2週間に一度、私は実家に帰って、末の弟と過ごす時間を作っています。
たいていは昼からの半日なので、昼食を一緒に食べ、買い物をして、ごみ出しなど少しの片付けをするのがやっとです。
その中で特に昼食を食べながらのお喋りタイムは大事です。
息子の近況や、私の愚痴も聞いてもらいながら、弟の話に耳を傾けます。
現在、弟は週に4回、昼から2時間だけ「就労継続支援B型事業所」に通っています。
20年以上ひきこもっていた弟が「就労継続支援B型事業所」に通い始めたのは、去年の9月。
最初は週2回から始め、今では週に4回となりましたが、それがやっとで、今でも体力のなさを感じるそうです。
ひきこもっていた頃の弟は、庭の手入れなどをしてくれる余裕がありましたが、今はそれどころではなく、裏庭の雑草が私の背丈ほど伸びていますが、今の私にも雑草を抜く余裕(時間)がありません。
「就労継続支援B型事業所」では、月に一度面談があるそうです。
先日の面談で、弟がひきこもるきっかけになったと感じる出来事を話したそうで、事前にA4のコピー紙5枚にまとめておいたという文書を読ませてくれました。
その5枚の文書は、実は50枚もの文書を書いた後で、削って削ってまとめたものだというから驚きました。
詳しいところまでは書けませんが、ざっとこんな話でした。
中学生の頃、よく騒いで問題を起こすA君が、自分の物を誰かに盗まれた、誰かが持っているはずだから持ち物検査をしてほしいと騒ぎ出し、驚いたことに担任がそれを認め、持ち物チェックをすることになったそうです。
結局、A君のカバンからその物が見つかり、
「な~んだ、俺が持ってたんか!」
というようなことを言って、笑って済まそうとしたので、
「人を泥棒扱いしといて、それはないやろ!
みんなに謝れ!!」
と、弟がブチ切れ、怒鳴ったそうです。
そこから、日頃からA君のことをよく思っていなかったクラスメートからも非難の声が上がるようになり、いじめ的なことをする子が出たのかもしれません。
気が付けば、弟がいじめの首謀者のようになっていて、何度も担任から説教されたり、反省文を書けと言われたそうです。
ところが、弟は、
「いじめなんてしてない!
おかしいことをおかしいと言っただけや!」
と、認めることは出来ません。
そのためなのか、弟は、担任から見せしめのように説教され続け、反省文の書き直しを何度も何度も命じられたそうです。
結局、いじめたとされる生徒と親が呼び出され、順番にA君親子に謝る場が設けられたようです。
「ほんまにいじめてないんやな?」
と、母に念を押され、弟は、
「いじめてない!」
と、答えたそうです。
順番にみんなが謝っていく中、最後に母は、
「私は、『いじめていない』という息子を信じます。
納得してもらえないなら、出るところに出る覚悟はあります。
人を疑うなら、それなりの覚悟があってのことでしょうね!」
というようなことを言って、席を立ったそうです。
その後、別の教師が追いかけてきて、
「若い教師がすみませんでした。」
と、母と弟に謝ったそうです。
それからは、その出来事について全く何もなかったようにされてしまったということでした。
そのことがあってすぐに弟がひきこもったわけではありませんし、原因の一つにしか過ぎないのでしょうが、弟の中では、理不尽なことにどう抗えばいいのか?、という大きな不安になったようです。
50枚も書き綴ったというこの出来事に、
「何十年も昔のこと、よく覚えてるね!」
と、言うと、
「ひきこもってたから、後の歴史がないから・・・。
何度も何度も繰り返して、どういうことなんか考えてた。」
と、弟は言っていました。
弟にも広汎性発達障害があります。
もしかすると、正論をぶつけて、それでA君を傷つけるようなことがあったのかもしれません。
問題児とはっきり分かるA君と違い、見た目には問題のなさそうな弟にも本当はサポートが必要だったのだと思います。
知らないうちに加害者になったり、被害者になったり・・・、息子のことを思い出しました。
「息子を信じます。」と言い切ってくれた母の言葉が救いです。