★おみなえし山の葛垂る庭先に 正子
山沿いに建つ民家でしょう。庭先のおみなえしがすっと伸び、黄色い小花を咲かせています。そこへ、山から押し寄せるように広がった葛が垂れ、庭の花に触れんばかりに。山の葛の勢いと、庭先のおみなえしのしなやかさ、その対比と併せて、やはり秋の七草という、馴染み深いまとまりも見られます。自然の見せる対照と調和を、小さな空間に活き活きと描いた、美しい日本画のようです。(川名ますみ)
○今日の俳句
車椅子とんぼの群へ触れに入る/川名ますみ
「触れに入る」がすばらしくよい。とんぼの群れに、自ら入り、とんぼと同じように交わることに純粋な喜びがある。(高橋正子)
○萩
[萩/東京・向島百花園]
★白露もこぼさぬ萩のうねりかな 芭蕉
★一家に遊女もねたり萩と月 芭蕉
★行々てたふれ伏すとも萩の原 曽良
★小狐の何にむせけむ小萩はら 蕪村
★萩散りぬ祭も過ぬ立仏 一茶
★白萩のしきりに露をこぼしけり/正岡子規
★暁深く萩おのづからみだれけり/臼田亜浪
★白萩の雨をこぼして束ねけり/杉田久女
★紅萩の根付きし証ほど咲きぬ/稲畑汀子
★外遊の友を送らん萩の風/稲畑汀子
★大波のあとのさざ波萩月夜/小澤克己
★大風に折れたる萩もなかりけり/長谷川櫂
萩と言えば、まず紅萩を思うだろう。私もそうなのだが、紅萩を思うすぐさま砥部の庭にあった白萩を思い出す。この白萩は俳句の師である川本臥風先生のお庭から引っ越してきた萩なのだ。初秋には道路に面した塀から垂れるように咲き、道行く人に大いに楽しんでもらった。中には立ち止まってしばらく見てゆく人もいた。ちょうど娘の句美子の誕生日の9月3日ごろ、枝先に白い花が咲き始める。
★女児誕生白萩の白咲ける日に/信之
暑い夏であっても、自然のサイクルは狂わず、必ずそのころ咲いた。ちょうど台風のシーズンでもあって、台風というより、野分の吹き分けられる様は窓から見ていてもなかなかの圧巻であった。句美子も五歳ごろだったか
★はぎのはなゆうびんぽすとでさいている/句美子(5歳)
という句を作ったほどだ。句美子は、このころまでに俳句を50句ほど作っている。読売新聞愛媛支局に花冠(当時は水煙)を送っていたが、俳句好きの記者が読んでくださって、読売新聞に写真付きで紹介されたことがある。
秋の終わり枯れるころの萩紅葉がまたいいのだ。その後その葉は散り、枝だけが残るが、これを刈り取ってさっぱりさせて、冬を迎える。するとまた株から新芽が立ってさわさわとした萩の葉を茂らせるのだ。花の季節だけでなく、年中楽しめる花である。
★白萩のこぼれし花を掃く朝な/正子
ハギ(萩)とは、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。秋の七草のひとつで、花期は7月から10月。分布は種類にもよるが、日本のほぼ全域。古くから日本人に親しまれ、『万葉集』で最もよく詠まれる花でもある。秋ハギと牡鹿のペアの歌が多い。別名:芽子・生芽(ハギ)。背の低い落葉低木ではあるが、木本とは言い難い面もある。茎は木質化して固くなるが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根本から新しい芽が毎年出る。直立せず、先端はややしだれる。葉は3出複葉、秋に枝の先端から多数の花枝を出し、赤紫の花の房をつける。果実は種子を1つだけ含み、楕円形で扁平。荒れ地に生えるパイオニア植物で、放牧地や山火事跡などに一面に生えることがある。
■第15回(立秋)フェイスブック句会入賞発表/2012年8月9日■
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d
【金賞】
★蝉時雨ひとりの部屋の音を消す/矢野 文彦
ひとりの部屋は、ひとりが作る小さな音。その音は蝉時雨に消されてしまって、部屋は蝉時雨でいっぱい。部屋が大樹の茂る戸外になったようにも思える。(高橋正子)
【銀賞】
★サクサクと野菜切る音涼しかり/井上 治代
野菜を切る音が「サクサク」と快い。快さは涼しさに通じて、生活のこんなところにも喜びを見つけることができる。(高橋正子)
【銅賞】
★夏川に浮かべば遠き街の音/安藤 智久
夏川に小さな舟で浮かんだのか、筏のようなもので浮かんだのか。自然のただ中に居るのとは違って、街の音が遠く聞こえる。夏川と街との程よい距離感が新鮮な感覚で捉えられている。(高橋正子)
★夏惜しむ胸まで潮に浸りけり/小野寺 靖
胸まで深々と海の潮につかる。潮の匂い、水の冷たさ、照らす太陽など、もろもろを体全体の感覚で捉えて、それが「夏惜しむ」の心情となっているのがよい。(高橋正子)
◇生活する花たち「落花生の花・胡麻の花・稲の花」(横浜市緑区北八朔町)
山沿いに建つ民家でしょう。庭先のおみなえしがすっと伸び、黄色い小花を咲かせています。そこへ、山から押し寄せるように広がった葛が垂れ、庭の花に触れんばかりに。山の葛の勢いと、庭先のおみなえしのしなやかさ、その対比と併せて、やはり秋の七草という、馴染み深いまとまりも見られます。自然の見せる対照と調和を、小さな空間に活き活きと描いた、美しい日本画のようです。(川名ますみ)
○今日の俳句
車椅子とんぼの群へ触れに入る/川名ますみ
「触れに入る」がすばらしくよい。とんぼの群れに、自ら入り、とんぼと同じように交わることに純粋な喜びがある。(高橋正子)
○萩
[萩/東京・向島百花園]
★白露もこぼさぬ萩のうねりかな 芭蕉
★一家に遊女もねたり萩と月 芭蕉
★行々てたふれ伏すとも萩の原 曽良
★小狐の何にむせけむ小萩はら 蕪村
★萩散りぬ祭も過ぬ立仏 一茶
★白萩のしきりに露をこぼしけり/正岡子規
★暁深く萩おのづからみだれけり/臼田亜浪
★白萩の雨をこぼして束ねけり/杉田久女
★紅萩の根付きし証ほど咲きぬ/稲畑汀子
★外遊の友を送らん萩の風/稲畑汀子
★大波のあとのさざ波萩月夜/小澤克己
★大風に折れたる萩もなかりけり/長谷川櫂
萩と言えば、まず紅萩を思うだろう。私もそうなのだが、紅萩を思うすぐさま砥部の庭にあった白萩を思い出す。この白萩は俳句の師である川本臥風先生のお庭から引っ越してきた萩なのだ。初秋には道路に面した塀から垂れるように咲き、道行く人に大いに楽しんでもらった。中には立ち止まってしばらく見てゆく人もいた。ちょうど娘の句美子の誕生日の9月3日ごろ、枝先に白い花が咲き始める。
★女児誕生白萩の白咲ける日に/信之
暑い夏であっても、自然のサイクルは狂わず、必ずそのころ咲いた。ちょうど台風のシーズンでもあって、台風というより、野分の吹き分けられる様は窓から見ていてもなかなかの圧巻であった。句美子も五歳ごろだったか
★はぎのはなゆうびんぽすとでさいている/句美子(5歳)
という句を作ったほどだ。句美子は、このころまでに俳句を50句ほど作っている。読売新聞愛媛支局に花冠(当時は水煙)を送っていたが、俳句好きの記者が読んでくださって、読売新聞に写真付きで紹介されたことがある。
秋の終わり枯れるころの萩紅葉がまたいいのだ。その後その葉は散り、枝だけが残るが、これを刈り取ってさっぱりさせて、冬を迎える。するとまた株から新芽が立ってさわさわとした萩の葉を茂らせるのだ。花の季節だけでなく、年中楽しめる花である。
★白萩のこぼれし花を掃く朝な/正子
ハギ(萩)とは、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。秋の七草のひとつで、花期は7月から10月。分布は種類にもよるが、日本のほぼ全域。古くから日本人に親しまれ、『万葉集』で最もよく詠まれる花でもある。秋ハギと牡鹿のペアの歌が多い。別名:芽子・生芽(ハギ)。背の低い落葉低木ではあるが、木本とは言い難い面もある。茎は木質化して固くなるが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根本から新しい芽が毎年出る。直立せず、先端はややしだれる。葉は3出複葉、秋に枝の先端から多数の花枝を出し、赤紫の花の房をつける。果実は種子を1つだけ含み、楕円形で扁平。荒れ地に生えるパイオニア植物で、放牧地や山火事跡などに一面に生えることがある。
■第15回(立秋)フェイスブック句会入賞発表/2012年8月9日■
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d
【金賞】
★蝉時雨ひとりの部屋の音を消す/矢野 文彦
ひとりの部屋は、ひとりが作る小さな音。その音は蝉時雨に消されてしまって、部屋は蝉時雨でいっぱい。部屋が大樹の茂る戸外になったようにも思える。(高橋正子)
【銀賞】
★サクサクと野菜切る音涼しかり/井上 治代
野菜を切る音が「サクサク」と快い。快さは涼しさに通じて、生活のこんなところにも喜びを見つけることができる。(高橋正子)
【銅賞】
★夏川に浮かべば遠き街の音/安藤 智久
夏川に小さな舟で浮かんだのか、筏のようなもので浮かんだのか。自然のただ中に居るのとは違って、街の音が遠く聞こえる。夏川と街との程よい距離感が新鮮な感覚で捉えられている。(高橋正子)
★夏惜しむ胸まで潮に浸りけり/小野寺 靖
胸まで深々と海の潮につかる。潮の匂い、水の冷たさ、照らす太陽など、もろもろを体全体の感覚で捉えて、それが「夏惜しむ」の心情となっているのがよい。(高橋正子)
◇生活する花たち「落花生の花・胡麻の花・稲の花」(横浜市緑区北八朔町)