★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(74)

2012年07月01日 | 短編小説「彗星の時」
 壁に映った映像を見ていたガーゼル王は、顎鬚をいじりながら黙っていた。
 ジーザ王子は画面に映った二人の男と銀色の女の戦いを見て驚嘆の声を上げた。
「あれが、黒ずくめの戦士ですか・・もうひとりは、魔導師ですね。あの信じられないような動きの女といい、なんという戦いだ・・」
 味方がやられているにも関わらず、ジーザはその戦いに魅入られている。
「あの者どもはどこに向かっている?」
 ガーゼル王が学者に尋ねた。
「どうも、『砦』の中心に向かっているようです」
「中心?中心には何がある?」
 書物をめくり調べながら学者が答えた。
「・・・機関室です」
「機関室?」
「ここ司令室が頭であれば、機関室はいわば心臓になります」
「心臓とな・・うぅむ・・」
 それっきりガーゼル王は黙りこくってしまった。
 そうしている内にも、ガーゼル王たちの見ている映像には、シャインとヤーコンが次々と刺客を倒し、機関室へ向かっている姿が映し出されていた。


 シャインとヤーコンは、どこからともなく現れてくるアンドロイドを、超古代の武器と覇道のダブル攻撃でくぐりぬけ、ようやく機関室の扉の前に辿り着いた。
「ヤーコン殿、ここが機関室です。この中に操作盤があります」
 シャインはそう言うと、ブラスターキャノンを肩から降ろし、バックパックからビームサーベルを取り出した。
「おっ、光る剣ですね。直ったんですか」
「ええ、王宮でエネルギーを補充できました」
 そう言うと、シャインはビームサーベルを機関室の扉の横にある小さな窓のような部分の近くに差し込んだ。
 火花が上がり、扉の中で何か唸るような音が聞こえる。シャインは壁に刺さったビームサーベルの角度を変えたりして扉を開けようと細工していた。
 その時、ヤーコンは、なにか気配を感じ振り返ってみて驚いた。
 10メートル程先に、少女がいた。4.5歳だろうか、ぼろぼろの服を着た薄汚れた女の子が泣きながら立っている。


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