カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

アベ イチゾク 2

2015-02-04 | モリ オウガイ
 タダトシ の ユルシ を えて ジュンシ した 18 ニン の ホカ に、 アベ ヤイチエモン ミチノブ と いう モノ が あった。 ハジメ は アカシ ウジ で、 ヨウミョウ を イノスケ と いった。 はやく から タダトシ の ソバ ちかく つかえて、 1100 コク-ヨ の ミブン に なって いる。 シマバラ セイバツ の とき、 コドモ 5 ニン の ウチ 3 ニン まで グンコウ に よって シンチ 200 コク ずつ を もらった。 この ヤイチエモン は カチュウ でも ジュンシ する はず の よう に おもい、 トウニン も また タダトシ の ヨトギ に でる ジュンバン が くる たび に、 ジュンシ したい と いって ねがった。 しかし どうしても タダトシ が ゆるさない。
「ソチ が ココロザシ は マンゾク に おもう が、 それ より は いきて いて ミツヒサ に ホウコウ して くれい」 と、 ナンド ねがって も、 おなじ こと を くりかえして いう の で ある。
 いったい タダトシ は ヤイチエモン の いう こと を きかぬ クセ が ついて いる。 これ は よほど ふるく から の こと で、 まだ イノスケ と いって コショウ を つとめて いた コロ も、 イノスケ が 「ゴゼン を さしあげましょう か」 と うかがう と、 「まだ クウフク には ならぬ」 と いう。 ホカ の コショウ が もうしあげる と、 「よい、 ださせい」 と いう。 タダトシ は この オトコ の カオ を みる と、 ハンタイ したく なる の で ある。 そんなら しかられる か と いう と、 そう でも ない。 この オトコ ほど セイキン を する モノ は なく、 バンジ に キ が ついて、 テヌカリ が ない から、 しかろう と いって も シカリヨウ が ない。
 ヤイチエモン は ホカ の ヒト の いいつけられて する こと を、 いいつけられず に する。 ホカ の ヒト の もうしあげて する こと を もうしあげず に する。 しかし する こと は いつも コウケイ に あたって いて、 カンゼン す べき ところ が ない。 ヤイチエモン は イジ ばかり で ホウコウ して ゆく よう に なって いる。 タダトシ は はじめ なんとも おもわず に、 ただ この オトコ の カオ を みる と、 ハンタイ したく なった の だ が、 ノチ には この オトコ の イジ で つとめる の を しって にくい と おもった。 にくい と おもいながら、 ソウメイ な タダトシ は なぜ ヤイチエモン が そう なった か と カイソウ して みて、 それ は ジブン が しむけた の だ と いう こと に キ が ついた。 そして ジブン の ハンタイ する クセ を あらためよう と おもって いながら、 ツキ が かさなり トシ が かさなる に したがって、 それ が しだいに あらためにくく なった。
 ヒト には タ が ウエ にも すき な ヒト、 いや な ヒト と いう もの が ある。 そして なぜ すき だ か、 いや だ か と センサク して みる と、 どうか する と ホソク する ほど の ヨリドコロ が ない。 タダトシ が ヤイチエモン を すかぬ の も、 そんな ワケ で ある。 しかし ヤイチエモン と いう オトコ は どこ か に ヒト と したしみがたい ところ を もって いる に ちがいない。 それ は したしい トモダチ の すくない の で わかる。 タレ でも リッパ な サムライ と して ソンケイ は する。 しかし たやすく ちかづこう と こころみる モノ が ない。 まれ に モノズキ に ちかづこう と こころみる モノ が あって も、 しばらく する うち に コンキ が つづかなく なって とおざかって しまう。 まだ イノスケ と いって、 マエガミ の あった とき、 たびたび ハナシ を しかけたり、 ナニカ に テ を かして やったり して いた トシウエ の オトコ が、 「どうも アベ には つけいる ヒマ が ない」 と いって ガ を おった。 そこら を かんがえて みる と、 タダトシ が ジブン の クセ を あらためたく おもいながら あらためる こと の できなかった の も あやしむ に たりない。
 とにかく ヤイチエモン は ナンド ねがって も ジュンシ の ユルシ を えない で いる うち に、 タダトシ は なくなった。 なくなる すこし マエ に、 「ヤイチエモン め は オネガイ と もうす こと を もうした こと は ござりません、 これ が ショウガイ ユイイツ の オネガイ で ござります」 と いって、 じっと タダトシ の カオ を みて いた が、 タダトシ も じっと カオ を みかえして、 「いや、 どうぞ ミツヒサ に ホウコウ して くれい」 と いいはなった。
 ヤイチエモン は つくづく かんがえて ケッシン した。 ジブン の ミブン で、 この バアイ に ジュンシ せず に いきのこって、 カチュウ の モノ に カオ を あわせて いる と いう こと は、 100 ニン が 100 ニン しょせん できぬ こと と おもう だろう。 イヌジニ と しって セップク する か、 ロウニン して クマモト を さる か の ホカ、 シカタ が あるまい。 だが オレ は オレ だ。 よい わ。 ブシ は メカケ とは ちがう。 シュウ の キ に いらぬ から と いって、 タチバ が なくなる はず は ない。 こう おもって イチニチ イチニチ と レイ の ごとく に つとめて いた。
 その うち に 5 ガツ ムイカ が きて、 18 ニン の モノ が ミナ ジュンシ した。 クマモト-ジュウ ただ その ウワサ ばかり で ある。 タレ は なんと いって しんだ、 タレ の シニヨウ が タレ より も ミゴト で あった と いう ハナシ の ホカ には、 なんの ハナシ も ない。 ヤイチエモン は イゼン から ヒト に ヨウジ の ホカ の ハナシ を しかけられた こと は すくなかった が、 5 ガツ ナヌカ から こっち は、 ゴテン の ツメショ に でて いて みて も、 いっそう さびしい。 それに アイヤク が ジブン の カオ を みぬ よう に して みる の が わかる。 そっと ヨコ から みたり、 ウシロ から みたり する の が わかる。 フカイ で たまらない。 それでも オレ は イノチ が おしくて いきて いる の では ない、 オレ を どれほど わるく おもう ヒト でも、 イノチ を おしむ オトコ だ とは まさかに いう こと が できまい、 タッタイマ でも しんで よい の なら しんで みせる と おもう ので、 こうぜん と ウナジ を そらして ツメショ へ でて、 こうぜん と ウナジ を そらして ツメショ から ひいて いた。
 2~3 ニチ たつ と、 ヤイチエモン が ミミ に けしからん ウワサ が きこえだして きた。 タレ が いいだした こと か しらぬ が、 「アベ は オユルシ の ない を サイワイ に いきて いる と みえる、 オユルシ は のうて も オイバラ は きられぬ はず が ない、 アベ の ハラ の カワ は ヒト とは ちがう と みえる、 ヒョウタン に アブラ でも ぬって きれば よい に」 と いう の で ある。 ヤイチエモン は きいて おもいのほか の こと に おもった。 ワルクチ が いいたくば なんとも いう が よい。 しかし この ヤイチエモン を タテ から みて も ヨコ から みて も、 イノチ の おしい オトコ とは、 どうして みえよう ぞ。 げに いえば いわれた もの かな。 よい わ。 そんなら この ハラ の カワ を ヒョウタン に アブラ を ぬって きって みしょう。
 ヤイチエモン は その ヒ ツメショ を ひく と、 キュウシ を もって ベッケ して いる オトウト フタリ を ヤマザキ の ヤシキ に よびよせた。 イマ と キャクマ との アイダ の タテグ を はずさせ、 チャクシ ゴンベエ、 ジナン ヤゴベエ、 ツギ に まだ マエガミ の ある ゴナン シチノジョウ の 3 ニン を ソバ に おらせて、 シュジン は イギ を ただして まちうけて いる。 ゴンベエ は ヨウミョウ ゴンジュウロウ と いって、 シマバラ セイバツ に リッパ な ハタラキ を して、 シンチ 200 コク を もらって いる。 チチ に おとらぬ ワカモノ で ある。 コノタビ の こと に ついて は、 ただ イチド チチ に 「オユルシ は でませなんだ か」 と とうた。 チチ は 「うん、 でん ぞ」 と いった。 その ホカ フタリ の アイダ には なんの コトバ も かわされなかった。 オヤコ は ココロ の ソコ まで しりぬいて いる ので、 なにも いう には およばぬ の で あった。
 まもなく フタハリ の チョウチン が モン の ウチ に はいった。 サンナン イチダユウ、 ヨナン ゴダユウ の フタリ が ほとんど ドウジ に ゲンカン に きて、 アマグ を ぬいで ザシキ に とおった。 チュウイン の ヨクジツ から じめじめ と した アメ に なって、 サツキヤミ の ソラ が はれず に いる の で ある。
 ショウジ は あけはなして あって も、 むしあつくて カゼ が ない。 そのくせ ショクダイ の ヒ は ゆらめいて いる。 ホタル が 1 ピキ ニワ の コダチ を ぬって とおりすぎた。
 イチザ を みわたした シュジン が クチ を ひらいた。 「ヤイン に よび に やった のに、 ミナ よう きて くれた。 カチュウ イッパン の ウワサ じゃ と いう から、 オヌシタチ も きいた に ちがいない。 この ヤイチエモン が ハラ は ヒョウタン に アブラ を ぬって きる ハラ じゃ そう な。 それ じゃ に よって、 オレ は イマ ヒョウタン に アブラ を ぬって きろう と おもう。 どうぞ ミナ で みとどけて くれい」
 イチダユウ も ゴダユウ も シマバラ の グンコウ で シンチ 200 コク を もらって ベッケ して いる が、 なかにも イチダユウ は はやく から ワカトノヅキ に なって いた ので、 ゴダイガワリ に なって ヒト に うらやまれる 1 ニン で ある。 イチダユウ が ヒザ を すすめた。 「なるほど。 よう わかりました。 じつは ホウバイ が いう には、 ヤイチエモン ドノ は ゴセンダイ の ゴユイゴン で つづいて ゴホウコウ なさる そう な。 オヤコ キョウダイ あいかわらず そろうて おつとめ なさる、 めでたい こと じゃ と いう の で ござります。 その コトバ が ナニ か イミ ありげ で はがゆう ござりました」
 チチ ヤイチエモン は わらった。 「そう で あろう。 メ の サキ ばかり みえる チカメ ども を アイテ に するな。 そこで その しなぬ はず の オレ が しんだら、 オユルシ の なかった オレ の コ じゃ と いうて、 オヌシタチ を あなどる モノ も あろう。 オレ の コ に うまれた の は ウン じゃ。 ショウコト が ない。 ハジ を うける とき は イッショ に うけい。 キョウダイ-ゲンカ を するな よ。 さあ、 ヒョウタン で ハラ を きる の を よう みて おけ」
 こう いって おいて、 ヤイチエモン は コドモ ら の メンゼン で セップク して、 ジブン で クビスジ を ヒダリ から ミギ へ さしつらぬいて しんだ。 チチ の ココロ を はかりかねて いた 5 ニン の コドモ ら は、 この とき かなしく は あった が、 それ と ドウジ に これまで の フアンシン な キョウガイ を イッポ はなれて、 オモニ の ヒトツ を おろした よう に かんじた。
「アニキ」 と ジナン ヤゴベエ が チャクシ に いった。 「キョウダイ-ゲンカ を するな と、 オトッサン は いいおいた。 それ には タレ も イゾン は あるまい。 オレ は シマバラ で モチバ が わるうて、 チギョウ も もらわず に いる から、 これから は オヌシ が ヤッカイ に なる じゃろう。 じゃが ナニゴト が あって も、 オヌシ が テ に たしか な ヤリ 1 ポン は ある と いう もの じゃ。 そう おもうて いて くれい」
「しれた こと じゃ。 どう なる こと か しれぬ が、 オレ が もらう チギョウ は オヌシ が もらう も おなじ じゃ」 こう いった ぎり ゴンベエ は ウデグミ を して カオ を しかめた。
「そう じゃ。 どう なる こと か しれぬ。 オイバラ は オユルシ の でた ジュンシ とは ちがう なぞ と いう ヤツ が あろう て」 こう いった の は ヨナン の ゴダユウ で ある。
「それ は メ に みえて おる。 どういう メ に おうて も」 こう いいさして サンナン イチダユウ は ゴンベエ の カオ を みた。 「どういう メ に おうて も、 キョウダイ ハナレバナレ に アイテ に ならず に、 かたまって ゆこう ぞ」
「うん」 と ゴンベエ は いった が、 うちとけた ヨウス も ない。 ゴンベエ は オトウト ども を ココロ に いたわって は いる が、 やさしく モノ を いわれぬ オトコ で ある。 それに ナニゴト も ヒトリ で かんがえて、 ヒトリ で したがる。 ソウダン と いう もの を めった に しない。 それで ヤゴベエ も イチダユウ も ネン を おした の で ある。
「ニイサマ がた が そろうて おいで なさる から、 オトッサン の ワルクチ は、 うかと いわれますまい」 これ は マエガミ の シチノジョウ が クチ から でた。 オンナ の よう な コエ では あった が、 それ に つよい シンネン が こもって いた ので、 イチザ の モノ の ムネ を、 アンコク な ゼント を てらす コウミョウ の よう に てらした。
「どりゃ。 オッカサン に いうて、 オナゴ たち に イトマゴイ を さしょう か」 こう いって ゴンベエ が セキ を たった。

 ジュ-シイ ノ ゲ ジジュウ ケン ヒゴ ノ カミ ミツヒサ の カトク ソウゾク が すんだ。 カシン には それぞれ シンチ、 カゾウ、 ヤクガエ など が あった。 なかにも ジュンシ の サムライ 18 ニン の イエイエ は、 チャクシ に そのまま チチ の アト を つがせられた。 チャクシ の ある カギリ は、 いかに ヨウショウ でも その カズ には もれない。 ビボウジン、 ロウフボ には フチ が あたえられる。 イエヤシキ を ハイリョウ して、 サクジ まで も カミ から しむけられる。 センダイ が かくべつ ジッコン に せられた イエガラ で、 シデ の タビ の オトモ に さえ たった の だ から、 カチュウ の モノ が うらやみ は して も ねたみ は しない。
 しかるに イッシュ かわった アトメ の ショブン を うけた の は、 アベ ヤイチエモン の イゾク で ある。 チャクシ ゴンベエ は チチ の アト を そのまま つぐ こと が できず に、 ヤイチエモン が 1500 コク の チギョウ は こまか に さいて オトウト たち へも ハイブン せられた。 イチゾク の チギョウ を あわせて みれば、 マエ に かわった こと は ない が、 ホンケ を ついだ ゴンベエ は、 ショウシンモノ に なった の で ある。 ゴンベエ の カタハバ の せまく なった こと は いう まで も ない。 オトウト ども も ヒトリヒトリ の チギョウ は ふえながら、 これまで 1000 ゴク イジョウ の ホンケ に よって、 タイボク の カゲ に たって いる よう に おもって いた の が、 イマ は ドングリ の セイクラベ に なって、 ありがたい よう で メイワク な オモイ を した。
 セイドウ は ジミチ で ある カギリ は、 トガメ の きする ところ を とう モノ は ない。 いったん ツネ に かわった ショチ が ある と、 タレ の サバキ か と いう センギ が おこる。 トウシュ の オオボエ めでたく、 オソバ さらず に つとめて いる オオメツケヤク に、 ハヤシ ゲキ と いう モノ が ある。 コサイカク が ある ので、 ワカトノサマ ジダイ の オトギ には ソウオウ して いた が、 モノ の ダイタイ を みる こと に おいて は およばぬ ところ が あって、 とかく カサツ に かたむきたがる オトコ で あった。 アベ ヤイチエモン は コ-トノサマ の オユルシ を えず に しんだ の だ から、 シン の ジュンシシャ と ヤイチエモン との アイダ には キョウカイ を つけなくて は ならぬ と かんがえた。 そこで アベ-ケ の ホウロク ブンカツ の サク を けんじた。 ミツヒサ も シリョ ある ダイミョウ では あった が、 まだ ものなれぬ とき の こと で、 ヤイチエモン や チャクシ ゴンベエ と コンイ で ない ため に、 オモイヤリ が なく、 ジブン の テモト に つかって ナジミ の ある イチダユウ が ため に カゾウ に なる と いう ところ に メ を つけて、 ゲキ の ゲン を もちいた の で ある。
 18 ニン の サムライ が ジュンシ した とき には、 ヤイチエモン は オソバ に ホウコウ して いた のに ジュンシ しない と いって、 カチュウ の モノ が いやしんだ。 さて わずか に 2~3 ニチ を へだてて ヤイチエモン は リッパ に セップク した が、 コト の トウヒ は おいて、 いったん うけた ブジョク は ヨウイ に きえがたく、 タレ も ヤイチエモン を ほめる モノ が ない。 カミ では ヤイチエモン の イガイ を オタマヤ の カタワラ に ほうむる こと を ゆるした の で ある から、 アトメ ソウゾク の ウエ にも しいて キョウカイ を たてず に おいて、 ジュンシシャ イチドウ と おなじ アツカイ を して よかった の で ある。 そうした なら アベ イチゾク は メンボク を ほどこして、 こぞって チュウキン を はげんだ の で あろう。 しかるに カミ で イチダン さがった アツカイ を した ので、 カチュウ の モノ の アベ-ケ ブベツ の ネン が オオヤケ に みとめられた カタチ に なった。 ゴンベエ キョウダイ は しだいに ホウバイ に うとんぜられて、 おうおう と して ヒ を おくった。
 カンエイ 19 ネン 3 ガツ 17 ニチ に なった。 センダイ の トノサマ の イッシュウキ で ある。 オタマヤ の ソバ には まだ ミョウゲジ は できて いぬ が、 コウヨウイン と いう ドウウ が たって、 そこ に ミョウゲ インデン の イハイ が アンチ せられ、 キョウシュザ と いう ソウ が ジュウジ して いる。 キニチ に さきだって、 ムラサキノ ダイトクジ の テンユウ オショウ が キョウト から ゲコウ する。 ネンキ の イトナミ は はればれしい もの に なる らしく、 1 カゲツ ばかり マエ から、 クマモト の ジョウカ は ジュンビ に いそがしかった。
 いよいよ トウジツ に なった。 うららか な ヒヨリ で、 オタマヤ の ソバ は サクラ の サカリ で ある。 コウヨウイン の シュウイ には マク を ひきまわして、 ホソツ が ケイゴ して いる。 トウシュ が みずから リンジョウ して、 まず センダイ の イハイ に ショウコウ し、 ついで ジュンシシャ 19 ニン の イハイ に ショウコウ する。 それから ジュンシシャ イゾク が ゆるされて ショウコウ する。 ドウジ に ゴモンツキ カミシモ、 ドウ ジフク を ハイリョウ する。 ウママワリ イジョウ は ナガガミシモ、 カチ は ハンガミシモ で ある。 シモジモ の モノ は ゴコウデン を ハイリョウ する。
 ギシキ は トドコオリ なく すんだ が、 その アイダ に ただ ヒトツ の チンジ が シュッタイ した。 それ は アベ ゴンベエ が ジュンシシャ イゾク の 1 ニン と して、 セキジュン に よって ミョウゲ インデン の イハイ の マエ に すすんだ とき、 ショウコウ を して ノキシナ に、 ワキザシ の コヅカ を ぬきとって モトドリ を おしきって、 イハイ の マエ に そなえた こと で ある。 この バ に つめて いた サムライ ども も、 フイ の デキゴト に おどろきあきれて、 ぼうぜん と して みて いた が、 ゴンベエ が ナニゴト も ない よう に、 じじゃく と して 5~6 ポ しりぞいた とき、 ヒトリ の サムライ が ようよう ワレ に かえって、 「アベ ドノ、 おまち なされい」 と よびかけながら、 おいすがって おしとどめた。 つづいて 2~3 ニン たちかかって、 ゴンベエ を ベツマ に つれて はいった。
 ゴンベエ が ツメシュウ に たずねられて こたえた ところ は こう で ある。 キデン ら は ソレガシ を ランシンモノ の よう に おもわれる で あろう が、 まったく さよう な わけ では ない。 チチ ヤイチエモン は イッショウ カキン の ない ゴホウコウ を いたしたれば こそ、 コ-トノサマ の オユルシ を えず に セップク して も、 ジュンシシャ の レツ に くわえられ、 イゾク たる ソレガシ さえ タニン に さきだって ゴイハイ に ゴショウコウ いたす こと が できた の で ある。 しかし ソレガシ は フショウ に して チチ ドウヨウ の ゴホウコウ が なりがたい の を、 カミ にも ゴショウチ と みえて、 チギョウ を さいて オトウト ども に おつかわし なされた。 ソレガシ は コ-トノサマ にも ゴトウシュ にも なき チチ にも イチゾク の モノドモ にも ホウバイ にも メンボク が ない。 かよう に ぞんじて いる うち、 コンニチ ゴイハイ に ゴショウコウ いたす バアイ に なり、 トッサ の カン、 カンガイ ムネ に せまり、 いっそ の こと ブシ を すてよう と ケッシン いたした。 オバショガラ を かえりみざる オトガメ は あまんじて うける。 ランシン など は いたさぬ と いう の で ある。
 ゴンベエ の コタエ を ミツヒサ は きいて、 フカイ に おもった。 ダイイチ に ゴンベエ が ジブン に つらあてがましい ショギョウ を した の が フカイ で ある。 ツギ に ジブン が ゲキ の サク を いれて、 しなくて も よい こと を した の が フカイ で ある。 まだ 24 サイ の ケッキ の トノサマ で、 ジョウ を おさえ ヨク を せいする こと が たりない。 オン を もって ウラミ に むくいる カンダイ の ココロモチ に とぼしい。 ソクザ に ゴンベエ を おしこめさせた。 それ を きいた ヤゴベエ イカ イチゾク の モノ は モン を とじて カミ の ゴサタ を まつ こと に して、 ヤイン に イチドウ よりあって は、 ひそか に イチゾク の ゼント の ため に ヒョウギ を こらした。
 アベ イチゾク は ヒョウギ の スエ、 このたび センダイ イッシュウキ の ホウエ の ため に ゲコウ して、 まだ トウリュウ して いる テンユウ オショウ に すがる こと に した。 イチダユウ は オショウ の リョカン に いって イチブ シジュウ を はなして、 ゴンベエ に たいする カミ の ショチ を ケイゲン して もらう よう に たのんだ。 オショウ は つくづく きいて いった。 うけたまわれば ゴイッカ の オナリユキ キノドク センバン で ある。 しかし カミ の ゴセイドウ に たいして かれこれ いう こと は できない。 ただ ゴンベエ ドノ に シ を たまわる と なったら、 きっと ゴジョメイ を ねがって しんぜよう。 ことに ゴンベエ ドノ は すでに モトドリ を はらわれて みれば、 ソウモン ドウヨウ の ミノウエ で ある。 ゴジョメイ だけ は いかよう にも もうして みよう と いった。 イチダユウ は たのもしく おもって かえった。 イチゾク の モノ は イチダユウ の フクメイ を きいて、 イチジョウ の カツロ を えた よう な キ が した。 そのうち ヒ が たって、 テンユウ オショウ の キキョウ の とき が しだいに ちかづいて きた。 オショウ は トノサマ に あって ハナシ を する たび に、 アベ ゴンベエ が ジョメイ の こと を オリ が あったら ゴンジョウ しよう と おもった が、 どうしても オリ が ない。 それ は その はず で ある。 ミツヒサ は こう おもった の で ある。 テンユウ オショウ の トウリュウチュウ に ゴンベエ の こと を サタ したら きっと ジョメイ を こわれる に ちがいない。 オオデラ の オショウ の コトバ で みれば、 なおざり に ききすてる こと は なるまい。 オショウ の たつ の を まって ショチ しよう と おもった の で ある。 とうとう オショウ は むなしく クマモト を たって しまった。

 テンユウ オショウ が クマモト を たつ や いなや、 ミツヒサ は すぐに アベ ゴンベエ を イデノクチ に ひきいだして シバリクビ に させた。 センダイ の ゴイハイ に たいして フケイ な こと を あえて した、 カミ を おそれぬ ショギョウ と して ショチ せられた の で ある。
 ヤゴベエ イカ イチドウ の モノ は よりあつまって ヒョウギ した。 ゴンベエ の ショギョウ は フラチ には ちがいない。 しかし ボウフ ヤイチエモン は とにかく ジュンシシャ の ウチ に かぞえられて いる。 その ソウゾクニン たる ゴンベエ で みれば、 シ を たまう こと は ゼヒ が ない。 ブシ-らしく セップク おおせつけられれば イゾン は ない。 それに ナニゴト ぞ、 カントウ か なんぞ の よう に、 ハクチュウ に シバリクビ に せられた。 この ヨウス で すいすれば、 イチゾク の モノ も アンノン には さしおかれまい。 たとい べつに ゴサタ が ない に して も、 シバリクビ に せられた モノ の イチゾク が、 なんの メンボク あって、 ホウバイ に たちまじわって ゴホウコウ を しよう。 コノウエ は ゼヒ に およばない。 ナニゴト が あろう とも、 キョウダイ ワカレワカレ に なるな と、 ヤイチエモン ドノ の いいおかれた の は この とき の こと で ある。 イチゾク ウッテ を ひきうけて、 ともに しぬる ホカ は ない と、 1 ニン の イギ を となえる モノ も なく けっした。
 アベ イチゾク は サイシ を ひきまとめて、 ゴンベエ が ヤマザキ の ヤシキ に たてこもった。
 おだやか ならぬ イチゾク の ヨウス が カミ に きこえた。 ヨコメ が テイサツ に でて きた。 ヤマザキ の ヤシキ では モン を ゲンジュウ に とざして しずまりかえって いた。 イチダユウ や ゴダユウ の タク は アキヤ に なって いた。
 ウッテ の テクバリ が さだめられた。 オモテモン は ソバモノガシラ タケノウチ カズマ ナガマサ が シキヤク を して、 それ に コガシラ ソエジマ クヘエ、 おなじく ノムラ ショウベエ が したがって いる。 カズマ は 1150 コク で テッポウグミ 30 チョウ の カシラ で ある。 フダイ の オトナ シマ トクエモン が トモ を する。 ソエジマ、 ノムラ は トウジ 100 コク の モノ で ある。 ウラモン の シキヤク は チギョウ 500 コク の ソバモノガシラ タカミ ゴンエモン シゲマサ で、 これ も テッポウグミ 30 チョウ の カシラ で ある。 それ に メツケ ハタ ジュウダユウ と タケノウチ カズマ の コガシラ で トウジ 100 コク の チバ サクベエ と が したがって いる。
 ウッテ は 4 ガツ 21 ニチ に さしむけられる こと に なった。 ゼンバン に ヤマザキ の ヤシキ の シュウイ には ヨマワリ が つけられた。 ヨ が ふけて から サムライブン の モノ が ヒトリ フクメン して、 ヘイ を ウチ から のりこえて でた が、 マワリヤク の サブリ カザエモン が クミ の アシガル マルヤマ サンノジョウ が うちとった。 その ノチ ヨアケ まで ナニゴト も なかった。
 かねて キンリン の モノ には サタ が あった。 たとい トウバン たり とも ザイシュク して ヒ の ヨウジン を おこたらぬ よう に いたせ と いう の が ヒトツ。 ウッテ で ない のに、 アベ が ヤシキ に いりこんで テダシ を する こと は ゲンキン で ある が、 オチュウド は カッテ に うちとれ と いう の が フタツ で あった。
 アベ イチゾク は ウッテ の むかう ヒ を その ゼンジツ に ききしって、 まず テイナイ を くまなく ソウジ し、 みぐるしい もの は ことごとく やきすてた。 それから ロウニャク うちよって シュエン を した。 それから ロウジン や オンナ は ジサツ し、 おさない モノ は てんでに さしころした。 それから ニワ に おおきい アナ を ほって シガイ を うめた。 アト に のこった の は クッキョウ の ワカモノ ばかり で ある。 ヤゴベエ、 イチダユウ、 ゴダユウ、 シチノジョウ の 4 ニン が サシズ して、 ショウジ フスマ を とりはらった ヒロマ に ケライ を あつめて、 カネタイコ を ならさせ、 コウセイ に ネンブツ を させて ヨ の あける の を まった。 これ は ロウジン や サイシ を とむらう ため だ とは いった が、 じつは ゲニン ども に オクビョウ の ネン を おこさせぬ ヨウジン で あった。
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