プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

田辺湾神島でゴミ調査&クリーンアップイベント

2019-02-26 11:25:34 | イベント

 南紀田辺湾・神島(かしま)にて、来たる5月16日(木)、
 海ゴミ調査&クリーンアップ活動を行います。
 http://islandstream.la.coocan.jp/kasimasoujitour.htm

 神島とは、博物学者の南方熊楠の働きかけにより、
 1935年に国の天然記念物に指定された無人島です。
 貴重な植生や生態系保護のために普段は立ち入り禁止となっていますが、
 このたび当活動のために田辺市教育委員会より特別許可を得ました。
 (アイランドストリームでは5回目のイベントとなります)

 朝、シーカヤックで島まで渡って国際規定のフォームに則ってゴミ調査&掃除し、そのゴミをまとめてカヤックに乗せて再び漕いで戻る。そして、田辺市職員が回してくださったトラックにそのゴミを乗せて処理場まで運ぶ、とざっくり言ってそういう流れになります。
 ボランティア活動なので基本無料です(カヤックレンタルされる方はカヤック運搬費用のみいただきます)。
 ぜひご参加下さい。

 なお、この神島とゆかりの深い南方熊楠とは、日本で最初に「エコロジー」(当時は「エコロギー」と言った)という言葉を使って自然保護運動をした人としても知られています。元来日本では美しい自然の中で神と仏がひとつになる「神仏習合」の文化が育まれてきましたが、明治初めに神仏分離政策、廃仏毀釈運動が起こりました。その背景には富国強兵ヴィジョンのもと神々を国家神道化する狙いがあったわけですが、明治末期にはさらにそれを強化すべく「神社統合」の流れが加速化しました。これにより、記紀神話などに載るメジャーな神々が祀られた神社のみが正当な「国家神道」にふさわしい神社であり、村々にある小さな神社や祠、鎮守の森などは前時代の無価値なものとして取り壊され、森が伐採されていきました。
 それに猛烈に怒り、抗議したのが南方熊楠でした。
 小さき名もなき祠や鎮守の森こそ、独自の生態系と人々の歴史文化が豊かに息づく空間であり、「それを壊すとは何事か? 君たちはエコロギーという言葉を知っておるのかね?」と町や県の役人、そして国に猛抗議したわけです。
 その甲斐あって1920年(大正9年)、貴族院で「神社合祀無益」と決議されました。

 その後、南方熊楠は「ボーッとしてたらお上は何をしはじめるか分からない」と、自然保護活動の大切さをより自覚したわけですが、そんな流れで彼の各方面への働きかけによりこの「神島」が天然記念物になったわけです(彼はこの島で、「植物学者」としての昭和天皇とも会っています)。
 
この島は旧石器~縄文時代から続く南紀地方一帯の植生、生態系の典型を示す島であり、それをいわば「タイムカプセル化」して後生に残そうとしたのです。
 なので、このたびの活動は、そのタイムカプセルをちょっと開けさせて見せてもらうような行為だと言えるでしょう。

 そして、この島でゴミ調査&クリーンアップ活動をすることに意義があります。
 なぜなら「海ゴミ問題」とは、地球環境問題の大きなトピックのひとつだからです。
 たとえば太平洋の真ん中には黒潮の流れの淀みにプラスチックゴミが溜まったゴミ大陸「太平洋ゴミベルト」が存在します。それは日本列島の約4倍の面積に及ぶと言われます(日本ではほとんど知られていない)。
 とんでもない話でしょう。南方熊楠が生きていたらどう思うか?
 もはや拾っても拾っても追いつかず、ゴミの発生源を元から絶たなければどうしようもない状況です。
 で、ゴミ調査をするのですが、ICC(インターナショナル・コースタル・クリーンアップ)の統一フォームに則って調べることによって、太平洋の中の日本列島、日本列島の中の紀伊半島、紀伊半島の中の南西海岸・・・、というふうにグローバルな目で見た貴重なローカルのデータとなるわけです。
 これを分析することにより、ゴミの発生源を突き止めることができます。

 さて、この活動は、日本の自然保護運動の父である南方熊楠ゆかりの美しい無人島でゴミ調査&クリーンアップして様々なことを考え、意識を高めようというテーマをねらいとしています。
 そしてシーカヤックで渡ることにも意義があります。
 シーカヤックほど、自然のエコロジカルなサイクルに敏感な乗り物はないですから。
 単なるレジャーの道具だと、なめてもらったら困ります。
 南方熊楠が今生きていたら、絶対乗ってるでしょうね。

 めったにない機会です。ぜひご参加下さいませ。

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