プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

カヤックトリップする理由 遊びと人間

2012-02-28 01:28:06 | タイ南部カヤックトリップ
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 (タイ南部カヤックトリップの続き記事です)。

 タイのカヤックトリップから帰ってきました。
 海外から帰ってきていつも真っ先に感じるのは、日本って清潔で整然とした国だなってことですが、特にタイのような東南アジア特有の渦巻くような猥雑、乱雑なエネルギーを感じた後、すごく落差を覚えます。
 いやに静かな国だな、と。
 
 タイにはバンコクから入り南部のアンダマン海沿岸を旅し、再びバンコクに戻って帰ってきたわけですが、まず日本はこの一カ月足らずでだいぶ春の香りのする空気に変わった気がしました。そして風の中を貫く、肌に染みいるような、空気の清冽さ。これは熱帯独特の肌にまとわりつくようなねっとりした空気を味わった後にこそ強く感じる爽やかな透明感なのですが、このなじみの感覚はやはり好きですね。空気の透明感によって、自然のフィーリングを味わうアウトドアアクティヴティにおいても、より深み、奥行きあるものになるんだろうなと思います。特に見た目の絵葉書的美しさだけじゃなく、感性に訴えかける世界においてね。

 渦巻くような都会のエネルギーという意味においては、管理主義や閉塞性が強まり年々活力がなくなっている日本よりタイやベトナムなど東南アジア諸国の方が遥かに面白いですが、逆にアウトドアをディープに楽しむフィールドと考えるならば日本の方がぜんぜん面白いと思います。中緯度に位置し、四季が顕著で、黒潮エッセンスの影響を受けた照葉樹林文化。日本の山、海、川のよさ、空気の清冽さ、透明感、奥行きの深さ。自然文化の歴史の深さ。これも外から見ないとなかなか見えづらいことなのですが、大事にしなきゃだめだと思いますね。
 逆に言うと日本に住むなら都市ライフより断然アウトドアライフに限ると思います。
 またここにこれからの日本の可能性も宿っていると思います。

 と言っても世界は広く、特にカヤックのような自然に対してムキ出しの敏感な乗り物に乗って旅すると、世界はもっともっと広いものだと改めて思い知ることができます。だから世界を旅するのです。縦軸と横軸みたいなもので、ホーム(日本)で自然観をぐっと深めていき(縦軸)、そしてアウェイ(海外)で広げてゆく(横軸)という捉え方。ぼくはカヤックでメシを食っているけれどあえて誤解を恐れず究極的に言うと、別にカヤックそのものにそれほど興味を持っているわけではない。カヤックに乗って見えてくる感性の世界に対して興味を持っているわけです。
 カヤックを通して繋がる本物の海世界、自然の世界。
 というかそこに最もダイレクトに繋がるツールだからこそ、カヤックにこだわっているのです。 
 だからこそ国内外カヤックトリップをするわけですね。
 もし匹敵するくらい深いものがあるならば、別にシーカヤックじゃなくてもよいと思っています。

 ブログにしてはちょっと濃い、マジメな話になっちゃっいますが、自分が生まれ、死んでいく間に、日常の生活とは別に、世界の本質とは何か、自然とは何か、宇宙とは何か、っていうような本質的な事と己自身とがどこまで深くかかわれるかってことによって、人生の価値も深みを増してくるだろうと思います。
 そういうものを「コスモロジー」と言います。
 で、自分自身のコスモロジーを追求してゆくことこそが、本当の豊かさだと思います。
 特に何でもかんでもカネカネ主義というか、経済効率第一主義の今の世の中でそんなもの追求すべくもないし下手すりゃ新興宗教行きとなってしまいますが、そのどちらにも吸収されることなく絶妙のバランスを取れるのが自然の遊び、海の遊びってやつなんだと思います。

 今の時代、そういう遊びを絶対持っておいた方がいいと思います。
 パチンコとかビンボーくさいものじゃなく、己の存在と戯れる本物の遊びね。
 そしてぼくは、消費文化が行きつくしたこれからは、ある程度の部分、遊びで経済を回していけばいいと思っています。
 永遠の右肩上がりを志向する資本主義経済なんて、とどのつまりゲームなのだから。
 どうせなら「人間性の味方」を志向するゲームをしたいものです。

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