★台風裡河原撫子折れもせず 正子
秋の七草の一つ、可憐な花を咲かせている河原撫子。台風が通過している時、心配で窓の外を見ますと、河原撫子は折れもせず気丈に立っていました。その姿をご覧になって、内に秘めた強さを持っていることに感動されたことと思います。(藤田裕子)
○今日の俳句
ちちろ鳴く裏庭の夜の澄みてきし/藤田裕子
静かな裏庭にちちろが鳴くと、夜が澄んでくる感じがする。夜が澄んでくると、ちちろがいっそう声高く鳴く。研ぎ澄まされてゆく秋の夜である。(高橋正子)
○狗尾草・猫じゃらし(えのころぐさ・ねこじゃらし)
[えのころぐさとめひしば/横浜日吉本町]_[チカラシバ/横浜下田町・松の川緑道]
★よい秋や犬ころ草もころころと/小林一茶
★犬の塚狗子草など生えぬべし/正岡子規
★猫じゃらし触れてけもののごと熱し/中村草田男
★狗尾草貧中子守唄やさし/清水基吉
★とほるたび抜くねこじゃらし減りもせぬ/細川加賀
★ねこじゃらし靡き佛の去りゆくも/高島茂
★舟小屋の風抜け易し狗尾草/石井則明
★狗尾草笑ふ赤子に歯が二つ/中島徳子
★風を呼ぶ丈になりたる狗尾草/金澤明子
★狗尾草染めて夕日の落ちつつあり/高橋正子
○狗尾草
穂草のなかで、芒と並んで絵になる草かもしれない。花のないときは、一輪挿しにさして秋の風情を呼ぶ。また、畑の草取りのときなどは、引っ張れば根ごとすぐ抜けて除草には楽な草だ。今朝、ラジオにヘンデルの「ラルゴ」が流れていた。このところ、この曲を忘れていたのだが、聞いていると葬送の曲とも思える。空のどこかに、どこに連れてゆかれるかわからないが、導かれてゆくような曲だ。その空は、狗尾草を揺らしておけばよいような空だと思えた。
エノコログサ(狗尾草、学名:Setaria viridis)は、イネ科エノコログサ属の植物で、1年生草本である。ブラシのように毛の長い穂の形が独特な雑草である。夏から秋にかけてつける花穂が、犬の尾に似ていることから、犬っころ草(いぬっころくさ)が転じてエノコログサという呼称になったとされ、漢字でも「狗(犬)の尾の草」と表記する。ネコジャラシ(猫じゃらし)の俗称は、花穂を猫の視界で振ると、猫がじゃれつくことから。
草丈は40-70cmになる。茎は細く、基部は少し地表を這い、節から根を下ろす。夏には茎が立ち上がって伸び、先端に穂をつける。葉は匍匐茎にも花茎にも多数ついており、最大20cm位、イネ科としてはやや幅広く、細長い楕円形、薄く、緑色でつやがない。茎を包む葉鞘と、葉身の境目につく葉舌は退化して、その部分に毛だけが残る。
花序は円柱形で、一面に花がつき、多数の毛が突き出すので、外見はブラシ状になる。イヌビエなどの穂から出る毛は、小穂を包む鱗片(穎)の先端から伸びる芒であるが、エノコログサの場合、この毛は芒ではなく、小穂の柄から生じる長い突起である。エノコログサの小穂は、果実が熟すると、一個の種子(実際には果実)を鱗片が包んだものに見える。小穂の中には花は1つしかない。しかし、本来は2つの小花があるべきもので、そのうち1つが退化したものと解釈されている。
現在は、一般的に食用としては認識されていないが、粟の原種であるので食用に使える。若い葉と花穂は軽く火であぶり、醤油などで味付けしたり(風味はポップコーンに酷似)、天ぷらにしたりして食べられる。ただし、終戦直後大量に食べて中毒を起こした学者がいる。近代以前の農村では、酷い飢饉の際にカラスムギなどと共にこれを食用としたこともあった。オオエノコロは粟の遺伝子が流入しているので食用に供しやすい。
◇生活する花たち「酔芙蓉・コムラサキ・えのころぐさ」(横浜日吉本町)
秋の七草の一つ、可憐な花を咲かせている河原撫子。台風が通過している時、心配で窓の外を見ますと、河原撫子は折れもせず気丈に立っていました。その姿をご覧になって、内に秘めた強さを持っていることに感動されたことと思います。(藤田裕子)
○今日の俳句
ちちろ鳴く裏庭の夜の澄みてきし/藤田裕子
静かな裏庭にちちろが鳴くと、夜が澄んでくる感じがする。夜が澄んでくると、ちちろがいっそう声高く鳴く。研ぎ澄まされてゆく秋の夜である。(高橋正子)
○狗尾草・猫じゃらし(えのころぐさ・ねこじゃらし)
[えのころぐさとめひしば/横浜日吉本町]_[チカラシバ/横浜下田町・松の川緑道]
★よい秋や犬ころ草もころころと/小林一茶
★犬の塚狗子草など生えぬべし/正岡子規
★猫じゃらし触れてけもののごと熱し/中村草田男
★狗尾草貧中子守唄やさし/清水基吉
★とほるたび抜くねこじゃらし減りもせぬ/細川加賀
★ねこじゃらし靡き佛の去りゆくも/高島茂
★舟小屋の風抜け易し狗尾草/石井則明
★狗尾草笑ふ赤子に歯が二つ/中島徳子
★風を呼ぶ丈になりたる狗尾草/金澤明子
★狗尾草染めて夕日の落ちつつあり/高橋正子
○狗尾草
穂草のなかで、芒と並んで絵になる草かもしれない。花のないときは、一輪挿しにさして秋の風情を呼ぶ。また、畑の草取りのときなどは、引っ張れば根ごとすぐ抜けて除草には楽な草だ。今朝、ラジオにヘンデルの「ラルゴ」が流れていた。このところ、この曲を忘れていたのだが、聞いていると葬送の曲とも思える。空のどこかに、どこに連れてゆかれるかわからないが、導かれてゆくような曲だ。その空は、狗尾草を揺らしておけばよいような空だと思えた。
エノコログサ(狗尾草、学名:Setaria viridis)は、イネ科エノコログサ属の植物で、1年生草本である。ブラシのように毛の長い穂の形が独特な雑草である。夏から秋にかけてつける花穂が、犬の尾に似ていることから、犬っころ草(いぬっころくさ)が転じてエノコログサという呼称になったとされ、漢字でも「狗(犬)の尾の草」と表記する。ネコジャラシ(猫じゃらし)の俗称は、花穂を猫の視界で振ると、猫がじゃれつくことから。
草丈は40-70cmになる。茎は細く、基部は少し地表を這い、節から根を下ろす。夏には茎が立ち上がって伸び、先端に穂をつける。葉は匍匐茎にも花茎にも多数ついており、最大20cm位、イネ科としてはやや幅広く、細長い楕円形、薄く、緑色でつやがない。茎を包む葉鞘と、葉身の境目につく葉舌は退化して、その部分に毛だけが残る。
花序は円柱形で、一面に花がつき、多数の毛が突き出すので、外見はブラシ状になる。イヌビエなどの穂から出る毛は、小穂を包む鱗片(穎)の先端から伸びる芒であるが、エノコログサの場合、この毛は芒ではなく、小穂の柄から生じる長い突起である。エノコログサの小穂は、果実が熟すると、一個の種子(実際には果実)を鱗片が包んだものに見える。小穂の中には花は1つしかない。しかし、本来は2つの小花があるべきもので、そのうち1つが退化したものと解釈されている。
現在は、一般的に食用としては認識されていないが、粟の原種であるので食用に使える。若い葉と花穂は軽く火であぶり、醤油などで味付けしたり(風味はポップコーンに酷似)、天ぷらにしたりして食べられる。ただし、終戦直後大量に食べて中毒を起こした学者がいる。近代以前の農村では、酷い飢饉の際にカラスムギなどと共にこれを食用としたこともあった。オオエノコロは粟の遺伝子が流入しているので食用に供しやすい。
◇生活する花たち「酔芙蓉・コムラサキ・えのころぐさ」(横浜日吉本町)