★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
SF、ミステリーから現代物まで何でも書いてます。
良かったら感想をお聞かせください。

彗星の時(14)

2011年09月21日 | 短編小説「彗星の時」
 その時、シャインの耳に「シャリーン」という金属が擦りあうような音が聞こえた。土くれの兵士が現れる前に聞こえた音とはちょっと違うようだが、同じ種類の音だった。
ガイコツ兵士は、その音が聞こえるとピタッと動きを止めた。シャインの首を締め付けているガイコツの指も固まっている。シャインは、その隙をついてなんとかガイコツ兵士の手を逃れて、後ろに飛び退いた。ガイコツ兵士は、まだ人形のように動かないまま突っ立ている。
 シャインは、ケインとヤーコンが気になり周囲を見回した。ケインも土くれ人形に襲われていたらしいが、シャイン同様相手が動かなくなった隙に逃れられたようで、首を押さえてシャインのほうを見ている。
 ヤーコンは、いつの間にかシャインたちからちょっと離れた荒地に立ち、杖を高く上げなにやら呪文を唱えていた。杖の先には金属製の輪が三本取り付けてあり、ヤーコンが呪文を唱えながら杖をゆすると、土人形の動きを止めた「シャリーン」という金属音が鳴り響いてくる。
 ヤーコンは、呪文の語気を強め、杖を大きく2度振った。すると、先程まで明るい半月が浮かんでいた天空に、夜目でも判るほど真っ黒な雲が見る見るうちに広がってきた。
 ヤーコンがさらに大きく杖を振りかざすと、ボツリ・ボツリと雨が降り始めた。雨粒が地面に当たる音が聞こえてくる程の大粒の雨だ。


コメントを投稿