昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

第三章:1970~73年 石ころと流れ星  89

2012年09月01日 | 日記
「ほな、また。君は目付けられてへん思うけど、気い付けてな」 そう言ってバッグを手にした桑原君と一緒に道路まで出た。「またな」と言って見送る後ろ姿は、やって来た時同様小ざっぱりとして見える。まるで就職のために上京していく青年のようだ。京子との、しばしの平和で幸せな暮らしが窺い知れる後ろ姿だ。お昼前の往来に人影は少なかったが、どこか慌ただしかった。師走だから、というだけではなさそうな気忙しさだった。 . . . 本文を読む