プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

透明でクールで温かい晴れた冬の海のような音

2016-01-22 21:55:25 | 日記

 カヤックで海に出ると、
 風や波、潮騒の音のトーン、香り、湿度など自然の息吹と、
 自分自身の五感とがシンクロして、
 研ぎ澄まされた感覚になってくるといつも言っていますが、
 その感覚に包まれたあと聴くと、いつにも増して、
 一段と素晴らしく感じる音楽ってのもまた、あります。 

 そういう観点で最近はまっているのは、これ、
 ニューヨークの気鋭のジャズヴォーカル、
 グレッチェン・パーラトの音楽。

 彼女の音楽のよさは、一聴してとてもクール、
 ある種冷たいくらいの透明感がありながら、
 その実、とても情感が豊かで、聞いていると心が温かくなってくる。
 そういう微細なバランスにあるわけですが、
 これって冬の海を漕ぎ出でる感じととてもよく似ています。
 特に晴れて風のない日の海は、ピーンと冷たくはりつめた空気のなか、
 海水も海景も透明な美しさを解き放ち、
 その現場にいる者の目や耳や毛穴や、そこから繋がる心を洗ってくれる。
 そして南を通る太陽光線も相まって、ほっこりあったかい気分になってきます。
 ああ、なんて美しいのだろう、という喜び。 

 そういう感覚とシンクロする音楽。

 デスクワークなどしているときにBGMとして流していても、
 全然邪魔にならない上に、
 じっくり聞き入ると、「すごい音楽性の高い、洗練されたことやってるな」
 と、色んな発見があります。

 で、さらに冬の海に出て、冬の海に五感のチューンを合わせた後に聴くと、
 ビンビン来るものがあるのです。

 彼女の声のコントロール、
 メンバー全員のテクニックのすばらしさはもちろん、
 情感や音楽性の高さ、プラス、高い審美眼。
 これまで多種多様な音楽を聴き、咀嚼した上で作り上げた、
 新しいジャズだということがよくわかって面白い。 
 形態は正統的なジャズだけど、
 ロック、ブルース、レゲエ、ラテン、ボサノヴァ、ヒップホップ・・・、
 いわゆる「出尽くした」と言われるポップミュージックの世界ですが、
 それらたくさんの聴きこんできた上で、
 あえて誇りをもってやってるジャズという感じがするのです。
 別に他の音楽的要素を押し出してるということではなく、
 他のジャンルの音楽と比べた、
 ジャズの長所と短所をよく理解した上でやっている。 

 一音一音、そういう批評眼とか、センス、審美眼、
 志とか、ヴィジョンとかが込められている。そして何より、
 ジャズや音楽に対する愛が込められている。 

 そういうことも海からあがってじっくり聴くと、
 よく見えてくる。

 きっと、海と音楽は等しい。


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