担任と学年主任の先生、保健室の先生、息子と私の5人での懇談会がありました。
担任の先生は、以前、保健室に息子の様子を見に来てくださったことはありましたが、毎日6時間授業のうち5時間は授業を受け持っているそうで、息子もほとんど学校にいないため、これまでじっくり話をする機会はなかったそうです。
「保健室の先生とカウンセラーさんとの話の中で、『一日1時間でも2時間でもいいから学校に来よう』という話になったと聞いていたのですが、それ以後来れなくなったので気にはなっていました。」
と。
息子が何も言わないので、
「調子が悪くなってしまって・・・。
朝は特に、頭も体も動かない感じで、登校どころではありませんでした。
学校へ行けないことで、余計に不安が強くなってしまい、先日は頑張って家を出たのですが、途中で気持ちが悪くなって帰ってきました。
出席日数のことを考えてか、『もうダメだ!』っていう気持ちになってしまったようです。」
と、私が答えました。
「中学の時もこんな感じだったのでしょうか?」
学年主任の先生が聞きました。
「中学では、通級の先生が『この時間が空いてます。』って、連絡をくださって、調子の良いときはその時間に通級教室に登校する感じでした。
担任の先生の少人数クラスには時々参加していましたが、クラスに入れるようになったのは、この高校に合格してから卒業するまでのほんの2週間ぐらいでした。
それも、調子が悪くなりながちでしたが・・・。」
「どういう風に調子が悪くなるのですか?」
「不安で気持ちが悪くなると言っています。
頭が痛くなったり、吐きそうになったり、ここ最近は、耳鳴りがしたり、音が大きく聞こえると言ってました。」
「学校が始まった頃、放課後勉強会に参加して、友達と楽しそうに勉強しているように見えたけど、どうでした。
そのときも不安やった?」
「不安でした。
楽しいって思いもあったけど、だいぶ無理してる感がありました。」
と、息子が答えました。
ここからは、保健室の先生が主に話されるようになりました。
「この前保健室に来てくれたとき、『頑張ろうと思って、張り切りすぎた。』って、言ってたよね。
『エネルギーを使いすぎた。』って。
それで、1時間~2時間でもいいから学校に来て、ちょっとずつ慣らしていこうって話になったんやよね。
学校へ来やすいように、どうしたら不安がちょっとでもましになると思う?」
「そんなん分かりません。」
と、息子が言ったので、
「教室で調子が悪くなったらどうしよう、とか、早退するとき、担任の先生に証明書をもらわんなあかんのに、先生が見つかれへんかったらどうしよう、とか、そういうことを考えると不安で怖くなるのだと思います。」
と、私が言いました。
「それと、大きな声が苦手で、先生の指導でも調子が悪くなることがあります。
言葉通りにとるせいもあって、
『こんなに頑張ってるのに、もっと頑張れって、これ以上どうすればいいのか?』
みたいな感じでパニックになることもありました。」
「他の子に言ってるのも、全部自分に言われてる気がして・・・。
部活でもろにそれで自滅してしまって、後から、先生が『お前は出来てる。だいじょうぶ。』って、声をかけてくれるようになって持ち直したけど・・・。」
と、息子。
「敏感なんやね。
音にも、人の気持ちにも敏感すぎるのかな。
教室は、やっぱりざわざわして苦手?
人がいっぱいいるとしんどい?」
「人がいっぱいいるのも、ざわざわしてるのも嫌やけど、一番は視線。」
「視線って、『目』が怖いってこと?」
「目っていうか、俺のことをどういう風に思って見てるんやろって。
昔から勘違いされることが多くて、自分が思ってるのと違う話になってることがあるから。
それで、トラブルになることも多くて、だいじょうぶかなって・・・。」
「そうなんや。
そういう子、結構いるよ。
〇〇君だけじゃない。
不安なのは、中学生のときから?」
「はい。」
と、息子は言いましたが、
「小学生の頃からそういう傾向がありました。
トラブルが多くて、不安が強く、4年生のときには強迫性障害と診断されました。」
と、私が付け加えました。
「強迫性障害は良くなりましたか?」
「広汎性発達障害の特性もあって、不安が強くなると、何度も手を洗ったり、扉を閉めたかなど確認する等の症状が出てきます。」
「そうなんですね・・・。
病院で検査されてましたよね。
もし、最近の検査結果がありましたら、見せていただいたらどういうことに困っているかが分かるので、もっと力になれると思うのですが・・・。」
「中学に入る前にWISK-Ⅳを受けましたので、その検査結果は提出しています。」
「3年以上経ってますね。
もし、近々検査されるようなことがありましたらお願いします。」
「〇〇君、教室に行かなあかんと思ったら不安が大きいのかな?
まずは保健室に来て、体調とか時間割とかチェックして、今日はこの授業出れそうとか、今日はサポートルームに行こうとか、一緒に考えようか?
それやったら、いけそう?」
息子は、そう問いかけられると、
「それでいけるかどうか分かれへんけど、そうしてもらえたらありがたいです。
自分で管理とか出来るようになりたいけど、そういうこと苦手で、考える余裕がなくて・・・。」
と、答えていました。
「ちょっとずつ出来ることを増やしていったらいいと思うよ。」
趣味は何?とか、何をしているときが一番リラックスできる?とか、どんな本を読むの?等々、色々質問されていましたが、その中で印象に残ったのがこの質問です。
「困ったときに力になってくれる友達とか大人はいた?」
「いたから、今の自分があります!」
その後、保健室の先生と息子は、
「保健室をじっくり見学してみよう。」
と、部屋を出て行きました。
ここからは、担任や学年主任の先生との話になりました。
「〇〇君が不安になるといけないのでお母さんにだけお話ししますが、もし今のような出席状況のままだと、10月には進級出来なくなることが決まってしまいます。」
と、学年主任の先生。
「保健室登校でも出席にはなるのですが、出席日数とは別に、各教科、例えば私の受け持っている日本史では、あと20日休むと単位が取れなくなってしまいます。」
と、担任の先生。
「もしかしたら、学校というものがそもそもあの子には合わないのかもしれないって、気がしています。」
と、私は言いました。
「単位制や通信制、専修学校など色んな学校を見て回ったけど、最終的にあの子が選んだのがこの学校でした。
『この学校に通いたい!』って。
あの子にとってどうしてあげることが正解なのか分からなくて、その言葉を頼りにここに決めました。」
「何が正解なんて、私達にも分からないですよ。
ただ、『この学校に通いたい!』って思って来てくれた〇〇君のために、出来るだけ力になりたいと思っています。
どうしてもこの学校が合わなくて、単位制の高校に編入して無事に卒業された生徒もいます。
元気に社会人になっています。
そのときはそのときで、一緒に考えましょう。」
学年主任の先生は、そう言ってくださいました。
「しっかり自分を分析出来ているし、自分の言葉で伝える力もある子だなぁと思いました。
不安さえ何とか出来れば、ものすごく伸びると思いますよ。」
ほどなく、息子が帰ってきました。
先生方に、
「待ってるよ!」
と、見送られながら、学校を後にしました。