Islander Works

書いて、読んで、人生は続く。大島健夫のブログ

みいらの世界

2012-05-03 19:04:42 | 出たもの
ワンマンライヴだからといって、別に事前に特別なことをするわけではない。テキストを準備して、練習して、それを本番で朗読するという、基本的にはただそれだけのことである。いつもと違うことをしたことがあるとすれば、私は毎月Poe-Triの会場入り前に3-tri-の向かいの「天下一品」で毎回「こってりの並」を食しているのであるが、今回はそこに辛子ニンニクをどばっと投入したという、せいぜいその程度に過ぎない。

むしろワンマンライヴであれば、共演者のブッキング等をしなくて済むので楽なのである。

今回の朗読テキストは「みいらの世界・完全版」。ひとことで言うなら、昨年朗読した「みいらの世界」の拡張バージョンである。

毎年、この5月のワンマンは前半で短い詩を朗読し、後半で1時間の長編を朗読するというパターンで開催しているが、今年は2時間の長編一本だけを朗読することにして、春の訪れとともにカリカリとテキストを作っていた。決定稿が出来上がった夜、「よーしできた、二、三回通して軽く読んでから寝よう」と思い、練習を始めたのであるが、2時間の尺に合わせて作ったテキストであるということは、当たり前だけど通して読むと2時間かかるのである。三回読んだらあっという間に朝6時になってしまい、自分の間抜けさを思い知る結果となった。

ゴールデンウィーク中だし、天気も悪かった。それなのに集まってくださった皆様に深く感謝したい。また、会場にいらっしゃらなくても、お心にかけてくださった全ての皆様にも同じように感謝したい。当然のことだけど、人間の持っている時間と力は限られている。皆、日々の中でいろいろなぎりぎりの選択を繰り返しながら、それを自分が一番その時大切だと思うように使わなければならない。その選択肢の中に私の朗読を入れてくれた。そんなに嬉しいことはない。

自分の書いたもの、なした朗読について、ああだったこうだったと言うのは好きではないけれど、一つだけここで付け加えさせて頂くなら、私はこの「みいらの世界」を、個々の人間たちが自分を包含する世界と時間軸の中で、力を振り絞って自分で自分の一番いいと思うように生きていこうとする物語として書き、朗読した。

そうして書き、朗読したものに対して、拍手を頂けたこと、賞賛の声を頂けたことは本当に、本当に嬉しく思う。

しかし、正直に言うなら、今回のワンマンライヴに際して私が一番嬉しかったのは、ステージに上がるよりずっと前、テキストを制作している中のある時点で、自分自身が昨年の自分よりも人間的に成長できているとはっきり確信できた瞬間だった。それはすごくいい瞬間だった。

試合は終わった。足を前に進める。人間の持っている時間と力は限られている。立ち止まっている暇はない。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿