プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

スリン島の長期滞在者

2012-02-29 05:54:08 | タイ南部カヤックトリップ
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 (タイ南部カヤックトリップの続き記事です)。

 スリン島は簡素なコテージかテントサイトしかなく、だけどそれがよかった。
 あんまりワーッと観光客が殺到するわけではないので、静かに過ごしたい人には最適ですが、海以外ほんとに何もないので、ダメな人は全くダメでしょうね。まあ海はきれいなので日帰りか1,2泊ならば感動するでしょうが・・・。ぼくはカヤックで島を隈なく漕ぎ回ったり、潜ったり、またちょっと集中して考えたり書いたりすべきことがあったから10日ほどでも足りないくらいでしたが、この人一体何をやってんだろう、大丈夫か? と心配になるくらい何もせず日がな一日ハンモックに揺られている、自炊して半分住んでいるようなヨーロピアンも結構しました。

 聞くと30日とか、40日とか滞在している人も結構いました。
 しかもそういう連中は毎年のように来るらしい。
 皆、口をそろえて言うには、タイも色々周ったけれど静かで何もないこの島が一番居心地いいとのこと。
 レオナルド・ディカプリオ主演の「ザ・ビーチ」って映画にもあったけれど、「楽園志向」みたいなものなのか、ある種の西洋人は海辺で全く何もせずかなりの日数を過ごすということも苦にならないどころか、それを好んで求める心理ってのもあるのかな、と思いました。アジア系の我々にはない感覚ですね。実際、日本人はほとんどいず、11月の開島から2月現在まで、日本人は1人か2人しか来てないとレセプションのねえちゃんも言っていました。コリアンや中国人はちょこちょこいましたが2,3日で帰る人がほとんどでした。まあ、本などは長期滞在のみなさんよく読んでらっしゃいましたが、別にこう、一生懸命読んでいる風でもなく、全体として、常にボーっとしている感じでした。

 しかしそう見えるだけで実は頭の中では高速回転でいろんなことを考えているのかもしれない。実はぼくがカヤックで出かけている時に死ぬほど忙しく何かをやっているのかもしれない。まあそれはないだろうけど。ぼくはカヤックを漕いでいる時よりハンモックで揺られている時の方が脳内高速回転状態だったのですが、日本人はそういう内面がどこか表に出てしまいますね。皆さんとは違ってぼくのハンモックの揺られ方ってのはどうもソワソワした感じでまだまだ修行が足りないなあ、ハンモック道ってのも奥が深いなあ、と思っていました。集中しすぎたり、入り込んで考え過ぎたりするとだんだん「オエー」ってなってきたりしたのでそういうときはそこらにいるテントサイトの誰かを捕まえて世間話などをしました。
 
 実にいろんな国籍の人たちがいましたが、イタリア人とドイツ人とフランス人が多かったですね。意外とスウェーデンとか北欧の人が少なかったけれどいるにはいた。イスラエル人、イギリス人、ニュージーランド人、オランダ人、インド人、ハンガリー人、タイ人、コリアン、それから地球の裏側、アルゼンチンから旅してきてる学生もいました。そのうちだんだんめんどくさくなってきてどこの国の人か聞かずしゃべっていました。素性がよくわからんかったりするがよく聞くと学校の先生だったり、あるいは本当に何者なのか分からない人もいて、面白かったです。ヨーロピアンは堅気でも、1~2カ月くらいのホリデーは普通のようですね。日本もそうなればいいのに、ならないのは、実は貧しい国だからなのかもしれないなと思うことがあります。

 やはり個人主義が発達しているヨーロピアン。フレンドリーでありつつもあまり人の領域に立ち入ってはこない傾向にある。ある種のアジア系の人は、特に大阪のオッサンなどは初対面でいきなりずけずけと本音で迫ってくるノリもあったりしますが、彼らにそういう習慣はないのだろう。加えて、日常から離れてバカンスに来ているからか(ほとんど日常になってる連中も多いが)、極力当たり障りのないように話を持っていく感じがするなという気がしました。
 と感じたのはやはり、こちらが日本人と見るとどうしても東北の津波や福島の原発事故の話になったりするんだけど、大丈夫か? という程度で話がとどまってそこからは突っ込んでこないことからでした。それはこちらがそんなに英語がうまくないから話が発展しないんだとかそういうことではなく、やはり気遣いを感じるのでした。あまりへヴィーなところには触れないでおこう、というような。

 で、そういう気遣いは心地よい半面、アジア人にとってはドライに思えるのも確かで、なんかこう、もうちょい湿り気があってもいいかなという感覚でしたが、その中でイタリア人だけはちょっと違うなという感じがしました。原発の話をしていて、事故後も原発賛成派の人もまだまだ多い、日本は地震の活動期に入り地震の巣のような真上に原発が稼働していたりもするが、脱原発の動きはそんなに大きなうねりにもなっていない、というような話をすると、マウリシオというイタリア人は、「何やってんだ、革命起こせよ革命!!」と唾を飛ばして繰り返しました。
 以後彼はぼくを見るたびにこぶしを握って「革命!!」と言ってくるのでした。
 こういうノリは嫌いではなかったです。


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