ジローのヨーロッパ考

デンマークやドイツの農家に長期(?)滞在、体験したり感じたことを綴ります。

ドイツでの農場体験・ホストの愛読書

2014-04-21 16:03:07 | 日記
ラーデンでの残り滞在日数も少なくなった頃、ホストのOさんからいくつかの情報をいただきました。一つ目は「書籍」です。「こう言う本に関心があるのではないか?」と言って大型の本を2冊見せてくれました。

1冊は「The Complete Book of Self-Sufficiency」(John Seymour:ジョン・シーモア著)です。自給自足的な方法等を紹介しているものです。中身は英文で書かれていました。イラストも多用されていて結構分り易い内容かと思います。但し、ラーデン滞在中に読みきったわけではありませんので、帰国後に入手可能であれば買ってみようかと思ったのです。(実際、帰国後に英文・最新版をインターネットで購入しました。3,200円ぐらいでした。)
(写真: 自給自足)
(写真: 省エネ)

もう1冊は「道具」に関するもので、農機具の他に生活上で使用していた様々な道具を紹介している本です。但し、こちらはドイツ語なので見る程度で終えました。しかし、糸を紡ぐ道具等は日本に古くからあるものと似ていました。

Oさんはエネルギーそのものも自給自足することを理想としており、こうした書籍類も情報源になっているようです。また、Oさん宅の地下室を見せてもらった時の話ですが、この家に代々伝わる木製の道具も保管されていました。半分破損した糸巻き車のようなものもあります。Oさんは、この家そのものがここラーデンでは2番目に古い(1782年建築)こともあり、この建物そのものも利用した「博物館」を造ってみたいとも言っています。彼のことですから本当に実現してしまうかも知れません。
(写真: 太陽光利用) 

そしてもう一つ、イギリスのBBC(放送局)が制作したTV番組に関してです。20世紀初頭のエドワード7世時代の農村風景(生活様式)を実現してみせるドキュメンタリー番組「Edwardian Farm」、全12シリーズで構成されたものです。Oさんはインターネットからダウンロードしたようで、それを一緒に見ました。1本が60分になっていることもあって、全てを見ることはできませんでしたがシリーズの半分程度は見ることができました。

ちなみに、当然ですが全編英語です。私は30%ぐらいしか聞き取りできませんでしたが、Oさんは大半理解できると言っていました。また、この「Edwardian Farm」は2010~2011年にかけて放送されたシリーズなのですが、その前に「Victorian Pharmacy」「Victorian Farm」と言うシリーズが2009年頃に放送されたことも教えてもらいました。こちらの時代背景は19世紀の中盤から後半になっているようです。

イギリスの農業史やベルギー農業史等にも多少は関心がある私にとっては興味のあるドキュメンタリー番組です。You-Tubeで見ることができるかも知れません。関心のある方はネットで検索してみて下さい。英語のヒアリングにもなります、ハイ。

懐古趣味があるわけではありませんが、苦しいながらも自給自足に近い生活を強いられてきた中に、現代の持続可能社会へのヒントがあるような気がしています。日本にもこのようなシリーズ物番組があってもいいなァ・・・と感じた次第です。
~続く~

ドイツでの農場体験(26) <帰路の準備 >

2014-04-18 22:43:43 | 日記
2013年10月28日(月)、ここラーデンでの最後の週が始まりました。朝から雨、そしてかなりの強風です。午前中はリンゴをスライスしてドライフルーツにする作業が中心になりました。スライスは専用の電動スライサーがあって、皮むきした後のリンゴを押し込んで行くだけです。その後、ドライヤー(乾燥器)に幾層にも並べます。一晩乾燥器に掛ければドライフルーツの完成です。

この日の午後は瓶洗いでした。数年前に瓶詰めされたジャム(?)を洗い流してガラス瓶を再利用するものです。貼り付けられているシールを見ると2008年頃のものもあります。自家用ではなく販売目的で作ったものの売れ残り・・・でしょう。金属蓋は固く閉まっているので千枚通しのようなもので金属蓋に穴を開けます。すると手で蓋を回すことができます。どうも負圧がかかっているようです。結局、蓋は再利用できないのでした。それにしても、結構な数量を洗うことになりました。完売できていればよかったのでしょうが・・・。

この日は朝から雨でしたが、途中からは晴れ、しかし、終日、台風なみの強風が吹いた一日でした。
(写真: 庭の風景)

ところで、10月31日(木)にはラーデンを離れるわけですが、その後の予定は1ヶ月以上前から考えてホテルの予約や列車の切符の購入を進めてきていました。大まかな予定は次の通りです。

ブレーメンに3泊、「ブレーメンの音楽隊」で有名なのでこの都市の名前は聞き覚えがあるのではないでしょうか。ラーデンからはほぼ真北に60~70kmぐらいの場所になります。そしてさらに北方のバルト海沿岸に近いリューベックに向います。ここも3泊します。リューベックはハンザ同盟都市の中心的存在の都市でもあります。また、ノーベル賞受賞(文学賞)トーマス・マンの「ブッテンブローク家の人々」の舞台となったハウスもある縁の地でもあります。

実は、リューベックまで北上すると、前年(2012年)のデンマークでの滞在先までは直線距離で200kmぐらいに近寄っており、立ち寄りたい誘惑も多少はあるのでした。しかし、それを組み込むとドイツ滞在日数に影響が出てしまうので、今回は「ドイツのみ」と、自分に言い聞かせたのでした。

リューベックからは一気に南に500km程戻って、ドイツ入りした起点でもあるフランクフルトに入ります。そしてここでも3泊です。限られた場所3ヶ所での滞在になりますが、1泊程度で各地を通り過ぎるよりユッタリとした日程で、それぞれの地を散策したい思いで決めました。
(写真: お世話になった思い出のバイク)
(写真: 庭にあるキツネのおきもの)

さて、ホテルの予約ですが、インターネットを使ってホテルの場所や料金を確認して予約します。ホテルとの直接やりとりを必要とする場合もありますが、それ以外は日本語での処理が全てできますので心配要りません。支払いはカード決済か現地でのチェックイン時での支払い(現地通貨)の二通りでした。
(写真: 薪ストーブ用の燃料の一部)

ドイツの鉄道切符についてですが、ドイツ鉄道(DB)のサイトで英語で確認できます。地名を入力する時にウムラウト付きの文字を必要とする場合もありますので、ドイツ文字入力が可能なようにパソコンを予め設定して渡航しました。(リューベックやミュンスター等はウムラウト付きU文字になります。)それと、切符は予め入手しておいた方が確実と思ったので、私の場合は凡そ1ヶ月前にはチケットセンターで購入しておきました。

これで帰りのドイツ国内旅行準備は完了です。ホストのOさんは首都ベルリンにも立ち寄ることを薦めてくれましたが、大都市を見るよりは地方都市を見てみたいとの思いでコースから外した次第です。
(写真: 花はナスタチウム)

もう一つ、お世話になったOさんと奥さんのEさんにお別れの挨拶をしなければなりません。実は、こちらも3週間程前から準備を進めてきています。2012年のデンマークでのそれは、挨拶項目を予め考えておいて粗筋を記憶(英語)し、あとはアドリブ勝負・・・でした。今回のドイツも同じ方式を考えたのですが、内容が多すぎます。環境問題や省エネ、オーガニック農法・・・。結局、パソコンを使ってパワーポイントでプレゼンスタイルで挨拶することにしました。従って、項目やそれに適した写真等の選定、英語での簡潔な説明(タイトル程度)をまとめたのです。最終項目直前には映像と音楽を組み込んだサプライズ的(?)な演出も加えておきました。

パワーポイントで全65ページ、ほとんどが写真です、ハイ。そしてその挨拶は出発の前日30日の夕食後となりました。一人での予行練習では約20分ぐらいです。Oさんがホストを始めて私が27人目のWWOOFerだと思いますが、パワーポイントで挨拶する人は初めてでしょう。さァ、どうなるでしょうか。
~続く~

ドイツでの農場体験(25) <ラーデン最後の休日 >

2014-04-16 16:16:21 | 日記
2013年10月27日(日)、この日は未明にサマータイムが終了しました。そして、私にとってはここラーデンでの最後の休日なのです。近郊にあるバイオガス施設の写真を撮る最後のチャンスでもあるのです。この日の様子は以前のブログ「ドイツでの農場体験・エネルギーの話(2)」に詳述しているので、そちらも参考にして下さい。

この日は6時半起床、時計機能を有している機器は全て再調整しました。外の様子を見てみると晴れてはいるようですが、風が強そうです。いずれにしてもサイクリングの準備を進めました。天候さえ問題なければレーベルン(Levern)と言う場所まで行く計画です。天気予報では午後になってから雨模様になるとのことなので午前中が勝負・・・の感じです。

8時50分スタート、出発直後からほぼ向かい風か左前方からの強風です。この日がラストチャンスでなければ「中止」(延期)は間違いなしです。しかし、次回ドイツに来た時にしよう・・・と言うことは有り得ない(99%)ので無理を承知しての強行でした。ラーデンから南西方向へおよそ15kmの地を目指しました。

自転車で走ること1時間半ぐらいで目的のバイオガス施設にたどりつきました。雲行きは怪しくなりつつありましたが何とかここまでは持ちました。バイオガス施設の写真を撮り終わり、次の目的地(Levern)を目指すか思案です。Levernには旧式の風車があるのです。そこも行ってみたかったのですが、バイオガス施設の写真を撮り終える頃、早くも大粒の雨がポツリポツリと落ちてきています。即座にLevern行きは断念しました。
(写真: バイオガス施設)

それよりもこれからラーデンに戻るのですが、雨はどうなるのでしょうか。天気予報では午後からが雨の筈だったのに・・・。この時、時刻は10時半頃でした。ほどなくして本降り状態、しかも雷雨。黒雲も接近してきて危険、雷鳴も聞こえています。本降りを通り越して土砂降りと言った方が正解です。止む無く危険を承知で並木道(大木)の一角で雨宿り、待つことしばし、やや小降りになったところで再スタートです。

幸い気温は15℃ぐらいありそうで寒さは感じない状況でした。そしてしばらく行くと再び大降りに、近くにバス停があったのでその屋根つきの待合でしばしの休憩です。しかし、小降りになる気配もないので一気に走りきることにしました。ここからは約8・9kmの道のりです。およそ30~40分で帰着、時刻は11時40分頃でした。
(写真: バス停で雨宿り)

それにしても上着はウインドブレーカーと薄手のフリースのみでしたが、雨風は十分防いでくれたようです。少し冷えた体を自室のストーブで温めてから、近所のインビス(Imbiss)で昼食。焼きたてピザを待ちながら地元のビール(Barre)を飲みます。330ccの瓶ビールに直接口をつけて飲みます。いや~実に旨いです。今日は午前中に3時間ほどのサイクリングを強行したので喉も渇きます。ピザをいただきながらビールをもう一本飲み干しました。
(写真: 午後になって少し晴れ間も)

部屋に戻って少し昼寝です。そして、この日の夕食は毎週のように通った(?)ラーデンの老舗レストランでの最後の食事なのです。時々メニュー外の一品をサービスしてくれるのですが、この日も出ました、ハイ。
(写真: サービスの一品)
(写真: レストランの雰囲気)

話は全く異なるのですが、外国に行ってもしばしば気づくことがあるのですが、それは日本人の知人によく似た「外人」が居ることです。このドイツ・ラーデンの老舗レストランにはオーナーらしき40歳前後の男性がいてほとんどの場合、彼が注文を受けたり英語でメニューの説明をしたりするのですが、この彼が私の知っている東三河のある役場に勤めるSさんに顔も体系も実によく似ているのです。

人種的には明らかに異なる民族であると思いますが、こうも似ている人がいるのだと不思議に思うのでした。このレストランの場合は毎週のように行っていたので、その都度その印象を持つのでした。従って、何か以前から知っているような錯覚を感じさせるのでした。こうした例は他でもあり「エッ!?」としばしば心の中で叫ぶのでした。皆さんもそうした経験がありませんか?

さて、ラーデンでの最後の休日も何とか無事に終わりそうです。ホストのOさんからバイオガスに関するいくつかの情報も得られたこともあって、充実した一日となったのです。

10月31日(木)の朝にはこの地を離れます。残る3日間を楽しみたい・・・。
~続く~

ドイツでの農場体験(24) <サマータイムも終了 >

2014-04-04 22:08:29 | 日記
2013年10月25日(金)、マッシュルームの新しい菌床が入荷していました。前日の午後、ホストのOさんが入手してきたようです。Oさんとフランス人のSOさん、私を含めて3人で搬入作業をします。マッシュルームの種類としては10種類ぐらいありそうです。入荷した菌床の数量としては2百個前後でした。中には柔らかい菌床もあって雑に扱うことは禁物なのです。

一旦、大型の冷蔵庫に保管するものと、直接、地下室の栽培ルームに持ち込むものと2種類に分けられました。搬送用の一輪車や二輪車を使っての作業ですが、3人で1時間半ぐらいかかったのでした。階段の昇り降りもあるので結構疲れるのです。

ところで、マッシュルーム栽培に使っている地下室は5室ありますが、菌床の収納可能総数としては1千個前後と思われます。10月の初旬頃から既に収穫に入っているものがあり、その終わりは翌年の8月頃と思われます。一つの菌床からどれぐらいのマッシュルームが採れるのでしょうか。また、どれぐらいの収益になるのか・・・気になるところです。一方、菌床の購入価格は聞きましたがここでは秘密にしておきます、悪しからず。
(写真: 地下室への入口)

それにしても、トマトと同じように一つの苗(菌床)からシーズン中に繰り返し収穫できる作物としては効率的な作物の一種なのでしょうね。Oさんの取り組みが優れているのは、地下室の空調温度制御が自動化されていることや湿度管理が工夫されていることでしょう。そもそも古くからあった地下室を利用していることそのものがグッドアイディアだと思えるのです。

現在、栽培に用いていない地下室もあるので、販売ルートの拡販等に道筋がついてくるのであれば、他の地下室もマッシュルームの栽培用に転換するのかも知れません。
(写真: 一斉に出てきたマッシュルーム)

さて、菌床の搬入が終わった後は、庭での胡桃(くるみ)拾いや収穫済みの林檎と洋梨の皮むき等でこの日も一日が終わりました。

この日の昼食はOさんが作ったオムレツのような料理でした。特別な料理ではありませんが、シンプルで飽きのこない味で美味しくいただきました。一人3枚づつで結構お腹が一杯になったのです。

ところで、ここでの昼食には週に1回ぐらいの割合でご飯(米)が炊かれます。米そのものはタイ米であったり、その他の産地物であったりして、日本のお米の方が個人的には美味しいとは思うのですが、それにしても米飯が思ったより多い印象なのです。で、Oさんに聞いたことがあります。「ご飯」を食べるようになったのは比較的最近のことですか?と。するとOさんは「子供の頃から食べていた」と言うのです。Oさんは47歳(2013年時点)です。つまり少なくともOさんの家では40年ぐらい前から「ご飯」はしばしば日常的に食べていたことになります。ドイツの他の家庭での話はわかりませんが、米飯はヨーロッパでも古くから食されていたのでしょうか。私にとっては意外なことでした。

ちなみにOさんは炊飯器を持っていたのですが故障していて使えないのでした。やむなく現在は普通の鍋を使って炊いているのです。米をとぐ回数は8回、強火で沸騰した後は弱火で20分・・・と基本セオリーを自ら保有しているOさんなのでした。

翌日の26日(土)、この日も林檎や洋梨の皮むきとドライ処理(乾燥機がけ)が中心となりました。夕方の16時過ぎ、作業の区切りがついたところで今日は終了しようとOさんが言います。そして、改造中のOさんの事務室を見てくれと言っています。Oさんの事務室には大型の薪ストーブがあるのですが、これは大きいものでセントラルヒーティング用に使っているのです。その薪ストーブの周囲に壁を新たに設け、そして出入り口の扉も造っています。

理由を聞きました。この薪ストーブで室内は当然暖かくなるのですが一つ問題があると言います。それは薪を投入する時にストーブの蓋を開けることになりますが、そうした時に「灰」が室内に飛び広がるのだそうです。その事務室内にはOさんのパソコン(デスクトップ型)が2台置いてありますし、周辺機器としてプリンタ等もあります。そうした電子機器類の上にも「灰」が飛んでくるのでした。

また、Oさんはアコースティックギターやエレキギターも演奏するのですが、ギターの本体や弦も何となく汚れているし、エレキギター用のマルチエフェクタも置いてあるのですが、それらも埃に覆われていた理由はそこにあったようです。私もエレキギターを少し演奏するので一緒にトライしたことがあったのですが、ギター(弦も)があまりに汚れていたのには少し閉口してしまいました。フレットも汚れていたので私の左手はすぐに汚れてしまったのです。

まァ、そんなこともあって薪ストーブと事務所部分を完全にセパレートすることを思い立ったのでしょう。以前のブログにも書きましたが、Oさんは若いころ3年間、大工の専門学校にも通っているので大工としてもプロレベルなのです。従って、部屋を造ったりするのは得意分野なのです。と言うことでOさんは90%完成したその部屋を私に見せてくれたのでした。いやァ~、正にプロです。見事な出来栄えでした。
(写真: 工具セット)

それにしても、このOさん、大工はプロレベル、コンピューターのOSはLINUX(リナックス)、プログラミングもするし、電子回路設計も可能。そしてセンサも自作、プリント基板の製作もある程度は可能。宅内のネットワークも構築、地下室の空調温度管理は自作、・・・。この人はドイツの中でも特殊な存在なのでしょうか。多分ですが、レベルに差があったとしても、こうした感じの人は結構居るのではないでしょうか。
(写真: Oさんの愛読書の一つ)

ちなみに、このOさん、今製作中のものは3Dプリンタです。キットを買ってきて自分で製作しています。それほど難しくはなさそうですが、プログラミングも自分でやっているのです。対象となる製作物の材料が樹脂(プラスチック)なので、用途が限定的のような印象ですが、単なる趣味の領域を超えて自分の仕事面で使うことも考えているのでした。ちなみにキット価格で8~9万円ぐらいだと言っていました。やはりちょっと特異な存在でしょうか、Oさんは。

そしてこの日の夜、27日(日)午前3時、サマータイムが終了するのでした。1時間戻して午前2時にするのです。日本との時差は7時間から8時間に切り替わるのでした。
(写真: 晩秋)
(写真: 少し寒くても客は来るアイスクリームショップ)
~続く~