プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

カヤックの奥義、アウトドアの真髄、自然の包容力。

2016-01-15 12:49:40 | 日記

  

 カヤックはアウトドアツールとして万能の乗り物で、
 トレッキングするように、サイクリングするように、
 人が通常立ち入ることができない海岸線や水辺を周遊・探索できるし、
 また、シュノーケリングの母船にも、
 細かくポイントを探る釣り用の舟としても、広く使われている。
 数十キロから100キロ近くの荷物を積むことができるので、
 キャンプ用品を積み込んで誰もいないスポットでのキャンプ生活はもちろん、
 長い旅や冒険も可能だ。

 自分の志向やイマジネーションに応じて、なんでもできる。
 追求すればするほど、他ジャンルの遊びへと繋がるスジ、
 広がり、互換性、可能性が膨らんできます。
 たまに「なんでカヤックばっかりにこだわるの?」という人もいますが、
 ほかの色んなジャンルの物事につなげていきたいからこそ、
 メインたるものを掘り下げていく必要があるわけですね。
 だからこそカヤックにこだわって長年やっているのですが、
 まあ、それらは目に見える、形になっている外面の部分ですね。

 プラスアルファ、一見目に見えない部分にも、
 素晴らしい魅力がある。
 それは、内面的というか精神的というか、そういう部分なのですが、
 カヤックで海や川に出ると、まず、
 普段とは全く違う次元の世界に入り込んだ感覚に包まれる。
 風や波、潮の流れや木々の香りといった、
 自然現象と自分の五感がシンクロし始め、
 やがてその感覚が極めて研ぎ澄まされたものとなってくる。

 まあ、そうしないと危ないわけで、
 生存に関わってくるからに他ならないのですが、
 無理にそうしているのではなく、自然な形でそうなる。
 リラックスしながらも、研ぎ澄まされる感覚。
 むしろとても気持ちのいいものだ。
 そして普段の生活では眠ってしまっている、
 生き生きした生命感とか、想像力とか、遊び心とか、
 色んなものが呼び覚まされるような意識になってくる。

 この、「研ぎ澄まされる感」
 「呼び覚まされる感」が半端なく色濃いのが、カヤックなんですね。
 なぜか? 
 色々理由づけすることもできますが、いずれにせよ、
 この高度資本主義の現代社会において、
 研ぎ澄まされる感覚なんてそんなに要求されないし、また、
 普段の生活において、生命感とか、想像力とか、遊び心って、
 あんまり必要とされていない(ほんとは必要で、それがないから
 日本経済も沈滞しているんだけどね)。
 どちらかといえば抑圧されているものだ。

 だけどそれこそが人間という生き物に備わったものであり、
 それらにフタをして生きてると絶対どこかに無理が出てくる。
 現代社会って、便利にできているけれど、不自然ちゃあ不自然で、
 生きている実感とか、あんまり意識しないようにできている。
 なんでもかんでも、余計なお世話なまでに便利に包まれて、
 自分で察知したり、工夫したりしなくてもすむようになっている。
 楽ちんなのはいいけれど、
 ともすれば自分の人生を生きている実感がなくなり、
 ルーティンかつやたら忙しい生活の中で、だんだん感性が鈍ってくる。
 下手をすれば心身が病んでくる。
 そうして社会全体が閉塞感に包まれて、息苦しくなってくる。 

 人間も自然の一部であり、この身体も、皮膚も、五感も、
 自然の変化や胎動に順応するように設計されているのだから、
 それを使う機会がなくなってくると、エネルギーや活力も落ちてきて、
 絶対どこかおかしくなってくる。
 だからたまにはその機能を十全に解き放ち、使った方がいい。 
 ロボットではない、アニマルでもない、人間性を取り戻すための時間。 

 だからアウトドアって大事なんだけど、
 特にシーカヤックをやっていると、それプラス、
 感覚をフルに使うせいか、より感性的ものを求めるようになってくる。
 感性をよりヴィヴィッドに研ぎ澄ませた世界、つまり、
 音楽とか、文学とか、映画とか、絵画とか、
 アート的なものを志向、求めるようになってくる。
 そういう意味で、上記したように、外面的な、形になって表れる部分と同時に、
 内面的な、一見目には見えない精神的なところでの他ジャンルへと繋がるスジ、
 広がり、互換性、可能性も膨らんでくるというわけですね。 
 ここまでいくと、ほんとに奥深いし、素晴らしく面白い世界になってくる。
 シーカヤックというジャンルはおろか、
 アウトドアというジャンルすら、越えてゆくわけですね。

 カヤックの奥義って、本当はそこにあるんですよ。 

 さて、21世紀も、はや16年目に入ろうとしていますが、
 21世紀とは、自然との共生の時代。
 それなくして人類はもう持続的にやっていくことはできない。
 エネルギ―問題も、水・食料の問題も、貧富の格差の問題も、
 戦争と平和の問題も、人心荒廃も、実は全部「環境の問題」なわけです。
 絶対もっともっと自然に触れた方がいい。
 それもただ眺めるのではなく、
 その自然と一体化するような行為に興じてみること。
 そこからきっと、新しい未来が広がってくる。

 自然は金持ち貧乏人問わず、
 誰にも等しく、美しさと厳しさの両面を見せてくれる。
 老若男女も関係ない。
 若いから感性が豊かで、年取ったから鈍ってくるということもない。
 むしろ逆だったりする。
 悪い意味での世の固定観念を取っ払って、
 心をデフォルト状態に戻してくれる場所、
 本当の自分自身に気づかせてくれる空間。

 自然の鼓動、地球の息吹にもっと触れ、人生を豊かにしていくために、
 今年こそぜひみなさん、カヤックを始めてみましょう。
 できれば一回きりの体験もいいけれど、
 色んな季節や場所を経験してみる方が面白い。
 そして自艇を持ち、自分であちこち行ってみると、
 やがてぼくの言っているようなことがお分かりいただけることでしょう。 


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