イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

無知の涙

2009年08月05日 22時55分38秒 | Weblog

大人になってからというもの、めったに涙を流すことがない。泣かないのは僕が強い人間だからではない。単に心が錆び付いてしまっているからだ。悲しいことがあったとき、感動したとき、人前ではばからずに涙を流す人を見て、うらやましいと思う。そういう人は、きっと心の純度が高いのだと。人情に厚い人なのだと。

そんな僕でも、たまには泣くことがある。でも、ここで泣かねば、と思う局面で、タイミング良く涙が出てくれることはめったにない。いくら悲しくても、どれだけ感動しても、簡単には目頭は熱くなってくれないのだ。なんて薄情な奴なんだ。なんて他人行儀な奴なんだ。そんな心の声がする。

涙は、本当に忘れた頃にやってくる。突然の涙。無知の涙。自分がいかに人情を、世間を知らなかったのかということに気づいて、大きな愛の存在にいまさらながら気づいて、堰を切ったように涙は流れる。涙を流している自分を、「まだ自分にも涙は残っていたのか」という驚きとともに、客観的に眺めている自分もいる。

次の涙がいつやってくるかはわからない。だけど、人生最後の日には、これまでに出会った人たちのことを思って、笑顔で涙を流したいなあ、と思う。そしてそんなことを考えていたからこそ、今日の僕は思わず涙してしまったのだ。

涙は目の汗。一生懸命生きた分だけ、涙腺にたまっていくものに違いない。少しだけ心がすっきりしたから、明日こそは、明日に向かって歩いて行こう。