日本にスーパーマーケットが登場してから、どのくらい経っただろうか。ほとんどの食品がパック入りになった。清潔で便利にはなったが、ゴミの量産など改善すべき問題は多い。
鍋で豆腐を買うなど夢物語になったようにも思えるが、直接豆腐屋へ買いに行けばいいし、ラッパを鳴らして売りに来る豆腐屋が今でもあるようだから、あながち旧時代のものとは言えない。
いずれにしても、鍋で豆腐を買う作者の庶民的な住環境まで想像される。又、「鰯雲」の斡旋によって、作者の幸福感まで漂ってくるから不思議である。
私の映像では、作者が豆腐を買っての帰り道、午後の商店街を歩き、下を向かず、澄み切った秋の空を見上げているからだ。夫のためか、我が子のためか、こういう平凡なことが、幸福と言えるのだと思う。
九ちゃんの「上を向いてあるこう」は、「涙がこぼれないように」だから悲しくて、淋しくて、辛くて上を向くこともあるんだ。ねえ、永六輔さん。