今月は忙しい。また本社に呼ばれた。
「おはようございます」
「この前の件はありがとう、おかげで私の顔がたちました」
…いっているわりには顔は笑っていない。これは気を引き締めないと。
「今日は取引先の大事な方の接待をしてもらいます」
接待?そんなものしたことが無い。断ろうと思ったが そんな雰囲気ではない。
「下で小松君が車で待っていますから 彼から詳細を聞くように」
小松? どっちの小松だろうか? 本体?分身? 分身ならもう消滅している筈だ。
暗い駐車場まで降りると、分身の方の小松が歯を見せて笑っていた。
俺は内心ほっとしながらも 「よう、お前まだ生きてたのか」と精一杯の親しみを込めて言った。
生きててくれて とても嬉しい。
「お陰様で こないだの報告書が評価されまして 勿論猫又の所は人間に書き換えましたけど 報告書もですが、華岡さんと唯一組める人物 という評価をいただきました」
瓢箪から駒というべきか。俺は苦笑いした。
「勿論、分身の存在は誰も知らないので 小松氏の手柄になったのですが 結果 華岡さんと組むべき相棒に指定されたのです」
「それで急遽私の命が繋がりました」
よほど俺は小松氏に嫌われているらしい。俺と組むのはいやなのだろう。
まあ、そのお陰で分身君が生かされているのだから 結果オーライか。
とりあえず俺たちは車に乗り込んだ。