が カイシャク した。 ノダ は アマクサ の カロウ ノダ ミノ の セガレ で、 キリマイトリ に めしだされた。 4 ガツ 26 ニチ に ゲンカクジ で セップク した。 カイシャク は エラ ハンエモン が した。 ツザキ の こと は ベツ に かく。 コバヤシ は 2 ニン フチ 10 コク の キリマイトリ で ある。 セップク の とき、 タカノ カンエモン が カイシャク した。 ハヤシ は ナンゴウ シモダ ムラ の ヒャクショウ で あった の を、 タダトシ が 10 ニン フチ 15 コク に めしだして、 ハナバタケ の ヤカタ の ニワカタ に した。 4 ガツ 26 ニチ に ブツガンジ で セップク した。 カイシャク は ナカミツ ハンスケ が した。 ミヤナガ は 2 ニン フチ 10 コク の ダイドコロ ヤクニン で、 センダイ に ジュンシ を ねがった サイショ の オトコ で あった。 4 ガツ 26 ニチ に ジョウショウジ で セップク した。 カイシャク は ヨシムラ カエモン が した。 この ヒトビト の ナカ には ソレゾレ の イエ の ボダイショ に ほうむられた の も ある が、 また コウライモン-ガイ の サンチュウ に ある オタマヤ の ソバ に ほうむられた の も ある。
 キリマイトリ の ジュンシシャ は わりに タニンズ で あった が、 なかにも ツザキ ゴスケ の ジセキ は、 きわだって おもしろい から ベツ に かく こと に する。
 ゴスケ は 2 ニン フチ 6 コク の キリマイトリ で、 タダトシ の イヌヒキ で ある。 いつも タカガリ の トモ を して ノカタ で タダトシ の キ に いって いた。 シュクン に ねだる よう に して、 ジュンシ の オユルシ は うけた が、 カロウ たち は ミナ いった。 「ホカ の カタガタ は コウロク を たまわって、 エヨウ を した のに、 ソチ は トノサマ の オイヌヒキ では ない か。 ソチ が ココロザシ は シュショウ で、 トノサマ の オユルシ が でた の は、 コノウエ も ない ホマレ じゃ。 もう それ で よい。 どうぞ しぬる こと だけ は おもいとまって、 ゴトウシュ に ゴホウコウ して くれい」 と いった。
 ゴスケ は どうしても きかず に、 5 ガツ ナヌカ に いつも ひいて オトモ を した イヌ を つれて、 オイマワシ タハタ の コウリンジ へ でかけた。 ニョウボウ は トグチ まで ミオクリ に でて、 「オマエ も オトコ じゃ、 オレキレキ の シュウ に まけぬ よう に おし なされい」 と いった。
 ツザキ の イエ では オウジョウイン を ボダイショ に して いた が、 オウジョウイン は カミ の ゴユイショ の ある オテラ だ と いう ので はばかって、 コウリンジ を シニドコロ と きめた の で ある。 ゴスケ が ボチ に はいって みる と、 かねて カイシャク を たのんで おいた マツノ ヌイノスケ が サキ に きて まって いた。 ゴスケ は カタ に かけた アサギ の フクロ を おろして その ナカ から メシコウリ を だした。 フタ を あける と ニギリメシ が フタツ はいって いる。 それ を イヌ の マエ に おいた。 イヌ は すぐに くおう とも せず、 オ を ふって ゴスケ の カオ を みて いた。 ゴスケ は ニンゲン に いう よう に イヌ に いった。
「オヌシ は チクショウ じゃ から、 しらず に おる かも しれぬ が、 オヌシ の アタマ を さすって くだされた こと の ある トノサマ は、 もう おなくなり あそばされた。 それで ゴオン に なって いなされた オレキレキ は ミナ キョウ ハラ を きって オトモ を なさる。 オレ は ゲス では ある が、 ゴフチ を いただいて つないだ イノチ は オレキレキ と かわった こと は ない。 トノサマ に かわいがって いただいた アリガタサ も おなじ こと じゃ。 それで オレ は イマ ハラ を きって しぬる の じゃ。 オレ が しんで しもうたら、 オヌシ は イマ から ノライヌ に なる の じゃ。 オレ は それ が かわいそう で ならん。 トノサマ の オトモ を した タカ は シュウウンイン で イド に とびこんで しんだ。 どう じゃ。 オヌシ も オレ と イッショ に しのう とは おもわん かい。 もし ノライヌ に なって も、 いきて いたい と おもうたら、 この ニギリメシ を くって くれい。 しにたい と おもう なら、 くうな よ」
 こう いって イヌ の カオ を みて いた が、 イヌ は ゴスケ の カオ ばかり を みて いて、 ニギリメシ を くおう とは しない。
「それなら オヌシ も しぬる か」 と いって、 ゴスケ は イヌ を きっと みつめた。
 イヌ は ヒトコエ ないて オ を ふった。
「よい。 そんなら フビン じゃ が しんで くれい」 こう いって ゴスケ は イヌ を だきよせて、 ワキザシ を ぬいて、 イットウ に さした。
 ゴスケ は イヌ の シガイ を カタワラ へ おいた。 そして カイチュウ から 1 マイ の カキモノ を だして、 それ を マエ に ひろげて、 コイシ を オモリ に して おいた。 タレ やら の ヤシキ で ウタ の カイ の あった とき みおぼえた とおり に ハンシ を ヨコ に フタツ に おって、 「カロウシュウ は とまれ とまれ と オオセ あれど とめて とまらぬ この ゴスケ かな」 と、 ツネ の エイソウ の よう に かいて ある。 ショメイ は して ない。 ウタ の ナカ に ゴスケ と して ある から、 ニジュウ に ナ を かかなくて も よい と、 すなお に かんがえた の が、 シゼン に コジツ に かなって いた。
 もう これ で なにも テオチ は ない と おもった ゴスケ は 「マツノ サマ、 おたのみ もうします」 と いって、 アンザ して ハダ を くつろげた。 そして イヌ の チ の ついた まま の ワキザシ を サカテ に もって、 「オタカジョウシュウ は どう なさりました な、 オイヌヒキ は ただいま まいります ぞ」 と タカゴエ に いって、 ヒトコエ こころよげ に わらって、 ハラ を ジュウモンジ に きった。 マツノ が ウシロ から クビ を うった。
 ゴスケ は ミブン の かるい モノ では ある が、 ノチ に ジュンシシャ の イゾク の うけた ほど の テアテ は、 アト に のこった ゴケ が うけた。 ダンシ 1 ニン は ちいさい とき シュッケ して いた から で ある。 ゴケ は 5 ニン フチ を もらい、 あらた に イエヤシキ を もらって、 タダトシ の サンジュウサン カイキ の とき まで ゾンメイ して いた。 ゴスケ の オイ の コ が 2 ダイ の ゴスケ に なって、 それから は ダイダイ フレグミ で ホウコウ して いた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする