おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
昨日(5月21日)は、家で一生懸命仕事をしていました。
かなり仕事がはかどりました。
そんな昨日、増刷の情報が2つ。
1つは、『アドラー心理学によるカウンセリング・マインドの育て方-人はだれに心をひらくのか』(コスモス・ライブラリー、1,600円+税)の重版の連絡が入りました。
地道に売れていて、累計すると確か2万部くらいになるはずです。
2つめは、通信教育『リーダーのための心理学入門コース』(岩井俊憲編著、宮本秀明・永藤かおる共著、PHP研究所)のテキストが増刷になり、家にサンプルが送られてきました。

さて、新聞記事や週刊誌でアドラーのことが盛んに取り上げられるようになっています。
その中の文章を読んでいて、アルフレッド・アドラー自身に聞いてみたいことが2つあります。
1.「トラウマは存在しない」と本当に言ったの?
2.あなたの孫のことはご存じ?
1.「トラウマは存在しない」と本当に言ったの?
毎日新聞特集ワイド 「アドラー心理学」今なぜブーム?(2016年5月19日 東京夕刊)に
トラウマの否定はアドラー心理学が最も批判を受けやすい点だ。
岸見さんは「実はアドラー自身、第一次世界大戦中、軍医として、戦争による心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療にあたっていました。トラウマの存在を知っていたのにあえて否定したのは、過去にとらわれず、これからをどう生きるかが重要と考えたからです」と語る。
と書かれています。
「戦争による心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療にあたって」いたアドラーが「過去にとらわれず、これからをどう生きるかが重要」とは言いそうですが、「トラウマの存在を知っていたのにあえて否定した」というのは、論理的におかしな話です。
「トラウマの存在を知っていた」ならば、「トラウマは存在しない」と言って、トラウマをどうして否定できるのでしょうか?
例えば、犯行現場を目撃して「私は犯人を知っていた」と語る人がどうして「犯人は存在しない」と言えるのでしょうか?
自分で偽ったことを言っているのでしょうか?
岸見さんが「トラウマは存在しない」と語る根拠は、『人生の意味の心理学 上』(アルテ)P.21の次の記述です。
いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。われわれは自分自身の経験によるショック ― いわゆるトラウマ― に苦しむのではなく、経験の中から目的にかなうものを見つけ出す。自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定するのである。
ここでアドラーが言っているのは、「トラウマが存在しない」ではなく、トラウマの経験をしたことに対してどういう意味を与えるか、ということなのです。
そもそも存在しないトラウマに苦しむ人がいるのでしょうか?
トラウマという経験が存在しないならば、その経験をどう意味づけできるのでしょうか?
アドラーの原典からは、どうしても「トラウマは存在しない」が出てこないのですが、本当はどうなのでしょうか、アドラーさん?
毎日新聞特集ワイド では、悩む子どもや若者の相談に乗ってきた「夜回り先生」こと水谷修さんは「アドラーで救えるのは心を深く病んでいない比較的元気な約3割という印象です。親から性的虐待を受けた子どものトラウマを否定できるのか。『病んだのは本人のせい』という安易な『自己責任論』が広まり、より生きづらい社会にならないか心配です」と案じているようです。
アドラー心理学の主要な理論として「自己決定性」を重視する私でも、安易な『自己責任論』はアドラー心理学の本質から外れると思いますが、アドラーさんはどう考えるでしょうか?
2.あなたの孫のことはご存じ?
アドラーが1937年にこの世を去ってから9年後の1946年に、アドラーの一人息子のカート(Kurt Adler)のところに娘が生まれました。
一人娘はマーゴット・アドラーの名でジャーナリスト、ラジオ/TVレポーター、本の著者としてアメリカで活躍し、2014年7月28日に68歳で死亡しています。
Margot Adler has passed away. She was a longtime National Public Radio (NPR) correspondent, author, and the granddaughter of community psychologist Alfred Adler.
と英文で書かれた記録がありますが、詳しくは5月23日(月)発売の『週刊ポスト』でお楽しみに。
こんな顔をした人でした。

アドラーは、孫娘と天国で会ったとしたら、どんな会話をしたのかな?
<お目休めコーナー>5月の花(22)
